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相場展望6月12日号 米国株: 半導体株が牽引「トランプ関税がなかった」ような株高⇒過熱感 日本株: 米国株の過熱感、中東情勢の緊迫化で株式市場は軟調か?
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)6/09、NYダウ▲1ドル安、42,761ドル
2)6/10、NYダウ+105ドル高、42,866ドル
3)6/11、NYダウ▲1ドル安、42,865ドル
●2.米国株:半導体株が牽引して「トランプ関税がなかった」ような株高⇒過熱感を意識
1)半導体株に買い
・フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の推移
3/24 4,694 トランプ関税前の高値
4/08 3,562 3/24比▲24.1%安
6/10 5,242 4/08比+47.2%高
6/11 5,232 6/10比で見ると足踏み
・NYダウやS&P500種株価指数と比べて、トランプ急落後からの急騰が目立つ。トランプ関税前の高値を、凌駕している。
・トランプ関税による急落後の米国株式相場の牽引役を果たした。
・今後、(1)移民摘発を巡る抗議デモと全米への拡大、(2)中東情勢の緊迫化など諸課題が浮上しているため、そのリスクが株式相場に与える影響に注目したい。ちょうど、SOX指数も過熱感がうかがえる状況でもあるだけに慎重スタンスで臨みたいところである。
2)経済に悪影響を及ぼす「関税」がなかったように、株価が上昇⇒過熱感を示唆
・米国で多くの機関投資家が運用指標とするS&P500株価指数は「過熱感」を示唆。
・S&P500指数の推移
2/19 6,144 史上最高値
4/08 4,982 トランプ関税で2/19比▲18.9%下落
6/10 6,038 4/8比+21.2%上昇
6/11 6,022 6/10比で足踏み、過熱感を意識?
・S&P500種指数は、トランプ関税による「急落を帳消し」にするほどの戻り高値に到達した。
・この急騰で、20日移動平均線から+4%を超える乖離となった。この1年間で、これほどの高い乖離率はない。このことから、S&P500種指数は「過熱への警戒信号を灯した」と評価できる事態を迎えた可能性がある。
・経済に悪影響を及ぼす「トランプ関税が存在しない」ような戻り高値となっている。トランプ関税による関税コストの価格転嫁は始まったばかりである。関税引上げ前の在庫がまだ市中に出回っており、消費者物価指数押し上げ本番はこれから迎える。その時期は、今年夏ごろから物価上昇となって現れると予想する。
・悪いスパイラルが予想される。
物価(インフレ)上昇
↓
金利上昇
↓
消費支出の減少
↓
企業業績の下方修正
↓
株価の下押し
3)米国ではトランプ関税効果で、インフレ(物価上昇)率が上昇基調に点火始まる
・米国5月消費者物価指数(CPI)は、前年同月比+2.9%上昇した。今年に入ってからのCPIの減速傾向が途絶える可能性が増した。
・ウォルマートは5月の決算説明会で、関税コストを今後は完全に売値に転嫁すると説明した。さっそく、オーディオ製品が+8.8%値上げされる。今後順次、関税コストの売値転嫁が強まると予想される。関税引上げ前に緊急輸入した在庫分がなくなっていくと、関税コストの価格転嫁されるが、それが点火し始めたようだ。
・日系自動車メーカーも3月末に在庫を積み上げたが、4~5カ月分といわれる。今後、輸入関税コストによる値上げ影響で、トランプ物価上昇が本格化を迎えることになる。
・米国自動車メーカーも、販売台数の半数を輸入自動車に依存している。米国内の工場で生産増強したとしても限界がある。自動車部品の製造は、各国の得意分野で作られ米国は輸入している。自動車・同部品の関税率は25%であるが、米国自動車が全額負担するには大き過ぎる。やはり、自動車販売価格に上乗せせざるを得なくなる。米国自動車メーカーの価格改定の状況を見ながら、日系自動車メーカーは今後追随することになるだろう。
・トランプ関税のよる関税コストの価格転嫁は始まったばかりである。夏場に向かって関税コストの価格織り込み動向を注視したい。トランプ不法移民の逮捕、海外強制送還も労働人口の減少をもたらす。不法移民の問題はさておき、労働力減少⇒労働コストの上昇⇒物価上昇という局面もありえる。
・トランプ効果とは、(1)関税(2)労働コスト上昇によって、(1)インフレ(2)景気後退をもたらすモノとなる可能性が高まっていると思われる。
●3.中東情勢緊迫化(ロイター)
1)イランのナシルザデ国防軍需相は6/11、米国と6回目の核協議が予定される中、交渉が頓挫し、米国との間に紛争が生じた場合、イランは地域の米軍基地を攻撃すると述べた。
2)在イラク米国大使館は地域的な安全保障上のリスクが高まっているとして、避難命令を出す準備を進めている。イラク治安当局と米国の関係筋が6/11明らかにした。
●4.米国5月消費者物価指数(CPI)は+2.4%上昇、前月からやや加速、予想は下回る(ロイター)
1)4月の+2.3%からやや加速したものの、予想の+2.5%は下回った。
2)変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前年比+2.8%上昇、予想は+2.9%上昇だった。
3)ただ、トランプ米国政権が掲げる関税措置により、米国のインフレは向こう数カ月で加速すると予想されている。
●5.トランプ政権の関税措置を7月末まで容認、米国連邦高裁(FNN)
●6.関税のツケが回ってきたトランプ氏、世界銀行が米国成長率見通し2.3%⇒1.4%(中央日報)
●7.米国とメキシコ、50%の鉄鋼関税削減で交渉、割当制を視野(ロイター)
1)トランプ50%鉄鋼関税を、一定数量まで削減または撤廃する交渉を行っていると、業界関係者や貿易関係者が明らかにした。
・メキシコからの一定量の輸入は無税または減免され、それ以上の輸入に50%の関税が課されるクォータ制(割当制)が導入される可能性が高いという。
・ブルームバーグ通信によると、過去輸入量に抑える限り、米国企業は無税で輸入できるという。
2)米国鉄鋼協会がまとめたデータによると、米国は2024年にメキシコから352万トンの鉄鋼を輸入し、カナダ、ブラジルに続き第3位の規模だった。
●8.米国電力消費、今年と来年は過去最高へ、データセンター需要で=EIA(ロイター)
●9.トランプ減税案に含まれる「報復税」、少なくとも延期見込む=有力上院議員(ブルームバーグ)
1)トランプ大統領が推進する大型税制・歳出法案に盛り込まれた「報復税」と呼ばれる第899条項について、施行は遅れる見込みだと米国共和党のティリス上院議員は述べた。背景には、ウォール街や企業が反発していることがある。
2)同条項は、米国が不公平だとみなす税の仕組みを持つ国の企業や投資家に追加課税する内容だ。
3)二転三転するトランプ大統領の通商政策や米国の財政悪化により、米国資産に対する外国人投資家の信頼がすでに揺らいでいる中、ウォール街からは、同条項が施行されれば、外国人投資家による米国資産離れをさらに加速させかねないと警戒する声が出ている。
●10.米国資産運用会社ティムコ、米国ドルの基軸通貨は当面維持、低下リスクあり(ロイター)
1)トランプ氏による(1)伝統的な同盟関係の分断、(2)高関税による貿易構造の変化、(3)米国の財政赤字の膨張が際立つ新たな世界秩序は、断続的なボラティリティを引き起こすだろう。
2)米国ドルは、「現実的な代替手段が存在しない」ため、世界の基軸通貨としての地位は維持する。しかし、ドルは長期的な弱気相場は免れない可能性がある。そのため、ドル建て資産に対する許容度再評価する場合は、そのリスクが高まると分析した。
●11.米国・資産運用会社ブッラクストーン、欧州に今後10年で5,000億ドル投資へ=報道(ロイター)
1)トランプ米国大統領が、(1)各国との同盟関係や(2)貿易政策を大きく転換する中、欧州は防衛産業への投資拡大を図るなど、これまで民間投資家から見過ごされてきた分野の活性化に動いている。欧州に対する投資家の楽観的な見方は高まっている。
●12.トランプ政権の科学予算削減を批判、ノーベル賞受賞者も賛同「患者の健康に危険」(読売新聞)
●13.トランプ氏、6/14のワシントンでの軍事パレードで抗議活動なら「強力に対応」(ロイター)
●14.トランプ氏、LAで移民取締りの抗議が暴動と判断なら反乱法発動へ「様子見る」(ロイター)
1)LA移民抗議デモへの軍隊派遣費用は推計1億3,400万ドル=国防総省
2)ロサンゼルスに海兵隊到着、地元警察に通知なし、ニューヨークなどにデモ拡大(ブルームバーグ)
●15.ハーバード大学への留学、裁判所決定を受け米国務省が外国人ビザ給付の再開指示(日テレ)
●16.EU、ロシア原油の上限引下げをG7に提案へ、1バレル=45ドルに(ブルームバーグ)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)6/09、上海総合+14高、3,399
2)6/10、上海総合▲14安、3,384
3)6/11、上海総合+17高、3,402
●2.中国消費者物価、5月は4カ月連続の前年割れ=内需の弱さが際立つ(ブルームバーグ)
1)中国5月消費者物価指数(CPI)は前年同月比▲0.1%低下。
2)5月生産者物価指数(PPI)は前年同月比▲3.3%低下し、2年8カ月連続の前年割れ。4月より大きな落ち込みを記録した。
●3.中国人民銀行の金準備、5月は7カ月連続増加(ロイター)
●4.中国5月輸出は3カ月ぶり低水準、関税巡り逆風、輸入も予想上回る減少(ロイター)
1)中国税関総署6/9発表の5月貿易統計は、前年同月比で輸出+4.8%増・輸入▲3.4%減少した。
2)6/9発表の別の統計では、5月の原油・石炭・鉄鉱石輸入も減少し、国外からの 逆風が強まる中で国内需要も脆弱化していことが浮き彫りになった。
●5.中国5月の対米国輸出額は前年同月比▲34.5%と大幅減少(NHK)
1)中国から海上輸入したコンテナ総量は5月、前年同月比▲28.5%急減。(ロイター)
●6.スタバ、競争激化で中国で平均▲5元の値下げへ(ロイター)
1)消費者は景気減速や、雇用への懸念から支出に慎重になっている。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)6/09、日経平均+346円高、38,088円
2)6/10、日経平均+122円高、38,211円
3)6/11、日経平均+209円高、38,421円
●2.日本株:米国株の過熱感、中東情勢の緊迫化を受け株式市場は軟調となる可能性
1)米国株の過熱感が意識される場面もありそう
・6/11の米国株はハイテク株の一角が売られ、相場が軟調に推移した。このところの米国相場は急伸したこともあって、過熱感がうかがえる。米国消費物価指数(CPI)が予想を下回ったことで、米国長期金利が低下した。
・この流れを受け、日本株相場にも波及する可能性がある。ハイテク株や銀行株などが売られやすい。円相場もやや円高に振れており、自動車・機械など輸出関連株も売られる局面がありえる。
2)中東情勢の緊迫化で、株式相場の地合いは軟調か
・イランの国防軍需相の発言で、米国は在イラクやカタールの基地への攻撃懸念が発生している。このため、地政学リスクから株式相場は軟調に推移する可能性がある。
●3.米国、誠意ある交渉国に関税停止の期間延長も=ベッセント米国財務長官(ロイター)
●4.日本最大の発電事業者JERA、米国企業からLNGを年間最大550万トン・20年間購入で合意
1)発表では、5万人以上の雇用を支え、米国のGDO(国内総生産)を2,000億ドル以上(約29兆円)押し上げるとの試算を示している。(NHK)
●5.サントリー、水素を山梨県で製造・販売へ(時事通信)
●6.5月国内企業物価指数は前年同月比+3.2%に上昇、伸び率は4月の+4.1%から縮小(NHK)
●7.内閣府発表の日本1~3月GDPは年率換算▲0.2%、4期ぶりのマイナス(NHK)
●8.インド自動車最大手マルチ・スズキ、EVの4~9月期生産目標を3割に削減、希土類不足で(ロイター)
●9.自動車部品大手マレリ、米国連邦破産法11条適用申請へ=関係者(ロイター)
●10.日野自動車と三菱ふそう、来年4月に経営統合で最終合意と発表(NHK)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・2607 不二製油 業績好調
・4385 メルカリ 業績好調
・7701 島津製作所 業績回復期待
著者プロフィール
中島義之(なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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