【日野自動車・古河工場の改革(上)】困った!日経記事の間違い

2017年10月17日 04:53

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 トラック生産も効率化を求められるのは当然だ。ようやくトヨタが掲げるTNGAが世界的に認められてきたようだ。日野自動車・古河工場の「3ラインを1ラインに集約する」方向性は当然のことだ。

【こちらも】【カイゼンでトヨタは改革が出来ない?(上)】AI EVが遅れている?原因はカイゼン?

■困った!日本経済新聞の記事

 日野自動車のことを語る前に、困った記事が書かれていることを取り上げねばなるまい。それも日本経済新聞だ。効率化や経営技術、組織運用など、ひどい勘違いをしている。技術的には素人と言わざるを得ない記事だ。また「カイゼン」を悪玉にしてしまっているが、効率化を進める、あるいは「改革」「カイゼン」を進める管理技術を全く間違って理解している。このような強引な姿勢は、神戸製鋼のような間違いを起こす管理技術を助長する結果となるのだ。

 まずは下記の記事をよく読んでもらいたい。

日本の製造業に綻び 日産・神鋼…不正相次ぐ 現場任せ限界/問われる経営の力(日本経済新聞)

 日野自動車の行っている方向性は当然のカイゼンだ。3本のラインを1本に集約しても生産できる体制を取るのが、平準化によるコストダウンの基本だ。トヨタが掲げたTNGAの本質的狙いであり、色々な技術カイゼンが起きるであろうが、経理内容として、つまり決算書の数字に表れてくるのは、「平準化によるコストダウン」が主力だ。経営陣は当然に、この数字のカイゼンを狙ってTNGAを推進しているのだ。マツダ、スバル、コマツなども同様であり日野自動車も当然に同じ効果を狙っている。

 上記、日本経済新聞の記事、【日本の製造業に綻び 日産・神鋼…不正相次ぐ 現場任せ限界/問われる経営の力】で論じられているドイツの「ボッシュが7つのラインを1つに集約した狙い」と同じだ。つまりボッシュも半世紀前に日本で始まった「トヨタ生産方式」に学び、独自に懸命に「カイゼン」を進めているのだ。日本経済新聞の記事が、このボッシュの動きを称賛し、「日本の製造業がこの動きに立ち遅れている」と示唆していることは、全く素人と言うほかはない。

■「カイゼン」は「コツコツ」とした「細かい改善」だけではない

 まず「カイゼン」が現場の作業者の「コツコツ」とした「細かい改善」と見ていることに驚くしかない。「改善」と日本語で聞けば、「細かい改良」とイメージしてしまうのかもしれないが、それは「カイゼン」を理解できていないことの証明だ。そもそも「トヨタ生産方式」を勉強してみれば、「産業革命」と言えるほどの「革命」で、仕掛在庫を局限したことで、「フォード方式」に比べ「数千倍の資金効率」を成し遂げていることに気付かねばならない。

 経済学者も「トヨタ生産方式」が成し遂げた「資金量の激減」を理解できている人は少ない。戦後の高度成長期の旺盛な資金需要に応えられたのも、統計数字には表れないが「トヨタ生産方式」によるところが大きい。つまり、同じ生産量を実現する設備・人員・仕掛在庫量・土地・建物などに要する資金量が数千分の一とも考えられるのだ。

 現在の黒田方式とも言うべき「資金じゃぶじゃぶ」の金融政策をしのぐ資金量を、「トヨタ生産方式」を推し進めた製造業が節約することにより、市中の他の産業、企業に提供したと言って良いだろう。「生産方式と資金量の関係」を理解できない、あるいは概念に取り込めない論法が、前記の日本経済新聞の記事となって表れている。

 「トヨタ生産方式」を理解できるなら、その「組織の作り方」と「組織運用」が基礎となっていることにも気づくはずだ。神戸製鋼はもちろん日産自動車も、この「組織運用」を近年になって、間違ってしまっていると見える。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続き: 【日野自動車、古河工場の改革(下)】組織は人間性を持っている 改革に必要なもの?

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