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J&J、米FDAがデュアルエネルギー心筋焼灼カテーテルを承認――パルス電界(PFA)の限界克服へ

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ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、高周波(RF)とパルス電界(PFA)の2つのエネルギー源を1つのデバイスで切り替えられる心筋焼灼カテーテル「Dual Energy THERMOCOOL SMARTTOUCH SF(DE STSF)プラットフォーム」について、米食品医薬品局(FDA)から承認を取得した。この承認は、従来のPFA単独カテーテルでは技術的に回避できなかった「肺静脈外での治療時における周囲組織への損傷リスク」という課題に対処するものとして注目されている。米国では今夏から段階的な商業展開が開始される予定だ。
■2つのエネルギーを1本に:デュアルエネルギー化が求められた背景
心房細動は米国で推計1000万〜1200万人、世界全体では5000万人以上が罹患している最も一般的な持続性心不全不整脈であり、多くの患者が十分な治療を受けられていないとされる。カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)は、不整脈の原因となる心臓組織を微小に破壊する低侵襲治療であり、抗不整脈薬治療単独よりも再発率や心不全リスクを大幅に低下させることが大規模試験で示されている。
今回の承認以前は、医師は治療開始前に「高周波(RF)アブレーション」か「パルス電界アブレーション(PFA)」のいずれか一方を選択しなければならなかった。伝統的なRFアブレーションは、カテーテル先端から交流電流を流して熱を発生させ、異常な電気経路を遮断する。一方、新しい非熱的技術であるPFAは、マイクロ秒単位の高電圧パルスを照射して心筋細胞膜に不可逆的な微細孔を開ける(エレクトロポレーション)。PFAは、隣接する食道や横隔神経、冠動脈などの組織を傷つけずに心筋細胞を選択的に破壊できる安全性が最大の強みであり、大規模レジストリ「MANIFEST-17K」でも極めて低い合併症率が報告されている。
しかし、PFAには「肺静脈の外側(伝導組織や冠動脈の近くなど)を治療する際、組織選択性の優位性が低下し、損傷リスクが高まる」という未解決の課題があった。DE STSFカテーテルの開発プログラム「SmartfIRE」の査読済み分析論文(Europace 2025年発表)でも、同プラットフォームが「PFA単独使用時の限界(伝導組織や冠動脈付近での治療の困難さやリスク)を克服すること」を目的に設計されたと明記されている。デュアルエネルギーカテーテルは、PFAの組織選択性がリスクに変わる局面において、実績のあるRFアブレーションへと切り替える確実な代替手段を提供する。
■プラットフォームの仕組みと臨床実績
DE STSFプラットフォームは、J&Jの既存の灌流型コンタクトフォース(接触圧)センサー搭載カテーテル「ThermoCool SmartTouch SF」と、医師の選択に応じてRFまたはPFエネルギーを出力できる新型ジェネレーター「TruPulse」を組み合わせたものである。カテーテル自体の物理的構造(灌流機能やセンサー、先端形状)は従来と変わらないが、TruPulseジェネレーターがRF回路に加えてパルス電界回路を搭載している。さらに、マッピングシステム「CARTO 3」の画面上には、パルス電界の病変形成度を定量化する独自の「PF Index」と、RF用の「RF SURPOINT Index」が統合された3Dマップとして表示される。
この統合の技術的意義は大きい。カテーテル先端と心筋組織の接触圧をリアルタイムに測定するコンタクトフォース技術により、医師はエネルギー(RFまたはPF)を照射する前に適切な接触を確認できる。接触圧フィードバックと両方の病変インデックスを統合マッピング環境で提供するシングルカテーテルシステムは、これまで存在しなかった。これにより、医師は各焼灼ポイントが基準を満たしているか確認しながら治療を進めることができ、RF単独システムと同等の予測可能性と再現性をPFA治療でも実現できる。
今回のFDA承認の臨床的根拠となった「SmartfIRE」初期臨床試験では、薬物抵抗性の症候性発作性心房細動患者149人を対象に欧州の複数施設で実施された。2024年5月にEuropace誌で発表された3カ月時点の中間結果では、急性期の治療成功率は100%、初回肺静脈隔離率は96.8%を達成し、食道や横隔神経、冠動脈などへの副次的損傷は観察されなかった。また、2025年の欧州不整脈学会(EHRA)で発表され、その後にEuropace誌に掲載された12カ月データでは、推奨されたワークフローを遵守した患者において86.9%の有効性が示されている。
■急速に進化する競合環境とJ&Jの立ち位置
今回のFDA承認により、J&Jは急速に変化する市場での競争に参入する。メドトロニックの「Affera」システム(Sphere-9カテーテル)は2024年10月にFDA承認を取得しており、同様にPFAとRFを1台で統合したデバイスとされている。しかし、Sphere-9は広範囲を一度に治療する「シングルショット」モデル向けに設計された大型システムであり、J&JのDE STSFが採用する「ポイント・バイ・ポイント(点状)」のアプローチとは構造が異なる。
また、DE STSFの直接的な競合となるアボットの「TactiFlex Duo」は、2026年1月に欧州でCEマークを取得し、米国でも臨床試験(FLEXPULSE IDE)の症例登録を完了してFDAの審査中である(米国では未承認)。
この競争において、J&Jの最大の強みは「ThermoCool SmartTouch SF」がすでに米国で100万件以上の症例実績を持つという圧倒的な導入基盤にある。医師は新しいカテーテルの操作方法をゼロから学ぶ必要がなく、既存の「CARTO」システムをそのまま利用できるため、導入のハードルが極めて低い。
心臓電気生理学(EP)カテーテル市場は、高齢化に伴う心房細動患者の増加とPFA技術への信頼向上を背景に、年率10%台半ばから後半のペースで急成長している。世界市場規模は2025年時点で約61億ドル(約9943億円、1ドル=163円換算)と評価され、2035年には176億ドル(約2兆8688億円)に達すると予測されている。
■今夏に米国で発売、安全性への配慮も継続
J&Jは今夏から米国で段階的な商業展開を開始し、最初の症例治療が行われる予定である。なお、欧州では2026年6月25日に先行して発売されている。
J&JのPFA技術を巡っては、肺静脈隔離用のシングルショットPFAカテーテル「VARIPULSE」において、2025年1月に商業利用初期の患者132人中4人に神経血管イベントが発生したため、米国で一時的に使用が停止された経緯がある。その後の調査で、過剰な照射回数や肺静脈外への適用が原因と判明し、使用説明書を改訂した上で2025年2月に治療が再開された。この事例は、PFAの適用が単純な肺静脈隔離から複雑な症例へと拡大するにつれ、肺静脈外でのエネルギー照射をいかに安全に管理するかが臨床上極めて重要であることを示しており、まさに今回のデュアルエネルギー設計が解決を目指す課題そのものである。
DE STSFのSmartfIRE試験データでは、これまでのところ食道や横隔神経などの副次的損傷は報告されておらず、12カ月時点での有効性も示されている。ただし、1年を超える長期的な予後データや、PFA単独システムとの直接比較試験(デュアルエネルギーの柔軟性が患者の予後改善にどう寄与するかを検証するもの)は現時点ではまだ発表されておらず、今後の研究課題として残されている。
■注目ポイントQ&A
●パルス電界アブレーション(PFA)と高周波(RF)アブレーションの違いは何ですか?なぜ両方が必要なのですか?
高周波(RF)アブレーションは、カテーテル先端から熱(50℃以上)を発生させて心筋組織を凝固壊死させます。一方、パルス電界アブレーション(PFA)は、熱を使わずに高電圧の電気パルスで心筋細胞膜に微細な穴を開けて細胞を消滅させます。PFAは心筋細胞を選択的に破壊できるため、近くにある食道や横隔神経などの重要組織を傷つけにくいというメリットがあり、一般的な心房細動治療(肺静脈隔離)に適しています。しかし、伝導組織や冠動脈の近くなど、複雑な部位を治療する際にはPFAでも損傷リスクが高まるため、長年の実績があるRFアブレーションの方が適している場合があります。1本のカテーテルでこれらを切り替えられることで、医師は症例の状況に応じて最適なエネルギーを選択できます。
●すでにメドトロニックの「Affera」が両方のエネルギーを統合していますが、J&Jの新型デザインは何が違うのですか?
メドトロニックのAfferaシステム(Sphere-9カテーテル)もPFAとRFの両方を出力できますが、こちらは広範囲を一度に治療する「シングルショット」モデルに近い大型の球状カテーテルです。これに対し、J&JのDE STSFは、1点ずつ緻密に治療を行う「ポイント・バイ・ポイント(点状)」方式を採用しています。また、DE STSFは全米で100万件以上の実績がある既存の「ThermoCool SmartTouch SF」の操作感や「CARTO」マッピングシステムをそのまま引き継いでいるため、医師が新たな操作技術を習得することなく、スムーズにデュアルエネルギー治療を導入できる点が異なります。
●「SmartfIRE」臨床試験ではどのような結果が出ていますか?また、どのような課題が残されていますか?
薬物抵抗性の発作性心房細動患者149人を対象としたSmartfIRE試験では、3カ月時点で急性期治療成功率100%、初回肺静脈隔離率96.8%を達成し、食道や横隔神経などの重篤な合併症は発生しませんでした。また、12カ月時点のデータでは、推奨ワークフローを遵守した患者において86.9%の有効性(不整脈の非再発率)が確認されています。一方で、1年を超える長期的な有効性や、持続性心房細動に対する効果、さらにはPFA単独システムと比較して実際に患者の治療成績が向上するかどうかについては、まだデータがなく今後の研究課題となっています。
●心房細動の患者にとって、この新しいカテーテルはすぐに利用できるようになりますか?
米国では今夏から段階的な導入が始まりますが、すぐにすべての医療機関で利用できるようになるわけではありません。臨床試験では発作性心房細動に対する安全性と有効性が示されており、特に複雑な症例において医師の治療選択肢を広げるものとして期待されています。カテーテル治療を検討されている患者様は、通院先の医療機関でどのようなシステムが導入されているか、またご自身の病状や心臓の構造にデュアルエネルギー治療が適しているかについて、主治医(不整脈専門医)にご相談ください。
元記事: J&J Wins FDA Approval for Dual-Energy Ablation Catheter That Solves PFA’s Main Limit
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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