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米フォード、マスタング Mach-E AWDモデル4.2万台超をリコール シャフト破断で駐車時に動き出す恐れ

(Ford.com)[写真拡大]
フォード・モーターは、全輪駆動(AWD)仕様の「マスタング Mach-E」約4万2,784台を対象とした安全リコールを届け出た。対象となるのは2021〜2023年モデルで、リアデファレンシャルのピニオンシャフトが金属疲労により破断する恐れがある。対策部品の供給は2026年第4四半期(10〜12月)になる見込みで、それまでの間、オーナーは駐車時に必ず電子パーキングブレーキをかけるよう呼びかけられている。
■駐車時の電子パーキングブレーキ使用が必須
フォード・モーターは2026年7月7日、米国道路交通安全局(NHTSA)に安全リコールの届け出を行った。対象となるのは、2021年、2022年、2023年モデルの全輪駆動(AWD)仕様「マスタング Mach-E」の全車両で、該当数は計4万2,784台に上る。原因は、リアデファレンシャルのピニオンシャフトが曲げ疲労により破断する恐れがあるためだ。
該当車両のオーナーに対しては、ディーラーでの対策修理が始まる2026年第4四半期までの間、駐車する際には「例外なく、毎回必ず電子パーキングブレーキをかけること」が強く推奨されている。この対策を行うことで、リコール対象の不具合が起きた場合でも、駐車中に車両が勝手に動き出すという最も危険なシナリオを防ぐことができる。
■欠陥率100%、4年以上にわたる製造プロセスの問題か
フォードは、今回リコール対象となった全車両において欠陥率が100%であることを確認している。一部の車両に欠陥の疑いがあるというレベルではなく、対象車両のすべてに問題があるという。この部品は、メキシコのサン・ルイス・ポトシにあるボルグワーナー(BorgWarner)の工場で、2021年2月27日から2025年8月21日までの4年以上にわたって製造されていた。この事実から、単なる一時的な生産ミスではなく、製造プロセス全体にわたる構造的な問題であった可能性が指摘されている。なお、根本的な原因については、フォードが現在も公式に調査を継続している。
■シャフト破断がもたらす「走行不能」と「車両の動き出し」
欠陥のある部品は、リアデファレンシャルのピニオンシャフト(部品番号:LJ9P-7P500-A)で、AWD仕様のMach-Eの後輪を駆動するボルグワーナー製のプライマリー・ドライブ・ユニット(PDU)内に収められている。このシャフトは「曲げ疲労破断」を起こしやすい状態にある。これは、繰り返しの負荷によって金属の構造的な強度が徐々に低下し、最終的に破断に至る現象だ。突発的な破損とは異なり、曲げ疲労による亀裂は徐々に進行するため外観からは判別しにくく、前兆なしに突然破断することがある。
シャフトが破断すると、2つの重大な安全上のリスクが生じる。1つは、駆動力が完全に失われ、走行中に突然身動きが取れなくなるリスクだ。もう1つはさらに深刻で、シャフトがすでに破断している状態で電子パーキングブレーキをかけずにシフトを「P(パーク)」に入れると、駆動系が機能せず、車両が勝手に坂道などを転がり落ちてしまう(ロールウェイ)リスクがある。フォードによると、不具合発生時には警告灯が点灯したり、診断コード(P174E、P0A2F、P019C、P27B2)が記録されたりすることがあるが、これらの警告が出ていなくても、すでに破断が起きている可能性は否定できないという。
2026年6月11日の時点で、フォードはこの問題に関連する保証請求を62件、社内品質管理システムからの報告を14件、カスタマーセンターへの問い合わせを4件、欧州からの警告(White Alerts)を2件受けている。ただし、この欠陥に起因する事故、怪我、火災の報告は現時点では把握していないとしている。
■EV特有の駆動負荷と「芯部硬度」の重要性
電気自動車(EV)の駆動システムは、従来のガソリン車とは異なる負荷がかかるため、今回の欠陥の影響がより顕著になる。デュアルモーターを搭載するAWD仕様のMach-Eでは、リアのPDUに電気モーター、シングルスピードの固定比ギヤボックス、リアデファレンシャルがコンパクトに一体化されている。EVのモーターは回転数ゼロから最大トルクを発生させることができ、減速時には回生ブレーキによって同じシャフトに逆方向のトルク負荷がかかる。このため、ガソリン車よりも過酷な繰り返し負荷がシャフトにかかることになり、シャフトの「芯部硬度(曲げ疲労への耐性)」の仕様が極めて重要になる。
ここでいう芯部硬度とは、表面の硬化層とは異なる、シャフト中心部の鋼材自体の機械的強度を指す。自動車のピニオンシャフトは通常、浸炭熱処理プロセスを用いて製造される。炭素を豊富に含む環境で加熱することで表面に硬いマルテンサイト層を形成し、炭素含有量の低い中心部(芯部)は靭性を保って破断を防ぐ仕組みだ。この熱処理が適切に管理されていれば、設計寿命にわたって負荷に耐えることができる。しかし、処理時間の不足や炉内温度のムラ、不適切な焼き入れなどにより芯部硬度が不足すると、製造された瞬間から曲げ疲労に対する耐性が著しく低下してしまう。
フォードとボルグワーナーの共同調査により、部品の芯部硬度の測定値に「不一致」があることが判明し、ボルグワーナーのサン・ルイス・ポトシ工場における熱処理工程の不備が直接の原因と特定された。調査チームが2026年3月から5月にかけて保証請求で回収された6本と、2025年にボルグワーナーが分析した2本の計8本のシャフトを分析したところ、そのすべてに曲げ疲労破断の痕跡が確認された。
■欧州での分解調査から米国でのリコールへ
今回のリコールのきっかけは欧州にあった。2026年3月、フォードの製品開発チームが、欧州市場の2023年モデルのMach-Eから回収された破損したリアデフの分解調査結果を確認した。これを受けて、フォードの重大懸念検討グループ(CCRG)は2026年3月17日に正式な調査を開始した。
その後2か月間で、フォードの材料研究所は米国内で保証請求により返却された6本のピニオンシャフトを分析し、すべて同様の曲げ疲労破断のパターンを示していることを確認した。フォードが正式調査を開始する前の2025年にボルグワーナーが調査していた2本のシャフトも、同じ破損モードを示していた。サンプル全体の整合性は明白であり、調査されたすべてのシャフトが同じ理由で破損していた。
この調査により、欠陥は特定の生産ロットに限定されたものではないことが判明した。該当部品は2021年2月27日に生産が開始され、2025年8月21日にボルグワーナーが生産を終了するまでの4年以上にわたり、すべてのAWD仕様のMach-Eに搭載されていた。車両は車台番号(VIN)の順に組み立てられていないため、対象車両をVINの範囲で単純に特定することはできず、オーナーは個別に自車が対象かどうかを確認する必要がある。
フォードのフィールドレビュー委員会は2026年6月23日に収集された証拠を検討し、正式な市場措置を承認した。7月1日にはディーラーへの事前通知が行われ、その数日後にNHTSAへの届け出が行われた。
■オーナーが今できることと、今後のスケジュール
対象となる約4万2,784台のAWD仕様Mach-Eのオーナーは、今後の対応を2つのフェーズに分ける必要がある。
【今すぐ行うべきこと】駐車時には毎回必ず電子パーキングブレーキをかけること。これにより、万が一シャフトがすでに破断していても、車両が動き出すリスクを排除できる。現時点では、暫定的な修理方法やソフトウェアパッチ、特定の車両が安全であると証明できる検査手順は存在しない。現時点で可能な唯一の自衛策は、パーキングブレーキをかける習慣をつけることだ。また、警告灯の点灯や、前述の4つの診断コードの発生にも注意を払う必要がある。
【対象車両の確認方法】対象のVINは製造順ではないため、フォードは以下の3つの方法のいずれかで確認することを推奨している。フォードのリコール専用フリーダイヤル(1-866-436-7332)への問い合わせ、フォードまたはリンカーン販売店での確認(ディーラーのOASISデータベースで照会可能)、またはNHTSAの公式サイト(NHTSA.gov)での17桁のVIN検索(Mach-EのVINはすべて「3FM」から始まる)だ。ただし、NHTSAのサイトでVIN検索が可能になるのは、対策通知書の郵送が開始される2026年12月28日以降になる見込みだ。
【恒久対策】フォードは2026年第4四半期に対策部品を用意する計画だ。恒久的な修理内容は、ディーラーでの点検後、リアデファレンシャルアセンブリを対策済みのピニオンシャフトを組み込んだ新しいアセンブリに無償で交換または修理するものとなる。安全上のリスクを知らせる最初の案内状(暫定通知)は2026年7月13日から17日にかけて郵送される予定だが、この段階ではまだ修理予約の案内は含まれない。部品の準備が整う2026年12月28日以降に、2回目の案内状が送付される予定だ。
なお、このリコールのフォード社内参照番号は「26S50」、NHTSAの管理番号は「26V417」となっている。
■フォードの品質問題と2026年のリコール動向
今回のデフに関するリコールは、フォードが同じ週に届け出た2つの「マスタング」ブランド関連リコールのうちの1つだ。もう1つは、2024〜2026年モデルのガソリン車「マスタング」および「マスタング GTD」計6万7,842台を対象としたもので、サプライヤー側のチッププログラミングの不整合(16KBのチップに32KBのアルゴリズムを書き込んだこと)により、氷点下でワイパーモーターの通信が途絶する不具合によるものだ。これにより、フォードは1週間のうちに2つの異なるサプライヤー、2つの異なる原因(プログラムミスと製造ミス)で、計11万626台の車両をサービス網に引き入れることになった。
フォードは2026年に入ってからすでに50件以上のリコールを届け出ており、対象車両は1,100万台を超え、業界ワーストのペースとなっている。同社は2025年にも153件、1,300万台にのぼるリコールを出している。フォード側はこの件数について、品質検出体制を意図的に強化した結果であると説明している。同社は安全エンジニアリングのスタッフを倍増させ、重要システムの限界テストを実施しているほか、2024年11月にはNHTSAとの合意に基づき、過去3年間のリコールの監査と拡大を進めている。一方で、フォードは2026年のJ.D.パワー初期品質調査(IQS)の量販ブランド部門で100台あたり152件の不具合指摘数で首位を獲得(2010年以来初)し、2025年の保証費用を前年比で5億ドル削減した実績もある。
これらのデータが「品質改善の兆し」なのか「矛盾」なのかは、見方によって異なる。自動車分析会社iSeeCarsのエグゼクティブアナリストであるカール・ブラウアー氏は、フォードの品質問題は現経営陣のもとでも解決されていない、10年越しにわたる根深い課題であると指摘する。iSeeCarsが2025年4月から2026年3月にかけて実施した分析によると、フォード車は業界で最も高い生涯リコール率が予測されており、例えばリンカーン・アビエーターの生涯リコール予測数は92回(業界中央値は3.9回)に達している。購入後90日間の初期品質を測るJ.D.パワーの調査と、車両の生涯にわたる設計上の欠陥を予測するリコール予測は異なる指標だが、今週リコール対象となった4万2,784台のMach-Eオーナーにとっては、その2つの指標のギャップこそが、現在直面している現実そのものである。
■レモン法(欠陥車救済法)の適用対象になるか
適用されるかどうかは居住する州の法律によるが、一般的なレモン法の基準(保証期間内に同一の安全欠陥に対して3回以上の修理を試みた場合、または累積で30日以上車両が使用不能になった場合など)には、現時点では該当しない可能性が高い。なぜなら、現時点ではまだ具体的な修理(対策)自体が開始されていないからだ。ただし、すでにディーラーでP174E、P0A2F、P019C、P27B2などのコードに関連する駆動系のトラブルが記録されているオーナーは、それらの書類を保管しておくべきだ。対策部品が提供された後に複数回の修理が必要になった場合、それらの記録がレモン法や保証請求をサポートする証拠となる可能性がある。詳細については、各州の消費者保護専門の弁護士に相談することが推奨される。
■注目ポイントQ&A
●私のMach-Eは今すぐ運転しても大丈夫ですか?
フォードは運転停止勧告(Do-Not-Drive)を出していないため、公道の走行自体は禁止されていません。しかし、気づかないうちにシャフトが破断しているリスクは実在します。オーナーができる唯一の自衛策は、駐車時に「例外なく毎回必ず電子パーキングブレーキをかけること」です。もし警告灯が点灯したり、ディーラーで診断コード(P174E、P0A2F、P019C、P27B2)が検出されたりした場合は、フォードのリコール専用窓口(1-866-436-7332)に連絡し、整備記録を残してください。
●「欠陥率100%」とはどういう意味ですか?
これは単にすべての車両が修理対象になるというだけでなく、製造上の重大な意味を持ちます。今回の問題が、生産ロットの一部で発生した突発的な不良(統計的な外れ値)ではないことを意味しています。ボルグワーナーのサン・ルイス・ポトシ工場で4年半にわたり製造されたすべてのシャフトが、一貫して仕様を満たしていなかったということです。これは熱処理工程における持続的なプロセス管理の失敗を示しており、ボルグワーナーの出荷検査やフォードの受入検査でなぜこれほど長期にわたり見過ごされたのかという疑問が残ります。これらの詳細は、現在進行中の根本原因調査で明らかになる見込みです。
●修理はいつ行われ、費用はいくらかかりますか?
リアデファレンシャルアセンブリの修理または交換は、2026年第4四半期(10〜12月)にフォードおよびリンカーンのディーラーで開始される予定です。対策の案内状は2026年12月28日から郵送される予定で、同日からNHTSAのサイトでもVIN検索が可能になります。リコールに伴う修理費用は、オーナーやリース契約者に対して一切請求されず、すべて無償で行われます。
●NHTSAのリコールデータベースで自分のVINがまだヒットしないのはなぜですか?
フォードは、対象車両のVINがNHTSA.govで検索可能になるのは2026年12月28日(対策案内状の発送開始日)からであると説明しています。これは、対象車両がVINの順序通りに製造されておらず、データベースへの登録が対策の通知スケジュールと連動しているためです。2021〜2023年モデルのAWD仕様Mach-Eを所有しており、より早く確認したい場合は、フォードのリコール窓口(1-866-436-7332)に電話するか、ディーラーに直接車両を持ち込んで、社内データベース(OASIS)での照会を依頼してください。
元記事: Mach-E Recall: Pinion Shaft Fracture Risks Rollaway in 42,784 AWD Crossovers
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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