米国債務が39.7兆ドルに到達、ビットコインと金の「通貨価値低下ヘッジ」はFOMCの試練へ

2026年7月28日 16:32

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米国の国家債務が39.7兆ドル(約6510兆円)という過去最高水準に達するなか、法定通貨の価値低下に備えるビットコインや金への投資が試練を迎えている。債務の膨張がインフレ圧力を生み、米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派姿勢を支えているためだ。今週予定されている連邦公開市場委員会(FOMC)の政策金利決定や国内総生産(GDP)統計の発表が、この投資戦略の行方を左右する。

■膨張する債務とFRBのジレンマ

米財務省のデータセット「Debt to the Penny」によると、先週金曜日、米国の国家債務は39.7兆ドル(約6510兆円、1ドル=164円換算)に達し、またしても過去最高を更新した。この数字自体も目を引くが、それが後押ししている投資ロジック――これほどの規模の政府借り入れは最終的にドルの購買力を低下させるため、ビットコインや金のような希少資産が合理的なヘッジになるという考え方――は、厄介な問題に直面している。債務を押し上げているのと同じ要因が、FRBをタカ派姿勢にとどまらせ、この投資ロジックが正当化するはずの取引そのものを失速させかねないからだ。

その緊張関係の中心にあるのが、ケビン・ウォーシュ議長の下で火曜日から始まる2日間のFOMC会合である。FRBは米東部時間水曜日午後2時(日本時間木曜日午前3時)に政策金利を発表する予定だ。月曜日朝の時点で、CME FedWatchは、現在の目標レンジである3.50~3.75%に据え置かれる確率を約3分の2、0.25ポイントの利上げが行われる確率を約3分の1と見込んでいる。

FOMC会合を前に、ビットコインは6万5000ドル(約1066万円)付近で取引されている。米国とイランの対立緩和によって原油価格が急落し、目先のインフレ懸念が後退したことから、この日の取引では約1.3%上昇した。金は1オンス当たり4100ドル(約67万円)に向けて上昇し、金曜日の終値から約0.7%高となっている。両資産とも、5月に就任し、目標を上回るインフレの長期化は容認しないと強調してきたウォーシュ議長の下で、FRBのタカ派姿勢がそれまで両資産を支えていた流動性環境を悪化させたためにつけた夏場の安値から回復しつつある。

■投資を動かす財政の計算

債務総額は見出しを飾るが、分析上さらに重要なのは、アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミスト、トルステン・スロック氏が2026年5月のブログ記事で指摘した点だ。米国がこれほど財政余力の乏しい状態で景気後退に入ったことは、これまでにないという。債務残高の対GDP比が120%を超えるなか、政府には景気後退時に支出を拡大する余地がほとんどない。FRBも、インフレを加速させ、さらに重要なことに、財政赤字を支える債券投資家が要求する利回りを押し上げることなく、過去の景気後退時ほど積極的に利下げすることはできない。

米議会予算局(CBO)の最新のベースライン予測は、この軌道がどこに行き着くかを数値で示している。民間などが保有する連邦債務は今後10年間で約25兆ドル増加し、約31兆ドルから2036年には56兆ドルに達する見通しだ。その時点で債務残高の対GDP比は過去最高の120%に達し、第二次世界大戦後のピークを上回ると予測されている。30年先を見ると、CBOの長期予測では、2056年までに民間などが保有する連邦債務はGDPの175%、金額にして約168兆ドルに達し、その間の財政赤字は平均でGDPの6%を超える。超党派政策センターの分析によると、すでに年間1兆ドルを超えている純利払い費は、2036年までに約2倍の2.1兆ドルに達し、連邦予算のどの項目よりも速く増加すると予測されている。

世界的に見ても、この問題は米国に限らない。国際金融協会(IIF)の「Global Debt Monitor」によると、主に米国と中国の政府借り入れに押し上げられ、世界の債務総額は2026年第1四半期末までに過去最高となる約353兆ドルに達した。IIFは、海外投資家が米国債へのエクスポージャーを減らし、日本や欧州の国債への需要を増やしている初期の兆候を指摘している。この構造的な変化が深まれば、FRBの政策にかかわらず、米国の借り入れコストを押し上げることになる。

■通貨価値下落ヘッジの仕組みと限界

「ディベースメント・トレード(通貨価値下落ヘッジ)」とは、法定通貨の購買力が長期的に低下するリスクをヘッジするため、供給量に厳格な上限がある資産や、供給が緩やかにしか増えない資産に投資する戦略を指す。金は採掘によって年間約2~3%の新規供給が加わるが、どの中央銀行もこのペースを加速させることはできない。ビットコインの供給はプロトコルのコードによって管理されている。上限は2100万枚で、2026年半ばの時点で約1970万枚が採掘されており、新規発行ペースは約4年ごとに半減するよう設計されている。前回の半減期は2024年4月で、次回は2028年4月ごろと見込まれている。政府も中央銀行も裁判所の命令も、この供給上限を引き上げることはできない。これが「デジタルゴールド」という考え方を支える具体的な技術的仕組みである。2100万枚という上限は政策判断ではなく、ビットコインのソフトウェアを稼働させる数万のノードによる分散型コンセンサスによって維持されている。

ただし、このトレードには前提条件があり、現在の環境ではそれが問題となっている。通貨価値の低下が投資テーマとして機能するのは、政府債務の問題が最終的に、利下げ、量的緩和、イールドカーブ・コントロールなどの金融緩和を余儀なくし、実質利回りを押し下げて、供給を人為的に増やせない資産へ投資家を向かわせる場合である。これに対し、中央銀行が財政に起因するインフレ圧力に対応して金融を引き締めれば、債務問題の存在を裏付ける一方で、その問題をヘッジするはずの資産のパフォーマンスを悪化させる可能性がある。

日本の経験は参考になる。日本の債務残高の対GDP比は何年にもわたって約200~235%で推移し、現在の米国の水準をはるかに上回っている。それでも、その期間を通じて金やビットコインが一貫して円の価値低下に対するヘッジとして機能してきたわけではない。日本銀行がイールドカーブ・コントロールを維持し、通常なら通貨価値の低下を示す金利調整を抑えてきたためだ。通貨価値下落ヘッジは機能し得るが、常に直ちに機能するとは限らない。

現在の米国の状況も、まさにこの点で不透明である。6月の消費者物価指数(CPI)は予想より弱く、消費者物価は前月比0.4%下落し、前年同月比のインフレ率は5月の4.2%から3.5%へ低下した。この結果は金利据え置きの根拠を強めたが、コアインフレ率は依然としてFRBの2%目標を上回っている。ウォーシュ議長は、目標を上回るインフレの長期化をFRBは容認しないと明言している。水曜日の据え置きが基本シナリオだが、利上げの可能性も残っている。どちらの結果になるかによって、通貨価値下落ヘッジへの影響は異なる。

■ビットコインは6万5000ドルを維持、3週連続のETF資金流入が意味するもの

機関投資家の資金は選別的にビットコインへ戻りつつあるが、回復の構造は方向性と同じくらい重要である。米国上場の現物ビットコインETFは、7月24日までの週に3週連続の純流入を記録し、合計3379万ドル(約55億円)を集めた。ただし、水曜日と木曜日にはそれぞれ2億2520万ドルと2億4010万ドルが流出し、週間の流入額の大部分を打ち消した。この流出がなければ、週間の純流入額は大幅に大きくなっていたはずだ。この3週連続の資金流入によって、投資家が各ファンドから数十億ドルを引き出した約8週間の流出局面に終止符が打たれた。この期間には、6月上旬に過去最長となる13営業日連続の流出があり、それだけで44億ドルが流出していた。SoSoValueのデータによると、米国上場の11本の現物ビットコインETF全体の純資産総額は週半ばのピーク時に約809億ドル(約13兆円)に達し、2024年1月の商品の上場以降の累積純流入額は約518億ドル(約8.5兆円)となっている。

こうした週間の資金フローを理解するには、現物ビットコインETFの仕組みを知る必要がある。機関投資家や個人投資家が、例えばブラックロックのiShares Bitcoin Trust(IBIT)の持ち分を購入しようとすると、指定参加者(AP)と呼ばれる専門のマーケットメーカーが取引を仲介する。ジェーン・ストリート、バーチュ、JPモルガン・セキュリティーズなどがその例だ。APは、ETFの市場価格と、原資産であるビットコインの純資産価値(NAV)との差を監視する。需要の増加によってETFの市場価格がNAVを上回ると、APはビットコインを購入してファンドへ引き渡し、その見返りとして新たに設定された受益権を受け取って市場で売却する。この設定が「資金流入」として記録される。反対に、売り圧力によって市場価格がNAVを下回ると、APは受益権をビットコインと交換して償還し、そのビットコインを売却する。これによって流通する受益権が減少し、「資金流出」として記録される。

2025年7月以降、米証券取引委員会(SEC)は現物による設定と償還を認めている。つまり、APはビットコインをいったん現金に換えることなく、実際のビットコインをファンドへ引き渡せるようになった。これにより、ビットコインETFの仕組みは一般的な商品ETFの慣行に近づき、取引コストや売値と買値の差であるビッド・アスク・スプレッドが縮小した。2026年のETF関連報道で引用された調査では、ETFの資金フローがビットコインの週ごとの価格変動の約45%を説明すると推定されている。このため、日々の資金フローは単なる投資家心理の指標ではなく、ビットコインの取引価格を左右する構造的な要因でもある。

7月23日と24日の週後半の売りは、週半ばの上昇でビットコインが一時6万6800ドル近くまで上昇した後の利益確定と、ナスダック100を構成する半導体株の下落によって引き起こされた。これは、回復が依然として不安定であることを示している。3週連続の資金流入は流れの反転ではあるが、資金が一気に押し寄せる局面ではない。

■金は4100ドルに向けて上昇、政府部門の買いが下値を支える

金も通貨価値低下という同様の投資テーマに沿って動いているが、2026年にはビットコインとは異なる道筋をたどってきた。月曜日の金先物は1トロイオンス当たり4097.50ドルで取引を開始し、金曜日の終値から0.7%上昇した。米国とイランの対立が原油価格を押し上げ、ドル高を招き、このトレードが機能するために必要な条件を損なったことで、金は7月中旬に9カ月ぶりの安値をつけたが、そこから回復しつつある。

金価格を構造的に下支えしているのは、中央銀行による購入である。ゴールドマン・サックスは2026年6月の調査リポートで、金に対する構造的な強気見通しを維持した。月間約60トンの中央銀行による購入が価格の下支えとなり、財政赤字への懸念を背景とした機関投資家の需要である「ディベースメント・トレード」が、過去の金相場には見られなかった新たな買い手層を生み出しているという。中国人民銀行は2026年6月に14.93トンを追加購入し、2024年11月に始まった連続購入を20カ月に伸ばした。6月の購入は金が四半期の安値付近で取引されていた時期に行われており、中央銀行など政府部門の買い手が値動きの大きさに左右されていないことを示している。

ゴールドマン・サックスは、利下げ観測の後退とETFへの資金流入の鈍化を理由に、2026年末の金の目標価格を5400ドルから4900ドルへ引き下げた。一方、FRBが水曜日に金利を据え置かず利上げした場合、年末の金価格は4400ドル程度になる可能性があるとしている。この下振れシナリオは、通貨価値下落ヘッジが抱える重要なパラドックスを端的に示している。金価格を押し上げるはずの債務が同時にインフレを引き起こし、FRBに金相場の上昇を抑える政策を取らせるということだ。

■年末までにこのトレードを失速させかねない要因

現在の通貨価値下落ヘッジには3つの短期的なリスクがあり、いずれも今週に集中している。

第一は、水曜日のFOMCの決定である。据え置きが広く予想されているが、ウォーシュ議長の公の発言は意図的にタカ派色を帯びており、月曜日朝の時点で市場が織り込む利上げ確率は約3分の1だった。0.25ポイントの利上げは、利回りを生まない資産を保有する機会費用を高める。ビットコインも金も利息を生まないため、利上げが実施されれば、両資産が短期的に急反落する可能性が高い。タカ派的な先行き指針、いわゆる「より高い金利をより長く維持する」との姿勢を伴う据え置きであっても、高い実質金利が続く期間を延ばし、このトレードの重荷となる。

第二は、CLARITY法案の期限である。上院が地元での活動期間に入る8月10日ごろまでに、議会がデジタル資産市場明確化法案(CLARITY法案)を可決できるかが焦点となる。同法案は、ビットコインを米商品先物取引委員会(CFTC)の規制対象となるコモディティとして明確に分類し、現物ビットコインETF市場に恒久的な法的確実性を与えるものだ。法案は2025年7月に下院を賛成294、反対134で通過し、2026年5月には上院銀行委員会を賛成15、反対9で通過した。しかし、上院本会議での採決には至っておらず、7月24日時点で予測市場が示す成立確率は50%未満だった。休会前に可決されなければ、最終的な対応は2027年へ持ち越されることになる。CLARITY法案が通貨価値下落ヘッジに関係するのは、規制の明確化が、保険会社、年金基金、政府系ファンドといった機関投資家の参入に必要な前提条件となるためだ。こうした投資家の資金は、ビットコイン需要の次の大きな波になる可能性がある。

第三は、木曜日に発表される第2四半期のGDP統計である。予想を上回る結果となれば、FRBによる金融引き締めの根拠が強まり、通貨価値下落ヘッジが必要とする流動性環境を損なう。弱い結果となれば、その逆の作用が見込まれる。

冒頭で述べたメカニズム――債務が1日当たり約70億ドル(約1兆1480億円)のペースで増加し、景気後退に備えた財政余力が乏しく、FRBにも容易な金融政策上の出口がないという状況――は変わっていない。まだ決まっていないのは、この状況に直面したFRBがどちらの方向へ動くかであり、水曜日の決定がその問いへの答えを示し始めることになる。

■債務は増加中、ビットコインと金への影響はFRBの次の一手次第

FOMCの決定、第2四半期のGDP統計、上院の休会前にCLARITY法案が成立するか頓挫するかを巡る最終局面が重なる今週は、通貨価値低下という投資テーマが機関投資家のポジションを維持できるか、それともタカ派的なシグナルによって、希少資産への投資から再び戦術的な撤退を余儀なくされるかを試すことになる。1日当たり約70億ドルのペースで増え続ける39.7兆ドルの債務は、今後もこのトレードのマクロ経済上の背景であり続ける可能性が高い。問題は、その債務が部分的に生み出すインフレに対するFRBの対応が、このトレードに利益をもたらし続けるのか、それとも再びその実現を先送りするのかということだ。

■注目ポイントQ&A

●通貨価値下落ヘッジとは何ですか?なぜビットコインと金が含まれるのですか?

通貨価値下落ヘッジとは、法定通貨の購買力低下に備え、金、ビットコイン、不動産など、供給量に厳格な上限がある資産や、供給が緩やかにしか増えない資産に投資する戦略です。大規模な財政赤字を継続する政府は、最終的に利下げや通貨供給量の拡大などの金融緩和を迫られ、それによって希少資産に対する通貨の価値が下落するという考え方に基づいています。金の供給量は採掘によって年間約2~3%増加します。ビットコインは、約4年ごとに新規発行量が半減する、プロトコルで定められたスケジュールに従って供給され、総供給量は2100万枚に制限されています。この制約は、政府や中央銀行が変更できるものではありません。

●FRBが水曜日に金利を据え置かず、利上げした場合、ビットコインと金はどうなりますか?

利上げは、短期的には通貨価値下落ヘッジに直接的な逆風となります。ビットコインも金も利回りを生まないため、フェデラルファンド金利が上昇すれば、米国債や短期金融市場商品と比べて、両資産を保有する機会費用が高まります。ゴールドマン・サックスは、利上げシナリオの場合、年末の金価格が4400ドル程度になる可能性があると見積もっています。ビットコインは価格変動が大きく、リスク資産との相関も強いため、反応がさらに大きくなる可能性があります。重要なのは、債務に起因するインフレに対応してFRBが金融を引き締めると、通貨価値低下の問題が裏付けられる一方で、そのヘッジとなる資産の短期的な価格パフォーマンスは悪化するという点です。少なくとも、引き締めが景気後退を招き、その後に金融緩和を余儀なくされるまでは、その状態が続く可能性があります。

●現物ビットコインETFへの資金流入は、通貨価値下落ヘッジが機能しているという信頼できるシグナルですか?

米国上場の現物ビットコインETFへの3週連続の純流入は、約8週間続いた資金流出からの意味のある反転です。しかし、回復は依然として不安定です。7月23日と24日の2日間の流出によって週間の流入額はほぼ打ち消されており、投資家の確信がなお弱いことを示しています。資金の方向だけでなく、その構造も重要です。ジェーン・ストリートやバーチュなどの指定参加者は、ETFの市場価格とビットコインの純資産価値の差を裁定しており、ETFの資金フローはビットコインの週ごとの価格変動の約45%を説明すると推定されています。個人投資家の短期的な資金移動ではなく、大規模な機関投資家から複数週にわたって持続的な資金流入が見られれば、より信頼性の高いシグナルとなります。今週のFOMCの決定とCLARITY法案の成否は、どちらも今後の資金フローを左右することになります。

●CLARITY法案とは何ですか?なぜこのトレードにとって重要なのですか?

デジタル資産市場明確化法案(CLARITY法案)は、ビットコインをCFTCの規制対象となるコモディティとして明確に分類し、デジタル資産の監督を米証券取引委員会(SEC)とCFTCの間で分担する米国の法案です。2025年7月に下院を、2026年5月に上院銀行委員会を通過しましたが、上院本会議ではまだ採決されていません。上院の休会前に可決するための実質的な期限は8月10日ごろです。通貨価値下落ヘッジとの関係は間接的ですが、重要です。規制の明確化は、現在のETF流入額をはるかに上回る資産を保有する保険会社、年金基金、政府系ファンドがビットコインへ資金を配分するための前提条件となります。法案が成立すれば構造的な需要を生むきっかけとなる一方、成立しなければ、こうした資金の参入は早くても2027年まで先送りされることになります。

元記事: US Debt Hits $39.7 Trillion: Bitcoin and Gold Debasement Trade Faces FOMC Test

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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