AZ-COM丸和、約2300の委託先への支払いに円ステーブルコイン「JPYC」導入へ

2026年7月21日 20:30

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記事提供元:Tech Times

物流大手のAZ-COM丸和ホールディングスは2026年7月20日、個人トラックドライバーや地域の下請け業者など、約2300の取引先への報酬その他の支払いに、円連動型ステーブルコイン「JPYC」を導入すると発表した。日本の大企業が規制対象の円建てデジタル決済手段を日常的かつ大規模な企業間決済に利用する初の事例と位置付けられているが、支払いの開始時期や具体的な運用方法はまだ確認されていない。即時に近い決済は小規模事業者の資金繰り改善に役立つ可能性がある一方、日本円への換金手段や会計処理などに課題が残る。

■B2B決済と小売店舗での実証実験が並行して進む日本のステーブルコイン市場

2017年からアマゾンジャパンの主要なラストワンマイル配送パートナーを務めてきた東証上場の物流会社、AZ-COM丸和ホールディングス(以下、AZ-COM丸和)は2026年7月20日、個人トラックドライバーや地域の下請け業者など、約2300の取引先への報酬その他の支払いに、円連動型ステーブルコイン「JPYC」を導入すると発表した。Nikkei Asiaが最初に報じたこの動きは、日本の大企業が規制対象の円建てデジタル決済手段を日常的かつ大規模なB2Bの委託先支払いに利用する初の事例とされ、単発の概念実証から、同社自身が長期的な運用と位置付ける段階へ移るものだ。

これとは別に、関連する動きもある。国内第3位のコンビニエンスストアチェーンであるローソンは2026年7月上旬、KDDIおよびWeb3インフラ事業者のHashPortと共同で、8月上旬から東京都内の高輪ゲートウェイシティ店において、消費者向けのJPYC決済実証実験を開始すると発表した。2つの発表は、2026年の日本企業による円ステーブルコインの導入が、B2Bの委託先支払いと小売店舗での消費者決済という2つの経路で並行して進んでいることを示している。

ローソンの実証実験は、コンビニエンスストアのPOSシステムに直接連携する、日本初のステーブルコイン決済試験であることが確認されている。開始当初は一般消費者ではなく、提携する3社の一部従業員を対象とする。HashPortのノンカストディアル型モバイルウォレットを使用し、利用者が会計時にバーコードを読み取って決済する仕組みだ。

■物流「2024年問題」とステーブルコインによる即時決済の利点

AZ-COM丸和(東証:9090)は、2026年3月期に2305億円の売上高を計上し、全国47都道府県をカバーする配送網を運営している。暗号資産を主力とする企業ではなく、下請け業者との契約関係や支払条件、資金の流れなどは従来型の仕組みで運用されてきた一般的なサードパーティー・ロジスティクス事業者である。

円ステーブルコインの採用を決めた背景には、日本のトラック輸送業界にかかる圧力がある。2024年4月以降、働き方改革関連法により、トラックドライバーの年間時間外労働は960時間に制限された。歴史的に労働時間が全国平均より約20%長かった業界の労働環境を改善するための規制だが、働くことのできる時間が減れば配送可能量も減少する。世界経済フォーラムは、構造的な対策がなければ2030年にドライバーが34%不足すると推計しており、業界には、確保する必要のあるドライバー本人の収入が減る可能性も加わっている。

個人事業主のドライバーや地域の小規模運送会社にとって、労働時間の上限は収入減につながる。AZ-COM丸和は時間当たりの単価を引き上げるのではなく、委託先が代金を受け取る時期を早めることで、契約の魅力を高めようとしている。従来の銀行振込では、日本の物流業界における下請け業者への支払いは、請求確定後30~60日となるのが一般的で、その間、小規模事業者は燃料費、車両費、整備費を自ら立て替えなければならない。JPYCはオンチェーンでほぼ即時に決済され、送金手数料はかからない。VaaSBlockによるAZ-COM丸和の導入事例の分析によれば、金曜日の夕方に配送を終えた委託先は、翌営業日の銀行振込や30日後の支払期限まで待たず、その日の夜に代金を受け取れる。

■JPYCの仕組みと法的区分:暗号資産ではなく「電子決済手段」

JPYCは、東京に本社を置くJPYC株式会社が、2025年8月に金融庁から登録を受けた資金移動業者として発行している。2025年10月27日に商用サービスを開始し、2026年7月中旬時点でオンチェーン流通額は20億円を超えていた。

技術的には、JPYCはイーサリアム、アバランチ、ポリゴンの各ブロックチェーン上に展開されるERC-20トークンである。各トークンは、分別管理された円預金と日本国債によって1対1で裏付けられている。合成型でも、貸付資産を裏付けとする仕組みでも、アルゴリズム型でもない。JPYC社は銀行が預金を受け入れるのと同じ形で利用者の資金を保有するのではなく、発行者として十分な準備資産を維持し、「JPYC EX」を通じて1対1で円に償還する仕組みを提供する。JPYC EXでは、日本のマイナンバー制度を利用した本人確認が必要となる。Ellipticは、マネーロンダリング対策のため、ウォレットと取引のリアルタイムスクリーニングを提供している。

JPYCの事業モデルは、準備資産である日本国債から得られる利回りに依存する。この仕組みが経済的に成立するようになったのは、日本銀行が数十年にわたるほぼゼロ金利の状態から利上げを始めたためである。現在、利用者が発行者に支払う手数料はゼロで、JPYC社は短期国債の利回りと運営コストとの差で事業を維持する。CircleがUSDCで先駆けた仕組みと同様だ。利用者が負担するネットワーク上の取引コストはチェーンによって異なり、現在のガス価格では、イーサリアムのレイヤー1が1回当たり約0.50~5.00ドル(約81~810円、1ドル=162円換算)、アバランチが約0.10ドル(約16円)、ポリゴンが0.05ドル(約8円)未満である。

重要なのは、JPYCが日本法上の「暗号資産」に分類されない点だ。2022年6月に改正され、2023年6月に施行された資金決済法では、法定通貨を裏付けとし、円に償還できるステーブルコインは「電子決済手段(EPI)」に分類される。原文では、この区分は交通系ICカードなどの前払式支払手段と同じ規制体系の下に位置すると説明されている。AZ-COM丸和のような企業がJPYCで支払う際に対応する税務、コンプライアンス、取引相手に関する枠組みは、投機的なデジタル資産市場ではなく、規制対象の電子決済システムに関するものとなる。

■日本のノンバンク発行モデルが米国に先行した理由

米国では、初の包括的なステーブルコイン規制の枠組みを設けるGENIUS法が成立し、6つの連邦機関が最終的な実施規則を公表する法定期限は2026年7月18日とされていた。VaaSBlockによる期限に関する分析では、同日までに最終規則を公表した機関はなく、米国のステーブルコイン規制の枠組みはなお最終確定していない。原文が説明するGENIUS法の枠組みでは、決済用ステーブルコインの発行者は、免許を受けた銀行か、相当の資本・流動性要件を満たすノンバンクでなければならず、発行が大規模な既存金融機関に集中する構造となる。銀行免許を持たないステーブルコイン専業フィンテックのJPYC社は、このモデルでは要件を満たさないとされる。

これに対し、日本の資金決済法は大きく異なる仕組みを採用している。法定通貨を裏付けとするステーブルコインの発行は、銀行、信託会社、資金移動業者という3種類の免許・登録事業者に認められており、JPYC社はこのうち資金移動業者に当たる。この第3の区分が存在するため、日本では、米国市場が発行者の適格性や規則の最終確定をめぐる課題を残す一方、約2300の委託先を対象とする実運用のB2Bステーブルコイン決済が可能になった。日本では、ステーブルコイン専業会社が銀行でなくても、登録を受けた決済インフラ事業者になれる。AZ-COM丸和の発表は、日本の3区分による電子決済手段の制度が可能にした、この構造を示している。

日本のメガバンクも動き始めている。三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行は2026年6月10日、金融庁の「決済イノベーションプロジェクト」の下で独自の円ステーブルコインを開発する共同協議会の設立に向け、覚書を締結した。2027年3月までに実際の商取引で利用することを目指す。「Project Pax」は、2028年までにB2B決済額1兆円を目標としており、原文の比較では現在のJPYCの市場規模の約55倍に当たる。国内3大メガバンクが競合する製品の発行を急いでいることは、JPYC社のノンバンクモデルが、銀行側が手放したくない可能性を示した有力な証拠だ。

■約2300の委託先への導入で残る実務上の課題

AZ-COM丸和の発表は、解決した問題よりも多くの運用上の疑問を提示している。この点を理解することは、今回の動きが何を意味し、何を意味しないのかを見極めるうえで重要だ。

AZ-COM丸和は、JPYC社との正式な業務提携と、10億円を超える出資も検討していると報じられている。ただし、出資も、委託先への支払いを始める時期も確認されていない。約2300の提携企業や個人ドライバーをどのような仕組みで利用開始させるのかも公表されていない。カストディアル型またはノンカストディアル型のどちらのウォレットを提供するのか、JPYCを円に換えるオフランプが限られる地域の委託先にどう対応するのか、配送完了の確認を契機にスマートコントラクトで支払いを自動実行するのかも不明だ。自動実行はポリゴンやイーサリアム上で技術的には可能だが、導入が計画されていることは確認されていない。

JPYC社の現在の第二種資金移動業における1利用者当たり1日100万円の償還上限は、取引量の多い委託先にとって最も具体的な構造上の制約となる。1日に複数の大型業務を処理する地域の配送会社は上限に達し、JPYC残高を運転資金となる円に換えるまでに遅れが生じる可能性がある。導入に伴う構造的制約の分析でも、この点が示されている。JPYC社は、大規模なB2B利用でこの問題にどう対応するかを公表していない。

税務処理も未解決の課題である。原文によると、国税庁は電子決済手段による受け取りを、受領時の額面価値で通常の事業所得として扱い、円で支払いを受けた場合と同じ扱いとしている。一方、ステーブルコインで収入を受け取る小規模な物流事業者向けの会計ツールは、まだ広く整備されていない。AZ-COM丸和またはJPYC社が約2300の受取先に税務報告用ツールを提供するかどうかは、導入の成否を大きく左右する。

■今後の展望:実用化の分岐点となる4つのシグナル

東京都港区の高輪ゲートウェイシティで8月上旬に始まるローソンの消費者向け実証実験は、AZ-COM丸和のB2B導入とは異なる目的を持つ。ローソンは全国で1万4697店舗を運営しているが、提携3社であるローソン、KDDI、HashPortの従業員を対象とする1店舗での実験は、一般消費者向けの大規模展開ではない。HashPortのノンカストディアル型モバイルウォレットからバーコードを読み取ることで、専用の会計機器を追加せず、通常のPOS機器でJPYCを受け付けられるかを確かめる技術的な概念実証である。実験の設計と目的は、この連携が可能かという問いに置かれている。

B2Bと小売の2つの経路は、構造的には互いを補完する。約2300の委託先がJPYCを事業収入として受け取り始めれば、その一部は円に戻さずに使える場所を求める可能性がある。消費者向けの利用場所があれば、ステーブルコインを収入として受け取った人が、そのまま支払いに使える循環が生まれる。この循環が価値を持つために、当初から大規模である必要はない。存在し、拡大を続けることが重要だ。

2026年7月が真の転換点となるのか、注目すべき単独の発表にとどまるのかを判断するシグナルは4つある。AZ-COM丸和によるJPYC社への10億円規模の出資が成立するか、ローソンの実証実験が追加店舗への拡大を正当化できる取引量を生み出すか、金融庁が電子決済手段で受け取る委託収入に関する税務・会計上の追加指針を公表するか、そして最も重要なのは、2026年末までに別の大手物流事業者がJPYCによる支払いの採用を発表するかである。2027年3月を目標とするメガバンクのProject Paxは制度面での評価を示す。別の物流会社による採用発表があれば、市場からの評価を示すことになる。

■オフランプが地域によって不均一でもドライバーはJPYCの利点を得られるのか

JPYCが対応しようとしている物流業界の支払い問題は現実のものだ。30~60日の支払期間は、燃料費、車両整備費、駐車料金などの日々の支出を抱える小規模な委託先の資金繰りを実際に圧迫する。こうした支出は、請求代金が支払われるまで待ってはくれない。オンチェーンでほぼ即時に決済できることは、運用上の明確な改善となる。

しかし、JPYCを受け取ることと、円として使えることは同じではない。青森県や北海道の地方部にいる委託先がJPYCを受け取った場合、円への換金手段が必要だ。換金のために東京の暗号資産交換業者へ資金を送り、処理を待ち、交換手数料を支払わなければならないなら、決済速度の利点は大きく損なわれる。

JPYC社は2025年から2026年にかけて、JPYC EXから銀行口座へ直接振り込む換金手段など、オフランプに関する提携を拡大してきた。日本の主要都市では利用可能な仕組みが機能していると報じられているが、大都市圏以外の地域を含めた対応状況はまだ一様ではない。「AZ-COM丸和がJPYCでの支払いを始める」ことと、「AZ-COM丸和の委託先がJPYCの恩恵を受ける」ことの違いは、日本の配送網が実際に稼働する物流拠点や地域の営業所で、どのようなオフランプが利用できるかによって決まる。今回の発表は、この運用上の問いに答えていない。

■注目ポイントQ&A

●JPYCとは何ですか?なぜ暗号資産ではないのですか?

JPYCは、JPYC社が金融庁の監督下にある資金移動業者として発行する、円建てのステーブルコインです。各トークンは円預金と日本国債によって1対1で裏付けられ、JPYC EXを通じて円に償還できます。資金決済法では、法定通貨を裏付けとし、償還可能なステーブルコインは「電子決済手段」に分類され、暗号資産とは区別されます。そのため、JPYCには投機的な金融商品ではなく、決済手段としての規制が適用されます。

●日本が米国や欧州に先行して円ステーブルコインの法人利用を進められたのはなぜですか?

日本では2022年6月に資金決済法が改正され、2023年6月に全面施行されました。特に重要なのは、銀行だけでなく、資金移動業者にも法定通貨を裏付けとするステーブルコインの発行を認めたことです。このため、JPYC社は銀行でなくても法人向けの決済基盤を運営できました。米国では2025年7月にGENIUS法が成立しましたが、連邦機関は2026年7月18日の法定期限までに最終的な実施規則を公表せず、完全な規制枠組みはなお確定していません。原文では、資金移動業者という第3の区分を設けた日本の制度設計が、専業会社による法人向けB2B利用をメガバンクに先行して実現させたと説明されています。

●日本の委託先は、特別な法的手続きなしでJPYCによる支払いを受け取れますか?

はい。資金決済法上、JPYCは暗号資産ではなく電子決済手段に分類されています。JPYCによる支払いは、前払い式のデジタル円で委託先に支払うことと法的には同等とされています。受取側では、JPYCによる収入は受領時の円の額面価値で通常の事業所得として課税され、銀行振込の場合と同様に扱われます。ただし、ウォレットの利用開始、1利用者当たり1日100万円の償還上限、居住地域で利用しやすい円へのオフランプの有無といった実務上の課題があります。

●他の物流企業もJPYCを採用した場合、普及の転換点になりますか?

日本の物流業界におけるB2Bの委託先支払いは、多数の大手事業者と数千の下請け業者に分散しています。AZ-COM丸和の約2300の委託先は重要な最初の実例ですが、物流業界全体の支払額から見れば一部にすぎません。構造的な変化となるには、ヤマト運輸、佐川急便、Amazon Logistics Japanなど、別の大手事業者による採用が必要です。原文では、これらの企業がAZ-COM丸和の導入を注視しているとしています。委託先の円滑な利用開始、実用的な円への換金、税務上の摩擦がないことを実証できれば、制度、JPYC社の登録、ウォレットはいずれも既に存在するため、他社が同様の仕組みを導入する障壁は低くなります。AZ-COM丸和の導入は、後に続く各社がステーブルコイン決済という枠組み自体を一から正当化する必要を減らす概念実証となります。

元記事: Japan Yen Stablecoin Moves From Pilot to Payroll: Logistics Giant Pays 2,300 Drivers

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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