相場展望2月10日号 米国株は好決算銘柄が牽引も、CPIと金融引締めも意識 日本株は上昇局面で売り、押し目を拾う

2022年2月10日 09:19

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)2/7、NYダウ+1ドル高、35,091ドル(日経新聞より抜粋
  ・米国で新型コロナの新規感染者数が大きく減少しており、経済活動の正常化の恩恵を受けやすい銘柄を中心に買いが入った。
  ・ただ、インフレ加速や、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めへの警戒感がくすぶり、積極的に上値を追う動きは乏しかった。
  ・米疾病対策センター(CDC)によると、米国の新規感染者数は足元で1月中旬の過去最多から6割減少している。経済再開の追い風になるとの期待から、旅行・レジャー関連株が買われた。
  ・航空機のボーイングが+6%高、ディズニー、アメックス、キャタピラー、ハネウェルが買われ、空運・クルーズ船・カジノ株の上げが目立った。

【前回】相場展望2月7日号 米『3月+0.5%利上げ』はサプライズに 日本株、『節分天井』になるか?分岐点に

 2)2/8、NYダウ+371ドル高、35,462ドル(日経新聞より抜粋
  ・バイオ製薬のアムジェンが+8%高となり、NYダウを+115ドル高押し上げた。
  ・米長期金利は一時1.97%と、2019年11月以来の高水準を付け、利ザヤ拡大期待から金融株が買われたことも相場を支えた。
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的に金融引き締めるとの観測が広がったほか、2/10発表の米1月消費者物価指数(CPI)の上振れが警戒されている。
  ・米債券市場で長期債が売られ、金利先高観測を背景に銀行のJPモルガン・チェースが+2%高となり、バンカメやウェルズ・ファーゴも高い。
  ・景気敏感株の一角も買われ、アメックス+3%高、ダウ+2%高、アマゾン+2%高となる。
  ・一方、業績に不安を残した交流サイトのメタは▲2%安と続落した。

 3)2/9、NYダウ+305ドル高、35,768ドル(日経新聞より抜粋
  ・米長期金利が1.9%台前半と、前日から低下し、ハイテク株が買い直された。
  ・米国の新型コロナ新規感染者数は2/9時点の7日移動平均で約23万人と、1月中旬のピーク時の3分の1に減少したのを背景に消費関連株も買われた。ニューヨーク州など屋内のマスク着用義務を撤廃する動きも広がり、消費が活発化するとの期待が強まっている。映画娯楽のディズニーは+3%高く、スポーツのナイキ、空運・クルーズ船などレジャー株も上げた。
  ・米金融引き締めへの警戒感が根強く、金利上昇もある程度織り込んだとの見方も増えている。

●2.米国株は好決算銘柄が相場を牽引しているが、CPI発表と金融引き締めも意識

 1)好決算銘柄が、相場を牽引あるいは下支えする構図となっている
  ・ただ、決算発表終了シーズン後は好材料がないため、相場展開に不安がある。2/10発表の1月消費者物価指数(CPI)によっては、インフレと利上げ警戒への恐れが膨らむ可能性がある。
  ・1月CPI予想では総合で前年比+7.3%増と、変動の大きいエネルギーと食品を除くコアCPIは+5.9%上昇の見通し。

 2)『株高・債券安』の状況に市場は変化している
  ・運用資金が、債券市場から流出し、株式市場に流れ込んでいる。
  ・株式市場の中でも資金移動がある。
  ・資金化に難のある小型株を売って、いつでも大量に売って資金化可能な大型株、それも大量に売買されている値がさ大型株に資金が集中している。
  ・少数の値がさ大型株は、NYダウなど主要指数を押し上げる構成比率が高い。超人気のGAFAMと呼ばれる銘柄が代表例となっている。それらの活躍が、NYダウ・ナスダック総合・SP500の指数を押し上げるという株高の構図になっている。
  ・ロビンフッドに代表されるミーム株、SPAC(買収目的会社)などがファンダメンタルズによらない、期待だけで株価急騰する銘柄群が乱舞した。今や「兵どもが夢の跡」になっている。
  ・そして、現在は長期金利上昇で利ザヤが拡大し期待利益が膨らむ金融株が買われている。
  ・少数の優良大型株に集中するのは、投資家心理の不安な心理の裏付けであり、経験則的には『急落の前兆』との見方もできよう。

 3)長短金利差が平坦化進展 ⇒ 債券市場は米国の「景気後退」を見据えた動きに転換
  ・長短金利差の推移  昨年7/1  1/3     2/9
     2年国債利回り  0.253%  0.768%  1.342%
     10年国債利回り 1.458   1.628   1.925
       利回り差異 1.205   0.860    0.583 :「景気後退」を示唆

 4)株価上昇局面の今、利益確定売りがセオリーと言えそうだ。

●3.米FRBは、1月消費者物価指数(CPI)大幅上昇なら、利上げ0.50%の必要性高まる(ブルームバーグより抜粋

 1)2/10発表の米1月CPIが予想7.3%を上回る伸びとなった場合、FRBは2000年以来となる1回で0.50%の大幅利上げ(通常は0.25%)を検討しなければならない状況に、追い込まれる可能性がある。

 2)2/4発表された1月雇用統計で非農業部門雇用者数の伸びが事前予想を全て上回り、平均時給も大幅に上昇した。トレーダーの間では、当局が積極的な姿勢で利上げに臨むとの見方が一層高まった。

●4.FRBは3月の利上げは0.5%の大幅引上げではなく、0.25%になる (ブルームバーグ)

 1)ゴールドマン・サックスとシティが予想。

 2)根拠は、スワップ市場が2/4に織り込んだ確率は一時50%まで上昇したため0.5%の引上げの可能性が高まった。しかし、その後、32%まで低下したため、引上げ幅を0.25%に下げた。

●5.米利上げで、割高感のある株式への悪影響を警戒(ブルームバーグより抜粋

 1)バンク・オブ・アメリカは、株式相場は順調な利上げでも乗り切れると予想する楽観主義者は重要なポイントを見逃していると、指摘した。

 2)リスクは、株価が過大評価される中で、FRBが引き締めを進める、ことだと指摘し、SP500は利上げ開始前の水準として1999~2000年を除くどのサイクルよりも割高になっているだけに警戒が必要だとした。

 3)FRBの軸足が、超ハト派的な金融政策から、よりタカ派的な金融政策に移ったことで、流動性が現時点ではピークにあることが明確になった、と主張した。

●6.ラガルドECB総裁、金融政策の調整は「斬新的に」行うと明言、利上げ議論が過熱(ブルームバーグ)

●7.ゴールドマンの商品調査責任者、「今のような商品市場は見たことがない」(ブルームバーグ)

 1)「あらゆるものが無くなっている。石油・天然ガス・石炭・銅・アルミニウムなど何もかも不足している」と述べた。

 2)エネルギー・金属・農産物の先物23商品で構成されるブルームバーグ商品先物指数は今年に入り過去最高を付けた。

●8.米10年債利回り2%は「始まり」に過ぎない、トレーダーは一段の売り想定

 1)シティ       : 近く2%を超えると予想。(ブルームバーグ)
 2)マシューズ     : 2.5%に向かう。
 3)JPモルガン・アセット: 年内に3%を試す可能性がある。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)2/7、上海総合+68高、3,429(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策の期待感が投資家心理を上向かさせる流れとなった。
  ・中国景気の鈍化がくすぶる中、当局は財政や金融で景気を支えるとの見方が一段と高まっている。
  ・春節連休中に、香港や欧米の株式市場が堅調だったことが、買い安心感につながる
  ・業種別では、原油高が追い風となりエネルギー関連の上げが目立ち、発電・素材・ゼネコンが急伸、金融・ハイテクなどが上げた。

 2)2/8、上海総合+23高、3452(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策の期待感が相場を支える流れとなった。中国国内の景気腰折れを回避するため、当局は経済対策を強めるとの見方が根強い。
  ・政府は財政支出拡大し、インフラ投資を前倒しで実施すると報じられている。
  ・米中対立の悪化や金利上昇圧力などを懸念し売り先行したが、下値は堅く、終盤にはプラスに転じた。
  ・時価総額上位の金融株が相場を牽引し、ゼネコン・建機・素材などインフラ建設関連の目柄が高く、反面、ハイテク関連が冴えなかった。

 3)2/9、上海総合+27高、3,479(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策への期待感が持続する流れとなった。中国人民銀行は不動産開発向け融資の緩和に舵を切った格好だ。当局はこのところインフラプロジェクトの加速など、景気テコ入れスタンスを鮮明にしている。
  ・政府系ファンドの買い支え観測も根強い。「国隊」と呼ばれる中国の政府系資金が2/8午後、株式相場を買い支えたという見方が流れる中、指数は引け際にプラスに転じた。
  ・業種別では、消費関連の上げが目立ち、発電も高いが、反面、銀行株が冴えない。

●2.中国政府系ファンドが、株式を買い支えし、株価下落に歯止め=関係者(ブルームバーグ)

 1)2/8のCSI300指数は一時▲2.8%安まで下げたが、▲0.6%まで戻して引けた。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)2/7、日経平均▲191円安、27,248円(日経新聞より抜粋
  ・米国の1月雇用統計で雇用者数や平均賃金が市場予想を上回る伸びを示したことによるインフレ懸念の強まりを背景に米長期金利が上昇する中、相対的に割高感が意識されやすい成長株の下げが目立った。反面、バリュー(割安)株の一部に買いが入って、相場の下値を支えた。
  ・業種別では、海運や、値嵩株の半導体関連も売られ、指数を押し下げた。太陽誘電・ミネベア・スズキ・オリンパス・東エレク・信越化の下げが目立った。反面、三菱重・第一生命・日本郵政・三井不動産などが上昇した。

 2)2/8、日経平均+35円高、27,284円(日経新聞より抜粋
  ・主要企業の決算発表が続く中、業績や収益見通しが良好な銘柄を中心に買いが入り、日経平均の上げ幅は一時+200円を超えた。
  ・ただ、買い一巡後は、利益確定や戻り待ちの売りが出て、伸び悩んだ。
  ・米国の新型コロナ新規感染者数が減少していることから、景気回復の恩恵を受けやすい輸出関連株や海運株などが上昇した。
  ・米長期金利の高止まりを材料に銀行株なども堅調に推移した。
  ・一方、市場では米連邦準備制度理事会(FRB)による先行きの金利引き締めを警戒する声が根強く、上値を追う雰囲気は乏しい。
  ・KDDI・ファナック・JR東海・川崎汽船が買われ、オリンパスなどが下げた。

 3)2/9、日経平均+295円高、27,691円(日経新聞より抜粋
  ・前日の米株式相場の上昇を受けて、東京市場でも投資家心理が強気に傾く中決算を手掛かりにした個別物色が続き、一時+350円高に接近した。
  ・米長期金利の上昇を背景に利ザヤ拡大期待で金融株が買われ、ハイテク株と景気敏感株の一角にも堅調な業績を材料視した買いが入った。
  ・2/10に米1月消費者物価指数(CPI)の公表を控え、上値追いの雰囲気は次第に乏しくなった。
  ・IHI・AGC・オリンパスが買われ、出光興産・明治・第一三共が売られた。

●2.日本株は利益確定売りをして、押し目買いを待つのも方策

 1)日本株も好決算発表した個別銘柄主導の買いで堅調に推移して持ちこたえているが、決算発表シーズンが終わる来週以降は気が抜けない相場展開を予想。

 2)テクニカル面では、株価上昇を示す指標もあるが、依然、下押し圧力が消えない状況が続いている。

 3)2/10の米1月消費者物価指数(CPI)を控え、相場は慎重になるところ、逆に上昇していることに注目したい。日経平均は28,000円当たりで売りが待ち構えていそう。27,500円を超えたところで、外資系の売りが目立つ。

 4)2/10公表の米CPIを見てから動いても良いのではないか。

 5)今後の注目材料:2月は要警戒したい
  (1)米金利引上げと、上げ幅
  (2)FRB保有資産縮小
  (3)ウクライナ情勢の緊迫化と原油・天然ガス価格の動向

●3.東証1部の10~12月期純利益1.8倍、非製造業が大幅回復=SMBC日興(ロイターより抜粋

 1)2/4集計の東証1部企業の純利益は、前年同期比+79.0%増だった。製造業が+73.9%増、非製造業は+127.7%増と大幅回復した。非製造業は、海運・卸売等の伸長が目立つ。

 2)集計は、東証1部の3月期決算企業で、開示率は53.2%・774社の決算発表。

●4.日本10年債利回りが上昇、新発債の利回りが一時0.20%に(読売新聞)

 1)2016年以来、約6年ぶりの高水準を連日更新した

●5.12月実質賃金は前年比▲2.2%減、物価上昇が響き1年7カ月ぶりの下落幅(ロイターより抜粋

 1)厚生労働者は2/8公表の2021年12月毎月勤労統計で、実質賃金はマイナスに。

 2)要因は、正社員のボーナス減少と、パート労働者増加に、物価上昇が重なった。

●6.ソフトバンクG、英子会社Armの米半導体エヌビディアへの売却契約を解消(NHK)

 1)米国・EUなどの規制当局から、競争が歪められる恐れがあるとの指摘があった。

●7.企業動向

 1)コカBJ  スーパー・ドラッグストア向け大型飲料を5月、5~8%値上げ(日経新聞)
 2)雪印   チーズを最大10%値上げ、輸入原料高騰で(時事通信)
 3)AGC    オミクロン用ワクチンの原料製造を独ビオンテックから受注(時事通信)

●8.企業業績

 1)SUBARU  通期見通しの最終利益+1,000億円⇒+750億円に下方修正(NHK)
        半導体不足などの影響で減産拡大のため。
 2)ダイキン 3月通期純利益+2,000億円、前期比+34%増(日経新聞)
 3)DIC    12月通期純利益+140億円、前期比▲70%減(日経新聞)
        独化学BASFから買収した塗料やインクなどの原料となる顔料事業が不振
 4)バンナム 3月通期純利益+670億円、前期比+37%増、+90億円上方修正(日経新聞)
 5)ソフトバンクG 10~12月期純利益+290億円、前年同期比▲98%減(ロイター)
          中国AIのハイセンスの新規上場銘柄がファンド収益を下支えしたが、既上場銘柄の株価低迷による評価損を相殺し切れなかった。最大の出資先であるアリババも米国市場で約▲2割下げた
 6)タカラトミー  3月通期純利益+75億円、前期比+40%増、+10億円上方修正(日経新聞)
 7)日産   3月通期純利益+2,050億円、前年▲4,487億円赤字、上方修正(ITmedia)
 8)IHI    3月通期営業利益+800億円、前期比+2.9倍、航空エンジン好調(ロイター)
 9)JFE    3月通期最終利益+2,500⇒+2,700億円、前期▲218億円赤字(日経新聞)
 10)住友鉱  3月通期純利益+2,480億円、前期比+2.6倍(日経新聞)
 11)出光興産 4~12月期最終損益+1,999億円、前年同期▲75億円赤字(日経新聞)
 12)レノバ  10~12月期営業損益▲30.2億円赤字(フィスコ)
 13)シマノ  12月通期営業利益+1,610億円、前期比+9%増、予想を上回る(日経新聞)
 14)トヨタ  10~12月期営業利益+7,843億円、前年同期比▲21%減(ブルームバーグ)
 15)カドカワ 3月通期+117億円、前期比+22.1%増(フィスコ)
 16)ホンダ  3月通期純利益+6,700億円、前期比+1.9%増に上昇修正(時事通信)
        北米での値引き販売抑制、コスト削減、円安が寄与
 17)富士フィルム 3月通期純利益+1,850億円、前期比+2.1%増、過去最高益(ロイター)
 18)明治   3月通期純利益+840億円、前期比+28%増、予想+900億円から下方修正(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2175 エス・エム・エス  業績堅調
 ・2502 アサヒ       業績堅調
 ・2201 森永製菓      業績堅調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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