NASAのローマン宇宙望遠鏡、打ち上げ成功 広視野観測でダークエネルギーと系外惑星に迫る

2026年8月31日 10:21

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記事提供元:Tech Times

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NASAのナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡が、SpaceXの大型ロケット「ファルコンヘビー」で打ち上げられた。ハッブル宇宙望遠鏡に匹敵する解像度と、その100倍以上の範囲を一度に捉える広い視野を組み合わせ、ダークエネルギーやダークマター、太陽系外惑星を調べる。

望遠鏡には、米国家偵察局(NRO)からNASAへ寄贈された光学系が活用されている。偵察衛星用として製造された2.4メートル主鏡を宇宙観測に転用し、数十億個の銀河を対象とする大規模なサーベイを実施する計画だ。

■ファルコンヘビーで打ち上げ成功

ローマン宇宙望遠鏡は米国東部夏時間の2026年8月30日午前7時26分、日本時間同日午後8時26分、米フロリダ州のケネディ宇宙センター第39A発射施設から打ち上げられた。

ファルコンヘビーは予定通り飛行し、打ち上げから約31分後にローマン宇宙望遠鏡を上段から分離した。NASAの地上管制チームは打ち上げから約7分後にテレメトリーデータの受信を始め、分離後には太陽電池パネルと下部サンシェードの展開も確認した。

ロケットの2基のサイドブースターはケープカナベラル宇宙軍基地へ帰還し、それぞれの着陸地点への着陸に成功した。高エネルギーの軌道投入を担ったセンターコアは回収されず、使い切る運用が採られた。

ローマンは今後、地球から約150万キロメートル離れた太陽・地球系の第2ラグランジュ点(L2)付近へ向かう。NASAは到着までの航行と並行して、機体や観測装置の試験、展開作業、位置調整を進める。

■偵察衛星用の光学系を宇宙観測へ転用

ローマン宇宙望遠鏡は、米国家偵察局が2012年にNASAへ寄贈した2基の未使用の望遠鏡用光学システムのうち、1基を活用している。2.4メートルの主鏡はハッブル宇宙望遠鏡と同じ直径を持つ。

ローマンの前身となった広視野赤外線サーベイ望遠鏡「WFIRST」は、当初、より小さな主鏡を使う構想だった。寄贈された光学系を採用したことで集光力が高まり、広視野装置に加えて、太陽系外惑星を直接撮像する技術を試すコロナグラフ装置も搭載できる設計となった。

寄贈されたのは完成した宇宙望遠鏡そのものではない。NASAは観測装置、宇宙機、電源、通信、姿勢制御などのシステムを新たに開発し、光学系を宇宙観測用に組み込んだ。無償で提供された光学系がどの程度の費用削減につながったかを単純に算出することは難しいが、2.4メートル主鏡の採用によってミッションの観測能力が大きく広がったことは確かだ。

NASAが2022年にSpaceXへ発注した打ち上げサービスの総額は約2億5500万ドルで、打ち上げと関連費用が含まれる。ローマンは、2010年に公表された米国の天文学・天体物理学分野の10年規模調査で、次世代の大型宇宙ミッションにおける最優先計画に選ばれていた。

■一度にハッブルの100倍以上を捉える広視野装置

ローマンの主力観測装置である広視野装置(WFI)は、18枚の検出器を並べた約3億画素のカメラだ。可視光の一部から近赤外線までを観測でき、撮像に加えて、天体の光を波長ごとに分けて調べるスリットレス分光にも対応する。

1回の観測で捉えられる範囲は約0.281平方度で、ハッブル宇宙望遠鏡の赤外線観測装置と比べて100倍以上広い。ハッブルに近い解像度を維持しながら、広大な領域を効率よく撮影できる点が最大の特徴となる。

この能力は、個々の天体を詳細に調べるだけでなく、膨大な数の銀河や恒星を同じ条件で観測する統計的研究に適している。ローマンは数十億個の銀河を含む大規模な宇宙地図を作成し、銀河の分布や形状が宇宙の歴史とともにどのように変化したかを調べる。

天の川銀河の中心方向を繰り返し観測するサーベイでは、恒星の手前を別の天体が通過したとき、その重力によって背景星が一時的に明るく見える「重力マイクロレンズ効果」を捉える。この手法により、主星から遠く離れた惑星や、恒星の周囲を公転していない浮遊惑星を含む、多様な太陽系外惑星の統計的な調査が可能になる。

ローマンが取得した科学データは、処理後に公開される。特定の研究チームだけが長期間データを独占する方式ではなく、各国の研究者が同じデータを使ってさまざまなテーマを研究できる大規模な公開アーカイブとなる。

■ダークエネルギーを複数の観測手法で調べる

現在の宇宙論では、宇宙の総エネルギー密度の約7割をダークエネルギーが占めると考えられている。ダークエネルギーは宇宙の加速膨張を説明するために導入された名称だが、その正体は分かっていない。

最も単純な説明は、アインシュタインの宇宙定数に相当する、時間とともに変化しないエネルギーである。この場合、ダークエネルギーの状態方程式パラメータはw=-1となる。一方、観測結果が時間変化する性質を支持すれば、宇宙定数だけでは加速膨張を十分に説明できない可能性が生じる。

ダークエネルギー分光装置(DESI)の最初の3年間のデータは、単独では宇宙定数を含む標準宇宙論モデルと整合している。しかし、宇宙マイクロ波背景放射やIa型超新星、弱い重力レンズ効果などの観測と組み合わせた解析では、ダークエネルギーが時間とともに変化している可能性を示す兆候が報告された。

この兆候はまだ確定した発見ではなく、使用する超新星データなどによって統計的な有意性も変わる。ローマンは広い範囲を均質に観測し、複数の測定方法を互いに照合することで、宇宙膨張の歴史をより精密に調べる。

主な手法の一つが弱い重力レンズ効果だ。銀河から届く光は、途中に存在する通常物質やダークマターの重力によってわずかに曲げられ、銀河の見かけの形が変化する。多数の銀河に生じる微小な変形を統計的に解析することで、宇宙における物質の分布と、その成長過程をたどれる。

もう一つがバリオン音響振動である。初期宇宙の高温プラズマを伝わった音波は、銀河の分布に特徴的な距離尺度を残した。この尺度を「標準定規」として使い、異なる時代の宇宙がどの程度膨張していたかを測定する。

Ia型超新星の観測も重要になる。Ia型超新星は、明るさを補正することで宇宙の距離測定に利用できる。ローマンは遠方の超新星を多数観測し、宇宙膨張率の時間変化を調べる。異なる系統誤差を持つ複数の手法を組み合わせることで、ダークエネルギーの性質に対する制約を強める計画だ。

■コロナグラフで次世代の惑星撮像技術を実証

ローマンに搭載されたもう一つの装置が、コロナグラフ装置である。主星の強い光を抑え、その近くにある暗い太陽系外惑星や周星円盤を捉えるための技術実証装置だ。

惑星が反射する光は、主星の光に比べて極めて弱い。単純に主星をマスクで隠すだけでは、光学系のわずかな誤差によって生じる散乱光が惑星の信号に重なってしまう。

ローマンのコロナグラフは、マスクやフィルターに加えて、表面形状を細かく変えられる2枚の可変形鏡を備える。光学系から漏れ込む光を測定し、その結果に合わせて鏡面を調整する能動的な波面制御により、惑星を観測する領域から主星の散乱光を減らす。

NASAによると、この装置は主星より1億倍暗い惑星を検出できる性能を目標とし、従来の宇宙コロナグラフを100倍から1000倍上回るコントラストの実証を目指す。主な対象は、近隣の恒星を公転する木星型惑星や、その周囲にある塵の円盤となる。

コロナグラフはローマンの中心的なサーベイ装置ではなく、将来の宇宙望遠鏡に必要となる高コントラスト撮像技術を宇宙環境で試す役割を担う。ここで得られる運用データは、NASAが構想するハビタブル・ワールズ・オブザーバトリーなど、地球に似た惑星の直接撮像を目指す将来計画の設計に役立てられる。

■L2へ向かい、約100日かけて観測準備

ローマンは打ち上げ後、約3カ月かけて太陽・地球系のL2付近へ向かう。L2は地球から見て太陽と反対方向に約150万キロメートル離れており、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡もこの付近を周回している。

L2付近では、太陽、地球、月をおおむね同じ方向に保ちながら観測できる。機体を太陽光から遮りやすく、温度変化を抑えた状態で赤外線観測を続けるのに適した環境となる。

NASAは飛行中に高利得アンテナや開口部カバーを展開し、軌道修正、宇宙機の点検、観測装置の起動と較正を進める。打ち上げから約100日後には初期科学運用へ移行し、最初の画像は2027年初頭に公開する計画だ。

ローマンの基本ミッション期間は5年間で、10年間の運用を目標としている。広視野装置による大規模サーベイに加え、研究者が提案する一般観測プログラムも実施される。

■ウェッブと役割を分けて宇宙を観測

ローマン宇宙望遠鏡とジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、異なる観測能力を補完的に使うことができる。

ウェッブは直径6.5メートルの主鏡を備え、高い感度で比較的狭い領域を詳しく観測する。遠方銀河や星形成領域、太陽系外惑星の大気など、個別の天体を精密に調べることを得意とする。

一方、ローマンは直径2.4メートルの主鏡と極めて広い視野を組み合わせ、広大な空を効率よく走査する。ローマンのサーベイで興味深い天体や一時的な増光現象を見つけ、ウェッブなどの望遠鏡で詳しく追跡する連携が考えられる。

広い領域を同じ装置で繰り返し観測するローマンは、超新星、変光星、ブラックホールに星が破壊される現象など、明るさが時間とともに変化する天体現象の発見にも力を発揮する。事前に対象を選んで観測する望遠鏡とは異なり、大規模な画像の中から予想外の天体や現象が見つかる可能性もある。

■望遠鏡の名前となったナンシー・グレース・ローマン

ナンシー・グレース・ローマンは、NASA初の天文学主任を務めた天文学者である。1925年に生まれ、1949年にシカゴ大学で天文学の博士号を取得した。

NASAでは宇宙から天体を観測する計画を推進し、後のハッブル宇宙望遠鏡につながる大型宇宙望遠鏡構想の形成や、研究者と議会からの支持獲得に重要な役割を果たした。その功績から「ハッブル宇宙望遠鏡の母」とも呼ばれる。

ローマンは2018年12月に死去した。NASAは2020年、当時WFIRSTと呼ばれていた宇宙望遠鏡を、ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡と命名した。

偵察衛星用に製造された光学系を基礎としながら、ローマンが推進した公開性の高い宇宙観測を受け継ぐ望遠鏡が、宇宙の加速膨張から惑星系の多様性までを調べる新たな観測段階に入った。

■注目ポイントQ&A

●ローマン宇宙望遠鏡はジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡とどう違うのですか?

ウェッブは直径6.5メートルの主鏡を使い、狭い領域や個別の天体を高感度で詳しく観測します。ローマンの主鏡は直径2.4メートルですが、広視野装置はハッブルの赤外線観測装置の100倍以上の範囲を一度に捉えられます。ローマンで広い空を探査し、発見した天体をウェッブで詳細に調べるといった連携が可能です。

●ダークエネルギーが変化するかどうかは、なぜ重要なのですか?

ダークエネルギーが状態方程式パラメータw=-1の宇宙定数で説明できるか、それとも時間とともに性質が変化するかによって、宇宙の加速膨張を説明する理論が変わるためです。ローマンは弱い重力レンズ効果、銀河分布、Ia型超新星などの観測を組み合わせ、この問題を検証します。

●ファルコンヘビーのブースターはどうなりましたか?

2基のサイドブースターは分離後、ケープカナベラル宇宙軍基地の着陸地点へ帰還しました。センターコアはL2へ向かう軌道へローマンを送り出すため回収せず、使い切る運用が採られました。

●ローマンの最初の画像はいつ公開されますか?

NASAは、航行中の展開作業や観測装置の較正を含む約100日間の準備を経て、2027年初頭に最初の画像を公開する計画です。科学データは処理後、NASAのアーカイブを通じて公開されます。

元記事: Roman Space Telescope Launches: Spy-Satellite Mirror to Map Billion Galaxies

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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