相場展望5月2日号 米国株: 金利低下なのに、半導体・ハイテク株が下落したことに注目 日本株: 格言「5月に売れ」が当たりそうな状況、利益確定は5月2週まで

2024年5月2日 11:08

印刷

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)4/30、NYダウ▲570ドル安、37,815ドル
 2)5/01、NYダウ+87ドル高、37,903ドル

【前回は】相場展望4月30日号 米国株: 高金利でも米国経済は成長する 好決算発表シーズンで株価反発も、5月の経験則に注意 日本株: 「円高」「人口増」「借金減」「国力増強」政策の実行に邁進

●2.米国株:金利が低下にも関わらず、半導体・ハイテク株が売られた状況に注目

 1)米FRBが金利据え置き、金融政策決定会合で6回連続
  ・ただし、FRBはバランスシート縮小ペースを月間▲600⇒▲250億ドルに減速。なお、市場予想の▲300億ドルを下回った。
  ・なお、住宅ローン担保証券の縮小額は月間▲350億ドルは維持。縮小ペースは合計で、月間▲950⇒▲600億ドルに6月から減額される。
  ・金利を据え置いたが、バランスシートの縮小を減速することで、金利低下期待へも配慮する形となった。この縮小ペースの減速により、利回りに下押し圧力がかかった。
    5/1は利回り低下:2年米国債券利回りは前日比▲1.58%低下し、4.966%。
            10年米国債券利回りは前日比▲0.98%低下し、4.641%。

 2)決算発表シーズン、5/3のアップルの決算発表に注目
  ・5/1はアマゾン、5/3はアップルと主要銘柄の決算発表

 3)5/1は、金利低下で割安感の出るはずの、ハイテク株が下落したことに警戒
  ・パウエルFRB議長の記者会見とFOMC結果発表を受け、NYダウは+400ドル超高と上昇した。
  ・しかし、パウエル議長は、インフレ鈍化の進展が行き詰まっている可能性を示唆し、予想外に強いインフレ指標に対し、依然と高止まりしていると警戒感を示した。

●3.パウエルFRB議長の記者会見の要旨(ロイターより抜粋

 1)米雇用とインフレ目標達成に向け、経済は大きく進展している。

 2)インフレ率は過去1年間で沈静化したが、依然として高水準。

 3)インフレ鎮静化にさらなる進展の保証はない。

 4)インフレの継続的な進展は保証されておらず、先行きは不透明。

 5)雇用とインフレ目標達成に向けたリスクは「過去1年間でバランスが改善した」。

 6)ただ、インフレ目標に向けた進展は見られない。

 7)インフレリスクに細心の注意を払う。

 8)民間最終消費支出は昨年後半と同様、堅調に推移。

 9)これは需要にとって重要なシグナルとなる。

 10)労働市場は引続き相対的にタイト。

 11)名目賃金の伸びはこの1年で緩やかになった。

 12)労働需要は依然として供給を上回っている。

 13)年初来発表されたインフレ率データは予想より高かったが、長期的なインフレ期待は依然として固定されている。

 14)目標に向けたリスクバランスは改善した。

 15)経済見通しは不透明。

 16)インフレ率が+2%に戻るとの確信が強まるまで、利下げは適切でないだろう。

 17)今年のインフレ指標は、これまでのところそうした確信は与えていない。

 18)より大きな自信を得るには、予想よりも時間がかかりそうだ。

 19)金融緩和が早すぎても遅すぎても、多すぎても少なすぎても、どちらもリスクがある。

 20)現在の政策はリスクや不確実性に対処するのに適している。

 21)われわれは会合ごとに意思決定をしていく。

 22)2%のインフレ目標に引続きコメットしていく。

 23)政策金利は制約的。

 24)インフレ率を+2%に戻すために、長期的には政策は十分に制約的だと考えている。

 25)適切である限り、制約的な政策スタンスを維持すると確約。

 26)次の政策変更が利上げになる可能性は低い。

 27)インフレがさらに持続し、労働市場が引続き堅調であれば、利下げを遅らすことが適切となる可能性がある。

 28)利下げにつながる道筋は、インフレ低下への確信が強まり、労働市場が予想外に軟化した場合だ。

 29)FRBは決定に当たり、米大統領選挙など政治的なイベントを考慮しない。

●4.米4月ISM製造業景況指数が49.2と、予想50を下回る予想外の50割れ(フィスコ)

●5.米3月JOLT求人件数は848.8万件と、予想869万件・2月875.6万件を下回る(フィスコ)

●6.アマゾン、4~6月期売上高見通しが予想下回る、1~3月期は増収増益(ロイター)

 1)4~6月期売上高見通しは1,440~1,490億ドルと、予想1,500億ドルを下回った。

 2)1~3月期売上高は1,433億ドルで、市場予想1,425億ドルを上回った。純利益は3倍増の104億ドル。

●7.米テスラ、上級幹部を削減、従業員数百人も追加レイオフを実施(ロイター)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)4/30、上海総合▲8安、3,104
 2)5/01、祝日「労働節」で休場

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)4/30、日経平均+470円高、38,405円
 2)5/01、日経平均▲131円安、38,274円

●2.日本株:格言「5月に売れ」が当てはまりそうな状況。利益確定なら5月2週まで

 1)4月月間の日経平均は、NYダウと共に同水準の下落となった
  ・日経平均の推移
       日経平均       NYダウ
   3/29  40,369円   3/28  39,807ドル
   4/30  38,405    4/30  37,815
   値幅 ▲ 1,964    値幅  ▲1,992
   下落率 ▲4.9%安   下落率 ▲5.0%安
  ・日経平均とNYダウはともに▲2,000ポイント程度の下落で、下落率も▲5%程度となった。
  ・下落を主導したのは、半導体株関連株である。

 2)日経平均は、NYダウと比べ「割高水準に戻ってきている」ので注意
  ・4/30、5/1に日経平均は、NYダウ比で「割高」を示している。
  ・ここからの日経平均は高値継続には重荷が増すと思われる。

 3)円相場は5/1米国時間で155.157円と、前日比+0.633円高・+0.42%高で、5/2の日経平均の重荷となりそう
  ・円相場は一時153円台まで円高となり、値上がり幅は4円を超える場面があった。

 4)格言「5月に売れ」
  ・決算発表シーズンにあり、好決算発表銘柄が買われ、日経平均は強含む時期を迎える。
  ・半面、予想に届かない銘柄は大きく売られやすい時期となる。
  ・この決算発表シーズンは5月2週末で頃にピークが来る。
  ・5月3週からは、好材料が乏しくなり、今まで高値水準にいる銘柄が利益確定売りを浴びやすくなる。6月終盤以降から始まる4~6月期の決算発表まで、「株価にとって柔らかい腹を見せる」ことになる。
  ・日経平均を投資家主体別売買でみても、買い筋が見えにくい状況になってきた。
  ・年初から4月3週(4/19時点)の売買残高
    証券(自己)  +2兆3,205億円買残高
    海外投資    +7,998  (現物株+先物合計)
    個人        +5,229  (現金+信用合計)  
    年金基金    ▲4兆7,955億円売残高
  ・証券と海外筋の買いに対して、年金基金の益出しの売り、という構図なっている。しかし、証券(自己)が買いのトップとなっているのは悪筋である。
  ・このような証券(自己)が買い首位となっている株式相場は正常といえない。

 5)日経平均は、決算発表シーズンが終わると、下落リスクが増すとみる
  ・日本株の買い主体筋が悪く、しかも証券(自己)は急速に買い建て玉を減らしている。
  ・加えて、日経平均はNYダウに比べても「割高」な水準に位置している。
  ・好材料が乏しくなる方向にある。
  ・円相場が、円安⇒円高に転換する可能性が増してきた。円高は、輸出関連株ひいては日本株にとって逆風である。
  ・それだけに、格言「5月に売れ」が当てはまる可能性が高そうだ。利益確定するなら5月2週までか。

●3.5月の食品値上げ417品目、大半の要因は原材料の高騰(NHK)

 1)オリーブ油、最大+66%値上げ、飲食店は悲鳴(FSB福岡放送)
   暮らしに欠かせない食品・電気・ガスも相次いで値上がり

●4.三井物産、2025年3月期の純利益▲15.4%減、自社株買いと株式2分割も(ロイター)

●5.日本郵政、2024年3月期経常利益6,200⇒6,600億円と上方修正(フィスコ)

●6.住友化学、2024年3月期の最終赤字は過去最大の▲3,100億円に拡大見通し(NHK)

●7.住友林業、1~3月期経常利益398億円、前年同期比+55.4%増(フィスコ)

●8.JR西、2024年3月期営業利益1,797億円、前期比2.1倍、自社株買い500億円上限(フィスコ)

●9.日本特殊陶業、2025年3月期純利益見通し830億円と予想868億円を下回る(日経新聞)

●10.イビデン、2024年3月期営業利益▲34.3%減の475億円、2025年3月期予想は▲11.7%減の420億円(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4502 武田製薬   連続増配の期待

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

記事の先頭に戻る

関連キーワード

関連記事