ウェッブ宇宙望遠鏡が捉えた「塵の自己遮蔽」、ライオン星雲で星の死と再生を観測

2026年8月12日 00:04

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記事提供元:Tech Times

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NASAのジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が、「ライオン星雲(NGC 2392)」を捉えた初の赤外線画像を公開した。ハッブル宇宙望遠鏡による26年間の観測では判別できなかった、死にゆく星の殻の内部で中心の白色矮星から自らを遮蔽し、周囲の塵を破壊する放射線に耐えている塵の存在が明らかになった。こうして生き残る塵は、将来の星や惑星を形作る材料の一部になる。

■ハッブルの観測とウェッブが明らかにした新事実

画像は、ボルティモアにある宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)の画像処理専門家、アリッサ・ペイガン氏によって処理され、米国東部時間の月曜午前10時10分(日本時間同日午後11時10分)に公開された。近赤外線カメラ(NIRCam)と中間赤外線観測装置(MIRI)というウェッブの2つの観測機器を同時に使用して撮影されたものだ。その結果、白色矮星が作り出している電離ガスのバブルと、白色矮星の影響が弱まり、生き残った塵の塊が存在する外側の「たてがみ」という、星の死を示す2層の姿が描き出された。

NASAのハッブル宇宙望遠鏡は2000年1月、ヘリウム、酸素、水素、窒素の輝線に合わせた4つの狭帯域フィルターを使用し、NGC 2392を可視光で撮影した。この画像によって、ぼんやりとした彗星状の構造に縁取られた丸い顔のようなライオン星雲の輪郭が確認された。また、明るい内側の領域は、中心星から吹く高速の恒星風によって外向きに押し出された物質のバブルと説明された。この画像は現在も、NASAにおけるNGC 2392の代表的な可視光画像となっている。

しかし、ハッブルでは、破壊されつつある塵と生き残っている塵を区別できなかった。可視光は電離ガスを通過し、塵によって散乱または吸収されるが、個々の高密度な塊の熱状態を十分に識別することはできない。ウェッブの赤外線観測は、この状況を一変させた。

0.6〜5マイクロメートルの波長を捉えるNIRCamは、電離ガスのバブルを紫がかったピンク色の空洞として描き出した。これがライオン星雲の「顔」であり、白色矮星からの紫外線が周囲のガスを電離することで、高温のプラズマが輝いている。一方、5〜28マイクロメートルの波長を観測するMIRIは、約30〜700℃の塵が光を吸収するだけでなく赤外線を放射する中間赤外線領域を捉え、単独画像では外側の塵のたてがみを鮮やかなシアン色で映し出している。

科学的に重要な部分は、たてがみの縁にある。そこに見える小さな塵の塊は、それぞれ彗星のような尾を引いており、背後の物質を放射線から遮るほど高密度であるため、白色矮星の放射線を生き延びている。NASAのプレスリリースは、これらを「恒星のコアからの放射線を生き延び、背後にある物質を保護している小さな塵の塊」と説明している。尾は白色矮星から遠ざかり、より低温で遮蔽された空間へ向いており、放射線の影響が弱まり、塵が存続できる場所を示す目印となっている。

■太陽に似た星がこの構造を作る仕組み

NGC 2392は、ふたご座の方向、地球からおよそ3000〜5000光年の距離にある。測定方法によって推定値には大きな幅があり、NASAによる今回のウェッブ関連資料では距離を特定していない。中心には酸素を豊富に含む星があり、天の川銀河にある星の大部分が最終的に経験する変化を終えようとしている。

太陽を含む全恒星の約80%に当たる、超新星爆発を起こすほど質量が大きくない星は、赤色巨星へ膨張し、脈動しながら外層を宇宙空間へ放出して生涯を終える。放出された外層は惑星状星雲を形成する。この名称は歴史的な経緯によるもので、ウィリアム・ハーシェルが1787年1月17日にNGC 2392を発見した当時、こうした天体が小型望遠鏡では惑星のように見えたことに由来する。

現在では、その物理的な仕組みが理解されている。露出した星のコアは白色矮星となり、強烈な紫外線を放出する。その紫外線が放出済みの物質を電離して照らし出すことで、数百年から数千年にわたって見える輝く殻が作られる。

NGC 2392では、このプロセスが約1万年にわたって続いている。内側の殻は電離ガスのバブル、すなわち「顔」の部分であり、白色矮星が周囲の物質を加熱しながら外側へ膨張している。外側の塵のたてがみは、星がまだ赤色巨星だった時期に放出された、より古い物質である。現在は白色矮星の光によって内側から照らされ、膨張する高温のバブルと接する境界では部分的に破壊されている。

■塵は白色矮星の放射線を生き延びられるか?

NGC 2392が示す答えは「イエス」だが、特定の条件を満たす必要がある。たてがみの縁にある高密度の塊が生き残ったのは、自らの背後に影を作れるほど密集しているからだ。内側のバブルにある塵を破壊した強烈な放射線も、こうした結び目をあらゆる方向から同時に貫くことはできない。高密度な塊のすぐ背後にある物質は、塊自身が作り出す放射線の影に入る。各結び目から外側へ伸びる尾は、その結果として残った、白色矮星の放射線がまだ十分に届いていない低温の物質である。

惑星状星雲における「彗星状結び目(cometary knots)」と呼ばれるこの現象は、環状星雲や亜鈴状星雲など複数の天体でハッブルによって観測されてきた。しかし、可視光画像だけでは、その形成や生存を左右する仕組みは明確になっていなかった。

ウェッブ、特にMIRIの中間赤外線に対する感度は、可視光画像では得られない熱情報を提供する。これによって、高温で照射を受け、破壊されつつある塵と、低温で遮蔽され、生き残っている塵を区別できる。NASAのプレスリリースに掲載されたNGC 2392のMIRI単独画像の説明にも、「死にゆく中心星の放射線によって破壊されている塵がある一方で、生き延びている塵のフィラメントもある」と記されている。

2026年1月に公開された、同じプロセスを経ている比較的地球に近い惑星状星雲「らせん星雲」の画像でも、同様の自己遮蔽構造を持つ彗星状結び目がNIRCamによって捉えられた。2026年8月4日のNASAの「Astronomy Picture of the Day(APOD)」では、これらの構造は「当初は予測されておらず、その起源はまだ十分に解明されていない」と説明されている。NGC 2392は、ウェッブがこうした構造を熱的な違いまで含めて直接観測した星雲の事例に、新たに加わることになる。

■次世代の星々にとっての意味

NGC 2392の科学的重要性は、その印象的な外観だけにあるのではない。惑星状星雲は、天の川銀河における重要な化学物質の供給源である。星の内部で作られた元素を星間物質へ放出することで、天の川銀河の化学進化に重要な役割を果たしている可能性が高い。

現在、NGC 2392の塵とガスに含まれている炭素、窒素、酸素は、やがて周囲の星間物質へ拡散し、次世代の星や惑星系を形成する分子雲と混ざり合う。

白色矮星の放射線を生き延びた塵の塊は、その遺産の一部である。これらは移動の途上にある星由来の物質で、現在はまだ識別可能な構造を保っているが、やがて未来の天体を作る拡散した材料になっていく。NASAのプレスリリースによれば、この段階にある星は「宇宙で観測できる塵の多くを生成する役割を担っている」。

NGC 2392の場合、このプロセスには終わりがある。天文学者は、星雲が拡散を続け、約1万年後には星間物質へ溶け込むと推定している。これは人類の文字による記録の全期間に匹敵する長さだが、宇宙の時間尺度では極めて短い。ウェッブの画像が捉えたのは過去の化石ではなく、現在進行している現象である。

残された疑問もある。NGC 2392の膨張するガスが、なぜ単純な球体ではなく、リングや殻が重なる複雑な構造を形成しているのか。天文学者が検出した高励起輝線を生み出す、非常に高温の白色矮星の伴星が中心星に存在するのか。そして、破壊される塵と生き残る塵の正確な境界を何が決めているのか。こうした点については現在も調査が続いている。NGC 2392の連星仮説については光電離モデルを用いた研究が行われ、高励起輝線を説明するには非常に高温の白色矮星の伴星が必要だとする証拠が示されている。

■ウェッブが描く「死にゆく星の図鑑」

NGC 2392は、ウェッブが2022年7月に科学観測を開始して以降撮影してきた、南のリング星雲(NGC 3132)、環状星雲(NGC 6720)、らせん星雲、NGC 6072などの惑星状星雲に加わった。それぞれの観測は、ハッブルや他の望遠鏡では捉えられなかった構造の詳細を明らかにしてきた。

ウェッブが星雲ごとに体系的に作り上げているのは、構造を形作る物理過程を詳しく調べられる解像度を備えた、星の死の赤外線図鑑である。

NGC 2392がその図鑑に新たにもたらしたのは、白色矮星の放射を受ける環境で、どの塵が生き残るのかを直接示す熱分布の観測である。NIRCamとMIRIを組み合わせることで、以前の望遠鏡では問いを立てることしかできなかった問題に答えられるようになった。塵の塊が存在することだけでなく、どの塊が高温で破壊されつつあり、どの塊が低温に保たれているのかを識別できる。この違いは、星が残した物質のうち、どれだけが次の宇宙構造の形成サイクルへ引き継がれるのかを知る手掛かりになる。

太陽にとって、NGC 2392は未来を垣間見せる存在である。約50億年後、水素を使い果たした太陽は赤色巨星へ膨張し、外層を放出する。その後には、現在のNGC 2392の中心星と同じように、膨張して光る殻に囲まれた白色矮星が残る。

太陽系由来の物質を星間物質へ運べるほど長く塵の塊が生き残るかどうかは、ウェッブがNGC 2392で観測しているものと同じ放射線遮蔽の仕組みに左右される。今回の画像はアリッサ・ペイガン氏が処理し、観測はNASA、欧州宇宙機関(ESA)、カナダ宇宙庁(CSA)の協力によって行われた。

■注目ポイントQ&A

●ライオン星雲とは何ですか? なぜライオンのように見えるのですか?

ライオン星雲は、1787年にウィリアム・ハーシェルが発見した、ふたご座にある惑星状星雲「NGC 2392」の非公式な名称です。中心には、白色矮星からの高速の恒星風によって作られた、ほぼ円形の電離ガスのバブルがあります。その周囲を、オスのライオンのたてがみのように見える厚い塵の外輪と彗星状結び目が取り囲んでいます。この姿は、死にゆく星が外層を放出した過程と、その放射線によって外層が再形成される幾何学的な配置から生じた偶然です。以前使われていた「エスキモー星雲」という愛称は、IAU(国際天文学連合)の恒星名ワーキンググループの勧告を受け、NASAが2020年8月に使用を取りやめました。

●ハッブルでは見えなかった塵の生存が、なぜウェッブの赤外線画像では分かるのですか?

ハッブルのカメラは主に、人間の目にも見える可視光を捉えます。宇宙空間の塵は可視光を吸収したり散乱したりしますが、高温の塵と、低温で遮蔽された塵を十分に区別できる信号は得られません。一方、ウェッブのMIRIは5〜28マイクロメートルの中間赤外線を観測し、約30〜700℃の物体が放つ赤外線を捉えます。白色矮星から直接放射を受ける塵は暖かく、放射線の影にある塵とは異なる放射を示します。MIRIはこの熱的な違いを検出できるため、どの塵が破壊されつつあり、どの塵の塊が低温に保たれて生き残っているのかをマッピングできます。これは可視光の観測装置では得られなかった情報です。

●太陽もNGC 2392のような惑星状星雲になるのですか?

はい。太陽を含む、太陽のおよそ1〜8倍の質量を持つ星は、超新星爆発を起こすのではなく、赤色巨星へ膨張して外層を宇宙空間に放出し、高温の白色矮星を残すことで惑星状星雲を形成します。太陽も約50億年後、この経路をたどると予想されています。NGC 2392は、質量や組成が太陽とおおむね似ていた星が、その生涯の末期に達した姿であり、太陽が迎える運命を示す一例です。

●ウェッブがNGC 2392で撮影している「彗星状結び目」とは何ですか? なぜ重要なのですか?

彗星状結び目(cometary knots)は、惑星状星雲の外殻に形成されるガスと塵の高密度な塊で、それぞれが中心星から遠ざかる方向に長い尾を伸ばしています。らせん星雲、環状星雲、亜鈴状星雲、NGC 2392など、複数の惑星状星雲で観測されていますが、その起源や形成の仕組みは現在も研究されています。2026年1月に公開されたウェッブのらせん星雲画像でも、こうした構造は「当初は予測されていなかった」ものとして扱われ、その起源はまだ十分に解明されていないとされています。NGC 2392では、MIRIの観測により、一部の結び目が背後に放射線の影を作ることで白色矮星の放射線を生き延びていることが示されました。こうした結び目は、星由来の物質を星間物質へ運び、将来の星や惑星系を形成する炭素、窒素、酸素の供給に寄与する可能性があります。

元記事: Webb Thermal Map of Lion Nebula Shows Which Dust Will Seed Future Stars

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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