倒産件数の増加と新陳代謝

2023年7月16日 15:40

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 企業の倒産件数が増加している。東京商工リサーチによると、2023年1月から6月の倒産件数(負債額1,000万円以上)は4,042件で、前年同期の3,060件から32.1%の増加となった。

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 上半期で4,000件を超えるのは3年ぶりであり、東京商工リサーチの10産業分類においては、全ての産業で前年同期の件数を上回った。負債総額別の倒産件数を見ると、5億円以上10億円未満の企業が最多となっており、中堅規模の企業がマーケットから退場していることが分かる。

 主な原因は人手不足と物価高である。人手不足については、労働力の確保が難しくなっていることと給与水準の上昇が背景にあり、物価高についてはエネルギー費や資材費の高騰が影響を与えた。

 またこのタイミングで倒産が増えているのは、ゼロゼロ融資の支援期間が終了したことも大きな理由である。ゼロゼロ融資は、政府がコロナ対策として実質無利子・無担保で融資する支援策である。元本の返済も猶予期間が設けられていたが、2023年6月頃から返済を開始することになる支援先が多く、資金繰り負担から倒産の増加につながった。

 ゼロゼロ融資による資金繰り支援の終了とともに、倒産件数が増加することは以前から予見されていた。一方で、企業淘汰が進むことは経済の新陳代謝が進むことになるとも言われている。

 そこで開業数の推移を追うと、2019年、2020年は8万件を超えていたが、2021年は5万件と急減した(出典:タウンページデータベース)。この原因はもちろんコロナ禍によるものだが、開業率が欧米と比較して低いのは長期に渡る傾向となっている。内閣府によると、欧米企業が10%前後で推移するのに対し、日本は5%程度である。この傾向は直近でも同様である。

 このような傾向が打破され新陳代謝が進むためには、政策やベンチャーキャピタルの存在が重要となる。岸田政権は2022年を「スタートアップ創出元年」とし、骨太の方針の中で、個人保証の見直し等の起業リスクを低減する計画を打ち出した。

 またベンチャーキャピタルについては、事業が軌道に乗りつつあるスタートアップを支援する新ファンドが立ち上がる動きもある。三井住友フィナンシャルグループは、ユニコーン創出に向けたグロースファンドを設立するという発表を行った。

 企業や個人においても、DXやグリーン等の今後発展が見込まれる業務へのリスキリングといった活動が必要であろう。倒産が終わりを意味するものとならず、国全体で新陳代謝が進むことが、日本経済に活力が戻る道筋となる。(記事:Paji・記事一覧を見る

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