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トヨタ、米国製初の3列シート新型EV「ハイランダー」の生産を延期――ハイブリッド車の好調と規制緩和が背景か

(Toyota.com)[写真拡大]
トヨタ自動車が、米国で生産する初の3列シート電気自動車(EV)「ハイランダー(2027年モデル)」の生産開始を延期したことが明らかになった。当初は2026年後半の発売が予定されていたが、現時点で新たな発売時期は公表されていない。この延期の背景には、同社のハイブリッド車(HV)の極めて好調な販売実績に加え、米国の規制緩和によるEV導入のインセンティブ低下があるとみられている。
■好調な既存モデルとEV生産延期の背景
トヨタは2026年7月8日、米国製初となる3列シートのバッテリーEV(BEV)「ハイランダー(2027年モデル)」の生産開始を延期したことを認めた。新たな発売時期は明らかにされていない。これにより、2026年後半の発売という公約は後退し、同じプラットフォームを共有する他の3車種についても生産開始時期が未定となった。
この決定の背景には、無視できない財務上の実績がある。トヨタは2026年6月末までに、米国市場でガソリン車およびハイブリッド車(HV)の「ハイランダー」と「グランドハイランダー」を計10万台以上販売した。これに対し、同期間におけるトヨタのEV全体の販売台数は2万2,000台弱にとどまる。ディーラー網からもHV版ハイランダーの需要は「極めて旺盛」と報告されており、トヨタが公式に説明する「発売に向けた車両の追加調整」という理由は、既存のヒット製品が稼ぎ出す利益を優先するという、よりシンプルな経営判断と深く結びついているとみられる。
■トヨタの公式見解と他車種への波及
トヨタの広報担当者は、米自動車メディアのCars.comおよびInsideEVsに対し、「発売に先立ち、車両の追加調整を行っている。生産開始が確認され次第、発売時期をアップデートする」と述べた。しかし、具体的な調整内容や生産開始時期、延期が数週間単位なのか数カ月単位なのかについては言及を避けた。2026年2月の発表時点では、2026年後半に発売し2027年初頭にかけて販売を継続するとしていたが、その計画は保留された形だ。
2026年7月10日時点で、トヨタはハイランダーEV、および改良型「TNGA-K」プラットフォームを共有するレクサス「TZ」(プレミアム仕様の姉妹車)、スバル「Getaway」(2026年末までの発売を予定していたモデル)のいずれについても、改定されたスケジュールを公表していない。
■規制緩和がもたらした「急ぐ必要のない」環境
今回の延期は、規制環境の変化とも無関係ではない。2025年7月4日に成立した「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」により、トヨタがEV投入を急ぐ必要性が大幅に低下した。第一に、同法は新車EV向け最大7,500ドル、中古EV向け最大4,000ドルの連邦購入税額控除を廃止した。これにより、2025年10月以降、消費者の実質的なEV購入コストが上昇し、需要が減退した。
第二に、同法の第40006条により、企業平均燃費(CAFE)基準に基づく制裁金の最大額が「0.00ドル」に再設定された。これにより、CAFE基準の未達に対する金銭的なペナルティが事実上消滅した。以前は、燃費基準を満たさない自動車メーカーには多額の罰金が科されていたため、ガソリン車の方が利益率が高くてもEVを販売する合理性があった。しかし、罰金がゼロになり、購入者を惹きつける連邦政府のインセンティブも失われたことで、ハイランダーEVの投入を急ぐコスト対効果の計算は一変した。EVの計画を減速させているのはトヨタだけではない。2025年12月の学術分析によると、既存の自動車メーカーは規制緩和や市場の一時的な冷え込みを利用してEV開発を遅らせる傾向があり、これは米国、ドイツ、日本のメーカーに共通して見られるパターンだという。
一方、ガソリン車版ハイランダーの販売は好調だ。2026年上半期における2026年モデル(ガソリン車)の販売台数は前年同期比6.7%増の3万2,000台を記録した。現行モデルの生産は2026年12月まで継続される予定で、ディーラーの在庫は2027年に入っても十分に確保される見通しだ。
■ハイランダーEVのスペックと延期の痛手
今回計画が宙に浮いたハイランダーEVは、トヨタが「調整」と表現する以上に技術的な野心に満ちたモデルである。ケンタッキー州のGeorgetown工場で組み立てられ、ノースカロライナ州の139億ドル(約2兆2,518億円、1ドル=162円換算)規模の自社施設で生産されたバッテリーパックを搭載する、初の米国製トヨタBEVとなる予定だった。
プラットフォームには、カムリやRAV4、現行ハイランダーと共通の「TNGA-K」をEV向けに改良して採用。床下にバッテリーパックを収める設計変更により低重心化を図り、空力性能や静粛性も向上させている。スペックは2種類用意され、前輪駆動(FWD)の「XLE」グレードには77.0kWhのバッテリー(221馬力、航続距離最大約462km/287マイル)を、全輪駆動(AWD)モデルには95.8kWhのバッテリー(338馬力、航続距離最大約515km/320マイル)を搭載する。
競合に対する強みとして注目されるのが、双方向充電機能(V2L:外部機器への給電、V2H:停電時の家庭への給電)の搭載だ。現在、米国のテスラ車でV2Hに対応しているのは「サイバートラック」のみで、主力車種の「モデルY」の大部分は非対応である。競合の起亜(Kia)「EV9」もV2Hに対応しており、3列シートEVセグメントでは必須となりつつある機能をハイランダーEVも備えていた。
価格は未発表だが、アナリストは「bZ Woodland」の上位に位置することから、ベースとなるXLEグレードの開始価格を5万ドル(約810万円、1ドル=162円換算)前後と予測している。
■競合他社は攻勢を維持
トヨタが足踏みをする間にも、3列シートEV市場は急速に動いている。現代自動車(ヒョンデ)の「IONIQ 9」は2026年上半期に4,858台を販売(前年同期比380%増)。起亜の「EV9」も同期間に7,035台(前年同期比約42%増)を売り上げた。これらはEV9が5万4,900ドルから、IONIQ 9が5万8,995ドルからと、ハイランダーEVの予想価格より高価であるため、トヨタが5万ドル前後で投入できれば価格競争力は維持できる。しかし、発売までに競合が市場を席巻してしまう懸念は残る。
さらにテスラは2026年7月2日、ベストセラーSUVの3列6人乗り仕様となる「モデルY L」を6万1,990ドル(ローンチシリーズ)で米国市場に投入した。これにより、トヨタが参入する前にファミリー層の需要が他社に流れてしまう可能性が高まっている。
■購入者への影響
今回の延期は、トヨタが抱える構造的なジレンマを浮き彫りにしている。同社の強力なHVラインアップの成功が、皮肉にもEV移行を遅らせる財務的なインセンティブを生み出している。一方で、トヨタは米国内で組み立てられたバッテリーセルを使用し、米国内で大型EVを製造する唯一の主要メーカーになる準備を進めており、長期的な投資姿勢自体は本物である。
既存のガソリン車やHVのハイランダーを検討している購入者にとって、今回の延期は朗報と言える。実績のある現行モデルの生産が2026年12月まで継続され、2027年に入っても在庫が十分に確保されるからだ。しかし、ハイランダーのEV版を待ち望んでいた購入者にとっては、具体的なタイムラインも価格も不透明なまま、他社製EVという選択肢だけが増えていく状況となっている。
■注目ポイントQ&A
●トヨタが2027年モデルのハイランダーEVの発売を延期した理由は何ですか?
トヨタは公式には「発売に向けた車両の追加調整を行っているため」と説明しています。しかし専門家は、ガソリン車およびHVモデルのハイランダーが極めて好調に売れていること(2026年上半期に10万台以上を販売したのに対し、EV全体は2万2,000台弱)に加え、米国の法改正(OBBBA)によってEV購入の税額控除が廃止され、燃費基準未達の罰金がゼロになったことで、EVの投入を急ぐ財務的な必要性が低下したことが背景にあると指摘しています。
●ハイランダーEVはいつ発売されますか?
2026年7月10日時点で、トヨタは新たな生産開始時期や発売時期を公表していません。当初は2026年後半の発売を予定していましたが、アナリストは2027年以降にずれ込む可能性が高いとみています。なお、現行のガソリン車およびHVモデルは2026年12月まで生産が継続されます。
●現在購入できる代替の3列シートEVにはどのようなものがありますか?
現在米国市場では、起亜の「EV9」(5万4,900ドル〜)、現代自動車の「IONIQ 9」(5万8,995ドル〜)、テスラが2026年7月に発売した「モデルY L」(6万1,990ドル〜)、リヴィアンの「R1S」(約7万7,000ドル〜)などが販売されています。ただし、2026年時点ではいずれも連邦政府のEV購入税額控除の対象外となっています。
元記事: Toyota Delays First US-Made Three-Row EV as Hybrids Outsell Its EVs Five to One
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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