ブラックホールの周りに有機分子が存在していることを発見 国立天文台

2015年3月2日 00:10

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アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡で観測した、渦巻銀河M77の中心部。アルマ望遠鏡で検出されたシアノアセチレン(HC3N)の分布を黄色、硫化炭素(CS)の分布を赤、一酸化炭素の分布を青で示している(Credit: ALMA(ESO/NAOJ/NRAO), S. Takano et al., NASA/ESA Hubble Space Telescope and A. van der Hoeven)

アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡で観測した、渦巻銀河M77の中心部。アルマ望遠鏡で検出されたシアノアセチレン(HC3N)の分布を黄色、硫化炭素(CS)の分布を赤、一酸化炭素の分布を青で示している(Credit: ALMA(ESO/NAOJ/NRAO), S. Takano et al., NASA/ESA Hubble Space Telescope and A. van der Hoeven)[写真拡大]

  • アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡の撮影結果を並べた画像(Credit: ALMA(ESO/NAOJ/NRAO), S. Takano et al., NASA/ESA Hubble Space Telescope and A. van der Hoeven)

 国立天文台や名古屋大学などによる研究グループは、アルマ望遠鏡を用いて渦巻銀河M77の観測を行い、その中心部に存在する巨大ブラックホールの周りには有機分子が集中して存在することを明らかにした。

 宇宙空間にただようガスの化学組成は周囲の環境によって大きく異なる。そして、分子はそれぞれ固有の周波数で電波を放つため、電波望遠鏡を使えば遠く離れた天体の化学組成と環境を調べることが可能である。

 今回の研究では、くじら座の方向4700万光年の場所にある渦巻銀河M77をアルマ望遠鏡で観測した。その結果、M77の活動銀河核のまわりとスターバースト・リングにおける9種類の分子の分布が鮮やかに描き出され、その中にはシアノアセチレン(HC3N)・アセトニトリル(CH3CN)・硫化炭素(CS)・メタノール(CH3OH)などが含まれていることが分かった。

 こうした分子はブラックホール周囲では強烈なエックス線や紫外線放射によって壊されると考えられていたが、今回の観測成果は大量の塵とガスによってエックス線や紫外線がさえぎられている領域があることを示唆している。これは、謎に包まれた巨大ブラックホール周辺の環境を理解するうえで非常に重要な発見と言える。

 研究メンバーは、「原子の数が多いアセトニトリルやシアノアセチレンが活動銀河核のまわりに豊富に存在していることは、まったく予想外の結果でした」とコメントしている。

 今後は、さらに広い周波数範囲での観測や、より高い解像度での観測によるデータが得られる予定となっているため、詳しく全貌を明らかにすることができると期待しているという。

 なお、この内容は2015年2月発行の天文学専門誌「日本天文学会欧文研究報告」に掲載された。

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