オートバックスも出資する中国・奇瑞の新軽EV「Emta」、2027年後半の日本発売に向け9月から公道試験を開始

2026年7月22日 18:15

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記事提供元:Tech Times

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中国の奇瑞汽車(Chery)が技術支援する新たな軽EVブランド「Emta」が、横浜市に研究開発(R&D)センターを正式に開設した。同ブランドを展開するシンガポールのEMTは、2026年9月から日本国内の公道でプロトタイプによる走行試験を開始し、2027年後半の発売を目指す。しかし、同車が採用する高度なソフトウェア定義車両(SDV)アーキテクチャは、中国の「国家情報法」に基づくデータ提供義務という地政学的リスクを日本の消費者のガレージにもたらす可能性が指摘されている。

■横浜にR&Dセンターを開設、9月から公道テストへ

2026年5月に立ち上げられた奇瑞汽車(Chery)支援の軽EVブランド「Emta」が、横浜市に研究開発(R&D)センターを正式に開設し、同年9月から日本の公道でのプロトタイプ走行試験を開始する。この節目は一見、企業のありふれた定例行事のように思えるが、実際はそうではない。走行性能のOTA(Over-the-Air)アップデート、エンドツーエンドのAI運転支援、シート位置を記憶するスマートフォン連携など、Emtaの技術的な魅力を支えるソフトウェア定義車両(SDV)アーキテクチャは、同時に中国の「国家情報法」が中国・蕪湖(奇瑞の本拠地)から日本の消費者のガレージへと及ぶ経路でもある。この法律の影響は、シンガポールの持株会社を挟んだとしても免れるものではない。

Emtaは、シンガポール登録の合湾会社であるエレクトリック・モビリティ・テクノロジー(EMT)が、2029年までに日本国内で4車種の電気軽自動車を販売するために立ち上げたブランドである。このコンソーシアムは5つの株主によって構成されている。奇瑞汽車と江蘇悦達汽車集団(Jiangsu Yueda)がそれぞれ27.27%、日本国内に約1,200店舗を展開するカー用品最大手のオートバックスセブンが18.18%、中国の車載電池メーカーである国軒高科(Gotion High-Tech)が18.18%、そして産業機器メーカーのアネスト岩田が9.09%を出資している。奇瑞汽車は技術プロバイダーとして、車両アーキテクチャ、電動パワートレイン、そしてEMTが「Magic Drive」として販売する「Falcon」ブランドの先進運転支援システム(ADAS)を供給する。

■エンドツーエンドAI「Falcon」と日本の型式指定の壁

奇瑞汽車は「Falcon」について、カメラやセンサーからの生入力をニューラルネットワークが直接処理して意思決定を行う「エンドツーエンドの大規模モデル」システムであると説明している。例えば、高速道路での車線変更の際、このモデルは直接ステアリング角度を出力する。カメラ映像を一度記号的な表現に変換してからルールを適用するという中間ステップは存在しない。このアーキテクチャこそが、中国の最新ADASが中国国内でテスラの「FSD(Full Self-Driving)」に対抗できる実力を備えている理由である。しかし同時に、これが日本の認証プロセスにおいて本質的な障害となる原因でもある。

日本の車両型式指定の枠組みである「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(TRIAS)」は、決定論的な安全検証を前提に構築されている。ルールベースのシステムであれば、定義された条件下でシステムが制限範囲内で動作する理由を技術者が明示的に証明できる。しかし、ニューラルネットワークの意思決定ロジックを明示的に説明することは不可能である。そのため、TRIASの下で検証を行うには、日本の道路環境、交通パターン、道路標識に合わせた広範な実証テストを日本国内で重ねる必要がある。奇瑞のFalconシステムは、欧州連合(EU)のサイバーセキュリティおよびソフトウェアアップデート認証の取得を含め、海外市場で45億キロメートル以上のインテリジェント走行実績を積み重ねてきた。しかし、それらは日本の道路での実績ではなく、EUでの認可が日本の型式指定の取得を保証するわけではない。

9月に予定されているプロトタイプ試験プログラムは、まさにこのギャップを特定するために設計されている。EMTの横浜センターは、日本の公道で日産サクラなどの競合EV軽自動車をベンチマークとし、Magic Driveシステムがこれまで遭遇したことのない環境下での動作を検証する。9月のテスト開始から、2027年後半に予定されている発売までは18ヶ月しかない。中国メーカーのエンドツーエンドADASシステムが日本国内で承認された前例がない中、このスケジュールは極めてタイトである。

■EmtaのSDVアーキテクチャ「Magic」システムの特徴とコスト構造

Emtaの「Magic」システムは、4つの連携技術で構成されている。1つ目は「Magic SDV」で、インフォテインメントだけでなく、加速特性、回生ブレーキの調整、航続距離の最適化といった走行性能にまで及ぶOTAアップデートを可能にする完全なSDVプラットフォームである。これは現在の軽自動車セグメントの基準から大きく踏み出したものだ。日産サクラは、納車から半年後に走行フィールが変わるようなソフトウェアアップデートは受信しないが、Emtaはそれを行う。2つ目は「Magic Sync」で、スマートフォンの連携を担う。近接アンロックやドライバーごとのシート・空調プロファイルの設定を行い、車両と所有者のモバイルデバイスを常時接続する。Emtaのシステムに同期されたすべての連絡先データは、奇瑞のコネクテッドカーエコシステム内に保存されることになる。

3つ目は「Magic EV」で、日本の軽自動車規格(全長3.4メートル、全幅1.48メートル)を満たすように設計された軽専用のハードウェアプラットフォームである。これにはV2H(Vehicle-to-Home)およびV2L(Vehicle-to-Load)の双方向充電機能が含まれる。災害時の停電などに役立つV2H機能は、防災意識の高い日本市場において特に響く仕様である。4つ目は、前述のエンドツーエンドのレベル2 ADASである「Magic Drive」だ。EMTは「日本における最高水準」を目指すとしており、テスラのFSDを意識した表現を用いているが、センサー数や搭載チップ、学習データの出所などの具体的な仕様は公表していない。

この高度な技術を軽自動車として競争力のある価格で提供できる背景には、明確な経済合理性がある。奇瑞のFalcon ADASの開発コストは同社のグローバルラインアップ全体で回収されるため、Emtaがゼロから開発コストを負担する必要がない。また、国軒高科のLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーセルは、世界で最も安価な中国の製造コストで供給される。しかし、この低価格を実現するアーキテクチャこそが、データに関する懸念を生む原因でもある。OTAアップデートの通信経路は単なる機能の一部ではなく、システムそのものだからである。

■中国「国家情報法」の適用とデータプライバシーの懸念

2017年6月に採択された中国の「国家情報法」第7条は、「いかなる組織及び市民も、法に基づき国家情報活動を支持し、これに協力し、これと協調しなければならない」と規定している。この義務は、奇瑞汽車を含むすべての中国企業に適用される。企業の組織構造やプライバシーポリシー、サーバーの物理的な所在地によってこの義務が免除されることはない。奇瑞の技術はEmtaの心臓部であり、同社は法的に中国のインテリジェンス要求に協力する義務を負っている。

関連する法的な枠組みとして、さらに3つの法律が存在する。2017年に制定され、2026年1月に大幅な改正が施行された「サイバーセキュリティ法」は、政府によるデータアクセス規定を設け、ネットワーク事業者に対してサイバーセキュリティや犯罪捜査への協力を義務付けている。また、2021年制定の「データセキュリティ法」は重要なデータカテゴリをカバーし、国境を越えたデータ移転の安全評価を義務付けている。さらに、2021年制定の「個人情報保護法」および「自動車データ安全管理に関するいくつかの規定」は、コネクテッドカーが収集するデータのカテゴリを具体的に規制している。

Emtaが収集するデータのうち、これらの法律の対象となるものは何か。Magicシステムの公表されている機能に基づくと、GPSの位置履歴やルートデータ(Magic Drive)、OTA最適化のために送信される走行挙動のテレメトリ(加速、ブレーキ、エネルギー消費)、Magic Syncを介して同期されたスマートフォンの連絡先や利用パターンなどが該当する。さらに、音声アシスタント機能が音声起動式である場合(未確認)、車内の音声データも対象となる可能性がある。また、モデル改善のために送信されるソフトウェアのテレメトリも含まれる。

Emtaはまだ発売されていないため、第三者による独立したセキュリティ監査は行われていない。しかし、過去にPlaxidityXが実施したセキュリティ調査では、2023年型のBYD「Atto 3」において、GPSの位置履歴、連絡先、アプリの履歴が暗号化されずに保存されており、工場出荷状態にリセットした後でもネットワーク侵入なしにアクセス可能であることが判明している。BYDは国際的な規制当局からサイバーセキュリティ規格「R155」およびソフトウェアアップデート管理規格「R156」の認証を取得しており、これは奇瑞が欧州市場向け車両で取得しているものと同じである。これらの認証は企業が自社のサイバーセキュリティ慣行をどのように管理しているかを規定するものであり、中国の国内法が課す義務を無効化することはできない。

消費者がデータ露出を制限するための現実的な対策としては、車両を自宅のネットワークから分離すること、Magic Syncで同期するデータを最小限に抑えること、音声コマンド機能を常に録音されている可能性があるものとして扱うことなどが挙げられる。しかし、これらの対策も構造的な法的義務を完全に解決することはできない。なぜなら、この義務は技術的な脆弱性ではなく、中国法の適用下で事業を行う上での前提条件だからである。

■日本のCEV補助金制度改定による影響

EMTはまだ日本のクリーンエネルギー自動車(CEV)導入促進補助金を申請していないが、2026年4月に改定された経済産業省のCEV補助金制度の枠組みから、その結果を予測することができる。新たな基準では、経済安全保障推進法に基づくバッテリーサプライチェーンの安定性や、日米間のレアアース合意への準拠などが評価に組み込まれた。これにより、BYDの1台あたりの補助金は従来の35万〜45万円から一律15万円に減額された一方、トヨタの「bZ4X」は上限の130万円を維持した。その差額は1台あたり115万円に達する。

EMT'sのコンソーシアムには、BYDと構造的に類似したサプライチェーンを持つ2つの中国メーカーが含まれている。国軒高科がLFPバッテリーセルを供給し、江蘇悦達汽車集団が中国の塩城工場で車両を製造する。経済産業省が同様の評価基準をEmtaに適用した場合(公表されている基準はBYDだけでなくすべての申請者に適用される)、EMTが購入者に提供できる補助金も同様の減額処分を受ける可能性が高い。国軒高科のバッテリーを搭載し、江蘇悦達が製造する車両が130万円の満額補助金を受けられるとする見方は、経済産業省が示している評価ロジックとは整合しない。

オートバックスセブンの日本国内における資本力やサービスネットワーク、そしてアネスト岩田による品質サポート体制は、インフラや信頼性のカテゴリーにおいて一定の評価を得る可能性がある。しかし、その評価がトヨタとの差を埋めるのに十分であるかは検証されていない。EMTは補助金の申請スケジュールを明らかにしていない。

■車両スペックと競合モデルとの比較

Emtaの第1弾モデルとなるボックス型ハッチバック(社内コード「#01」)は、全長3.4メートル、ホイールベース1.96メートルで、奇瑞の「QQアイスクリーム」と同等のサイズであり、日本の軽自動車規格に適合している。国軒高科製のLFPバッテリーを搭載し、WLTCモードでの航続距離は155〜220kmとなる見込みだ。これは日産サクラの公称180kmと同等だが、2025年9月に発売されたホンダの「N-One e:」の295kmには及ばない。

日本市場における初の海外製電気軽自動車となるBYDの「Racco」は、2026年夏または秋に約250万円で発売される予定である。EMTはガソリン車の軽自動車と同等の価格帯を目指しており、ホンダの「N-Box」(174万〜248万円)がその比較対象となる。しかし、補助金の適用状況が店頭での実質的な購入価格に大きく影響する。もしEmtaがBYDと同様に15万円の補助金にとどまる場合、国産の軽EVに対する価格面での優位性は大幅に縮小することになる。

ADASに関しては、奇瑞のFalconアーキテクチャと日本で認可されているシステムとの間には、未検証の大きな隔たりが存在する。中国メーカーのエンドツーエンド型ニューラルネットワークADASが日本の型式指定を受けた例はまだない。2026年9月のプロトタイプ走行試験は、認証に必要な検証データを生成するためのものだが、Falconを日本の道路環境に適合させるためにどれほどの再調整が必要になるかは、技術的な未解決課題である。

コネクテッド機能やエコシステムの成熟度についても、中国製コネクテッドカーの海外ユーザーからは、日本語ドキュメントの不足や中国国外でのメーカーサポートの対応の遅さに対する不満が報告されている。EMTの横浜センターは、ローカライズ、日本語ドキュメントの整備、日本基準の品質保証を担当することで、まさにこの問題に対処するために設立された。しかし、この体制は立ち上がったばかりであり、大規模な運用における実力は未知数である。

自動車業界で40年以上のキャリアを持ち、長安フォードの社長などを歴任したEMTの何暁慶(He Xiaoqing)CEOは、5月のブランド発表会で記者団に対し、「これは日本の消費者に向けた新しいブランドであり、人々の生活をより豊かで快適にするものだ」と語った。その志は本物だろう。9月のプロトタイプ走行試験から2027年後半の市場投入までの開発スケジュールが、その目標を予定通りに達成できるかを左右することになる。

EMTの最高技術責任者(CTO)であり、R&D部門の責任者を務める山本光二氏は、日本の自動車メーカーが技術を量産移行する前にどのように評価するかについて、深い知見を持っている。山本氏は日産自動車において、EV開発プログラムやコネクテッドカー・自動運転部門を率いた経歴を持つ。このバックグラウンドは、奇瑞の中国におけるADAS技術と、日本の厳しい認証要求との間の架け橋となる上で、極めて重要な役割を果たすと期待されている。

■購入を検討するユーザーのための判断基準

2027年にEmtaの購入を検討する日本の消費者は、価格の安さだけでは解決できない4つの側面を評価する必要がある。1つ目は、既存の軽EVに対する優位性だ。走行性能のOTAアップデート、エンドツーエンドのAI運転支援(認可された場合)、V2H/V2L双方向給電、スマートフォン連携など、日産サクラや三菱「eKクロス EV」にはない先進機能を備えている。2つ目は、既存モデルに及ばない点だ。ホンダ「N-One e:」の295kmに及ばない航続距離、ADASの日本での型式指定、日本国内でのアフターサービスの実績、および競争力のある補助金の適用状況などが未確定である。

3つ目は、エコシステムがもたらすコスト、すなわちデータプライバシーのリスクである。奇瑞のコネクテッドカーインフラとの継続的なデータ接続は、中国政府のインテリジェンス要求への協力を義務付ける中国法の適用下にある。この義務は、Magic Syncの連絡先同期機能を使用するかどうかや、奇瑞のプライバシーポリシーを信頼するかどうかに関わらず適用される。4つ目は、リスクを軽減する要素だ。オートバックスセブンの1,200店舗に及ぶサービスネットワークは、BYDの小規模なディーラー網に対して明確なインフラ上の強みであり、海外ブランドを所有する際の心理的ハードルを下げる。また、シンガポールの持株会社構造はデータ関連法の盾にはならないものの、商業的な紛争において日本の法的手続きが適用されることを意味する。さらに、アネスト岩田との品質サポート提携は、自動車会社としては異例だが、製造品質保証に対する真摯な取り組みを示唆している。

9月のプロトタイプ走行試験は、次の重要な判断材料となる。Magic Drive ADASが日本の公道でスムーズに検証され、経済産業省の型式指定が予定通りに進めば、Emta #01の2027年発売は現実味を帯びてくる。しかし、検証プロセスで課題が見つかり、Falconの大幅な再学習が必要になれば、発売スケジュールは遅れることになる。その場合、2028年に登場予定のホンダの電気自動車版「N-Box」が市場に投入され、国産ブランドとの競争優位性が失われる可能性もある。

■注目ポイントQ&A

●Emtaの軽EVは日本のCEV補助金を全額受けられますか?

満額(130万円など)の受給は難しいとみられます。2026年4月に改定された経済産業省のCEV補助金制度では、経済安全保障推進法に基づくバッテリーサプライチェーンの安定性などが評価基準に加わりました。Emtaは中国の国軒高科(Gotion)製バッテリーを採用し、中国の江蘇悦達(Yueda)で生産されるため、BYDと同様に補助金が15万円程度に減額される可能性があります。

●中国政府がEmtaの車両データにアクセスすることは可能ですか?

構造上、その可能性は否定できません。中国の「国家情報法」(2017年)第7条は、すべての中国企業に対し国家のインテリジェンス活動への協力を義務付けています。技術提供元であり27.27%の株主でもある奇瑞汽車(Chery)はこの法律の適用対象です。EmtaのSDVアーキテクチャは奇瑞のインフラと常時接続されるため、プライバシーポリシーやシンガポール法人という構造に関わらず、法的なデータ提供義務が生じる可能性があります。

●Emtaの「エンドツーエンドADAS」は従来のシステムと何が違いますか?

Emtaの「Magic Drive」は、カメラやセンサーの生データをニューラルネットワークに直接入力して制御コマンドを生成する「エンドツーエンド」のAIシステムです。これに対し、現在日本で認可されている軽EV(日産サクラなど)は、ルールベースのシステムを採用しています。エンドツーエンドAIは意思決定プロセスを明示できないため、日本の型式指定(TRIAS)の認可を得るには、日本の道路環境での広範な実証テストが必要となります。

●Emtaの発売時期や航続距離、価格はどのようになりますか?

第1弾モデル「#01」は2027年後半の発売を目指しています。WLTCモードでの航続距離は155〜220kmとなる見込みで、日産サクラ(180km)と同等ですが、ホンダのN-One e:(295km)を下回ります。価格はガソリン車の軽自動車(ホンダN-Box:174万〜248万円)と同等水準を目指していますが、補助金の減額幅によっては実質的な購入価格が高くなる可能性があります。

元記事: Emta Kei EV Opens Japan R&D Center as Chery’s Intelligence Law Obligation Holds

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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