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相場展望7月28日号 米国株: 決算発表で業績不振企業が目立ち始めた 日本株: 関税交渉に合意とあるが、問題点が2つ (1) 合意文書がない (2) トランプ氏に80兆円もの引出権を付与
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)7/24、NYダウ▲316ドル安、44,693ドル
2)7/25、NYダウ+208ドル高、44,901ドル
【前回は】相場展望7月24日号 米国株: 米国企業も関税で減益企業が増加、相場の流れに変化の兆し 日本株: トランプ関税合意で約3兆円負担増、企業・雇用支援が必要
●2.米国株:決算発表で業績不振企業が目立ち始めた
1)4~6月期決算発表で、不振企業が目立ち始めた
・テスラ、世界で失速、4~6月期販売台数で前年同期比▲13%下回る。IBM、クラウド事業部門が不振。インテル、赤字続きで人員整理。
・アルファベットは好決算
2)関税交渉の進展を期待し、7/25米国株高
・日本に次いで、欧州連合(EU)も関税交渉で合意した。内容は、相互関税と自動車関税は15%。鉄鋼・アルミの50%関税は触れず。米国からエネルギーを7,500億ドル(約109兆円)購入。米国への投資6,000億ドル(約87兆円)を実施。防衛装備品を米国から購入。
3)注目材料
・FOMCの金利。
・拡大する米国の財政赤字。
・米国物価上昇で消費者の弱体化が進む。
●3.米国・EUがトランプ関税交渉で合意、30⇒15%に、自動車も15%(TBS)
1)その他の合意事項
・EUは米国から7,500億ドル相当のエネルギーを購入。
・6,000億ドルの新規投資を米国で行う。
・EUが米国から防衛装備品を大規模に購入する。
・EUは報復関税の発動を見送る。
・鉄鋼・アルミに対する50%関税は維持する。
●4.インテル、第3四半期見通しは冴えず、大幅人員削減を発表(ロイター)
1)従業員数、2024年末9.95万人⇒2025年末7.5万人へ。
2)6四半期連続赤字、受託生産事業の不振続く、4~6月期▲3,400億円純損失。
●5.米国新規失業保険申請件数▲0.4万件減の21.7万件、3ヵ月ぶり低水準 (ロイター)
1)労働市場の安定が示された。
2)ただ、継続受給案件数が増加し、失業者が新たな職を得ることが難しい状況も示唆した。
●6.独自動車フォルクスワーゲン、1~6月期▲37%減益、追加関税で▲2,260億円追加コスト(FNN)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)7/24、上海総合+23高、3,605
2)7/25、上海総合▲12安、3,593
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)7/24、日経平均+655円高、41,826円
2)7/25、日経平均▲370円安、41,456円
●2.日本株:関税交渉に合意とあるが、問題点が2つ
(1)合意文書がない (2)トランプ氏に80兆円もの引出権を与えたこと
1)日経平均は7/23~24の2日間で+2,052円もの急伸、NYダウ比で割高感が発生
・日経平均とNYダウの状況(7/23~24)
7/22終値 ⇒ 7/24 上昇幅 上昇率
NYダウ 44,502ドル 44,693 +191ドル +0.43%
日経平均 39,774円 41,826 +2,052円 +5.16%
2)長期金利上昇し、株式の相対的な割高感が意識される
・7/25はNYダウと日経平均はまちまち、日経平均は急騰の反動安
NYダウ +208ドル高
日経平均 ▲370円安
・日本10年債利回りは7/24、1.608%に上昇
日本10年債利回りの推移
7/01 1.400%
7/22 1.511
7/24 1.608
7/25 1.607
・日経平均は(1)NYダウ比で割高感(2)金利高で、7/25は▲370円売られた。
・金利高は銀行株の収益増に結び付くが、全般的は負の影響が懸念される。
3)4~6月期決算発表で、下方修正が目立ち始め、投資家心理の悪化が懸念
・決算で下方修正・予想以下の企業
信越化学
三菱自動車
キャノン
ルネサス
4)関税合意文書がない、15%関税妥結は将来の日本の膨大な不良債権を産む?
・「合意文書がない」、これでは「屈辱的な結果になる可能性」が懸念される。
・80兆円(5,500億ドル)もの日本国口座からの引出権(キャッシュカード)を石破政権はトランプ氏に与えた。この80兆円の使い方には、トヨタなど日本企業の米国投資額は含まれないというトランプ政権高官発言もある。トランプ氏が投資先を決め、得た利益の90%が米国に、日本は10%だそうだ。投資が失敗した場合の負担の取り決めがない。おそらく、損失の全額は日本が受けるのだろうが、合意文書がないだけにとんでもなく遺憾な結果になる恐れがある。投資損失は、税金で負担することになる。
・80兆円の大部分が「融資・融資担保」になるようだが、民間銀行が扱うというよりは政府系金融機関が役割を担うと思われる。これらの融資等は政府保証で低い利率で行われるため、差額の金利は税金から補填されることになる。
石破首相は、消費税の減税を拒んだ理由に「子供・孫の負担になる」とした。トランプ氏に渡した80兆円のキャッシュカードの補填は「現役・子供・孫」が負担することになるが、その石破首相が決めたことだ。
・相互関税24⇒25⇒15%、自動車関税2.5⇒27.5⇒15%を関税交渉で引き下げたということで、株式市場は歓喜し、2日間で+2,052円もの急伸となった。米国株、欧州株も好感して連鎖上昇した。
・中味を見ると、果たして喜べるものなのだろうか?問題は2つ。
(1)合意文書がない。
・赤沢大臣が合意文書にしなかったのは、「8/1」から関税15%実施のための大統領令を求めたからだと言う。合意文書作成には日時がかかり8/1から相当遅れるためと説明した。
・ところが、米国政権から「8/1実施」との確約発言がない。
・合意文書がないと、米国との間で齟齬が生じた場合、互いの主張が折り合えず、両国の間が険悪になりやすい。それは歴史が証明している、だから紛争リスクを抑えるために合意文書を取り交わしてきた。それが外交の基本の1つである。
(2)80兆円もの使い方に、日本は関与できず、トランプ氏の一存で決める。しかも、使用期限の定めがない。
・80兆円は、投資・融資・担保の総額である。
・トランプ2期目の期限である3年半で80兆円が使われる可能性が高い。
・赤沢大臣はリスクは投資の数百億円に過ぎない言っているが、合意文書が作成されないため、確認しようがない。投資の利益配分である、米国9割・日本1割も、投資0.8~1.6兆円に対する利益が数百億円と小さく気にする必要ないと赤沢大臣は言う。さらに、赤沢大臣は80兆円枠がトランプ2期政権以降も使われると言うが、トランプ氏が枠を次期政権のために残すとは思えない。来年秋は、米国では中間選挙がある。トランプ氏は、この中間選挙のために躍起となって大統領令を連発している。中間選挙で負けると、トランプ政権はレイムダック化するためだ。この中間選挙に勝つために80兆円が使われると見るべきだろう。トランプ共和党政権が3年余の後、大統領選挙で民主党が勝利した場合、民主党政権は日本の80兆円が米国大統領選に共和党に加担したと日本攻撃を始めるリスクがある。最近の世論調査では、トランプ支持が37%と就任時から▲10%下落している。
・ベッセント米国財務長官は「合意の実施状況を四半期ごとに評価する。トランプ大統領に不満があれば関税は25%に戻る」と合意後に日本に圧力をかけきた。
・合意内容について、米国と石破政権とで理解の違いがすでに出始めている。合意文書が作成されないため、振り回される可能性がある。
・石破首相、赤沢大臣は外交経験がない。日本人的な「お人好し」は通用しないのが、外交の常識だ。それにしても外務省は黙ったままである。不気味な感じがする。
●3.全国のデパート、上半期の売上は前年同期比▲3%余の減少(NHK)
●4.ルネサス、1~6月期に米国ウルフスピード関連で▲2,350億円損失、赤字転落(ロイター)
●5.三菱自、4~6月決算で営業利益▲84%減益、米国関税で▲144億円押し下げ(NHK)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4452 花王 業績堅調
・6981 村田製作所 業績回復期待
・7259 アイシン 業績好調
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