【分析】米AMD、過去最高決算でも株価9%安 SpaceXマスク氏の「Nvidia一本化」宣言受け

2026年8月7日 01:01

印刷

記事提供元:Tech Times

Photo by Timothy Dykes on Unsplash

Photo by Timothy Dykes on Unsplash[写真拡大]

AMDは2026年第2四半期に過去最高の業績を記録したものの、イーロン・マスク氏が傘下企業の今後のAIインフラをNvidiaに一本化すると宣言したことで、株価が急落した。SpaceXはNvidiaと共同で、次世代AIラック「Vera Rubin NVL72」をベースとするAI衛星「Starmind」を開発しており、2027年初頭に試作機を打ち上げる計画だ。AI半導体市場におけるNvidiaの強い影響力と、AMDが直面するソフトウェアエコシステムの壁が改めて浮き彫りになった。

■AMDの好決算とマスク氏の「Nvidia一本化」宣言

AMDは8月4日火曜日の夕方、56年の歴史で最高となる四半期業績を発表した。過去最高の売上高、倍増したデータセンター部門の売上高、アナリスト予想を上回る業績見通しを示したにもかかわらず、同社の株価は8%以上下落した。イーロン・マスク氏が、上場企業となったSpaceXにとって初の決算説明会で、同氏の企業が今後、地上と軌道上のすべてのAIインフラを「Nvidiaに一本化する」と宣言したためだ。AMDの2026年第2四半期決算で示された数字の強さは、株価下落をいっそう際立たせた。

火曜日の夕方に行われたSpaceX初の四半期決算説明会での宣言は、AMDの好調な業績でもまだ覆せていない構造的現実を浮かび上がらせた。AI向けGPU市場では、過去最高の決算よりも、有力顧客による注目度の高い支持表明のほうが市場を大きく動かすという現実だ。時間外取引でAMDの株価は8.94%下落し、472.20ドル(約7万4600円、1ドル=158円換算)となった。一方、Nvidiaの株価は約2%上昇した。

タイミングは特に厳しかった。SpaceXの決算説明会が始まる数時間前、AMDは第2四半期の売上高が前年同期比50%増の115億ドル(約1兆8170億円)となり、過去最高を更新したと発表していた。データセンター部門の売上高は、2025年同期比107%増の67億2000万ドル(約1兆617億円)と、2倍以上に拡大した。非GAAPベースの1株当たり利益は、アナリスト予想の1.62ドル(約256円)に対し1.66ドル(約262円)だった。AMDは第3四半期の売上高を約130億ドル(約2兆540億円)と見込んでおり、市場予想の125億ドル(約1兆9750億円)を上回った。通常の評価基準で見れば、予想を大きく上回る好決算だった。

しかし、その成果は夕方には影を潜めた。CNBCのジム・クレイマー氏はXに、「イーロンが、Nvidia史上最大規模になるかもしれない注文を伴ってNvidiaに全面的に傾倒していなければ、昨晩のAMD株は上昇していただろう」と投稿した。

マスク氏は決算説明会で、「Vera Rubinアーキテクチャが最良のアーキテクチャだと考えているため、今後はNvidiaのみを基盤として構築することを決めた」と述べた。「われわれは、これが最良のAIコンピューターだと考えている。Nvidiaとの多方面にわたる緊密な協力関係とパートナーシップを非常に重視している。われわれはNvidiaに一本化する」。Tom's Hardwareが報じたSpaceXのこの方針表明により、多くの投資家がAMDの決算資料を読み終える前に、AMD株の時間外取引での上昇分は失われた。

AMDのリサ・スーCEOは、自社の決算発表で強気の見方を示した。「われわれはまだ、複数年にわたるAI導入サイクルの初期段階にあり、目の前にある機会は極めて大きい」とスー氏はAMDの公式決算声明で述べた。「われわれは、この機会を生かし、今後数年間に大きな成長を実現するうえで、非常に有利な立場にある」。CFOのジーン・フー氏は、データセンター部門の売上高が2026年後半にさらに加速するとの見通しを示した。

■Starmind衛星がNVL72相当のシステムを軌道上へ

マスク氏の宣言で技術的に最も重要だったのは、Nvidiaへの一本化そのものではなく、軌道上への展開計画だった。xAIはこれまで、Grok AIモデルの学習をすべてNvidia製ハードウェア上で実行しており、AMD Instinctチップを本番環境に導入したことはない。

マスク氏は、SpaceXとNvidiaが、低軌道上で大規模なAIワークロードを処理する衛星「Starmind AI1」のコンピューティングペイロードを共同開発していることを明らかにした。各Starmind衛星には、地上向けのNvidiaの旗艦ラック「Vera Rubin NVL72」を支えるものと同じRubin GPUとVera CPUが、軌道上向けに「最適化された」構成で搭載される。

マスク氏は投資家に対し、「Starmind AI衛星は、実質的に軌道上向けに最適化したVera Rubin NVL72コンピューターとなる。これは遠い未来の話ではなく、来年には打ち上げを始める見通しだ」と説明した。

SpaceXは2027年初頭に2基の試作AI1衛星を打ち上げ、その後、商用衛星コンステレーションを構築する計画だ。

■ケーブルレス設計が宇宙空間に適している理由

Vera Rubin NVL72が軌道上コンピューティングの有力な候補となる理由と、マスク氏が「標準的なラック方式の設計」よりも優れているとみる理由は、Nvidiaが地上での運用を想定して採用したアーキテクチャ上の判断が、宇宙空間でも思いがけない利点をもたらすことにある。

従来のNVL72世代であるGB200およびGB300システムでは、ラックごとに数千本の内部銅線ケーブルが必要だった。ケーブルの接続箇所はそれぞれ手作業で取り付ける必要があり、潜在的な障害箇所にもなっていた。1台のコンピューティングトレイの組み立てには約100分を要していた。

Vera Rubin NVL72では、これらをミッドプレーン方式の設計に置き換えた。コンピューティングトレイは、ブラインドメイトコネクターを介して、ラック全体にまたがる1枚の大型プリント基板ミッドプレーンに挿入される。内部のケーブル配線はなく、コンピューティングトレイ内にファンもない。組み立て時間は5分に短縮され、所要時間は従来の約18分の1となった。ジェンスン・フアン氏はCES 2026の基調講演で、この設計変更を商業上の中核的な強みとして強調した。

軌道上では、同じ特性が別の理由で重要になる。宇宙空間への展開では、打ち上げ後に手作業でケーブルを配線し直すことはできない。ファンの軸受け、コネクターの装着ミス、ケーブルハーネスの振動疲労といった機械的な故障要因を減らすことは、衛星にとって単なる利便性の問題ではなく、計画された運用期間を全うするための要件である。データセンター運用を簡素化するために設計されたケーブルレスのNVL72アーキテクチャは、結果的に軌道上のハードウェアに求められる条件とも合致している。

Starmind構想の規模は、さらに別の意味を持つ。Axiom SpaceやStarcloudなどの軌道上パートナー向けに開発されたNvidiaの「SPACE-1 Vera Rubin Module」は、1基当たり数個のRubinアクセラレーターを搭載する設計だ。一方、Starmind衛星には、1基当たり36基のVera CPUと72基のRubin GPUからなるNVL72相当のシステムを搭載し、毎秒260テラバイトの全対全通信に対応するNVLink 6ファブリックで接続する計画だ。GPU数はNvidiaのSPACE-1の6倍に相当する。

技術上の課題も大きい。完全なNVL72システムは、最初のAI1試作機で示された150キロワットの設計を大幅に上回る熱負荷を発生させる。宇宙空間では、廃熱を空気や水へ逃がすことはできず、専用パネルから赤外線として放射するしかない。SpaceXの液体式ラジエーター設計がNVL72クラスの熱出力に対応できるかどうかは、未解決の問題だ。

マスク氏も、ハードウェアを打ち上げて接続する作業は「地上に施設を建設するより難しいことが判明する可能性がある」と述べ、この課題を認めた。

■AMDの記録的数字が市場の評価を変えられなかった理由

過去最高の四半期決算にもかかわらずAMD株が下落した背景には、財務諸表だけでは捉えきれないAI向けGPU市場特有の構造がある。

AMDはAIアクセラレーター市場で、売上高ベースで約5~7%のシェアを持つ。Nvidiaのシェアは、測定方法やカスタムASICを市場規模に含めるかどうかによって異なるものの、約80~88%とされる。市場シェアがこれほど小さい挑戦者にとって、著名な顧客の獲得や、公の場で採用対象から外されることは、実際の取引規模以上に大きな象徴的意味を持つ。

AMDはこれまで、大規模な顧客コミットメントを積み上げてきた。OpenAIとはHeliosラックの展開に向けた6ギガワットの契約があり、MetaはAMD Instinctチップについて6ギガワット規模の導入を約束している。Anthropicは、AMDによる50億ドル(約7900億円)の株式投資と並行して、2ギガワット規模のHelios契約を発表した。MicrosoftもAzureへのHelios導入を約束している。Fierce Networkの分析によれば、いずれも大規模なギガワット級の注文だ。数字の上では、AMDが市場シェアの評価を変え得るペースでハイパースケール事業を獲得していることを示している。

しかし、これらの契約では、有力AI企業のCEOが決算説明会でAMDのプラットフォームを最良だと公言する場面は生まれなかった。マスク氏はNvidiaに対してそれを行った。

CUDAのソフトウェアエコシステムには、18年にわたって最適化されてきたライブラリ、延べ数百万開発者年分のコード、クラウドプラットフォームに深く組み込まれた導入ツールがある。この蓄積は、ハードウェアの仕様だけでは克服できない心理面と実務面の移行コストを生み出している。AMDのROCmプラットフォームは差を縮めつつあるが、エコシステムの隔たりは構造的なものだ。

Heliosは技術面で競争力を持つシステムだ。AMDは、NvidiaのRubin NVL72システムと比べて、1ドル当たりで処理できるトークン数が30%多いと主張している。オープン標準のUALinkとEthernetによる相互接続は、ハイパースケーラーに対し、NVLinkへの囲い込みを避ける選択肢も提供する。

こうした利点は、詳細なコストモデルに基づいて判断する調達部門にとって重要だ。しかし、一晩で株価を8%動かすような公の支持表明にはつながっていない。

■SpaceX自身の株価は決算日に上昇

SpaceXの第2四半期決算は、同社が6月に上場して以降、最も強い業績を示すものとなった。売上高はアナリスト予想の69億3000万ドル(約1兆949億円)に対し、78億1000万ドル(約1兆2340億円)だった。AIインフラ部門の売上高は予想の21億8000万ドル(約3444億円)に対し、25億6000万ドル(約4045億円)となった。

AIインフラ部門の売上高は、第1四半期の8億1800万ドル(約1292億円)の約3.12倍となった。これは、Anthropicによる月額12億5000万ドル(約1975億円)のコンピューティング利用契約が、ほぼ満額で売上高として認識されていることを裏付けるものだ。経営陣はまた、同社の24年の歴史で初めて、正式な通期売上高見通しを発表した。

SpaceX株(Nasdaq:SPCX)は8月4日の通常取引で9.4%上昇し、125.33ドル(約1万9800円)で取引を終えた。ただし、依然としてIPO価格の135ドル(約2万1330円)は下回っている。

SPCX株主にとって次の重要なイベントは8月6日木曜日に予定されている。この日、これまで売却を制限されていたインサイダー保有株約9億1150万株が売却可能となる予定で、株式市場史上最大規模の第1回ロックアップ解除となる。

■注目ポイントQ&A

●AMDが過去最高の四半期決算を発表したにもかかわらず、株価が8%下落したのはなぜですか?

イーロン・マスク氏がSpaceXの決算説明会で、SpaceXとxAIは今後、AIインフラを「Nvidiaに一本化する」と宣言し、Vera Rubinアーキテクチャを最良のAIコンピューティング基盤として挙げたためです。AMDのAIアクセラレーター市場における売上高シェアは約5~7%にとどまるため、有力顧客の動向が同社の株価に大きな影響を与えます。市場はマスク氏の発言を、AMDの勢いに対する象徴的な上限と受け止めました。AMDの売上高が50%増加し、データセンター部門の売上高が2倍以上になるなど、実際の業績が大きく伸びていたにもかかわらず起きた反応です。同じ市場心理は逆方向にも働き、Nvidia株は時間外取引で約2%上昇しました。

●Starmindとは何ですか?Nvidia独自の軌道上コンピューティング計画とどう違いますか?

StarmindはSpaceXが計画しているAI衛星群です。各衛星には、36基のVera CPUと72基のRubin GPUからなる、NvidiaのVera Rubin NVL72ラックと同等規模のシステムを低軌道上に搭載する設計です。SpaceXは2027年にStarmind AI1試作衛星の打ち上げを始める計画です。一方、Nvidia独自の軌道上モジュール「SPACE-1 Vera Rubin」は、1基当たり数基から十数基のRubin AIアクセラレーターを搭載する設計で、Starmindより小規模です。重要な技術課題は熱処理です。熱を放射パネルから逃がすしかない真空環境で、NVL72級の電力負荷を扱うことは、NvidiaがSPACE-1の仕様で公表している構成より大幅に難しい課題となります。

●NVL72のケーブルレス設計が宇宙空間での展開において重要なのはなぜですか?

NvidiaのVera Rubin NVL72は、数千本の内部銅線ケーブルをミッドプレーンのプリント基板に置き換え、コンピューティングトレイの組み立て時間を約100分から5分に短縮しました。宇宙空間では、手作業によるケーブル接続をなくすことで、打ち上げ後に修理できない故障要因を減らせます。具体的には、コネクターの装着ミス、ケーブルの振動疲労、ファンの軸受けの故障などです。ケーブルレスアーキテクチャはもともと地上のデータセンター運用を簡素化するために設計されましたが、軌道上での適性は同じ設計判断から生じた副次的な利点です。マスク氏が「標準的なラック方式の設計」よりNVL72を好むと述べたのは、このミッドプレーン方式を指しています。

●AMDが獲得しているギガワット規模の顧客コミットメントは、Nvidiaとの競争状況を変えませんか?

AMDは、OpenAIとの6ギガワット契約、Metaとの6ギガワット規模の契約、Anthropicとの2ギガワット契約と50億ドルの株式投資、Microsoft AzureやOracleでの導入など、大規模なコミットメントを確保しています。これらは実際のインフラ需要を示しており、大手AI事業者がNvidiaへの単一ベンダー依存に代わる選択肢を求めていることを示しています。

ただし、契約上のコミットメントと実際の導入は同じではありません。18年にわたって蓄積されたCUDAエコシステムにより、学習ワークロードにおけるソフトウェアの移行コストは依然として構造的な障壁となっています。この問題は、ハードウェアの仕様や巨額の契約だけではまだ完全に解消されていません。AMDのROCmプラットフォームは差を縮めつつありますが、マスク氏の宣言が持った象徴的な重みは、事業の基礎的条件とは別に、ブランドをめぐる評価が市場認識を大きく左右していることを示しています。これは投資助言ではありません。

元記事: SpaceX Commits Exclusively to Nvidia, Unveils Starmind: AMD Falls 9% on Record Quarter

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード

関連記事