相場展望10月13日号 NYダウは10/13発表のCPIを控え、「立ちすくみ」 日米金利差拡大⇒円安進行、日銀「投機筋が円安 を主導」と責任転嫁

2022年10月13日 11:39

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)10/10、NYダウ▲93ドル安、29,202ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウは前週末までの3営業日で▲1,000ドル余り下げたため、短期的な戻りを期待した買いも入ったが、買いの勢いは続かなかった。
  ・米連邦準備理事会(FRB)による積極的な金融引締め継続への警戒が根強く、米景気の減速で企業収益が悪化するとの懸念も重荷になり、売り優勢となった。
  ・ハイテクなど高PER(株価収益率)銘柄は、前週の長期金利上昇で相対的な割高感が意識された。10/7にバイデン政権が中国を念頭に半導体の先端技術の輸出規制強化を嫌気し、半導体関連株の下げも目立ち、ナスダック総合指数は年初来安値を更新した。
  ・今週は10/13に9月米消費者物価指数(CPI)の発表が予定され、週後半から米主要企業の決算発表も本格化する。これらの内容を見極めたい投資家も多い。
  ・セールスフォース・マイクロソフト・インテルが下落、メルク・ボーイングが上昇。

【前回は】相場展望10月10日号 米労働需給が逼迫&賃金上昇でインフレ止まらず⇒まだまだ金利上昇⇒株価下落リスク高まる

 2)10/11、NYダウ+36ドル高、29,239ドル(日経新聞より抜粋
  ・NYダウは前日までの4営業日で▲1,100ドルほど下げていたため、短期的な戻り期待で反発し+400ドル余り上昇する場面もあったが、取引終了にかけて伸び悩んだ。
  ・10/12に9月米卸売物価指数(PPI)、10/13に米消費者物価指数の発表を控え、様子見姿勢が強まった。市場予想を上回る上昇となれば利上げ観測の高まりから株価は一段安となる公算が大きいが、市場予想を下回れば一時的に買い直されそうだ。発表後の相場の反応が読みにくく、積極的な売買は手控えられた。
  ・バイオ製薬のアムジェン+6%高、小売のウォールマートやスポーツ用品のナイキが高い。長期金利上昇で割高感が意識されたハイテクが売られ、セールスフォースが▲2%安、マイクロソフトやアップルが下げた。
  ・ハイテク株の多いナスダック総合は、連日で年初来安値を更新した。
交流サイトのメタプラとフォームズ、動画配信のネットフレックスの下げが目立ち、半導体関連株の連日売られた。

 3)10/12、NYダウ▲28ドル安、29,210ドル(日経新聞より抜粋
  ・10/13発表の米9月消費者物価指数(CPI)を控えて様子見姿勢が強いなか、インフレの高止まりへの警戒感から売りがやや優勢となった。
  ・朝方発表の米9月卸売物価指数(PPI)は前月比+0.4%上昇と、伸び率は市場予想+0.2%を上回り、インフレ圧力の強さを示したと受け止められた。物価指数として、より重視されるCPIの内容を見極めたいとして、積極的な買いが見送られた。
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)が午後に公表した9月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨では、参加者がインフレを「依然として受入れがたいほど高い」との認識を共有していたことが明らかになった。当面の利上げ継続を示唆する、ほぼ想定通りの内容と受け止められた。
  ・米債券市場で長期金利が朝方に一時3.97%と、前日終値3.95%から上昇した後、低下に転じた。株式の相対的な割高感が薄れるとみて、高PER銘柄が買い直され、NYダウは一時+200ドルを超える場面もあったが、買いは続かなかった。
  ・個別銘柄では、ウォルマート・ホームデポなどの消費関連株の一角が下落した。銀行のJPモルガンチェース・コカコーラ・バイオ製薬のアムジェンが買われた。
  ・ハイテク株比率が高いナスダック総合は、3日続けて年初来安値を更新した。

●2.米国株:NYダウはCPI発表を10/13に控え、前2営業日は「立ちすくみ」状態

 1)NYダウは、10/13の消費者物価指数(CPI)発表前の手控えで「立ちすくみ」 
  ・NYダウは10/4~10までの4日続落で▲1,114ドル下落。
  ・「反発のタイミング」だが、10/11~12の2営業日で+8ドル上昇も、▲1,114ドル下落に対する自律反発の「アヤ戻し」というより「10/13発表予定の米9月消費者物価指数の見極めのための
売買手控えで横ばい」の模様。その要因は、
   (1)長期金利が上昇。  
   (2)反発の勢いが弱い。
   (3)7~9月決算発表で企業業績の下方修正が多数でると予想。
  ・国際通貨基金(IMF)、米国2022年経済成長率+2.3%⇒+1.6%に下方修正

 2)なによりも、市場は10/13発表の「消費者物価指数(CPI)」を見極めるスタンスが濃厚

 3)米9月生産者物価指数は+8.5%で、FRBに積極的利上げの圧力継続
  ・11月も+0.75%の利上げが濃厚となり、インフレ抑制に時間がかかると示唆したと受け止めるのが正解のようだ。

●3.米9月生産者物価指数(PPI)は前年比+8.5%、予想8.4%・8月+8.7%(フィスコ)

 1)コアPPIは前年比+7.2%、予想+7.3%・8月+7.3%

●4.ダイモン氏の米株弱気相場シナリオ「過酷だが想像を絶するものにあらず」(ブルームバーグより抜粋

 1)JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は、SP500がさらに▲2割の価値を失っても驚きではないという。年金は圧迫されるだろうが、過去の前例から大きく逸脱しないと歴史は物語っている。

 2)「さらに▲20%」の下落が生じると、弱気相場に陥る結果になる。SP500が概ね2,900に下落すると、1月高値を▲39%下回る。これは顕著な下げではあるが、ドットコム・バブル崩壊や世界金融危機の比ではない。ダイモン氏のシナリオは、SP500が2018年ピークに概ね相当する。

 3)しかし、これまでの強気相場の強さを踏まえれば、過去10年間の年間上昇率は約+7%に低下するだけだ。これは長期平均と一致する。

●5.米クリーブランド連銀総裁、数十年ぶりの高インフレ退治に利上げ継続(ブルームバーグ)

●6.ゴールドマンS、「クレディスイスは1.3兆円の資本不足に直面」(ブルームバーグ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)10/10、上海総合▲50安、2,974(亜州リサーチより抜粋
  ・国内景気の先行き不安が強まる流れとなり、4/28以来の心理的節目の3,000を割込む。
  ・10/8公表の中国9月非製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.3となり、市場予想54.4と前月55.0から低下し、景況判断の分かれ目となる50を4カ月ぶり割込んだ。
  ・国慶節の大型連休(10/1~7)に、国内で新型コロナの新規感染者数が大幅増も負担。
  ・10/16開催の5年に1度の中国共産党大会を前に、行動規制強化の懸念も高まった。
  ・米国の対中国圧力も警戒。バイデン米政権は10/7、中国向けの新たな半導体輸出規制を発表したこともあり、指数は徐々に下げ幅を広げた。
  ・業種別では、半導体の下げが目立ち、消費関連も安い。エネルギーは上昇。

 2)10/11、上海総合+5高、2,979(亜州リサーチより抜粋
  ・買戻しが優勢となる流れとなったが、中国経済の不透明感から上値は限定された。
  ・国慶節連休をきっかけに、国内では新型コロナの新規感染者数が増加している。
  ・10/16開幕の5年に1度の中国共産党大会の前に、行動規制が強化される恐れがある。
  ・人民元安の進行もマイナス材料。米利上げペース加速の見方が強まるなか、米10年債利回りは上昇の勢いを増し、対米ドルで人民元は元安で推移している。
  ・業種別では、発電・電力設備の上げが目立ち、証券も高い。不動産・医薬品は安い。

 3)10/12、上海総合+45高、3,025(亜州リサーチより抜粋
  ・中国の景気テコ入れ期待が高まる流れとなった。
  ・国際通貨基金(IMF)など国際機関や投資銀行などが中国の経済成長見通しを相次ぎ下方修正するなか、「当局は景気支援の動きを強める」との見方が広がった。
  ・そのほか、年に1度の中国共産党大会が週末10/16に開幕するとあって、「政府は重要イベントの前に株価を安定させる」との思惑も一部で浮上した。
  ・景気懸念や新型コロナ感染再拡大などを嫌気した売りが先行し、下げ幅を広げて推移していたものの、後場途中からプラスに転じた。
  ・業種別では、ITハイテク関連の上昇が目立ち、保険・証券株・自動車も高い。

●2.中国共産党大会前に中国でコロナ感染拡大、地方政府は対策に躍起(テレ朝より抜粋

 1)中国では共産党大会を前に新型コロナ感染が拡大し、感染者が出ていない山西省の街や内モンゴル自治区のフフホトでも外出禁止措置・市内への車の乗り入れ禁止がとられるなど対策は厳しさを増している。10/10には50日ぶりに全国感染者が5千人を超えた。  

 2)広東省では10/9、中国で初めて感染力が極めて強いオミクロン株の派生型「BA.5.1.7」が検出された。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)10/10、祝日「スポーツの日」で休場
 
 2)10/11、日経平均▲714円安、26,401円(日経新聞より抜粋
  ・前週末発表の9月米雇用統計が労働需給の引締りや、平均時給の高止まりを示し、米連邦準備理事会(FRB)が大幅な利上げを続けるとの見方が改めて広がり、下落。
  ・香港などアジア株安も投資家心理の重荷になり、日経平均は午後に入って下げ幅を▲700円超まで拡大した。
  ・米政権による中国への半導体輸出の規制強化を受けて東エレクなど半導体関連が下落。
  ・米長期金利の上昇につれて、エムスリーなどグロース(成長)株にも売りが強まった。
  ・新型コロナの水際対策の緩和を受けて百貨店や、陸運株は上昇した。
  ・もっとも、中国本土では新型コロナの感染再拡大が伝わっており、「中国からのインバウンド(訪日外国人)需要回復はまだ織込めない」との見方から、関連銘柄も上値では利益確定売りに押された。
  ・ファストリ・ファナック・アドテスト・日本電産が下落、日産化・高島屋が上昇。

 3)10/12、日経平均▲4円安、26,396円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米ハイテク株安を受け、値嵩の半導体関連株を中心に売りが優勢だった。反面、米株価先物が堅調に推移したことが支えになり、上げに転じる場面も多かった。
  ・10/11の米フィラデルフィア半導体株(SOX)は▲2.5%安となり、東京市場での半導体関連株の売りを促し、東エレク・アドテストの2銘柄で日経平均を▲69円押し下げた。
  ・日経平均は10/11までの2営業日で▲900円超下落していたため、自律反発を見込んだ買いが入りやすく、下げ幅は限定的で、円安も投資家心理に一定の支援材料となった。
  ・スクリン・三菱自・太陽誘電が下落、7&I・イオン・サッポロ・ファストリが上げた。

●2.日本株:円安は日米金利差が拡大を放置の結果、黒田・日銀は「円安犯人を投機筋」に責任転嫁したいようだが?

 1)日米長期金利(10年利回り)と円/ドルの推移
         1/4    4/1    10/12  1/4~10/12
   日本    0.085%  0.215   0.246   +0.161
   米国    1.647%  2.382   3.904   +2.257
   日米金利差 1.562%  2.167   3.658   +2.096
   円/ドル   115.77円 122.38  146.86

  ・年初から10/12まで、日米金利差の拡大が、円安の推進役であることが明確である。
  ・為替の投機筋は、利益を求めて先回りした動きにしか過ぎない。為替は、各国間の金利差や交易条件などファンダメンタルズ比較で決まる。投機筋は、為替の「振幅を大きくする」ことしかできない。

 2)黒田・日銀総裁は、世界の会合で「超金融緩和の継続」の話しかしていない。為替市場に向かって円安進行しないような配慮ある発言は全くといってよいぐらいない。つまり、市場との対話ができていない。だから、講演や記者会見での発言のたびに、「円安」の急伸となって振れている。黒田発言が、投機筋を「円安」に動くように煽っているとしか思えない。

 3)そもそも、「円安」の功罪を分かっていないのではないだろうか。今年の春、黒田総裁は「円安は経済に良い」「物価高は受入れられている」と発言して、世間からひんしゅくを受けた。確かに自動車など一部輸出企業は円安効果で利益がでる。しかし、輸入資材が高騰してコスト高の要因にもなり、手放しに喜べない。まして、庶民の生活にとっては、食糧自給率の低さからみても、円安は家計を圧迫するのは明確である。黒田総裁は、買い物は奥様に任せていると公言していたが、庶民の生活を知る必要もない高級国民ならではの発言である。

 4)最近は、「急激な円安は悪影響」(時事通信)の発言もあったが、同時に「超金融緩和は継続する」と記者会見で述べて、10/12は147円に急伸したように、為替市場との会話はできていない。

 5)円安に振れる大きな要因の1つに、「キャリートレード」がある。日本の銀行から低利融資を受けて、「円売り・ドル買い」して米国に資金送金をして高い金利を得るという運用がはびこっている。また、生保などが米国債投資をしているが、これも「円売り・ドル買い」の要因である。これらを、放置している限り「円安を止められない」。

 6)最近、財務省が2.8兆円を使って為替介入したが、昨日現在でその時点からさらに円安が進んでおり、当初目標の効果を得られていない。この件について、日銀の為替介入への協力は、報道されていない。財務省の為替介入は、為替投機家を儲けさせただけである。為替投機家の利益は、そっくり「日本の国富の喪失」であり、「国民負担の増加」でもある。財務省・日銀は、「円安」の功罪と「手法」を考えていただきたい。米国政権の財務長官は、「ドル高が良い」と政権が変わっても代々、言い続けている。

 7)岸田政権は、世界と日本にばら撒き政策に邁進しているが、日本の財政赤字が急膨張している。つまり、日本のファンダメンタルズが悪化し続けている。為替投機筋にとって、格好の「円売り」要因となっている。外交で財政支援をするのも結構だが、貿易収支が悪化するなか、中長期でリターンが日本に環流するような仕組みであるべきである。そのような戦略を、岸田首相から聞きたいものである。

 8)日本株市場の外国人投資家は、10/11~12に小幅ながら売越し転換に注意。

●3.企業動向

 1)日産   ルノーが持つ日産の株式比率を43⇒15%に引下げることを軸に協議(NHK)
 2)日産   ロシア事業撤退へ、ウクライナ侵攻長期化で(共同通信)

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)

 ・1963 日揮    業績好調。
 ・3086 Jフロント  業績好調。
 ・4911 資生堂    業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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