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『ハムナプトラ』新作が撮影開始、ミイラ化研究から読み解くシリーズの科学的背景
Universal Picturesによる『ハムナプトラ』シリーズ新作の撮影が、2026年9月7日に始まった。ブレンダン・フレイザーとレイチェル・ワイズが再び共演し、過去作の出演者も複数参加する。
新作の物語は明らかにされておらず、近年のエジプト考古学やミイラ研究が作品に取り入れられるかどうかも分かっていない。一方、1999年の第1作以降、古代エジプトの防腐バームやカノプス壺に残されたDNAを調べる技術は大きく進歩した。こうした成果は、人体の保存と復活を描いてきたシリーズを読み解く興味深い補助線になる。
■『ハムナプトラ』新作が撮影開始
ブレンダン・フレイザーは9月6日、フランスのドーヴィル・アメリカ映画祭で、新作の撮影について「月曜の朝には仕事に行かなければならない」と語った。発言中の月曜日は9月7日に当たり、主要撮影が同日始まることを明らかにした形だ。
フレイザーは冒険家リック・オコーネル、レイチェル・ワイズはエヴリン・オコーネル役で復帰する。2人が同じ役で共演するのは、2001年公開の『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』以来となる。
米国での劇場公開日は2027年10月15日に設定されている。当初発表された2028年5月19日から約7カ月前倒しされた。日本での正式タイトルや公開日は、現時点では発表されていない。
監督は、映画制作チーム「Radio Silence」として活動するマット・ベティネリ=オルピンとタイラー・ジレットが務める。脚本はデヴィッド・コッゲシャルが担当する。ウィリアム・シェラック、ジェームズ・ヴァンダービルト、ポール・ネインスタインらが製作に参加し、オリジナルシリーズを手掛けたショーン・ダニエルも復帰する。フレイザーは主演に加えて製作総指揮も務める。
■オリジナルキャストが再集結
エヴリンの兄ジョナサンを演じたジョン・ハナー、第1作と第2作で戦士アーデス・ベイを演じたオデッド・フェール、第1作でベニー・ガボールを演じたケヴィン・J・オコナーも新作に参加する。
第1作でベニーはスカラベの群れに襲われるが、新作でどのような形で登場するのかは明らかになっていない。ヌーマン・アチャルとマイケル・ジョンストンも、役名非公表の新キャストとして加わる。
イムホテップ役のアーノルド・ヴォスルーについては、ジョン・ハナーがインタビューで復帰に向けた契約手続きに言及している。ただし、主要な業界メディアによる正式なキャスト発表では確認できていないため、現時点では参加が最終確定したとは言い切れない。
監督を務めるベティネリ=オルピンとジレットは、『レディ・オア・ノット』『スクリーム』『スクリーム6』『アビゲイル』などで知られる。身体の変容や暴力をホラーと娯楽性の両面から描いてきた2人が、アクション、冒険、コメディー、ホラーを組み合わせた『ハムナプトラ』シリーズの作風をどう受け継ぐかが注目される。
フレイザーは以前、1999年作について、アクション、コメディー、ホラー、冒険、ロマンスのどれに当たるのか自分たちにも分からず、あらゆる要素が映画の魔法によって一つにまとまったと振り返っている。新作の詳しい筋書きや映像表現は公表されておらず、Radio Silenceの過去作だけから作品のトーンを断定することはできない。
■ナトロンによる乾燥が組織の腐敗を抑える
古代エジプトのミイラ化は、死後の身体を来世のために保つ宗教的な葬祭実践であると同時に、組織から水分を取り除いて腐敗を抑える高度な処理技術でもあった。その方法は時代や社会的地位によって異なり、長い年月をかけて変化した。
重要な材料の一つがナトロンである。ナトロンは炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムなどを含む天然の塩類混合物で、組織から水分を取り除くために使われた。人体を乾燥させることで、腐敗を引き起こす微生物が活動しにくい環境をつくる。
2015年に発表された研究では、研究目的で提供されたヒトの下肢をナトロンに入れ、古代エジプトのミイラ化を模した実験が行われた。研究チームは外観、組織、分子、画像診断などを用いて変化を調べた。
ナトロンを使用した下肢は208日後にミイラ化が完了した。水分が継続的に除去されたことで腐敗が抑えられ、調査対象から細菌や真菌は検出されなかった。一方、乾熱だけを使った比較実験は、期待した乾燥が進まなかったため7日後に中止された。
この実験は、ナトロンによる脱水が組織の保存に有効であることを示した。ただし、下肢を使った現代の実験室での結果であり、古代エジプトで行われた全身のミイラ化に必要な日数をそのまま再現したものではない。気温、湿度、処理方法などの違いも保存過程に影響する。
■3500年前の防腐バームを成分分析
2023年には、エジプト王家の谷にあるKV42号墓から出土したカノプス壺の残留物を分析した研究が発表された。壺は紀元前1450年ごろ、第18王朝時代の女性セネトナイのミイラ化に使われたもので、ハワード・カーターが100年以上前に発掘した。
研究チームは、ガスクロマトグラフィー質量分析法、高温ガスクロマトグラフィー質量分析法、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法を用い、現在は空になっている2個のカノプス壺に残った防腐バームを調べた。
分析では、ミツロウ、植物油、脂肪、ビチューメン、マツ科植物の樹脂、バルサム性物質、ダンマル樹脂またはピスタチア属植物の樹脂などが確認された。マツ科植物の樹脂はカラマツ由来である可能性が高いとされた。
これらの材料にはエジプト域外に由来するものが含まれる。研究チームは、複雑な材料の組み合わせが当時の防腐処理と広域的な交易関係を理解する手掛かりになると指摘した。ただし、ダンマル樹脂とピスタチア属の樹脂のどちらであるかは確定していない。東南アジア産のダンマル樹脂が使われていたと断定することはできない。
映画で描かれる呪文や復活とは異なる領域だが、複数の材料を選び、目的に応じて組み合わせる発想には、シリーズに登場する精巧な葬祭儀礼を読み解くための科学的なイメージを重ねられる。
■カノプス壺に残された古代DNA
カノプス壺は、ミイラ化の際に取り出した内臓を納めるための容器である。肝臓、肺、胃、腸はそれぞれホルスの4人の息子の加護を受けるとされた。
後代に一般化した動物や人間の頭部をかたどる蓋では、人頭のイムセティが肝臓、ヒヒ頭のハピが肺、ジャッカル頭のドゥアムテフが胃、ハヤブサ頭のケベフセヌエフが腸と結び付けられた。壺の形状や蓋の表現は時代によって変化しており、すべてのカノプス壺がこの形式だったわけではない。
心臓は人格や知性と結び付く重要な器官と考えられ、多くの場合は体内に残された。死者が来世に進めるかを判断する「心臓の計量」では、心臓が秩序と真理を表すマアトの羽根と天秤にかけられる。
2022年に発表されたチューリヒ大学などの研究では、欧州8都市の博物館が所蔵するカノプス壺140個を対象にDNA抽出とメタゲノム解析が行われた。研究チームは、カノプス壺から古代のヒトDNAを確認するとともに、細菌群の構成を解析した。
経年劣化に加え、壺の来歴が不完全な場合や、保存処理に使われた物質がDNA解析を妨げる場合があるため、研究には技術的な難しさが伴う。それでもカノプス壺が、人間の遺伝情報や微生物に関する手掛かりを残す研究資料になり得ることが示された。
作品ではカノプス壺がイムホテップの身体を取り戻すための重要な道具として使われる。現実の研究との共通点は、保存された臓器の痕跡から、かつての人物に関する情報を読み出すという構造にある。壺に残ったDNAは生命そのものではないが、埋葬された人々の来歴や健康状態を探る手掛かりになり得る。
■古王国時代の男性から全ゲノムを解析
2025年に学術誌『Nature』で発表された研究では、エジプトのヌワイラートで発掘された成人男性の全ゲノムが解析された。男性は放射性炭素年代測定によって紀元前2855年から紀元前2570年ごろの人物とされ、初期王朝時代の終わりから古王国時代の初めに生きていたとみられる。
解析されたゲノムの大部分は、利用可能な比較資料の中では北アフリカの新石器時代集団によって最もよく説明された。約20%は、メソポタミアを含む東部の肥沃な三日月地帯に関連する祖先系統に由来すると推定された。
この結果は、エジプトと東部の肥沃な三日月地帯の交流が物品や技術だけでなく、人の移動を伴っていた可能性を示す。ただし、解析対象は1人であり、古王国時代のエジプト人全体の遺伝的構成を代表するものではない。
この研究で解析された人物は王家の谷の出土者ではなく、映画の題材となった人々を直接調べたものでもない。それでも、古代の人体から遺伝情報を読み出し、人々の移動や交流を探る考古ゲノミクスの進展は、遺物から過去を復元するという『ハムナプトラ』の中心的な発想と重なる。
■スカラベが象徴した再生
映画に登場する人肉を食べるスカラベは、第1作を象徴する恐怖表現の一つだ。一方、古代エジプトで神聖視されたScarabaeus sacerは糞を利用する甲虫で、人間を襲って組織を食べる昆虫ではない。
古代エジプト人は、スカラベが糞球を転がす姿を、朝の太陽を運ぶ神ケプリと結び付けた。スカラベは太陽、再生、変容を象徴し、その姿をかたどった護符や印章が広く作られた。
映画では、再生と秩序に結び付く甲虫が、人体を内側から破壊する存在へと反転させられている。神聖な象徴を恐怖の担い手へ変える演出によって、ミイラの復活という主題に強い視覚的印象を与えた。
新作でスカラベが再登場するかどうかは分かっていない。Radio Silenceが得意としてきた身体の変容を巡るホラー表現は、シリーズに受け継がれてきたこうした象徴をどう映像化するかを考える手掛かりになる。
■『死者の書』は来世を進むための文書集
『ハムナプトラ』シリーズでは、『死者の書』や架空の『アムン・ラーの書』が、朗読によって超自然的な出来事を引き起こす書物として登場する。
古代エジプトの『死者の書』は、一般に「昼に出現するための書」または「日のもとに出現するための書」と訳される葬祭文書である。単一の正典ではなく、死者が来世で直面する危険や審判を乗り越えるための呪文、賛歌、宣言などを集めたものだった。
収録内容は所有者によって異なり、必要な文章や図像を選んで巻物が作られた。門や守護者を通過するための言葉、神々への呼び掛け、自らの潔白を訴える宣言などが含まれ、死者を来世へ導く案内書のような構造を持つ。
「心臓の計量」は代表的な場面の一つである。死者の心臓とマアトの羽根を天秤にかけ、死者が秩序にかなった人生を送ったかを判断する。大英博物館が所蔵する紀元前1250年ごろの『アニのパピルス』には、この審判の場面が色鮮やかに描かれている。
エヴリンが古代の文字を読み、書物に記された言葉を音読することで物語を動かす設定は、文字を解読して儀礼上の指示を実行するという点で、実際の葬祭文書の構造に通じる。知識そのものが冒険の鍵になる点も、考古学者としてのエヴリンの人物像を際立たせている。
■映画のイムホテップと史実の人物
史実上のイムホテップは、第3王朝のファラオ、ジョセルに仕えた高官で、紀元前27世紀ごろの人物である。サッカラの階段ピラミッド建設に関わったとされ、後世には知恵や医術と結び付けられ、神格化された。
映画のイムホテップは、紀元前13世紀に統治したセティ1世の時代の大神官として描かれる。史実上のイムホテップと同じ人物ではなく、実在した高名な人物の名前と文化的なイメージを借りた架空のキャラクターである。
この隔たりを知ると、映画のイムホテップが、死後長い時間を経て神格化された人物の名を持ちながら、自らも時を超えて復活するという設定にもう一つの読み方が生まれる。史実との一致を求めるより、歴史上の名が人物造形へどのような重みを与えているかを考える補助線になる。
■研究の進展が作品の見方を広げる
1999年の『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』以降、分析技術の進歩によって、古代エジプトの遺物から得られる情報は増えた。カノプス壺からは古代のヒトDNAが確認され、防腐バームの残留物からは複数の動植物性材料と交易関係を示す手掛かりが見つかっている。
保存された臓器から生命を取り戻すという映画の物語と、残されたDNAから過去の人物に関する情報を読み出す研究は、目的も結果も異なる。しかし、遺物に残る情報を解読し、失われた過去を再構成するという情報処理の構造には共通点がある。
同様に、防腐バームの分析は、古代のミイラ化が単一の物質に頼った処理ではなく、複数の材料と工程を組み合わせた実践だったことを示している。こうした知見は、映画に登場する葬祭道具や儀礼を、より具体的な物質文化として見るきっかけになる。
新作がこれらの研究成果を物語へ取り入れるかどうかは明らかではない。まず注目されるのは、フレイザーとワイズをはじめとする出演者の再集結を、Radio Silenceがシリーズ特有の冒険、ユーモア、ホラーへどう結び付けるかである。
元記事: Mummy 4 Filming Monday: Egyptian Embalming Was Precision Chemistry, Not Mythology
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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