ボッシュ、独ビュール工場で2027年8月に人型ロボット量産へ 英Humanoidから受託、初年度は数百台規模

2026年8月25日 16:21

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記事提供元:Tech Times

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独自動車部品大手のボッシュは、ドイツ南西部のビュール工場で2027年8月から人型(ヒューマノイド)ロボットの量産を始める。英ロンドンを拠点とするスタートアップHumanoid(法人名SKL Robotics Ltd.)からの受託製造で、ボッシュにとっては世界で初めて人型ロボットを工業生産する拠点となる。ドイツメディアは、欧州で初の人型ロボット量産ラインになると伝えている。生産するのは二足歩行型ではなく車輪で移動するモデルで、既存の安全規格の枠組みを援用しやすい構造が、早期の量産開始を後押ししている。

■人員削減が続く工場に生まれた新事業

ビュール工場は、パワーウインドウ用モーターや自動車向けアクチュエーターなど、小型電動モーターの生産を長年担ってきた。しかし内燃機関から電動化への移行に伴う構造転換で縮小の対象となっており、約2,700人の従業員のうち約1,100人分の雇用が2030年までに失われる見通しだ。

人型ロボットの受託生産は、この削減計画を撤回するものではない。それでも、縮小が続いてきた拠点に新しい仕事を持ち込む意味は小さくない。ボッシュが製造を担い、Humanoidが設計と製品の権利を保有する受託製造の枠組みで、ビュールはボッシュとして世界初の人型ロボット生産拠点となる。

Frankfurter Allgemeine Sonntagszeitung(FAS)の報道によると、2027年の生産規模は数百台が見込まれ、生産ラインの初期人員は2桁規模から始まり、数量の拡大に応じて増やしていく見通しだという。両社とも具体的な人員数は公表していない。

ボッシュは2023年、金属産業労働組合IG Metallおよび総合事業所委員会との間で「未来労働協約(Zukunftstarifvertrag)」を締結し、ドイツ国内のモビリティ部門の約8万人を対象に、2027年末まで会社都合の解雇を行わないことで合意している。人型ロボットの生産立ち上げは、この協約が有効な期間内に始まることになる。

■英ユニコーン「Humanoid」の出自と資金

Humanoidは2024年、アルテム・ソコロフ氏が英国で設立したスタートアップで、法人名はSKL Robotics Ltd.。同社によると、ロンドン、ボストン、バンクーバー、サンディエゴの拠点に250人を超えるエンジニアや研究者を抱える。

同社は2026年7月、Prime Movers Labが主導するシリーズAラウンドで1億5,200万ドル(約241億6,800万円、1ドル=159円換算)を調達した。ポストマネー評価額は13億5,000万ドル(約2,146億5,000万円)で、人型ロボット専業では欧州初のユニコーンになったとしている。ラウンドにはボッシュとシェフラーが戦略投資家として参加したほか、Fubon Financial Holding Venture CapitalとAglaé Venturesも加わった。累計調達額は2億7,000万ドル(約429億3,000万円)に達する。

つまりボッシュとシェフラーは、Humanoidにとって出資者であると同時に、それぞれ受託製造先と主要顧客でもある。

■「足」ではなく「車輪」を選んだ理由

主力機「HMND 01」には、全方位に動く車輪台車の上に人型の上半身を載せた「Alpha Wheeled」と、二足歩行型の「Alpha Bipedal」がある。商用展開の軸は車輪型で、二足歩行機は家庭・サービス分野を見据えたAI開発用と位置づけられている。

HMND 01 Alpha Wheeledは、同社の公表値で全高約220cm、重量約300kg。全方位車輪により最高時速7.2kmで任意の水平方向へ移動し、両腕で最大15kgを扱う。可動範囲は床面から高さ2mまで、棚の奥行きは60cmまで届く。エンドエフェクター(ハンド)を除く自由度は29で、ハンドは12自由度の5本指型と1自由度の平行グリッパーを選択できる。車載コンピューターにはNVIDIA Jetson Thorを搭載し、連続稼働時間は約4時間としている。

車輪を選んだ判断は、欧州で製品を出荷するうえでの認証手続きに直結する。車輪型の移動マニピュレーターは、自律走行搬送ロボット(AMR)と協働ロボット(コボット)という、すでに確立した二つの安全規格の枠組みを組み合わせて適合性を示せる。一方、二足歩行機には転倒リスクや動的バランス制御を前提とした同等の枠組みが整っておらず、認証までの道筋が読みにくい。Humanoidは車輪型について、2027年後半までに完全な認証取得を目指すとしている。

なお、機械類の欧州安全規制は2027年1月20日に新しい機械規則(EU)2023/1230へ全面移行し、従来の機械指令2006/42/ECは廃止される。新規則ではAIが安全機能に関わる機械の扱いが加わるため、この時期に欧州市場への投入を計画する各社は、新旧どちらの枠組みで適合性を示すかの見極めを迫られる。

ソコロフCEOはThe Robot Reportに対し、「世界はすでに人間向けにつくられている。人型の形状であれば、産業用ロボットのようにインフラを設計し直すことなく既存の環境で稼働でき、人間向けに作られた設備や工具をそのまま使い分けられる」と説明している。

■AIフレームワーク「KinetIQ」と実環境での検証

HMNDには、Humanoid独自のAIフレームワーク「KinetIQ」が搭載される。同社の説明では、KinetIQはセンサー入力から物理的な動作出力までを橋渡しし、判断周期の異なる4つの階層でロボット群を同時に統括する。

4層は、カメラと深度センサーの入力から物体や寸法、重量を把握する認識層、作業計画や複数コンベヤ間の調整を担う推論層、アームの軌道とグリッパーの把持力を制御する動作制御層、遠隔監視や保守計画、ソフトウェア更新を扱うフリート管理層で構成される。

受託製造契約に先立つ2026年3月、ビュールの物流現場で概念実証(PoC)が実施された。HMND 01は稼働中の環境でコンベヤから台車へ箱を自律的に移し替え、形状や高さ、重量の異なる5種類の箱を扱った。同社によると、狙いは作業をこなすこと自体ではなく、コンベヤの数や箱の寸法、投入順序が変わっても対応できるかを確かめる点にあったという。

学習面では、箱の取り扱いや箱からの取り出しといった用途であれば、実環境でのデータ収集は通常1〜2日で足りるとソコロフCEOは述べている。これを大規模なシミュレーション学習と組み合わせることで、現場でのデータ収集に数週間から数カ月をかける手法に比べ、導入までの期間を短くできるという。

■シェフラーとの大規模導入契約とRaaS

ビュールの量産計画は単独の案件ではない。Humanoidは2026年1月に独精密部品大手シェフラーと戦略提携を結び、同年5月13日には拘束力のある段階的な導入・供給契約を締結した。両社はこれを、公表された人型ロボットの導入案件としては最大級と位置づけている。

初期導入は2026年12月から2027年6月にかけて、ドイツ国内のシェフラー2拠点で行われる。ヘルツォーゲナウラハでは、稼働中の生産環境で箱の取り扱い工程の高度化に取り組む。シュバインフルトでは、まず3カ月かけて能力実証と既存設備への統合試験を行い、続く3カ月で本格生産に近い連続稼働の安定性を検証する。目標は、2032年までにシェフラーの世界各拠点へ4桁台数の車輪型機を展開することだ。

関係は顧客と供給者の一方向ではない。シェフラーはHumanoidの関節アクチュエーターの優先供給企業に指定され、2031年までに同社が必要とする関節アクチュエーターの5割超を供給する。両社は、この取り決めが7桁(100万個台)の数量に達するとしている。

商用形態はRobotics-as-a-Service(RaaS)で、ロボットは売り切りではなく、フリート管理ソフト、保守、24時間体制の技術支援、ソフトウェア更新、稼働管理まで含めたサービスとして提供される。導入側は大きな初期投資を抱え込まずに済み、ハードウェアの性能責任は提供側が負う。半面、提供企業への依存度は高まる。

製品ロードマップでは、2026年後半に「ベータ」世代を顧客先での商用展開に投入し、2027年8月にビュールで「ガンマ」世代の量産へ移り、2028年以降に本格的な大量生産へ広げる計画とされる。

■世界の開発競争のなかでの位置づけ

人型ロボットの開発競争は世界的に激しい。テスラは「Optimus」について、イーロン・マスクCEOが将来的な価格目標として2万〜3万ドル(約318万〜477万円)、年産100万台規模という構想を掲げているが、2026年8月時点で量産機の公開や外部販売の開始は確認されていない。ボストン・ダイナミクスはCES 2026で全電動「Atlas」の製品版を公開し、2026年分の出荷はすべて親会社ヒョンデ傘下の拠点とGoogle DeepMind向けに割り当てられている。Figure AIはBMWのスパルタンバーグ工場で、2026年6月から「Figure 03」による部品の仕分け工程を始めた。中国では、UBTECH RoboticsがNIOのEV組立ラインに人型ロボットを投入している。

欧州にも先行する動きはある。独メツィンゲンのNEURA Roboticsは人型機「4NE1」の予約受注を開始し、産業向け初号機の出荷を2026年後半としている。そのなかでビュールの特徴は、確定した量産開始時期、署名済みの顧客契約、実際の生産環境で実施したPoC、そしてボッシュの量産基盤という組み合わせにある。

市場予測には幅がある。ゴールドマン・サックスは2024年の調査で、人型ロボットの潜在市場規模(TAM)が2035年に380億ドル(約6兆420億円)へ達しうると試算した。ただし同社は、部品供給の制約や、物をつかむ・人と対話するといった能力面の限界、汎用機の事業性が未証明である点も併せて指摘している。フォレスター・リサーチは2026年の予測で、報酬を得て有用な仕事をこなす人型ロボットはごく少数にとどまり、商用導入の大半は引き続き人型以外の形態が担うとの見方を示していた。

■ボッシュが狙う受託製造の先

ボッシュにとって、この提携は受託生産の売上にとどまらない可能性がある。両社は、アクチュエーターやドライブ、モーター、センサーといった部品をボッシュがHMNDへ直接供給するかどうかを検討中だとしている。

これが実現すれば、ボッシュの立ち位置は組立の受託先から上流の部品供給者へ広がる。自動車エレクトロニクスで長年築いてきた垂直統合の構図を、人型ロボットでも再現する形になる。

Humanoidはこのほか、拘束力を伴わない事前予約を3万台規模で抱えていると説明しており、シーメンスのエアランゲン工場やフォードのケルン工場などでPoCを重ねてきた。SAPやNVIDIAとの提携も公表している。

ビュール工場にとって、人型ロボットの生産ラインは既存の仕事を置き換えるものではなく、新たに加わる仕事だ。2030年までの約1,100人分の削減は、従来型の自動車部品事業の構造的な縮小によるもので、人型ロボットの導入が原因ではない。新事業が縮小分をどこまで補えるかは、人型ロボット市場そのものの立ち上がり方に左右される。

■注目ポイントQ&A

●なぜ車輪型は二足歩行型より認証取得が早いのですか?

車輪型の移動マニピュレーターは、自律走行搬送ロボット(AMR)と協働ロボットという既存の安全規格の枠組みを組み合わせて適合性を示せるためです。二足歩行型には転倒リスクや動的バランス制御を前提とした同等の枠組みが整っておらず、認証までの道筋が読みにくくなります。Humanoidは車輪型について、2027年後半までの完全な認証取得を目標に掲げています。

●Robotics-as-a-Service(RaaS)とはどのような仕組みですか?

ロボットを買い取るのではなく、保守や24時間体制の技術支援、フリート管理ソフト、ソフトウェア更新までを含めたサービスとして継続利用する形態です。導入企業は大きな初期投資を避けられ、ハードウェアの性能責任は提供側が負います。一方で、提供企業の経営状況が自社の自動化基盤に直接影響する点には留意が必要です。

●「KinetIQ」はどのように新しい作業を覚えるのですか?

シミュレーションを軸にした学習手法をとります。同社によれば、箱の取り扱いのような用途では実環境でのデータ収集は通常1〜2日で済み、これを大規模なシミュレーション学習と組み合わせることで、短期間で作業を習得させられるとしています。

●欧州の工場で人型ロボットが広く使われるのはいつ頃ですか?

現時点で確定している契約から見ると、2026年12月のシェフラーへの初期導入、2027年8月のビュールでの量産開始、2028年以降の本格的な大量生産という段階を踏む見通しです。ただし規制対応や現場での信頼性確保という課題が残っており、調査会社は当面の普及は限定的との見方を示しています。

元記事: Bosch Confirms August 2027 Start for Europe’s First Humanoid Robot Production Line

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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