NOAA新衛星「SOLAR-1」が地磁気嵐を監視 G1警報下で問われるBz観測

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米海洋大気庁(NOAA)の宇宙天気観測衛星「SOLAR-1」が、地球へ向かう太陽風と惑星間磁場の監視を担っている。NOAA宇宙天気予測センター(SWPC)は2026年8月18日、G1(小規模)の地磁気嵐に関する警報を発表した。地磁気活動がどこまで強まるかを判断するうえで、地球から約150万キロ離れた太陽・地球系のラグランジュ点L1で得られる磁場データが重要になる。
SOLAR-1は、長年にわたりL1で太陽風を監視してきた深宇宙気候観測衛星「DSCOVR」の役割を引き継ぐ、NOAA初の宇宙天気観測専用衛星である。2026年6月に運用サービスへ移行し、同月末にはSWPCが利用する主要なリアルタイム太陽風データ源もDSCOVRからSOLAR-1へ切り替わった。
■DSCOVRからSOLAR-1へ移行した宇宙天気監視
DSCOVRは2015年2月に打ち上げられ、太陽と地球の間にあるL1付近から太陽風の速度、密度、温度、磁場などを観測してきた。L1で捉えた太陽風が地球へ到達するまでには通常一定の時間差があるため、観測データは地磁気活動の直前予測や警報に使われる。
DSCOVRは当初、地球観測と気候研究を目的に構想された衛星だったが、計画変更と長期保管を経て、NOAAの太陽風監視衛星として運用された。NOAAは2026年8月に同衛星を退役させる方針を示しており、SWPCによるDSCOVRデータの取り込みは6月末に終了している。
後継のSOLAR-1は、旧称を「SWFO-L1」といい、2025年9月24日にSpaceXのFalcon 9ロケットで打ち上げられた。2026年1月23日にL1付近の所定軌道へ入り、この時点でSOLAR-1へ改称された。システムと観測機器の試験を経て、同年6月10日に運用サービスへ移行した。
NOAA SWPCのDSCOVRプロジェクト責任者を務めるジェフ・ジョンソン氏は、DSCOVRが8年以上にわたってCME到来の主要な検出手段として機能し、地磁気活動の予測に必要な観測を提供したと説明している。その役割は現在、宇宙天気観測を目的に設計されたSOLAR-1へ受け継がれている。
■太陽風とコロナを観測する4つの機器
SOLAR-1には、太陽風プラズマセンサー「SWiPS」、磁力計「MAG」、超熱的イオンセンサー「STIS」、小型コロナグラフ「CCOR-2」の4機器が搭載されている。
SWiPSは太陽風を構成するプラズマの速度、密度、温度を測定する。MAGは惑星間磁場の大きさと向きを3軸で観測し、STISは太陽風より高いエネルギーを持つイオンや電子を捉える。これらのその場観測データは、取得後5分以内に利用可能になるよう設計されている。
CCOR-2は太陽本体の明るい光を遮り、周囲のコロナとコロナ質量放出(CME)を撮像する装置だ。NOAAによると、取得したCME画像は30分以内にSWPCの予報官へ提供される。L1から太陽コロナを継続的に観測する機能と、同じ衛星で太陽風を直接測る機能を組み合わせた点がSOLAR-1の特徴である。
■CMEの強度予測で重要になるBz
今回の地磁気活動では、8月14日に発生した太陽フィラメントの噴出に伴うCMEが地球へ影響する可能性が注目された。太陽フィラメントは、周囲のコロナより低温で密度の高いプラズマが、磁場に支えられて太陽大気中に浮かぶ構造である。太陽の縁ではプロミネンスとして明るく見え、太陽面上では暗い筋状に観測される。
フィラメントの噴出とCMEは、ねじれた磁力線の束である磁束ロープの形成や発達と深く関係している。噴出の過程では磁気的不安定性と磁気リコネクションがともに関与し得るため、フィラメント噴出とフレアを完全に別種の機構として分けることはできない。大規模なX線フレアを伴わないCMEでも、地球方向へ進み、内部に南向きの磁場を含めば地磁気活動を強めることがある。
地磁気嵐の強度を見極める重要な指標の一つが、惑星間磁場の南北成分を表す「Bz」だ。Bzが南向きの状態になると、太陽風の磁場と地球磁気圏との磁気リコネクションが起こりやすくなり、磁気圏へエネルギーが伝わりやすくなる。南向きの磁場が強く、長く続くほど、地磁気活動が強まる可能性が高まる。
もっとも、地磁気嵐の規模はBzだけで決まるわけではない。太陽風の速度や密度、磁場の総強度、南向き磁場の継続時間、CMEが地球へ当たる位置などが組み合わさって磁気圏の応答を左右する。
■Bzの事前予測が難しい理由
太陽付近の画像や磁場観測、数値モデルを使えば、CMEの進行方向や到達時刻、速度、内部磁場の候補を推定できる。しかし、CMEは太陽から地球まで移動する間に回転、変形し、周囲の太陽風とも相互作用する。このため、地球へ到達した時点のBzを十分な精度で予測することは、現在も宇宙天気予報の主要な課題となっている。
SOLAR-1のMAGは、CMEやその前面の衝撃波がL1へ到達した段階で磁場を直接測定する。そこから地球までは約150万キロあるため、太陽風の速度に応じておおむね15分から1時間程度の直前監視が可能になる。
これは、SOLAR-1がCMEの内部を遠方から透視するという仕組みではない。コロナグラフによる遠隔観測と、L1におけるプラズマと磁場のその場観測を組み合わせ、CMEの発生から地球到達直前までを連続的に監視する構造である。
■G1地磁気嵐で想定される影響
NOAAは地磁気嵐をG1(小規模)からG5(極大)までの5段階で分類している。G1は惑星K指数が5に達した状態で、高緯度地域の送電網に弱い変動が生じる可能性があるほか、人工衛星の運用に軽微な影響が出る場合がある。
地磁気活動がG2(中規模、Kp 6)まで強まると、高緯度の電力システムで電圧警報が発生する可能性があり、衛星では姿勢制御への影響や軌道抵抗の変化が問題になる場合がある。磁気圏から上層大気へエネルギーが流れ込むと大気が加熱、膨張し、低軌道衛星が受ける空気抵抗が増えるためだ。
2022年2月には、地磁気活動に伴う上層大気密度の増加が、打ち上げ直後の低い軌道にあったStarlink衛星へ大きな影響を与えた。49機のうち約40機が高度を失って大気圏へ再突入しており、比較的小規模な地磁気嵐でも、衛星の高度や運用条件によって影響が拡大し得ることを示した。
■オーロラの範囲は実際の地磁気活動次第
G1規模の地磁気嵐では、アラスカやカナダ、米国北部などの高緯度地域でオーロラが見える可能性が高まる。NOAAのG1警報でも、米国北部のミシガン州北部やメイン州などが観測可能地域の例として挙げられている。
実際に見える範囲は、地磁気嵐の強度だけでなく、現地の時刻、雲量、月明かり、街の照明、地平線の見通しにも左右される。地磁気活動が強まればオーロラ帯が低緯度側へ広がる可能性があるが、特定地点からの可視性は最新のオーロラ予報と気象条件を合わせて判断する必要がある。
■リアルタイムデータはSOLAR-1が主系統に
SWPCは2026年6月30日、リアルタイム太陽風データの主要な供給源をSOLAR-1へ移行した。現在はSOLAR-1が主系統となり、NASAのACE衛星がバックアップを担っている。
リアルタイム観測では、太陽風の速度や密度、磁場強度とともにBzの推移が表示される。Bzがマイナスなら南向き、プラスなら北向きを示すが、一時的な値だけで嵐の規模を判断することはできない。南向きの強さと継続時間に加え、太陽風速度など複数のデータを確認する必要がある。
SOLAR-1への移行によって、L1における太陽風監視は宇宙天気専用衛星を中心とする体制に変わった。CMEの内部磁場を早期に予測する課題は残るものの、太陽コロナの撮像と太陽風の直接測定を継続的に結び付けることが、電力、通信、測位、航空、衛星運用に向けた警報の基盤となる。
■注目ポイントQ&A
●SOLAR-1はいつから運用されていますか?
2025年9月24日に打ち上げられ、2026年1月23日にL1付近の所定軌道へ入りました。NOAAは同年6月10日に運用サービスへの移行を発表し、6月末にはSWPCの主要なリアルタイム太陽風データ源となりました。
●Bzがマイナスなら必ず地磁気嵐になるのですか?
必ず発生するわけではありません。南向きのBzは地球磁気圏へエネルギーが伝わりやすい条件ですが、その強さと継続時間、太陽風の速度や密度なども地磁気活動を左右します。
●なぜCMEが地球へ来る前にBzを正確に予測できないのですか?
CMEの磁場構造は太陽から地球まで移動する間に回転や変形を起こし、周囲の太陽風とも相互作用するためです。太陽付近の観測とモデルから推定はできますが、地球へ到達する磁場を高い精度で予測することは現在も研究課題です。
●DSCOVRはすでに使われていないのですか?
SWPCは2026年6月末にDSCOVRデータの取り込みを停止し、SOLAR-1へ切り替えました。NOAAはDSCOVRを2026年8月に退役させる方針を示しています。
元記事: SOLAR-1 Debut Storm: DSCOVR Gone, Bz Still Unreadable Until CME Impact
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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