JCBとCircleが提携、USDC決済を世界4000万加盟店へ導入検討――まずは社内資金移動の実証実験から

2026年7月16日 11:31

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記事提供元:Tech Times

日本の大手カードブランドであるJCBは、世界第2位のシェアを持つ米ドル連動型ステーブルコイン「USDC」の発行元である米サークル(Circle)の関連会社と基本合意書(MOU)を締結した。この提携により、世界4000万店におよぶJCB加盟店でUSDC決済が利用可能になる道が開かれる。両社はまずJCBの社内資金移動における実証実験(PoC)から開始し、将来的には訪日外国人観光客向けの店頭決済への拡大を目指す方針だ。

■JCBのグローバルネットワークを活用した新たな試み

JCBとサークル・インターネット・グループの関連会社は2026年7月14日(現地時間)、JCBのグローバルインフラにおけるブロックチェーン決済の統合に向けた基本合意書(MOU)を締結したと発表した。公式の共同プレスリリースによると、この提携はステーブルコインを用いた商取引が、これまでの機関投資家向けの試験運用段階から、日常的な小売インフラの規模へと移行しつつあることを示しているという。

両社は、クロスボーダー(国境を越えた)財務業務や加盟店決済におけるステーブルコイン決済インフラの適用可能性を評価する。まずはJCBの社内資金移動に関する実証実験(PoC)から開始し、その後、年間4270万人(2025年実績)に達する訪日外国人観光客向けの店頭でのUSDC決済受け入れへと拡大していく計画だ。

■USDC移動の技術的基盤:サークルの「CCTP V2」プロトコル

MOUで言及されている「複数のブロックチェーンネットワーク間での相互運用性とシームレスな決済体験をサポートする技術の評価」は、単なる抽象的な目標ではない。これは、USDCをブロックチェーン間でネイティブに移動させるサークルの技術メカニズム「Cross-Chain Transfer Protocol(CCTP)」を直接指している。

2025年3月にローンチされた「CCTP V2」は、「バーン・アンド・ミント(焼却と鋳造)」メカニズムを採用している。USDCが異なるブロックチェーン間で転送される際、送信元のチェーン上のトークンはサークルのスマートコントラクトを通じて破棄(バーン)される。その後、サークルの「Iris」アテステーション(証明)サービスがその破棄を暗号学的に署名し、送信先のチェーンで同額のネイティブUSDCが新たに鋳造(ミント)される。

この仕組みにより、USDCは数秒でチェーン間を移動できる。対応しているチェーンでは「ファスト・トランスファー」モードにより8〜20秒で決済が完了する。ラップドトークン(他チェーンの資産を模した代替トークン)やカストディ(保管)リスク、サードパーティ製のブリッジは不要だ。従来のクロスチェーンブリッジは、資産をロックして代替トークンを発行するモデルだったため、ハッカーの標的になりやすかった。実際に、2022年にはNomadブリッジで1億9000万ドル、Wormholeで3億2500万ドル、Roninで6億2500万ドルが流出する壊滅的なハッキング被害が発生している。CCTPは保管庫そのものを排除することで、こうした脆弱性を解消している。

ただし、技術的なトレードオフもある。CCTPはUSDC以外のデジタル資産を移動させることはできず、サークルの証明サービスは分散型転送プロセスにおける中央集権的な信頼点となる。また、サークルはスマートコントラクトに基づいて特定のウォレットアドレスをブラックリストに登録する権限を持っており、過去には米外国資産管理局(OFAC)の制裁(2022年のTornado Cashの事例)や民事訴訟に伴う資産凍結の際、この機能が使用されている。

■2段階のロードマップ:まずは財務部門、次に店頭決済へ

この提携は、ブロックチェーン決済の有効性をまずJCBのバックオフィスで検証した上で、消費者向けサービスへと展開する2段階の構成をとっている。

第1段階では、JCBの社内資金移動における実証実験に焦点を当て、決済効率の向上、送金コストの削減、そしてより広範なクロスボーダー決済フローのサポートについて評価する。この実証実験の背景にある経済的メリットは明確だ。従来のコルレス銀行を経由した国際送金は、通常2〜5営業日を要し、1回あたり1〜3%の手数料が発生する。一方、CCTPの標準転送によるUSDC決済では、ブロックチェーンのガス代(手数料)以外にサークル側への手数料は発生せず、数秒で暗号学的な決済確定(ファイナリティ)が得られる。JCBの財務部門は、この実証実験を通じてコストと時間の削減効果を正確に測定することになる。

この社内検証が成功した後の第2段階として、消費者向けの展開を模索する。両社は、加盟店や訪日外国人向けの店頭でのステーブルコイン決済体験を検討し、マルチブロックチェーンの相互運用技術を評価していく。

インバウンド需要への対応は、加盟店向け展開において最も商業的価値が高い部分だ。日本は2025年に過去最高となる4270万人のインバウンド観光客を迎え、その旅行消費額は9.5兆円(約586億4198万ドル、1ドル=162円換算)に達した。両替の手間や手数料、海外発行カードの利用限度額、現金調達の難しさは、デジタルウォレットが普及している国からの旅行者にとって長年の課題だった。CoinDeskが引用した日本経済新聞の報道によると、ステーブルコイン決済を導入することで、JCB加盟店におけるカード決済の利用限度額による制限を回避できる可能性があるという。

■日本の規制枠組みが後押しに

JCBとサークルの提携が実現した背景には、日本の明確なステーブルコイン規制がある。日本は2023年6月に改正資金決済法を施行し、ステーブルコイン(電子決済手段)の法的枠組みを整備した世界初の主要経済国の一つとなった。この規制により、登録された電子決済手段等取引業者(EPISP)のみが日本国内でステーブルコインを流通させることが認められている。

サークルは2023年11月、日本の金融大手であるSBIホールディングスと提携し、日本国内でのUSDC流通に向けた地盤を固めた。SBI VCトレードは2025年3月にEPISPとしての登録を完了し、日本国内でUSDCの取り扱いを開始している。さらに、2026年6月1日に全面施行された資金決済法の改正により、USDCのような海外発行の信託型ステーブルコインのコンプライアンス経路が明確になった。この強固な規制環境が、JCBのような保守的な金融機関がパブリックブロックチェーン技術を採用する上での安心感につながっている。

■JCBのこれまでのステーブルコインへの取り組み

JCBとサークルの提携は、これまでの国内におけるステーブルコインの取り組みの延長線上にある。2026年1月、JCBはデジタルガレージおよびりそなホールディングスと共同で、ステーブルコイン決済の実社会への導入に向けた協業を開始し、デジタルガレージが日本国内の実店舗における実証実験を主導している。

今回のサークルとのMOUは、これらの国内での試みに「USDC建てのクロスボーダー決済」という新たなレイヤーを追加するものだ。これによりJCBは、デジタルガレージとの協業による「円建てステーブルコインインフラ」と、サークルのCCTPネットワークを活用した「USDCによるドル建てクロスボーダー決済」という、2つの決済アーキテクチャを並行して構築することになる。

■競争の激化に直面するサークル

今回のJCBとの提携は、サークルにとって極めて重要な意味を持つ。同社は現在、ニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場以来、最も商業的に激しい競争に直面しているためだ。2026年7月14日時点で、サークルの株価はこの1ヶ月で約30%下落しており、USDCの流通量は3月のピーク時の約810億ドルから7月には約730億ドルへと減少している。これは2022年以降で最大の月間減少幅だ。

この競争圧力の背景には、2026年6月30日にStripe、Mastercard、Coinbase、Visa、BlackRockなどのコンソーシアムが立ち上げた、米国のGENIUS法に準拠した新しい米ドルステーブルコイン「Open USD」の存在がある。この連合は、現在サークルが独占しているリザーブ(準備金)金利収入を再分配することを目的に設計されている。

みずほ証券のアナリストは、JCBとの提携発表の前日にサークルに対する投資判断を「中立(ニュートラル)」に据え置き、サークルが7月10日に取得したOCC(米通貨監督庁)の信託銀行認可について、「USDCの供給減少やOpen USDとの競争といった同社が直面する根本的な課題を解決するものではない」と指摘した。

JCBとの提携を評価する上で、この背景を理解することは重要だ。「4000万の加盟店」という見出しは、提携が完全に成功した場合の将来的な到達点を示しているに過ぎず、現時点での商業的な約束ではない。USDCがこの規模の普及を達成できるかどうかは、サークルがUSDCの発行元としての地位を維持できるか、CCTPインフラがマルチチェーン相互運用の標準であり続けられるか、そして2段階の実証実験が消費者向け製品化を正当化できる結果を残せるかどうかにかかっている。ジェフリーズのアナリストも、先行者利益が自動的に長期的な優位性につながるとは限らないと警告しており、Open USDを含む銀行やフィンテック企業が発行するステーブルコインとの競争激化が、「USDCの成長と市場シェアを圧迫する可能性がある」としている。

■加速する日本のステーブルコイン市場

JCBとサークルの発表は、日本におけるステーブルコイン関連の動きが最も活発化した週に行われた。コンビニ大手のローソンは、KDDIの円連動型ステーブルコイン「JPYC」とデジタルアセットウォレットプロバイダーのHashportを活用し、8月から都内店舗で円建てステーブルコイン決済の実証実験を開始すると発表した。また、日本の決済企業ネットスターズ(Netstars)は、SolanaおよびPolygonブロックチェーン上でUSDC、USDT、JPYCをサポートする加盟店向け決済サービスを個別に開始している。

これらの動きは、単発の実験ではなく、金融庁(FSA)が整備したライセンス枠組みのもとで、既存の小売企業やインフラ企業が協調して導入を進めている構造的な変化を反映している。サークルは同時に、野村ホールディングスとの間でUSDCを活用した外国為替(FX)決済サービスを2027年までに開始することを目指しており、日本の企業が参加する1日あたり4400億ドルの巨大な外国為替市場への参入も狙っている。

なお、JCBおよびサークルは、店頭決済フェーズの具体的な開始時期については明らかにしていない。まずは社内資金移動の実証実験が最初のマイルストーンであり、その成果が出るまでは、4000万加盟店という数字はあくまで「将来的な可能性」の段階にとどまる。

■注目ポイントQ&A

●JCBの加盟店ネットワークでUSDC決済を可能にする具体的な技術は何ですか?

サークルが提供する「Cross-Chain Transfer Protocol(CCTP V2)」が中核となる相互運用メカニズムです。USDCが異なるブロックチェーン間を移動する際、送信元のトークンを暗号学的に破棄し、送信先で同額のトークンを新たに鋳造することで、従来のクロスチェーンブリッジに伴うカストディリスクを排除します。対応チェーン間では8〜20秒で決済が完了するため、旅行者が異なるブロックチェーンのウォレットから支払った場合でも、加盟店側とシームレスに決済を行うことが可能になります。

●USDCは日本国内で法的に認められていますか?この提携にどう影響しますか?

はい、USDCは改正資金決済法の「電子決済手段」の枠組みにおいて、日本国内でのライセンスを取得した流通経路を持つ唯一のグローバルな米ドルステーブルコインです。2025年3月にSBI VCトレードが日本初の登録電子決済手段等取引業者(EPISP)となり、VCTRADEプラットフォームでのUSDCの取り扱いを開始しました。2026年6月1日に全面施行された法改正により、USDCのような海外発行の信託型ステーブルコインのコンプライアンス経路が明確になっており、JCBとサークルの提携による展開も、この登録EPISPを経由して行われる必要があります。

●ステーブルコイン決済は、従来のカード決済や銀行振込と何が異なり、旅行者にとってどのようなメリットがありますか?

従来の国際的なカード決済では、為替換算手数料やコルレス銀行の仲介、1〜2営業日の決済期間が必要となり、手数料は為替レートや加盟店手数料に上乗せされます。一方、オンチェーンで決済されるステーブルコインは、数秒で決済が確定し、コストはブロックチェーンのガス代のみに抑えられます。デジタルウォレットが普及している国からの訪日観光客にとって、ステーブルコイン決済は両替の手間や手数料、JCB加盟店でのカード利用限度額による制限を解消する手段となります。

●この提携の本格展開を前に、USDCに関して知っておくべきリスクはありますか?

主に3つのリスクがあります。1つ目は、2026年6月30日にStripeやVisa、BlackRockなどが立ち上げた「Open USD」コンソーシアムからの激しい競争圧力です。2つ目は、2023年3月のシリコンバレー銀行破綻時にUSDCが一時約0.87ドルまでディペッグ(米ドルとの連動乖離)した歴史があり、将来的に準備金へのアクセスに障害が生じた場合、加盟店の資金繰りに影響する可能性がある点です。3つ目は、今回のJCBとサークルの提携はあくまで「基本合意(MOU)」であり、商業的な展開を確約したものではなく、店頭決済の開始時期も未定である点です。

元記事: JCB Partners With Circle to Bring USDC Stablecoin Payments to 40 Million Merchants

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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