相場展望11月28日号 「逆イールド(長短金利差の逆転)」が発生してから約5カ月経過、そろそろ株価大幅下落を警戒したい

2022年11月28日 10:06

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日本株は過熱感がみられ、利益確定売りも一考

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)11/24、祝日「感謝祭」で休場。

【前回は】相場展望11月24日号 米国経済指標は、景気後退入りを示唆 日本株は、「過熱感」台頭に留意

 2)11/25、NYダウ+347ドル高、34,347ドル(日経新聞より抜粋
  ・祝日・感謝祭の翌日で、米株式市場と債券市場ともに短縮取引。
  ・米連邦準備理事会(FRB)の利上げペースが減速するとの期待が相場を支えた。11/23に公表された11月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で、参加者の大多数が早期の利上げ幅縮小が適切と考えていることが分かった。市場でも「まもなく利上げペースが鈍化し、来年の早い段階で利上げが停止するとの見方が強まった」との声が聞かれた。
  ・利上げ減速期待を背景に景気敏感株や消費関連株は買いが優勢だった。航空機のボーイング、ホームセンターのホームデポ、クレジットカードのビザが上昇。医療保険のユナイテッドヘルスなどディフェンシブ株も買われた。
  ・ただ、中国の新型コロナ感染が再拡大しており、一部の都市では都市封鎖も導入。中国の生産・販売比率が高い銘柄には懸念材料となった。アップルのスマホ「iPhone」を生産する中国の工場ではボーナス支払いを巡る労使トラブルも起き、生産が大幅に遅れると伝わり、アップル株は▲2%安で終えた。
  ・ネット検索のアルファベット、ネット通販のアマゾン、半導体のエヌビディアも安い

●2.米国株:「逆イールド」は、7/5から発生、約5カ月経過、そろそろ警戒したい   

 1)逆イールドとは、「長期金利と短期金利差の逆転」現象を指す。
  ・金利は通常、期間が長いほどリスクが高くなるため高金利となる。したがって、長短金利差が逆転する「逆イールド」は異常な状況といえる。

 2)逆イールドが起きる現象
  ・短期金利は、FRBの政策金利上昇に伴って高くなる。しかし、長期金利は、将来の景気減速や景気後退予想を反映して、短期金利ほど上昇し難くなる。そうした状況下で起きるのが「長短金利の逆転(逆イールド)」である。

 3)「10年長期債10年:2年短期債との逆イールド」は7/5に発生し、現在拡大中
  ・7/5 ▲0.013% ⇒ 11/25 ▲0.776%、 しかも逆イールドが拡大中である。

 4)逆イールド発生と、景気後退の相関関係は高い
  ・1978年以降、米国では景気後退が6回(オイルショック2回、湾岸戦争、ITバブル崩壊、リーマンショック、新型コロナ)起こったが、すべて「逆イールド」が発生している。

 5)「逆イールド発生⇒景気後退⇒株価の大幅下落」を招いているため、今後の市場動向に警戒したい。

 6)注目のイベント
  ・11/28   連銀総裁の講演・インタビュー(ニューヨーク、セントルイス連銀)
  ・11/29   11月コンファレンスボード消費者信頼感指数
  ・11/30   パウエルFRB議長講演、7~9月GDP、 10月JOLTⅩ求人件数
  ・12/01   11月雇用統計、11月製造業PMI、11月ISM製造業景況指数

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/24、上海総合▲7安、3,089(亜州リサーチより抜粋
  ・中国の経済活動停滞が危惧される流れとなった。
  ・中国本土では新型コロナ感染に歯止めがかからず、複数エリアで厳格な行動規制が導入された。中国の11/23新規感染(無症状含む)は、31,444人を数えた。上海市がロックダウンとなった4月以降で初めて、全国で3万人を突破した。
  ・ただ、下値を叩くような売りはみられない。
  ・中国当局の景気テコ入れスタンスが支えとなっている。常務会議で、預金準備率の引下げを検討していることを明らかにした。
  ・業種別では、ITハイテクの下げが目立ち、インフラ建設が下げた。不動産は高い。

 2)11/25、上海総合+12高、3,101(亜州リサーチより抜粋
  ・中国当局の経済支援スタンスが改めて意識される流れとなった。
  ・中国国務院は11/22の常務会議では、預金準備率引下げなどの金融政策ツールを適時に実施し、合理的で潤沢な流動性を維持するという方針が確認された。また、中国政府の方針に従い、銀行大手が相次いで優良不動産デベロッパー向けの融資支援を決定。与信枠の総額は、公表されているものだけで1兆2,750億人民元(約24兆7,000億円)に上る。
  ・中国の新型コロナ感染拡大を嫌気した売りが先行したものの、下値は堅く、指数は程なくプラスに転じた。
  ・業種別では、不動産の上げが目立ち、金融もしっかり。ハイテク・医薬品は冴えない。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/24、日経平均+267円高、28,383円(日経新聞より抜粋
  ・米利上げペースが減速するとの思惑などから、前日までの米株式相場が上昇した流れを引き継ぎ、幅広い銘柄が買われ、9/13以来の高値水準となった。ただ、朝高後は短期的な過熱感から利益確定売りが上値を抑え、やや伸び悩んだ。
  ・11/23に公表された11月分の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨は、利上げペースの減速を示唆する内容だった。これを受け、東京市場で海外投機筋による主力株や株価先物指数などへの買いが断続的に入り、日経平均の上げ幅は一時+380円を超えた。
  ・業種別では海運・商社・電気機器の上昇が目立った。
  ・円相場が一時138円台まで上昇したが、相場全体への影響は限定的だった。
  ・半導体関連・三井住友FG・東京海上・三菱商・キーエンスが高く、日揮が安い。

 2)11/25、日経平均▲100円安、28,283円(日経新聞より抜粋
  ・前日まで3日続伸して9月中旬以来の高値圏にあり、中国景気の先行き懸念が意識
され、利益確定売りが出やすかった。前日の米株式市場は感謝祭の祝日で休場、今日も取引時間が短縮され、東京市場では積極的に持ち高を動かす参画者は限定的。
  ・中国での新型コロナ感染拡大が連日伝わり、資生堂やファナック・ダイキンなど中国関連銘柄が弱含んだ。業種別では鉄鋼・電気機器など外需関連や総合商社など卸売りの下げが目立った。
  ・ただ、全体として下落幅は限定的で、日経平均の日中値幅は136円に留まった。
  ・市場では「米感謝祭の前まで続いた海外勢の買戻しが一服した。国内勢が買い上がるわけではなく戻り売りは出にくかった」との見方があった。
  ・政府は11/25、観光促進策「全国旅行支援」の割引率を引下げたうえで年明け以降も継続する方針だと、斉藤・国土交通相が閣議後の記者会見で語った。業績改善期待からJR東海など鉄道株や空運株が上昇した。電気料金の値上げの思惑から電力株の上げも目立った。銀行・保険株の一角は年初来高値を更新した。
  ・バフェット氏率いる投資会社の商社株買い増しを受け「割安&高配当株」が注目。
  ・電通・ブリジストン・キーエンス・第一三共・日揮が下落、りそな・IHIは上昇。

●2.日本株:「過熱感」がみられ、利益確定売りも一考

 1)テクニカル指標は「過熱感」を示す
  ・騰落レシオ(25日)は11/25に122.59、(6日)は244.10と、下落目前を示唆。

 2)「空売り比率」は、11/25に41.6と低い日が続き、売り方不在の中、米国株上昇を背景に買い方優勢の中、するすると日経平均は上昇しやすい環境になっている。

 3)年初来の新高値銘柄数が多く、新安値銘柄数がゼロとなる状況で、相場の強さを示す
  ・        11/24   11/25
    新高値銘柄数  170    158   全体として過熱感を示す
    新安値銘柄数   0     0   株価高値圏を示す現象

 4)12月初頭までは相場は強いと思われ、利益確定局面
  ・米SP500のチャートからは、相場高値圏にあり注意が必要になってきた模様。

■IV.注目銘柄(投資は、ご自身の責任でお願いします)

 ・3563 フード&ライフ(スシロー) 業績回復期待。
 ・7747 朝日インテックス      業績回復期待。
 ・9470 学研            政府テーマに期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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