相場展望1月23日号 株式相場は「決算発表イベント」へ移行 「見失ってはいけない現実/日本・中国・米国」

2023年1月23日 10:08

印刷

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)1/19、NYダウ▲252ドル安、33,044ドル(日経新聞より抜粋
  ・1/19発表の週間の米新規失業保険申請件数が市場予想に反して減少し、労働市場の強さを示した。米景気の減速感が強まるなかでも、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが続くとの警戒感から売りが出た。
  ・新規失業保険申請件数は19万件と、前週20.5万件から減少した。市場予想を下回り、労働需給が逼迫しているとの見方が意識された。FRBは賃金インフレが長引くことを警戒しており、金融引締めの長期化で景気が一段と冷え込むとの観測が広がった。
  ・消費関連株が売られ、ホームセンターのホームでデポ、クレジットのアメックスが安い。工業製品・事務用品のスリーエムや建機のキャタピラーなど景気敏感株も下げた。ネット通販のアマゾンや電気自動車のテスラが下落した。半面、医療保険のユナイテッドヘルスなどディフェンシブ株の一角は買われた。

【前回は】相場展望1月19日号 日銀の独り相撲から、何が生まれるのか? 日本も物価急伸で、家計負担が急増

 2)1/20、NYダウ+330ドル高、33,375ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーラー理事が1/20の講演で、「次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)のでは+0.25%の利上げを望む」と述べた。前回の+0.50%からの利上げ幅縮小を明言し、株買いを促したとの指摘があった。
  ・動画配信のネットフリックスは有料契約者の増加幅が市場予想を大きく上回り、好感した買いが膨らみ急伸し、ハイテク株を中心に買いが優勢となり3営業日ぶりに反発。1万2,000人の人員削減を発表したグーグルの親会社アルファベットも買われた。顧客情報管理のセールスフォースやクレジットのアメリカン・エキスプレスも高い。

●2.米国株:市場が次に注目するイベントは「決算発表シーズン入り」と「債務上限問題」

 1)株式相場の次のイベントは「決算発表シーズン」
  ・2022年度とQ4(10~12月期)の決算発表シーズンを迎える。決算発表で、その内容と記者会見での様子が、株価に反映されやすく、注目される。
  ・米銀行は、金利上昇による利ざや拡大による利益増と、融資先の懸念からの貸倒れ引当金増で利益減少リスクにさらされている。そのため、株価のボラティリティが高まりやすいシーズンとなりやすい。好決算発表期待で株価に既に織込んでいた銘柄は、材料出尽くしで売られるケースもある。また、予想を上回る決算であれば、株価上昇のきっかけともなる。
  ・今までは、FRBの利上げ・上げ幅縮小などの観測のイベントで株価が乱高下していたが、次のイベントである「決算発表シーズン」を迎え、株式市場の流れが転換することになりやすいので、注意したい。

 2)米政府デフォルトのリスク「債務上限問題」
  ・米政府の債務上限は、連邦政府が借入れできる上限額のことで、法律によって定められている。(共同通信)
  ・1/19に上限に達し、財務省は半年程度で資金が枯渇すると警告した。
  ・新たな国債を発行できなければ、債務不履行に陥る可能性がある。
  ・したがって、債務上限額を変更するために、政権は野党との協議をして合意する必要に迫られることになる。現在のバイデン政権は民主党であり、下院議会の多数派は野党・共和党であるため、「債務上限問題」は、ねじれ議会では常に政争の種となりやすい。

 3)米国経済の減速を警戒と、中国コロナ感染ピークアウトでのインフレ再燃に注目
  ・米景気は金利上昇の影響で景気拡大から減速に向かっている。したがって、米企業の1株当たり利益の低下が気になるところである。 
  ・ただ、中国リオープン(経済再開)で中国による燃料需要増加期待もあり原油先物は81ドルに上昇、世界の銅の約半分を中国が消費する銅価格も上昇している。このことから、中国発のインフレ再燃にも注目が必要と思われる。

 4)今週の注目イベント
  ・1/24  1月米製造業・サービス業PMI
       ユーロ圏製造業・サービス業PMI
  ・1/26  10~12月米・国内総生産(GDP)
  ・1/27  12月米個人消費PCEコアデフレーター 予想は前年比+4.4%と鈍化

●3.米・先週分新規失業保険申請件数は19万件と予想21.4万件を下回る(フィスコ)

 1)前回は20.5万件。

 2)労働市場の逼迫を証明し、金利上昇でドル売りが後退

●4.米12月住宅着工件数は138.2万戸で、予想135.8万戸を上回った(フィスコ)

●5.米グーグル、約1万2,000人の人員削減を発表、世界の社員数の約6%(NHK)

●6.ウォーラーFRB理事、バランスシート縮小ペース減速はGDP比▲10~▲11%で(ロイター)

●7.タカ派ウォーラー理事、次回会合で+0.25%の利上げを支持(フィスコ)

●8.サマーズ氏、米国がインフレと闘う手を緩めれば、1970年代の景気後退へ(ブルームバーグ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)1/19、上海総合+15高、3,240(亜州リサーチより抜粋
  ・中国景気の持ち直しの期待が高まる流れとなった。
  ・国際通貨基金(IMF)のゴピナート筆頭副専務理事は1/18、「中国経済は第2四半期以降に急回復する可能性がある」との見解を示した。
  ・中国人民銀行(中央銀行)の資金供給もプラス。人民銀は1/19に4,670億元を市中に供給した。今週に入り、連日で大量資金を市中供給している。
  ・春節(旧正月)連休を週末に控え、資金逼迫を避ける狙いだ。
  ・ただ、全体としては動意を欠く。
  ・本土市場は週明け1/23~27が休場とあって、様子見ムードも漂っている。
  ・業種別では、ITハイテクの上げが目立ち、医薬品・素材・エネルギー・証券が上昇。半面、酒造・食品・農業関連・銀行保険・公益・自動車は売られた。

 2)1/20、上海総合+24高、3,264(亜州リサーチより抜粋
  ・前日までの好地合を継ぐ流れとなった。
  ・中国のリオープン(経済再開)が進展、当局の経済重視スタンスが支えとなっている。週末から始まる春節連休(本土は1/23~27休場)を前に、資金逼迫を避けるために、中国人民銀行(中央銀行)は多額の資金を連日で市場に供給している。1/16~20の1週間で、供給規模は2兆450億人民元(約38兆8,280億円)を記録。週間ベースで過去最大を更新している。銀行の最優遇貸出金利は予想通り前月から据え置かれたが、これに対する市場の反応は限定されている。
  ・業種別では、通信キャリアの上げが目立ち、発電・エネルギー・素材・インフラ・運輸・ハイテク・自動車・銀行保険が買われた。半面、証券・食品・酒造が冴えない。

●2.中国・上海市は、2022年実質経済成長率は前年比▲0.2%だったと発表(日経新聞)

 1)厳格なゼロコロナ政策で経済が停滞した上海市のマイナス成長は1978年以降で初めて。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)1/19、日経平均▲385円安、26,405円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株安を受け、東京市場でもリスクを回避する売りが出た。円安進行も投資家心理の重荷となった。
  ・米国で1/18に発表された12月小売売上高などの経済統計は軒並み予想を下回った。景気減速懸念が高まり、米主要株価指数は軒並み下落。東京市場でも投資家のリスク回避姿勢が高まり、半導体や自動車株に売りが出た。
  ・為替市場でも円高・ドル安が進んだ。円高進行に伴い株価指数先物に機械的な売りが出て、現物株に波及し、日経平均の下げ幅は一時▲400円を超えた。
  ・日銀の金融政策決定会合の結果を受け、前日に日経平均は大幅に上昇したため、利益を確定する売りにも押された。
  ・市場では「3月決算企業の4~12月期決算の発表を控え、国内機関投資家を中心に下値を拾う動きは限られた」との指摘も聞かれた。
  ・一方、インバウンド(訪日外国人)需要の回復期待から空運や百貨店株は上昇した。1/18発表の12月の訪日外国人客数が137万人と、前年同月の1万2,084人から大幅に増加したのが材料視された。
  ・三菱自・マツダが▲5%余り下落、日産自・SUBARU・板硝子・ソフトバンクGも大きく下げた。半面、高島屋・三越伊勢丹・Jフロント・資生堂・イオンが上昇した。

 2)1/20、日経平均+148円高、26,553円(日経新聞より抜粋
  ・中国が新型コロナを抑え込む「ゼロコロナ」政策の終了により景気が上向くとの期待感が支えとなった。同日のアジア株が総じて上昇したことも投資家心理を上向かせた。
  ・業種別では、中国経済の回復期待を背景に鉄鋼・空運・海運など景気敏感株の上昇が目立った。
  ・岸田首相が1/20、新型コロナの感染症法上の扱いを巡り季節性インフルエンザと同じ「5類」へ今春に移すよう指示したことも、国内経済の支援材料になるとの見方につながった。
  ・朝の寄り付きは前日の米株安から下げて始まったが、売り一巡後は下落幅を縮小した。市場では「足元で大きく動いていた為替市場の落着きを確認したことで、買いを入れやすくなったことに加え、新型コロナの5類移行も前向きに捉えられた」との声。
  ・ANA・郵船・日本製鉄・三越伊勢丹・ダイキン・エーザイ・住友鉱・東京海上・大成建が高く、エムスリー・日東電工・キッコーマンは売られた。

●2.日本株:金利上昇と円高⇒「決算発表シーズン入り」と相場は転換へ

 1)日経平均の流れも米国と同様に、替わりつつある
  ・金利上昇・円高⇒「決算発表シーズン」で業績相場に替わりつつある。
  ・日本でも、新型コロナ禍⇒インフルエンザ並の「5類」へ移行の動き。
  ・中国経済も、ゼロコロナ政策撤廃による感染爆発で景気不透明⇒リオープン(経済再開)へと移行で、世界経済への好循環期待が高まる。
  ・米国では、インフレ率上昇⇒インフレ率鈍化、金利の急上昇⇒金利低下で、米株式相場は反発している。
  ・欧州では、景気後退懸念⇒景気回復期待が高まり、欧州株価も上昇している。
  ・日本株式市場は、日銀による「実質利上げ問題がくすぶっている」ため不透明感がぬぐえない。ただ、中国株をはじめアジア株の反発も受け、戻り基調にある。それだけに、決算発表シーズンにおける企業の発表に注目したい。日本の決算発表のカナリヤといわれる安川電の決算内容は好調であったため、相場上昇に期待感が増す。ただ、市場予想を下回った企業の株価の下落率が高いのが気になるところである。

 2)楽観的な「期待感」に注意
  ・日銀の1/18金融政策決定会合で、大規模金融緩和「継続」と12/20の事実上の金利引上げへの緊張が和らいだ。
  ・中国の新型コロナ感染爆発⇒ピークアウト観測で、中国経済リオープンへの期待が高まってきた。
  ・中国株式の上昇は、期待感の高まりと中国人民銀行による市場への巨額資金供給の影響が反映されており、その吟味が必要と思われる。

 4)見失ってはいけない現実「日本」
  ・日銀による金利引上げは始まったばかり。金利の上昇は避けられない。黒田総裁が始めた大規模金融緩和とゼロ金利政策は、自ら解消への道筋をつけることなく、次期総裁の課題に転嫁したに過ぎない。頑固な黒田総裁が作って放置して残す負の遺産は、いずれ解消を求められる。

  ・2013年春に日銀総裁に就任した黒田総裁は、黒田バズーカ砲と呼ばれた『異次元金融緩和で「2年で2%の物価上昇を目標」を掲げ邁進した』。その黒田バズーカ砲は市場に3回撃った。
   1発目 2013年04月 「量的・質的金融緩和」
   2発目 2014年10月 「量的・質的金融緩和の拡大」
   3発目 2016年04月 「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」
   その後、特段の金融政策は示さず、頑なな姿勢で変更なく「7年間継続」した。

 ・そして、日銀は目標未達成のまま、黒田日銀は就任以来10年もの歳月が過ぎた。結果は、2022年9月末で国債発行残高1,060兆円のうち、日銀が保有する日本国債は536兆円と、5割を超える膨大な残高となった。これだけの異次元の巨額資金を投入しても、『物価目標2%は達成不可』であった。黒田総裁は10年の歳月を掛けても結果を残せなかったことになる。もちろん、政府による消費増税など日銀が足を引っ張られることはあった。

  ・皮肉なことに、米国の金利引上げとロシアのウクライナ侵略で、日本の物価は黒田総裁の施策とは全く違う要因で日銀目標の2%を達成し、4%に急伸した。

  ・そして、世界的金利上昇の流れのなかで、日本も金利上昇を避けられなくなった。       金利が1%上昇すると▲28兆円、2%上昇で▲52兆円、5%上昇で▲108兆円もの「含み損」が今後、発生すると試算。(日銀副総裁の発言)今や、日本はインフレ率4%で上昇過程にある。日本のインフレ率抑制策は、検討さえされておらず、金利引上げは待ったなしで訪れるだろう。その際、衆銀総選挙を意識した、急激な金利引上げ実施を日銀に求める可能性がある。

  ・因みに、2023年度の国の予算規模は114兆円程度が予定されている。日銀崩壊のリスクがいずれ浮上する。

  ・その際は、日本経済と国民への大きな負担が待っている。「検討使」の岸田首相は課題解決を直視するか? 先送りで次期首相に投げるか?

 5)見失ってはいけない現実「中国」
  ・春節を控え中国人民銀行による1週間で約38兆円もの過剰流動性増加をした。日本流に置き換えると約380兆円の資金供給に匹敵する規模である。いくら、日本のGDPの2.5倍である中国GDPといえども、巨額である。「ゼロコロナ政策」への不満で「白紙運動」が起こり、それを抑え込むための方策の1つとして理解すると判らなくもない資金供給である。中国共産党による1党独裁を死守する一環と思われる。「白紙運動」のメインメンバーが拘束されているという報道もある。それだけに、春節終了後の中国人民銀行による市中からの資金回収に注意したい。

  ・中国の春節による人流拡散で、農村部において新異種が発生するリスクがある。また、本当にピークアウトしたかどうかデータ公表に恣意性があるため、慎重に確認する必要がある。現在、報道されている「ピークアウト」観測には、注意深く見る必要があると思われる。

 6)見失ってはいけない現実「米国」
  ・米国のインルレは収束していない、真っただ中にいる。米国のインフレ率の上昇率が鈍化してきただけで、依然として高水準にある。FRBはインフレ退治のため金利を上げてインフレを抑え込もうとしているが、FRB高官発言にもあるように「金利上昇幅は縮小ながらも、金利上昇過程にある」ことには間違いなく、誤認しないようにしたい。FRBの「金利低下」による景気刺激策への転換では、決してない。

 7)決算シーズン入りで業績相場に転換する可能性に注目
  ・「金利引上げ相場」⇒「決算発表シーズン相場」に移行。

●3.黒田・日銀総裁、政策変更なしと示唆、41年ぶり+4.0%と高インフレ後も(ブルームバーグ)

 1)12月全国消費者物価指数(生鮮食料品除くコアCPI)は前年同月比+4.0%上昇。

●4.日本の2022年貿易収支は▲19兆9,713億円の赤字、過去最大=財務省(ロイター)

 1)12月の輸出は前年比+11.5%増、輸入は前年比+20.6%だった。 

 2)貿易赤字「稼ぐ力」弱まる日本。(産経新聞)
  貿易収支、今年は赤字縮小も、海外景気減速で黒字転換は見通せず。

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします) \

 ・2801 キッコーマン   業績堅調。
 ・4307 野村総研     業績堅調。
 ・5929 三和       業績好調。
 ・9468 KADOKAWA   業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

記事の先頭に戻る

関連キーワード

関連記事