アリババのAIエージェント「QwenWork」、米ジェフリーズ評価で首位も法務確認が不可欠

2026年8月28日 17:02

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記事提供元:Tech Times

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アリババは2026年8月26日、職場向けAIエージェントプラットフォーム「QwenWork」国際版の公開ベータを開始した。Web版とデスクトップ版を提供し、アジア、中東、ラテンアメリカなどの市場を主な対象とする。

QwenWorkは、調査や文書作成、Webサイト制作、ブラウザ操作、複数工程の自動化などを一つの環境で実行するサービスだ。米投資銀行ジェフリーズが8月17日付の調査で実施した職場向けAIエージェント8製品の評価では、100点満点中95点で首位になったとアリババは説明している。

一方、国際版の公式資料によると、ユーザーのコンテンツと関連データはシンガポールにあるクラウド環境へ保存される。国際企業が導入を判断する際には、保存場所だけでなく、サービス提供主体、関連会社や委託先へのデータ移転、政府機関からの要請に対する方針、削除後の保持期間などを契約書やデータ処理条件で確認する必要がある。

■5種類の業務タスクで95点

アリババの説明によると、ジェフリーズは8つのAIエージェントを対象に、複数ファイルからの調査と根拠抽出、Web調査と情報統合、ブラウザ操作、資料からのプレゼンテーション作成、マーケティング用ポスター制作という5種類の業務タスクを評価した。

QwenWorkは総合95点を獲得し、ブラウザ操作で満点、複数ファイルの調査、プレゼンテーション作成、マーケティングデザインでそれぞれ95点だったという。これはアリババが紹介したジェフリーズの独自評価であり、実際の企業環境における性能や適合性は、対象業務、利用データ、連携先、権限設定によって変わる。

また、この評価は業務タスクの実行結果を測ったもので、データ保護や法令順守、既存システムとの統合性まで保証するものではない。企業が製品を選定する際には、性能評価と情報管理上の評価を分けて考える必要がある。

■3つの既存製品を一つの環境に統合

QwenWork国際版は、ソフトウェアやWebアプリを構築する「QoderWork」、複数工程のワークフローを自動化する「MuleRun」、許可を得たうえでブラウザやローカルコンピューターを操作する「Wukong」の主要機能を統合している。

ユーザーが自然言語で目的を入力すると、エージェントが必要な機能を選び、ファイルや外部情報を利用して成果物を作成する。調査、文書やプレゼンテーションの作成、ローカルファイルの処理、Webサイトの制作と公開、定期タスクの実行などに対応する。

テキストだけでなく、画像、音声、動画を含むコンテンツの生成にも対応する。作成したワークフローは再利用可能な「Skill」として保存でき、ニュースの収集や定例レポートの作成などをスケジュール実行することも可能だ。

国際版のインターフェースは公開ベータ開始時点で英語と簡体字中国語に対応する。繁体字中国語、日本語、韓国語、スペイン語、ポルトガル語などは今後追加する予定としており、日本語版の具体的な提供日は公表されていない。

■Qwen3.8-Maxを利用、性能値はアリババ公表

QwenWorkでは、アリババが2026年8月3日に発表した大規模AIモデル「Qwen3.8-Max」を利用できる。Qwen3.8-Maxは、総パラメータ数2.4兆、処理時に有効化されるパラメータ数950億のスパースMixture-of-Experts構成を採用している。

Mixture-of-Expertsは、入力の処理にすべてのパラメータを使うのではなく、必要に応じて一部の専門ネットワークを選択する仕組みだ。アリババは、この構成によって巨大な総パラメータ数と推論効率の両立を図ったと説明している。

同社公表の評価では、指示追従能力を測るIFBenchで82.8、コンピューター操作能力を測るOSWorld-Verifiedで86.1を記録した。これらはモデル選定の参考となるものの、ベンダーが公表した結果であり、評価条件や実際の業務との対応関係を確認する必要がある。

Qwen3.8-Maxと同規模のオープンウェイトモデルも公開されている。ただし、モデル全体を自社環境で運用するには大規模な計算資源が必要となる。セルフホスト環境ではデータの送信先を自社側で管理しやすくなる一方、利用するモデル、関連ソフトウェア、更新方法、外部通信の有無を含めたシステム全体の設計が重要になる。

■国際版のデータはシンガポールに保存

QwenWorkの公式プライバシー・セキュリティ資料は、ユーザーコンテンツと関連データをシンガポールにあるクラウドサービス環境へ保存すると明記している。国際版サービスの提供主体はDingTalk (Singapore) Private Limitedとその関連会社である。

処理対象には、アカウント情報、プロンプト、アップロードしたファイル、生成物、利用状況、操作ログ、クラウドドライブに保存したファイル、ナレッジベース、ワークフロー設定などが含まれる。企業管理者が設定したメンバー権限やコネクタ設定も処理対象となる。

公式資料では、通信時のTLS暗号化、保存データの暗号化、最小権限に基づくアクセス管理、多要素認証、監査ログ、脆弱性検査などの対策を掲げている。また、組織ごとに独立したワークスペースを設け、利用履歴やコンテンツを組織間で共有しないとしている。

もっとも、データセンターの所在地だけで企業の法的要件を判断することはできない。どの法人がデータを管理するのか、関連会社やサービス提供事業者がどこからアクセスできるのか、国外移転が行われる場合にどのような保護措置を採るのかといった点も確認対象になる。

■中国法をめぐる論点は個別評価が必要

中国の国家情報法第7条は、組織と国民に対し、法に基づいて国家情報活動を支持、援助、協力することを求めている。第14条は、国家情報機関が関係する機関、組織、国民に必要な協力を求められると定める。

これらの条文は中国企業を利用する際のリスク評価で参照されるが、シンガポール法人が提供し、シンガポールに保存される個別サービスのデータへ中国当局がどの範囲でアクセスできるかを、条文だけから一律に確定することはできない。企業グループ内の管理関係、データへの技術的アクセス、契約上の役割、適用される各国の法律などを踏まえた検討が必要となる。

中国では、2026年1月1日に改正サイバーセキュリティ法が施行された。改正法はAIの基礎研究やインフラ整備への支援、倫理規範、リスク監視、安全管理などに言及するとともに、サイバーセキュリティ義務違反に対する罰則や域外適用に関する規定を強化した。

中国のデータセキュリティ法や個人情報保護法にもデータ分類、重要データの保護、一定の越境移転や国内保存に関する規定がある。ただし、あらゆる中国企業の全世界のデータを一律に中国国内へ保存させる制度ではない。QwenWorkへの適用関係は、処理されるデータ、関係法人、データフロー、利用地域ごとに確認する必要がある。

■料金と外部サービス連携

QwenWork国際版は、個人版と企業版を用意し、サブスクリプションとクレジットを組み合わせた料金体系を採用する。個人版には無料プランのほか、Personal Standardが月額20ドル、Personal Proが月額40ドルで提供されている。2026年8月28日時点の指定レートで換算すると、それぞれ約3180円、約6360円となる。

企業版は利用者ごとのシートと追加クレジットで構成され、契約規模に応じた条件の確認が必要だ。導入時には、単価だけでなく、処理するタスクごとのクレジット消費量や追加購入費用を含めて比較する必要がある。

外部サービスへ接続するコネクタについて、公式製品ガイドは国際版の構成要素として案内している。ローンチ時点で一律に未提供とみなすのではなく、自社が必要とするERP、CRM、ストレージ、コミュニケーションサービスなどに対応したコネクタが実際に利用可能か、必要な権限やデータ交換範囲とともに個別に確認するのが適切だ。

■米国防総省指定も政府関連企業には確認事項

米国防総省は2026年6月、国防権限法1260H条に基づく「中国軍事企業」の一覧へアリババを追加した。アリババは指定の根拠を否定し、一覧からの削除を求めてカリフォルニア州の連邦裁判所へ提訴している。

一覧への掲載は、米国内におけるアリババの事業や一般企業との取引を全面的に禁止する制裁ではない。一方、米国防総省による直接調達や、将来予定される第三者経由の調達制限に関係するため、米政府との契約や政府向けサプライチェーンに加わる企業には追加の確認事項となる。

■企業は利用データと管理機能を確認

QwenWorkのデスクトップ版には、作業上の好みや過去の文脈をセッション間で引き継ぐオプトイン機能「Awareness」が用意されている。利用者は協働スタイルや作業上の取り決めを設定でき、機能を無効にすることもできる。

継続的なパーソナライズは、毎回同じ条件を説明する手間を減らす。一方で、企業が利用する場合は、どの情報が保持されるのか、保存期間や削除方法、管理者が制御できる範囲を確認する必要がある。

公開情報だけを扱う調査、試験的なコンテンツ制作、機密情報を含まないプロトタイプ作成などでは、公開ベータを通じてQwenWorkの業務性能を検証できる。顧客情報、医療情報、法務文書、未公開の経営情報、政府関連データなどを扱う場合は、保存場所に加えて、処理経路、アクセス主体、データ保持、越境移転、監査機能、契約上の責任分担を確認したうえで導入を判断することになる。

■注目ポイントQ&A

●QwenWork国際版のデータはどこに保存されますか?

公式資料では、ユーザーコンテンツと関連データはシンガポールにあるクラウドサービス環境へ保存されると説明されています。企業利用では、保存場所に加え、処理経路、関連会社や委託先からのアクセス、国外移転の条件も確認する必要があります。

●中国国外のデータにも中国法が必ず適用されますか?

国家情報法には組織や国民へ情報活動への協力を求める規定がありますが、シンガポール法人が提供するサービスの国外保存データに対する具体的な適用範囲を一律に判断することはできません。関係法人、技術的アクセス、契約、データフローを踏まえた個別の法的評価が必要です。

●ジェフリーズはQwenWorkの何を評価しましたか?

アリババの説明では、複数ファイルからの調査、Web調査、ブラウザ操作、プレゼンテーション作成、マーケティング用ポスター制作の5種類です。QwenWorkは8製品中最高となる95点を獲得しましたが、この評価は法令順守やデータ管理を保証するものではありません。

●QwenWorkは日本語で利用できますか?

公開ベータ開始時点のインターフェースは英語と簡体字中国語です。日本語への対応は予定されていますが、具体的な提供日は公表されていません。

●企業が導入前に確認すべき事項は何ですか?

データの保存場所と処理経路、アクセスできる法人や委託先、保持・削除条件、国外移転、監査ログと管理者権限、必要なコネクタの提供状況、料金とクレジット消費量、政府機関からの要請に関する契約条件などを確認する必要があります。

●Awareness機能は無効にできますか?

無効にできます。Awarenessは任意で有効化する機能で、作業上の好みや過去の文脈を次のセッションへ引き継ぎます。企業では、保持される情報と社内のデータ最小化方針が一致するかを確認したうえで利用するのが適切です。

元記事: QwenWork Earns Jefferies Top Agent Rank; Chinese Law Applies to Every Global Deployment

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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