2018年自動車の宿題【3】 1.コンプライアンス 2.品質管理軽視の経営 3.EV化の流れ

2018年12月29日 18:19

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■3.EV化の流れ

 「自動車会社はEVを作ることだけ考えればよい」とテレビで語っていた自動車ジャーナリストがいた。これはショックだった。最終目的は、「地球温暖化の防止」だ。そのための排出ガス制限だ。地球上の自動車全部をEVにしても、発電でCO2を出していては効果がない。自動車会社がその根本的目的を忘れてよいはずはない。「世界全体で最も効率的な方法は何か?」を探すのも、自動車会社の責務だ。2018年は、こうした「ジャーナリストの暴言」も目立った日々であった。

【前回は】2018年自動車の宿題【2】 1.コンプライアンス 2.品質管理軽視の経営 3.EV化の流れ

 2018年の、この記事では、現在の自動車のパワープラントを整理してみよう。

【参考】【TNGAの本質を見誤るな(1)】トヨタ近未来パワートレーンの裏 それでも中国EVは進む ~(4)

■EV化に必要なパワープラント

 EV化に必要なパワープラントはモーターに決まっているが、現在のところ、おなじみの電磁気を使った回転式モーターしかないようだ。それとバッテリーだが、現在は実用的なバッテリーの開発に全てがかかっているように見える。

 モーターパワーに関する問題は、ミッションを付けるか否かだ。モーターは低回転トルクが強力で、変速機(ミッション)を必要としない。しかし、高回転域では急速にトルクがなくなるので、現在、日産・リーフでは最高速が140km程度に限られている。日本市場では十分でも、世界では不足している。また、高速域では未だにエンジンのほうが効率は良いため、80km程度より高速では、エンジンを使用するHVは全体的に燃費が良い。ホンダやトヨタのHVでは、高速域ではエンジン直結としている。モーターとミッションの組み合わせも考えなければならないが、熱効率だけでなくコストの問題もある。また、せっかくエンジンやミッションがなくなり、造ることが容易になってくるところ、ミッションを継続生産することは決断が必要だ。

 モーター部品の材料には希少金属が使われていることから、中国に有利と考えられているが、それらの希少金属を使わない方式の研究も進んでいる。新しい方式だけに、各分野で激しい開発競争が続いている。

【参考】【EVは中国・北朝鮮国策との闘い(1)】北朝鮮情勢のカギはEV開発に必要なネオジム ~(2)

【参考】テスラEVよりも小型ガソリン車がCo2排出量は少ない 車重規制で生き残るのは小型車!

■クリーンディーゼルの動向

 フォルクスワーゲンのディーゼルエンジン制御プログラムの不正は、世界に衝撃を与えた。日本車のHVに対抗するためクリーンディーゼルを開発してきた欧州各社では、一気にEV化を進めるしか方法がなく、首をかしげたくなる燃費計算方法を編み出し、政策的にHVを締め出してEVへの脱皮を促そうとしている。

 また、中国では産業政策として、日本車などのような精密なエンジン技術を追いかけることを諦めて一気にEV化を進め、大きな中国市場を背景として、自動車産業育成に乗り出している。しかし、効率の悪い石炭火力発電を行う中国としては、発電方法も更新せねばならず、原子力発電を進めるようだ。

 そして、日本のマツダは、クリーンディーゼルの開発を諦めてはいない。欧州各社も諦めたわけではないようだ。今度は、モラルを持った姿勢で開発に望んでもらいたい。

■新型ガソリンエンジンの動向

 熱効率向上を目指して新型ガソリンエンジン開発が進み、2つの方式が新しい時代のガソリンエンジンとして登場している。ハイブリッドの考え方においても、トヨタ方式、ホンダ方式、日産方式と日本企業はそれぞれに有望な方式を開発してきたが、欧州各社も現在の設備を活かした方式で対抗してきている。

【参考】日産、EVとe-POWER搭載車の発売計画発表 e-POWERはトヨタHEVより効率が低い?

【参考】メルセデス・ベンツ新型S450 新感覚HVでデビュー プロが考えるモーターアシスト(1) ~(2)

【参考】ガソリンエンジン熱効率競争 EVではCo2排出量は減らない 自然エネルギー発電の課題

【参考】EV時代の素材は?マルチ・マテリアル・ボディ(上) 「100kg軽量化で1km/L燃費向上」 ~(下)

【参考】「スバル・e-BOXER」と「ベンツ・48VマイルドHV」の違いは? 次元の違う2つの方式

 その中で、マツダと日産の両社がそれぞれ開発してきた新型エンジンが注目されている。世界に対して、また新しい可能性を示せるのか?注目される。

【参考】マツダ・SKYACTIV-Xエンジン、新型Mazda3(アクセラ)に どこが革新的なのか?

【参考】マツダ・新型アクセラ登場 「スカイアクティブ-X」の次のエンジンで30年Co2半減

【参考】日産・可変圧縮比ターボ(VCT)・エンジン(1) カルロス・ゴーンの矛盾 EVでなかったのか? ~(3)

 これらの新技術については2019年の記事で、さらに見ていくこととしよう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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