グロービング Research Memo(8):バーティカルAI-PFと動的平衡マネジメントを融合し、固有の知を競争力へ

2026年8月26日 11:08

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記事提供元:フィスコ

*11:08JST グロービング Research Memo(8):バーティカルAI-PFと動的平衡マネジメントを融合し、固有の知を競争力へ
■中長期の成長戦略

4. AIプラットフォーム事業の展開
グロービング<277A>は、巨額の開発投資を必要とする汎用基盤モデルを自社の主戦場とはせず、その上位に位置するバーティカルAIへ経営資源を集中する。汎用AIは高性能化とコモディティ化が進む一方で、企業固有のデータ、業務知識、企業哲学、熟練者の暗黙知を組み込む領域には差別化余地が大きいとの判断である。外部の基盤モデルを柔軟に使い、業界・機能別の意思決定AIと暗黙知PFをFDEが短期間で実装する。共同開発費を受け取る現在のモデルから、AI-PFの利用料を得る継続課金型モデルへの移行を目指す。

同社が構想する「経営OS」は、経営者の右腕となるJI人財、経営管理・中期計画・企画・営業・調達などを支援する意思決定AI、企業固有の知恵をAI化する暗黙知PFの3要素で構成される。暗黙知PFは、業界と業務領域ごとの知見を蓄えるデータベース、言語化が難しい判断の勘所をAIへ取り込むエンジン、社内の各システムに散在するデータを統合して意味をそろえる変換エンジンを備える。AI-PFが現場データを経営判断に必要な形へ変換することで、情報伝達や資料作成を担ってきた中間業務を減らし、人が課題設定・創造・対話・最終判断に集中できる経営オペレーションを目指す。

事業化の先行事例は、「AI議事コン」「グロービングくん」「スペンドインテリジェンス」の3製品である。「AI議事コン」は会議時間を30%、議事録作成・タスク管理を50%、不要な会議を20%削減する効果を見込む。「グロービングくん」は経営資料の準備工数50%削減をねらう。両製品は特許化を完了し、顧客との共同開発案件で効果が出始めている。「スペンドインテリジェンス」は、製造業やコンサルティングで蓄積した調達コスト最適化の知見をAIへ実装し、支出の可視化、見積比較、サプライヤー選定、交渉シナリオの策定を支援する。売上高1兆円規模の企業では数百億円の削減余地が生じる可能性があり、2027年5月期末の完成を予定する。暗黙知PFも2027年5月期中の開発・提供開始を計画している。

2031年5月期は「スペンドインテリジェンス」のみを想定した下限ケースで売上高40億円、営業利益率50%を計画する。2032年5月期以降は売上高年平均成長率70%、営業利益率50%を目標とし、高成長・高収益の事業として全社をけん引する考えである。

5. “動的平衡”マネジメントの推進
同社は、組織や機能、標準業務を中心に人を配置する欧米型の経営に対し、人を主役とする「動的平衡マネジメント」を提唱している。生物学者の福岡伸一(ふくおかしんいち)氏が唱える生命の動的平衡を企業経営へ応用し、企業を生命体、人を細胞に見立てる考え方である。社員が企業哲学に共感し、互いの主観を重ねた「相互主観」を形成することで、自律性と相補性を発揮し、環境が変化しても組織が継続的に進化する状態を目指す。福岡氏に加え、知識創造論を専門とする一條和生(いちじょうかずお)氏を顧問に迎え、方法論の体系化と国内外への発信を進めている。

AI-Xが進むと、従来の業務プロセスや中間管理業務の一部が不要になり、人員の再配置が経営課題となる。その際、ルールや組織図だけで人を動かすのではなく、各人が目的を理解して判断し、AIと協働できる環境が必要になる。同社は、企業哲学や熟練者の判断基準を暗黙知PFへ実装し、人の能力を補強するAIを設計する。同時に、人を主役とする考え方に基づき、各人が目的を理解してAIと協働できる環境を整え、組織再編や人財育成まで支援する。動的平衡マネジメントは思想にとどまらず、JI×AI-XとAI-PFを顧客企業へ定着させるための経営方法論としての役割を担う。

日本企業が持つ匠の技能や企業哲学は、言語化が難しい反面、競争優位の源泉になり得る。同社は動的平衡マネジメントにより人と組織の関係を捉え、共同開発で得た暗黙知のAI化手法を蓄積することで、日本独自の経営知を再利用可能な資産へ変える考えである。この方法論を「AIデジタル荘園構想」に組み込み、日本の製造業や伝統産業の価値向上に活用し、将来は海外へ展開する方針だ。

6. 弊社による考察
同社の中長期的な成長力を評価するうえでは、JIで得た経営課題や業界知見をAI-PFへ実装し、継続課金収益へ転換できるかが第1の焦点となる。第2の焦点は、コンサルティングとAIで蓄積した資金・人財・ノウハウをM&A先へ投入し、投資先の単価、稼働率、採用力、利益率を高められるかである。JIが顧客接点と開発テーマを生み、AI-PFが知見を再利用可能なプロダクトへ変え、投資・M&Aが事業規模と対応領域を広げる構造が機能すれば、3事業が相互に成長を促す好循環を形成できる。

一方で、2031年5月期の売上高1,200億円はチャレンジングな目標であり、達成には大型顧客の継続拡大、FDE及びシニア人財の採用、AI-PFの製品化、複数のM&Aと買収後の統合などを並行して進める必要がある。特に、共同開発で得た個別企業向けの知見を汎用性のあるAI-PFへ昇華し、利用料収益を積み上げられるかが重要となる。M&Aについても、企業規模を拡大するだけでなく、同社の技術力や顧客基盤などを移植し、買収先の収益性を継続的に高めることが求められる。

その点、同社は経営者との接点を持つJI人財、顧客企業へAI-PFを実装するFDE、企業固有の暗黙知を蓄積する技術基盤を一体で保有している。この組み合わせは、AIプロダクト専業企業や従来型コンサルティング会社との差別化要因になり得る。持株会社体制への移行により、グループ経営機能の強化と各事業における意思決定の迅速化も見込まれる。これらの事業基盤と経営体制を生かし、同社が中長期的にどのように企業価値向上を実現するかに注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 吉林拓馬)《HN》

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