ソニー銀行、米OCCからステーブルコイン発行に向けた信託銀行設立の条件付き予備認可を取得

2026年7月12日 16:15

印刷

記事提供元:Tech Times

(Sonybank.jp)

(Sonybank.jp)[写真拡大]

ソニー銀行は2026年7月7日、米ドル建てステーブルコインの発行・管理に特化した国法信託銀行「Connectia Trust, National Association」の設立について、米通貨監督庁(OCC)から条件付きの予備認可を取得した。これはソニー銀行にとって米国における最初の大きな規制上のハードルを越えたことを意味するが、実際のトークン発行は少なくとも2027年以降になる見通しだ。本記事では、この認可の背景にある規制の枠組みや、ソニーが狙うビジネスモデルについて解説する。

■Connectia Trustに許可される業務と制限

ソニー銀行の完全子会社としてニューヨーク州に設立されるConnectia Trustは、一般的な商業銀行とは異なり、一般からの預金受け入れや融資、従来の決済処理などは行わない。認められる業務は、ステーブルコインの発行、準備資産の管理、非受託型の暗号資産(デジタルアセット)カストディ、カストディ顧客向けの取引サービス、およびソニー関連会社向けの受託資産管理に限定されている。

この限定的な業務範囲により、同社は預金保険や銀行持株会社法の適用対象外となりつつ、州ごとの送金業ライセンスを個別に取得する代わりに、単一の連邦規制当局(OCC)の監督下に置かれることになる。フィンテック諮問企業FS VectorのEvey Guo氏は、このスキームによりソニーはステーブルコインのライフサイクル全体(発行、カストディ、移転、償還)を単一の連邦監督官庁の下に統合できると指摘する。また、Klaros GroupのRoman Goldstein氏は、パートナー企業のライセンスを借りる場合とは異なり、ソニーが自社でコンプライアンスプログラムや準備金から得られる利回りを直接コントロールできるようになると分析している。

Connectia Trustの初期資本金は4000万ドル(約64億8000万円、1ドル=162円換算)である。この資本金はソニーフィナンシャルグループの自己資本の10%を超えるため、日本の開示ルール上「特定子会社」に該当する。そのため、ステーブルコイン業務を開始するには、OCCの最終認可に加えて日本の規制当局からの承認も必要となる。ソニー側は、商業運用の開始目標を2027年としており、すべての許認可が揃うまではステーブルコインの発行を含むいかなる事業活動も行わないと明言している。

■技術スタックの仕組みとパートナーシップ

ソニー銀行はブロックチェーンインフラを自社でゼロから構築するわけではない。Connectia Trustが連邦認可と法的発行体の地位を保持し、ニューヨークを拠点とするステーブルコインインフラ企業のBastion Platformsが技術的な基盤を提供する。両社は2025年12月に提携協定を発表している。

Bastionはニューヨーク州金融サービス局(DFS)の信託認可を保有し、全米多数の州で送金業ライセンスを運用している。同社のプラットフォームは、ユーザーが米ドルを預け入れた際にステーブルコインを鋳造(ミント)し、裏付けとなる準備資産を適格資産に配分する。償還時にはトークンを消却(バーン)して米ドルを返還する。秘密鍵の管理にはクラウドのハードウェアセキュリティモジュール(HSM)やAWS Nitro Enclavesを使用し、暗号技術的に隔離された環境を確保する。また、KYC(本人確認)、AML(マネーロンダリング防止)スクリーニング、制裁対象者モニタリング、トラベルルール遵守などのコンプライアンス機能も備えている。

このステーブルコインは、ソニーが2025年1月に立ち上げた独自のイーサリアム・レイヤー2ネットワーク「Soneium(ソネウム)」上で稼働する見込みである。これにより、イーサリアムのメインネットよりも手数料を抑え、高速な決済確定を実現しつつ、広範なイーサリアムエコシステムとの相互運用性を維持する。なお、ソニー・イノベーション・ファンドはBastionに出資しており、資本関係を通じてインフラプロバイダーとの連携を強化している。Bastionの累計調達額は4000万ドルを超え、投資家にはソニーのほか、Coinbase Ventures、a16z crypto、Samsung NEXTなどが名を連ねている。

■ソニーが狙う「準備金利回り」と「決済手数料削減」のビジネスモデル

ソニーにとっての商業的なメリットは、主に2つのメカニズムから生じる。1つ目は「決済ネットワーク手数料の回避」である。ソニーのグローバル売上高の30%以上は米国市場から得られており、その多くはクレジットカード決済を経由している。一般的な決済処理手数料は取引あたり1.5〜3%に達する。PlayStationでのゲーム購入やソニーミュージックのサブスクリプション、ソニーピクチャーズの配信サービスなどの決済を、Connectia Trustを通じた独自のステーブルコイン決済に置き換えることで、これらの中間手数料を排除でき、規模が拡大すれば年間で数億ドル規模のコスト削減につながる可能性がある。日本経済新聞の過去の報道によると、ソニーは当初から米国のゲーム・コンテンツ購入者を初期のターゲット層として想定していたとされる。

2つ目は「準備金から得られる金利収入」である。米国の「GENIUS法(2025年7月成立)」に基づき、認可された決済ステーブルコイン発行体は、発行するトークンと同額(1:1)の準備資産(現金、保険付き預金、または93日以内に満期を迎える短期米国債)を保有する必要がある。現在、短期米国債の利回りは年率約4〜5%で推移している。GENIUS法では、発行体がステーブルコインの保有者に対して利息や利回りを支払うことを禁止しているため、ユーザーがソニーのステーブルコインを保有している間に発生する金利収入は、すべてソニー側の財務に帰属することになる。ユーザーは手数料無料の決済エコシステムという利便性を得て、ソニーはその裏で準備金の金利差益(スプレッド)を得るという構造だ。

この点が、CircleのUSDCやTetherのUSDTといったオープンなステーブルコインと、ソニーのステーブルコインの実務上の違いである。USDCなどは誰もが自由に保有・移転できる中立的な決済手段であるのに対し、ソニーのステーブルコインはPlayStationやソニーミュージックなどのエコシステム内に密接に組み込まれた「クローズドループ(閉じた決済網)」を想定しており、実質的には小売店のギフトカードやポイントプログラムに近い性質を持つ。

■Circleの最終認可とソニーの今後のスケジュール

ソニーのConnectia Trustが条件付き予備認可を得たのと同週の2026年7月10日、ステーブルコイン大手のCircle Internet Groupは、OCCから「Circle National Trust」として営業するための最終認可を取得した。Circleは2025年6月に申請を行い、同年12月に条件付き認可を得てから、約7ヶ月を経て最終認可に到達した。もしソニーが同様のタイムラインをたどる場合、Connectia Trustの最終認可は2027年の前半から半ば頃になると予想され、これはソニーが掲げる2027年の商業ローンチ目標とも合致する。

ソニーは、Circle、Paxos、BitGo、Fidelity Digital Assets、Rippleなど、OCCから条件付き国法信託銀行認可を取得した企業のグループに加わることになる。しかし、これまでの申請者が暗号資産ネイティブ企業やウォール街の金融機関であったのに対し、ソニーは「家電・エンターテインメントの複合企業が、自社のコンテンツエコシステムのために銀行グレードの決済インフラを構築する」という点で、これまでにない独自の立ち位置を示している。

■業界団体からの懸念と規制上の課題

OCCによるConnectia Trustへの条件付き認可に対しては、米国の3つの業界団体(銀行政策研究所、独立コミュニティ銀行協会、全国コミュニティ再投資連合)から正式な異議申し立てが提出されていた。これらの団体は、商業企業と銀行業務の分離原則に関する疑問や、無保険のステーブルコイン発行体が破綻した際の救済枠組みの欠如、連邦預金保険公社(FDIC)の対象外であることなどを懸念点として挙げている。

しかし、OCCはこれらの異議を退け、認可を決定した。ソニー固有の条件として課されたのは、「他グループ会社の役職を兼任しない、専任の最高財務責任者(CFO)の設置をいつでも要求できる権限をOCCが持つ」という点のみであり、その他の懸念はステーブルコイン信託銀行の申請全体に共通する一般的な課題とみなされている。

さらに、米国の「GENIUS法」に基づく実施規則の策定期限が2026年7月18日に迫っている。OCCやFDICを含む6つの連邦機関は、同法に基づく詳細なルールを確定させる必要がある。このルールの内容(準備金の要件や利回り分配禁止の解釈など)が、Connectia Trustが商業開始初日から法的にどのような運用を行えるかを直接左右することになる。

■注目ポイントQ&A

●Connectia Trustとは何ですか?すぐにステーブルコインを発行できますか?

Connectia Trustはソニー銀行の米国子会社であり、米ドル建てステーブルコインの発行・管理を行うために設立された国法信託銀行です。2026年7月7日に米OCCから条件付き予備認可を得ましたが、これは最終的な発行許可ではありません。実際に業務を開始するには、OCCの開業前検査のクリアや資本金要件の充足、最終認可の取得に加え、日本の金融規制当局からの承認も必要です。商業運用の開始は2027年を目指しています。

●国法信託銀行の認可は、通常の銀行ライセンスとどう違うのですか?

国法信託銀行は、ステーブルコインの発行や準備資産の管理、デジタルアセットのカストディといった特定の受託業務を行うことができますが、一般からの預金受け入れや融資を行うことは禁止されています。預金を取り扱わないため、FDIC(連邦預金保険公社)の保険対象外となり、銀行持株会社法の適用も受けないため、親会社(ソニーグループなど)が連邦準備制度理事会(FRB)による連結監督を受けることもありません。

●ソニーのステーブルコインは、ユーザーとソニーのどちらにメリットがありますか?

双方にメリットがありますが、構造は非対称です。ユーザーはPlayStationのゲームやソニーの配信サービスをクレジットカード手数料なしで決済できるようになります。一方、ソニーは決済手数料(1.5〜3%)を削減できるだけでなく、ユーザーが保有するステーブルコインの裏付けとなる準備金(短期米国債など)から発生する金利収入(年率約4〜5%)をすべて自社の利益にすることができます。GENIUS法により、発行体がユーザーに金利を分配することは禁止されているため、金利収入はすべてソニー側に帰属します。

元記事: Sony Bank Wins OCC Stablecoin Charter, Joining Circle in Federal Dollar-Issuance Race

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード

関連記事