惑星と恒星は同時に作られる? 理研らが従来説覆す発見

2021年1月31日 16:41

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研究の概要(画像:理化学研究所の発表資料より)

研究の概要(画像:理化学研究所の発表資料より)[写真拡大]

 国立天文台が運営するアルマ望遠鏡は25日、成長途上の原始星を取り巻く円盤が「リング構造」をもつことを確認し、惑星がすでに形成を開始している可能性があるという説を発表した。恒星の形成後に惑星が誕生するという従来の説を覆す発見だという。

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■恒星と惑星の形成メカニズムの違い

 太陽系のように恒星の周りを惑星が公転する「惑星系」は、宇宙空間中の塵やガスから構成される「分子雲」が収縮することで誕生すると、考えられている。塵やガスが中心へと集まり原始星が形成され始める一方、一部の塵やガスは原始星の周辺にとどまり、原始星円盤が形成されるという。こうした原始星円盤は、塵やガスが原始星に集まりきったのちに惑星へと変わると、考えられてきた。

 一方で、近年の観測により、原始星が形成途中でも原始星円盤がリング構造やらせん構造をもつことが明らかになっている。これは、惑星の形成が原始星の形成中でも始まっている可能性を示唆し、従来説の検討が迫られていた。

■シミュレーションが明かす惑星形成メカニズム

 理化学研究所(理研)、名古屋大学、台湾中央研究院の研究らから構成されるグループは、惑星の材料である塵などの粒子が化学的な結合力で集まる「付着」現象に着目。塵同士が付着する様子をシミュレーションで再現し、観測結果との比較を試みた。

 シミュレーションでは、塵の付着が進む内側と進まない外側とのあいだにリング状の境界(成長前線)が生まれ、塵の付着が進むにつれリング構造が広がることが確認された。これは原始星円盤のリング構造が確認されると、惑星の形成が開始する「合図」になっていることを示唆するという。

 研究グループは、アルマ望遠鏡や米国国立電波望遠鏡がもつ超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)により、リング構造が発見されている23個の円盤に対し、成長前線の位置を確認。形成開始から100万年未満の原始星円盤のリングについて、場所と成長前線が一致することが判明したという。

 研究グループによると、今回の成果は、従来の惑星形成についての考えが大きく変わる可能性があるという。今後、研究グループが唱える惑星の形成メカニズムが、一般的であることを明らかにすることが課題だとしている。

 研究の詳細は、米天体物理学誌「Astrophysical Journal」オンライン版に掲載予定だ。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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