相場展望2月2日号 FOMCイベント終了⇒業績相場に移行 株式市場はあと1回の利上げ、FOMC声明は複数回の利上げを想定

2023年2月2日 11:36

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)1/31、NYダウ+368ドル高、34,086ドル(日経新聞より抜粋
  ・10~12月期の米雇用コスト指数が市場予想ほど上昇せず、インフレ鈍化につながるとの見方が広がり、米長期金利も低下しハイテク株が買われたのも相場を押し上げた。
  ・雇用コスト指数は前期比+1.0%上昇、伸び率は7~9月期の+1.2%と市場予想+1.1%を下回った。「労働市場からのインフレ圧力が弱まわっている」と、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが減速するとの見方を誘った。
  ・米長期金利が3.50%前後に低下(前日終値は3.59%)し、相対的な割高感が薄れた
高PERのハイテク株が買われた。電気自動車のテスラ、ネット通販のアマゾンが上昇。
・ソフトウェアのマイクロソフトと顧客情報管理のセールスフォースの上昇が目立った。
化学のダウや工業製品の・事務用品のスリーエムなど景気敏感株も高い。
半面、決算で1株利益が市場予想を下回った建機のキャタピラーは▲4%安で終えた。

 2)2/01、NYダウ+6ドル高、34,092ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表後は利上げ継続が意識され、NYダウは一時▲500ドル超に下げ幅を広げる場面があった。だが、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエルFRB議長の会見中に急速に下げ渋り上げに転じた。
  ・FRBは1/31~2/1に開催したFOMCで、市場の予想通り+0.25%の利上げを決めた。利上げ幅は前回の+0.50%から縮小した。声明では「継続的な引上げが適切」との前回の表現を維持。今後も複数回の利上げが継続されるとの見方を誘い、株売りを促す場面があった。
  ・だが、パウエル議長の記者会見が始まると、NYダウは下げ渋った。これまでの金融引締めの効果で、「昨年の米経済の伸びは大幅に減速した」との認識を示した。さらに、質疑応答で「初めてディスインフレーション(インフレ沈静化)のプロセスが始まったと言える」と述べた。
  ・市場では「議長会見は、インフレに対してハト派的だ」と受け止められた。「利上げ停止は近い。深刻な景気悪化を招かずにインフレを抑制できる」と、FRBが金融引締めの手を緩めることでソフトランディング(軟着陸)を期待する声も聞かれた。
  ・米長期金利が低下、相対的割高感が薄れた高PER(株価収益率)のハイテクが上げた。顧客情報管理のセールスフォースとソフトウェアのマイクロソフトが+2%高、スポーツ用品のナイキやホームセンターのホームデポなど消費関連も高い。半面、決算発表を受け、アナリストの目標株価引下げが相次いだバイオ製薬のアムジェンは売られた。米原油先物相場が下落し、石油のシェブロンと建機のキャタピも下げた。
  ・ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は続伸し、ほぼ5カ月ぶりの高値。予想を上回る決算発表した半導体のAMDが+13%高、エヌビディアや電気自動車のテスラも高い。

●2.米国株:株式相場は、FOMCイベント終了⇒決算発表による業績相場に移行

 株式市場はあと1回の利上げ、FOMCは複数の追加利上げが適切と示唆

 1)株式市場では、もう1回の利上げ(+0.25%)を織込んでいる。FOMCの声明をみると、複数回の追加利上げが適切になる可能性を示唆している。

 2)インフレ率は鈍化傾向にあるが、依然として高水準のなかでの鈍化傾向である。
  ・ドル高で、輸入物価の伸びが低く抑えられてきたが、「ドル安」へ転換しており、ドル安による輸入物価の上昇によるインフレ押し上げが懸念される。
  ・賃金上昇が鈍化傾向に転じ、サービス価格の上昇に歯止めがかかることが期待される。米サービス部門は米GDPの約7割を占めるだけに、賃金率鈍化は望ましい。だが、米12月JOLT求人件数は1,101万件数と、高い水準にあることから、労働市場の逼迫は続いており、賃金上昇圧力は継続すると思われる。さらに、物価上昇率の方が賃金上昇率よりも高いため、労働者にとって実質賃金はマイナスの状況にある。個人消費支出の鈍化が懸念される。賃金上昇率が鈍化したといっても、上記の理由で「限定的」となろう。
  ・米長期金利は2/1のFOMCを受けて低下したが、一時的なものになると予想する。
  ・物価指数は「伸び率が鈍化」と囃しているが、あくまで伸び率の低下であって、本格的な物価指数が低下しているとは受け止めにくい。
  ・中国の景気回復期待が高まっているが、そうなれば中国発インフレ懸念が増す。
  ・したがって、株式市場はなおハト派に傾き過ぎている。やはり、今後の金利上昇は1回ではなく、複数回続く可能性が高いと予想する。

 3)FOMCイベントが2/1で終了⇒今後は、本格化している決算発表イベントに移行
  ・2/1までの決算発表内容はまちまちである。市場予想を下回った銘柄やアナリストが評価を下げた銘柄の株価下落幅は大きく、昨年のおおらかな株価反応とは違う様相になってきたようだ。
  ・2/2以降に決算発表されるアップル、アマゾンなど主力ハイテク株に注目したい。
     

●3.パウエルFRB議長の会見要旨(フィスコ)

 1)もし、経済が想定通りに展開した場合、2023年の利下げは予想しない。

●4.FOMC、利上げ幅を+0.5%⇒0.25%に減速、さらなる利上げが適切(ブルームバーグより抜粋

 1)今回の利上げで、FF金利の誘導目標レンジは4.5~4.75%に。

 2)インフレは幾分和らいだが、依然として高水準にあり、今後複数回の利上げが適切になるとの認識を示した。「インフレに対する勝利を宣言するのは極めて時期尚早だ」とパウエル議長は言明した。

●5.米12月JOLT求人件数1101.2万件、予想1,030万件を上回る、11月1045.8万件(フィスコ)

●6.米1月ADP雇用統計+10.6万人、予想+18.0万人を下回る、12月+23.5万人(フィスコ)

●7.全米住宅価格、ピークから▲2.5%低下、前年同月比で全米+7.7%上昇(ブルームバーグ)

●8.ユーロ圏、12月失業率は6.6%、予想6.5%を上回る、11月6.6%(フィスコ)

 1)1月消費者物価指数は8.5%、予想8.9%・12月9.2%を下回る

 2)1月製造業購買担当者景気指数(PMI)は48.8と、5カ月ぶりの高水準だった(ロイター)
   物価圧力が低下し、需要の減少ペースが鈍化、楽観的な見方が広がり、最悪期終了か。

●9.企業動向

 1)ヘッジファンドのブルーベイ、米国・日本・イタリア国債を2023年も売り(ブルームバーグ)
  ・市場はFRBがハト派姿勢を織込むのは早過ぎ、タカ派的なサプライズの可能性あり。

●10.企業業績

 1)韓国サムスン電子 10~12月営業利益が前年同期比▲69%減の+4,500億円(共同通信)
 2)米ファイザー  通期利益見通しが予想下回る、コロナ関連事業が減速(ブルームバーグ)
 3)米マクドナルド 売上は好調、営業利益率43.6%と予想45.5%を下回る(ブルームバーグ)
 4)米エクソン  2022年は過去最高純益+7.2兆円、ウクライナ侵攻で原油高騰(BBC)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)1/31、上海総合▲13安、3,255(亜州リサーチより抜粋
  ・売り圧力が意識される流れだった。
  ・本土市場は春節(旧正月)連休前から取引再開した1/30までの上昇で、上海総合指数は約5カ月ぶりの高値水準を回復していた。
  ・中国のリオープン(経済再開)進展や景況感の改善などで朝方は小高く推移したものの好材料出尽くし感が浮上するなか、1月の中国製造業PMIは50.1となり、景況判断の境目となる50を4カ月ぶりに上回った。
  ・また、米国の対中国圧力も改めて警戒され、通信機器メーカー大手の華為技術(ファーウェイ)に対し、米バイデン政権が全面的な輸出禁止措置を検討している模様との報道。これまでは輸出を認めていた製品についても、許可を停止する方針を複数の米企業に通知したという。
  ・業種別では、ITハイテク関連の下げが目立ち、医薬品も安い。不動産はしっかり。

 2)2/01、上海総合+29高、3,284(亜州リサーチより抜粋
  ・投資家のリスク選好が高まる流れとなった。
  ・米金融引締めの警戒感後退、中国景気の持ち直しも改めて意識された。1月の中国製造業PMI(国家統計局などが集計)は50.1となり、景気判断の境目となる50を4カ月ぶりに上回った。
  ・また、国際通貨基金(IMF)は1/31,最新の世界経済見通し(WEO)を公表し、うち、中国については、2023年の成長率を5.2%(前回4.4%)に上方修正した。
  ・指数は、引けにかけて上げ幅を広げた。
  ・業種別では、非鉄・レアアース・鉄鋼など素材の上げが目立った。ハイテクも高く、医薬品もしっかり。自動車・インフラ関連・公益・エネルギー・証券・海運も上昇。

●2.財新の1月中国製造業PMIは49.2、前月49.0から上昇、市場予想49.5に届かず(ロイター)

 1)好不況の分かれ目である50を、6カ月連続で下回った。

 2)当局が厳格な新型コロナ規制を解除したが、労働者の間で感染拡大し生産に支障が出た。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)1/31、日経平均▲106円安、27,327円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式相場や1/31のアジア株相場の下落が重荷となり、東京市場でも主力株の売りが優勢だった。前日に1カ月半ぶりの高値水準を付けており、大引けにかけて手仕舞い売りが加速し、やや下げ幅を拡大した。
  ・決算発表を受けた個別物色が目立った。
  ・1/30の米株式市場では主要な半導体関連銘柄で構成する米フィラデルフィア半導体株指数が大きく下げ、東京市場でも東エレクやアドテストなど半導体関連が売られた。
  ・2/1まで開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、運用リスクを避けて持ち高を減らす動きもみられた。
  ・今期業績予想を上方修正したOLC(オリエンタルランド)や中国電力の上げが目立った。日野自・サッポロ・日ハム・日本紙・クレセゾン・郵船・味の素・東急不が買われた。一方、業績見通しが市場予想に届かなかったキャノン、下方修正したコーテクが下落。三菱UFJ・三井住友FGなどメガバンクが安く、楽天・INPEX・リクルート・日本電産・ANAが売られた。

 2)2/01、日経平均+19円高、27,346円(日経新聞より抜粋
   ・前日の米国株高を受け、取引開始直後は一時+200円超上昇した。ただ、27,500円を上回ると戻り待ちの売りが増え、上げ幅を縮めた。
   ・2/1に米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表を控え、動意の乏しい展開が続いた。
   ・このところ日経平均は27,500円が上値抵抗水準として意識されている。FOMCに加え、週内には米ハイテク大手の決算発表が控えている。内容を見極めたいと積極的に買い上がる雰囲気は乏しく、午後は小幅ながら下げに転じる場面もあった。
  ・中国メディアの財新と米S&Pグローバルが2/1発表した1月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)が好不況の境目となる50を下回った。中国景気への不透明感も日経平均の上値を重くした。
  ・スクリーン・アルプスアル・アドテストが上昇した。一方、TOTO・エプソン・味の素は下げた。受注高見通しを引下げたレーザーテックは大幅安となった。

●2.日本株:朝方に日経平均は高く、買い一巡後に下げる流れが続く

 1)日経平均は27,500円の攻防も、朝高・その後は下げる局面が続く
  ・TOPIXの前場終値・後場終値の推移(前日比の騰落)
              1/30   1/31   2/1
   TOPIX前場終値  +0.14% +0.04  +0.17
      後場終値  ▲0.01  ▲0.36  ▲0.15
  ・「朝高の後場安」は、決して強い相場とはいえない。投資家の「朝買い・後場売り」は、持ち高を増やさない姿勢がみえる。最近は、日経平均が27,500円で頭を打って下落する局面が続いている。このことから、注意を要する相場展開となっている。

 2)外国人の株式先物買は2/1に止まる
  ・外国人の株式先物市場におけるスタンスは「買い」が継続し、日経平均上昇の1つの牽引力となってきた。
  ・最近の先物買枚数は、1/25の+12,547枚~1/27の+4,136枚。ところが2/1はわずか+946枚に留まった。その理由は、2/2のFOMC結果を意識したものと思われるが、動向を注視したい。

●3.12月完全失業率2.5%、昨年1年間平均2.6%、有効求人倍率1.35倍で横ばい(ロイター)

●4.企業動向

 1)サントリー  山崎と白州のウイスキー蒸留所に100億円設備投資へ(NHK)
 2)アドバンテスト 台湾プリント基板メーカー「シンプウテクノロジー」を買収(時事通信)

●5.企業業績

 1)OLC   10~12月営業利益+856.5億円黒字、前年同期▲16.2億円赤字(フィスコ)
        通期見通しは営業利益+800⇒973億円に上方修正
 2)中部電力  3月期通期純損益▲1,300赤字⇒+500億円黒字に上方修正(ロイター) 
 3)東京ガス 通期純利益見通し+1,180⇒+2,360億円に大幅上方修正、過去最高(日テレ)
 4)SCSK   通期営業利益見通し+540⇒+520億円と下方修正(日経新聞)
 5)住友化学 通期予想純損益+1050億円黒字⇒ゼロに大幅下方修正、配当未定(朝日新聞)
 6)TOTO  10~12月営業利益+229億円、前年同期比+39.8%増(フィスコ)
       通期予想540⇒490億円、前年同期比▲6.1%減、米国・中国の売上低迷
 7)三和   通期営業利益+540億円黒字、前期比+52.2%増、予想比+20%増(フィスコ)
 8)東京電力 4~12月過去最大▲6,500億円赤字、通期予想▲3,170億円赤字(テレ朝)

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします) 

 ・3391 ツルハ    業績堅調。
 ・3099 三越伊勢丹  業績好調。
 ・6367 ダイキン   業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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