中国EV上半期は13%減速、生存競争激化で黒字は3社のみ――4割の電池コスト優位性を武器に輸出急増

2026年7月9日 18:42

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記事提供元:Tech Times

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中国乗用車協会(CPCA)の速報データによると、2026年上半期の中国における新エネルギー車(NEV)の小売販売台数は前年同期比13%減と落ち込んでいる。国内市場の冷え込みが進むなか、中国のEVメーカー各社は生き残りをかけ、圧倒的なバッテリーのコスト優位性を武器に海外市場への輸出を急増させている。本稿では、激化する生存競争とグローバル市場への影響を解説する。

■国内市場の減速と補助金縮小の影響

中国乗用車協会(CPCA)が発表した速報データによると、2026年上半期(1〜6月)の中国国内における新エネルギー車(NEV)の小売販売台数は473万4000台にとどまり、前年同期比で13%減少した。6月単月でも前年同月比7%減の103万7000台と落ち込んでいる。一方で、工場が在庫を輸出チャネルへと回したことで、卸売台数は22%増加した。これらの数字は、世界最大のEV市場が構造調整局面に入っているという、多くのアナリストの予測を裏付けるものとなった。

この市場縮小の直接的な要因は明確である。中国政府は2026年初頭から車両購入税の免税措置の段階的廃止を開始しており、さらに2027年1月1日からは、電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、レンジエクステンダー、燃料電池商用車を対象とする残りの年間税制優遇措置をさらに削減することを決定した。削減される優遇額は年間約360〜660元(約8,150〜14,950円、1元=22.65円換算)と絶対額としてはわずかだが、消費者心理が冷え込んでいる価格に敏感な市場においては、こうした小さなインセンティブの削減であっても購入を先送りするのに十分な影響を与えている。

■乱立するEVブランド、黒字化はわずか3社のみ

優遇措置の縮小は、すでに財務的に不安定な状態にあった業界を直撃している。米コンサルティング会社アリックスパートナーズが2026年6月25日に発表した「グローバル自動車業界アウトルック」によると、中国に30社以上あるNEV特化型メーカーのうち、2025通期で黒字化を達成したのはBYD(比亜迪)、Xiaomi(シャオミ)、Leapmotor(零跑汽車)のわずか3社のみであった。同社は、2030年までに損益分岐点に達するのはこれら30社のうち計7社にとどまると予測しており、半数以上が今後10年以内に黒字化できず、経営破綻や買収を通じて淘汰が加速するとみている。

アリックスパートナーズのアジア太平洋地域自動車部門リーダーであるスティーブン・ダイヤー博士は、「収益性はもはや規模の大きさだけで決まるのではない。組織の効率性、製品サイクルの適応スピード、そしてデザイン、エンジニアリング、商業化をいかに効果的に統合できるかが重要になっている」と指摘する。この分析は、調査会社ウッドマッケンジーのリサーチアナリスト、アラシア・ジャン氏が「市場は、販売量の拡大だけでは収益性を維持できない、より構造的な競争フェーズに入っている」と述べた見解とも一致する。

業界の財務的な脆弱性は以前から指摘されていたが、2026年上半期のデータはその深刻さを浮き彫りにした。中国自動車販売店協会(CADA)の自動車在庫警告指数は6月に57.2%に達し、警戒ラインを上回った。多くのディーラーが上半期の目標を達成できなかったと報告している。XPeng(小鵬汽車)の何小鵬CEOは2025年末に「2026年はさらに残酷で血みどろの戦いになる」と警告していたが、小売現場にとってその予測は現実のものとなっている。

■40%のバッテリーコスト優位性が支える輸出急増

国内での利益率低下に直面した中国の自動車メーカーは、生産の矛先を海外に向けている。アリックスパートナーズの予測によると、中国ブランドの2026年の輸出台数は、2025年の710万台から41%増となる約1000万台に達する見通しだ。これは単に国内の不振に対する一時的な戦術ではなく、欧米のメーカーが現状では模倣できないバッテリーのコスト構造を中国メーカーが確立しているからこそ、構造的に可能となっている。

その優位性の核心は、リン酸鉄リチウム(LFP)電池の採用と「セル・ツー・パック(CTP)」技術にある。BYDやCATL(寧徳時代)をはじめとする中国メーカーは、LFPバッテリーのパックコストを1キロワット時(kWh)あたり約64〜76ドル(約10,430〜12,390円)にまで抑えている。これに対し、欧米の自動車メーカーが主に採用している三元系(NMC)バッテリーのコストは96ドル(約15,650円)以上とされる。マッキンゼーの分析によると、バッテリーパックは車両製造コストの30〜40%を占めるため、このコスト差は中型車において2,000〜4,000ドル(約32.6万〜65.2万円)の店頭価格の差に直結する。

このコスト差を生み出す技術革新が、セル・ツー・パック設計だ。従来のEVバッテリーパックは、セルを個別のモジュールに収めてからパックに組み立てるため、重量や体積、材料コストが増加していた。BYDが2021年に実用化した「ブレードバッテリー」は、細長いLFPセルをパック構造に直接組み込むことでモジュールケースを排除し、体積エネルギー密度を向上させると同時に部品点数を削減した。CATLも同様のセル・ツー・パック設計を製品ライン全体に展開している。マッキンゼーの推計によれば、これにより中国勢は欧米の競合に対して25〜40%の製造効率上の優位性を得ているという。

さらに、垂直統合がこの優位性を強固にしている。BYDは正極材の製造から車両の組み立て、充電インフラに至るまで自社でコントロールしている。国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、こうした統合を行っていないメーカー(中国国外から調達している欧州メーカーなど)は、人件費やエネルギーコスト、原材料費の高さから、同等のバッテリー部品に対して15〜30%高いコストを支払っている。

■世界シェアの7割を握る中国製バッテリー

SNEリサーチのデータによると、CATL単体で2026年1〜5月の世界のEVバッテリー搭載シェアの40.2%を占めている。世界トップ10のバッテリーサプライヤーのうち7社が中国企業であり、合計で世界市場シェアの72.6%を支配している。IEAの「グローバルEVアウトルック2026」は、中国が世界のバッテリーセル生産の80%以上を占め、LFP正極材の供給をほぼ独占していると指摘する。学術誌『World Electric Vehicle Journal』に2026年3月に掲載されたモンテカルロ・シミュレーションによると、中国の生産量が30%減少した場合、深刻な世界規模のバッテリー不足が発生する確率は92%に達すると推計されている。

■1000万台の中国車はどこへ向かうのか

輸出急増の目的地は、比較的オープンな貿易政策を維持している市場に集中している。ブルームバーグがまとめた税関データによると、2026年4月の中国のEV輸出は前年同月比で2倍以上に増加し、アジアが最大の輸出先となり、欧州、中南米がそれに続いた。タイでは、中国ブランドが4年前の1桁台のシェアから乗用車販売の約5分の1を占めるまでに急成長し、日本車の牙城を崩しつつある。中南米では、BYDがブラジルとアルゼンチンに工場を建設中である。

欧州は依然として最大の主戦場だ。欧州連合(EU)は、中国製BEVの輸入に対して通常の10%の関税に加え、BYDに17%、吉利汽車(Geely)に18.8%、上海汽車(SAIC)に35.3%の相殺関税を課している。しかし、こうした関税障壁があるにもかかわらず、アリックスパートナーズは、現地生産の開始などにより、中国ブランドが2031年までに欧州市場で17%のシェアを獲得すると予測している。BYDはハンガリーのセゲドに欧州初の製造工場を建設しており、2026年第4四半期の生産開始を目指している。

欧州や東南アジアの自動車メーカーへの競争圧力は直接的だ。中国メーカーを輸出へと駆り立てているバッテリーのコスト構造こそが、関税コストを一部吸収したとしても、アグレッシブな価格設定を可能にしている理由だからである。これまで中国市場を確実な収益源として依存してきたドイツ、日本、韓国の自動車メーカーは、中国国内での収益減少と、自国・周辺市場での競争激化という二重の苦境に直面している。

■グローバルサプライチェーンへの波及

中国市場の減速がもたらす影響は、完成車の販売台数にとどまらない。テスラの世界最大の生産拠点であり、世界月間納車台数の半分以上を占めるギガファクトリー上海は、サプライチェーン構造の分析によると、部品の90%以上を中国の現地サプライヤーから調達している。中国国内需要の長期的な低迷によって部品サプライヤー全体の工場稼働率が低下すれば、これらサプライヤーの価格設定や納期に影響が及ぶ可能性がある。

同様のリスクは、中国で合弁事業を展開する欧州の自動車メーカーや、世界的なバッテリーサプライチェーンにも及ぶ。IEAの2025年のデータによると、中国のバッテリー価格は北米向けより30%、欧州向けより35%安い。中国製部品の安定した価格設定を前提にEV計画を構築してきた企業は、需要の縮小、過剰生産能力、そして利益を削り合う価格競争が同時に進行し、サプライヤーの価格設定が激変する市場での舵取りを迫られている。

■2026年後半も回復の兆しは見えず

2026年後半に入っても、明確な回復の起爆剤は見当たらない。2027年1月の減税措置縮小はすでに市場の予測に織り込まれており、過去の補助金移行期のパターンから、削減直前の数ヶ月間に駆け込み需要が発生するとみられるが、これは2027年初頭の需要を先食いするだけにすぎない。CPCAの崔東樹事務局長は7月、「市場は第3四半期に徐々に安定し、第4四半期には成長軌道に戻るだろう」と述べたが、これは業界団体の楽観的なシナリオに基づいた見通しである。

構造的な回復には、中国の本格的なマクロ経済の改善か、EVを対象とした新たな政府の刺激策が必要だが、現時点でその予定はない。中国政府は2026〜2030年の「第15次5カ年計画」において、EVを戦略的新興産業の優先リストから除外しており、これは政府が同セクターを、継続的な特別支援なしで競争できる成熟した産業とみなしていることを示唆している。

投資家、サプライチェーン関係者、そして中国事業を評価する自動車メーカーにとって、2026年上半期のデータは厳しい現実を突きつけている。世界最大のEV市場は淘汰のフェーズに入り、持続的な黒字を確保できているのは数十あるブランドのうちわずか3社のみである。そして、圧倒的なバッテリー技術のコスト優位性に裏打ちされた中国勢の猛烈な輸出攻勢は、進出先となるあらゆる市場の既存メーカーにとって、構造的かつ長期的な脅威となりつつある。

■注目ポイントQ&A

●EVの普及率が過去最高を記録しているにもかかわらず、なぜ2026年の中国のEV販売台数は減少しているのですか?

小売販売台数と普及率(シェア)の違いによるものです。2026年6月の小売市場におけるNEV普及率は乗用車全体の62.8%と過去最高を記録しましたが、これはEV需要以上にガソリン車の販売が急速に崩壊しているためです。6月の乗用車全体の小売台数は前年同月比21%減の165万1000台と大きく落ち込んでおり、市場全体が縮小するなかでNEVがシェアを伸ばしている状態です。前年同期比13%減という数字は、普及率ではなく「販売台数(ボリューム)」そのものが減少していることを示しています。

●実際に黒字化している中国のEVブランドはどこですか?また、なぜ多くの企業が生き残れないのですか?

2025年通期で完全に黒字化を達成したのは、BYD、Xiaomi、Leapmotorの3社のみとされています。黒字化への障壁は構造的なものです。中国のEV市場は極めて激しい価格競争にさらされており、多くのブランドが似たような技術やデザインを採用しているため、価格以外での差別化が困難になっています。車両製造コストの30〜40%を占めるバッテリーにおいて、垂直統合や規模のメリットを活かしてコストを抑えられるメーカー以外は、利益を削り取られてしまいます。2030年までに損益分岐点に達するのはわずか7社と予測されており、半数以上が淘汰される見通しです。

●中国国内のEV市場の減速は、欧州や東南アジアの自動車購入者にどのような影響を与えますか?

より安価な中国製EVがこれらの市場に大量に流入することになります。中国メーカーは、LFP電池やセル・ツー・パック設計、垂直統合されたサプライチェーンにより、欧米の競合に対して25〜40%のバッテリーコスト優位性を持っています。欧州では追加関税が課されているものの、中国メーカーはハンガリーなどで現地生産を進めて関税の影響を回避しようとしています。関税の低い東南アジア(タイなど)では、すでに中国ブランドが乗用車市場の約5分の1のシェアを獲得しています。

●中国のサプライヤーから購入していない世界の自動車メーカーにとって、中国のバッテリー独占はどのような意味を持ちますか?

構造的な供給依存リスクを意味します。中国企業7社が世界のEVバッテリー搭載シェアの72.6%を握り、セル生産の80%以上、LFP正極材供給のほぼすべてを中国が支配しています。中国国外から調達するメーカーは、高い人件費や原材料費により、中国国内の価格より30〜35%高いプレミアムを支払うことになります。LFPバッテリーのサプライチェーンを中国以外で構築するには多額の投資と数年単位の期間が必要であり、新規参入する欧米メーカーは、CATLやBYDのような製造経験を蓄積するまで、歩留まりの低さや自動化の遅れに直面することになります。

元記事: China EV Sales Slide 13% in H1 2026: Only 3 Brands Profitable as Export Push Soars

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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