オルカンとS&P500の信託報酬は年約189円差、つみたて投資枠でどう選ぶか

2026年7月19日 16:18

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オルカンとS&P500は、米国への集中度や為替の影響、NISA固有の注意点まで含めて比較する必要がある。Photo by Austin Distel on Unsplash

オルカンとS&P500は、米国への集中度や為替の影響、NISA固有の注意点まで含めて比較する必要がある。Photo by Austin Distel on Unsplash[写真拡大]

新NISAのつみたて投資枠では、「オルカンなら世界に分散できる」「S&P500なら米国に投資できる」という理解が広がっている。両商品は対象範囲だけでなく信託報酬にも違いがあるが、コスト差だけで結論を出してよいのだろうか。米国への集中度や為替の影響、NISA固有の注意点まで含めて比較する必要がある。

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■「全世界」と「米国」という通説の中身
「オルカン」はeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の通称で、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスへの連動を目指す。対象指数は日本を含む先進国・地域と新興国・地域の計47カ国・地域をカバーする。ファンドの実質的な株式組入銘柄数は2026年6月30日時点で2,416銘柄であり、約2,400銘柄に投資していると整理できる。ただし、指数の構成銘柄数とファンドの実際の組入銘柄数は一致するとは限らない。

一方、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は、米国の代表的な大型株約500銘柄で構成されるS&P500指数への連動を目指す。国・地域をまたぐオルカンに対し、投資対象を米国株に絞る設計である。米国企業への集中を受け入れる代わりに、投資先が明確になる点が特徴といえる。

もっとも、オルカンも米国株の影響から離れているわけではない。2026年6月30日時点のファンドの国・地域別実質組入比率では、米国が63.0%を占める。「全世界に分散」と「米国が6割強」は同時に成り立つ。S&P500との主な違いは、米国以外にも残りの資産を配分していることであり、オルカンを米国株と無関係な選択肢と捉えるのは実態に合わない。

■信託報酬は上限率と加重平均を分けて見る
信託報酬の上限率は、オルカンが年率0.05775%、S&P500が年率0.08140%で、いずれも税込みである。評価額が年間を通じて100万円で一定だったと仮定すると、単純計算ではオルカンが年約578円、S&P500が年約814円となり、差は年約237円である。計算は「100万円×信託報酬率」であり、保有額が変われば金額も変動する。

ただし、両商品は純資産総額の区分ごとに料率が変わる受益者還元型信託報酬率を採用している。2026年7月14日時点の純資産総額は、オルカンが約13.07兆円、S&P500が約12.54兆円である。区分別料率から求めた加重平均信託報酬率はそれぞれ約0.0575%、約0.0764%となり、100万円当たりでは年約575円と年約764円、差は年約189円になる。

この約189円は信託報酬だけを比較した概算である。売買委託手数料、監査費用、海外保管費用などのその他費用は含まれず、実際の負担は運用報告書に示される実質コストで確認することになる。その他費用の差によって、信託報酬だけで見た順序が入れ替わる可能性もある。わずかな料率差だけで商品全体の優劣を決めるのではなく、投資対象の違いと合わせて考える視点が欠かせない。

■2本保有しても分散先が単純に増えるとは限らない
オルカンとS&P500を半分ずつ保有する方法は、商品数だけを見れば分散しているように映る。しかし、オルカンの米国比率を63.0%、S&P500の米国比率を100%として単純計算すると、全体の米国比率は「63.0%×50%+100%×50%」で81.5%、およそ82%となる。併用は米国以外への分散を残しつつ、オルカン単独より米国株の比重を高める組み合わせである。

両商品とも外貨建て資産について原則として為替ヘッジを行わない。円建ての基準価額は、投資先株式の値動きに加え、円相場の影響を受ける。S&P500は投資対象のほぼ全部が米国株であるためドル円相場の影響が大きく、オルカンも米国株が6割強を占めるため無縁ではない。ただし、オルカンには日本株や米ドル以外の通貨建て資産も含まれるため、為替変動の影響はファンド全体で一律ではない。

■非課税枠でも損失への備えは別問題
現行NISAのつみたて投資枠は年間120万円で、NISA全体の非課税保有限度額は取得価額ベースで1,800万円である。NISA口座内の分配金や譲渡益は非課税となる。例えば投資信託の売却益が100万円なら、税率20.315%の課税口座では約20.3万円が課税されるのに対し、NISA口座では税額は0円となる。

一方、NISA口座で生じた損失は、特定口座や一般口座の利益と損益通算できず、繰越控除も適用されない。非課税であることと、損失への税務上の救済があることは別である。売却すると非課税保有限度額の空きは売却時価ではなく簿価相当額が翌年以降に再利用可能になるが、年間投資枠には上乗せされない。市場環境や家計事情により売却する可能性も踏まえ、非課税メリットだけでリスク許容度を広げ過ぎない考え方が重要になる。

■判断軸別の整理
●国・地域をまたぐ分散を重視する場合
47カ国・地域を対象とするオルカンが整合的とみられる。ただし米国比率は6割強であり、米国株の影響を相応に受ける点を前提にする必要がある。

●米国の代表的な大型株への集中を意図的に選ぶことを重視する
S&P500が整合的とみられる。その分、米国市場とドル円相場への依存度が高い構成を受け入れられるかが焦点となる。

●信託報酬の低さを重視する場合
現時点の上限率と加重平均信託報酬率の双方で低いオルカンが整合的とみられる。ただし、100万円当たりの加重平均ベースの差は年約189円であり、その他費用を含む実質コストも確認対象となる。

●米国への比重をオルカン単独より高めながら、米国以外への投資も残すことを重視する場合
両商品の併用が整合的とみられる。ただし、半分ずつでも米国比率は単純計算で約82%となるため、商品数ではなく中身の重複を見るべきである。どの軸を優先するかは、家計の余裕、価格変動への耐性、米国集中への考え方から逆算して確認する必要がある。

※本記事は、マーケットに関する情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨・勧誘するものではありません。掲載内容は作成時点の情報に基づいており、その正確性、完全性、将来の成果を保証するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任において行ってください。

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