【日野自動車、古河工場の改革(下)】組織は人間性を持っている 改革に必要なもの?

2017年10月17日 05:03

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■経営陣の「取締役」と「執行役員」を分けている「経営陣の組織運用の弊害」

 現在の「取締役」と「執行役員」を分けている「経営陣の組織運用の弊害」と見ることもできる。「経営者は現場に立て」と言われているが、それは決して実際に現場にいることではなく、資料、数字などを含めた情報を集約して理解することである。神戸製鋼はこの情報集約と組織運用が結びついていないのだろう。

【上は】【日野自動車・古河工場の改革(上)】困った!日経記事の間違い

 決算数字に示される成果を「ノルマ」として示すことは簡単だ。例えば、神戸製鋼はグローバル競争で建設機械分野に進出し、「無理な拡販をした」と前記の日本経済新聞の記事では書かれている。確かに新日鉄を含めて、素材産業は「売り上げ、利益率改善」のため「加工分野」に乗り出した。それは重量の割に極端に付加価値の少ないビジネスモデルから、利益率を高くできる可能性のある「加工品」の分野をビジネスモデルとしたかった。それは間違いではないが、別業種で「多種少量生産」の「革命さなか」のことだった。「創り方による資金効率」を理解できなければ「組織運用」の存在を認識できないことになる。「ノルマ」だけではなく、展開する方法論にまで経営陣が踏み込んでいることが必要だった。

■他業種からの参入の問題点

 他業種から参入することは容易ではない。IT産業が自動車生産に進出しようとしているが、「品質保証」についての認識が「素人すぎる」ため「危険」が生じている。それは「テスラの死亡事故」を分析できれば、「AIの現在のところでの不完全さ」と「人間は余裕を使い果たしてしまう」癖があることを理解せずに、「アイディアの良さ」だけを持って、「AI自動運転を世に出してしまうことの危険さ」が分るはずだ。

 鉄鋼業と加工業との差、職人芸と量産企業の差、IT産業と製造業の差を認識することが必要だ。神戸製鋼の失敗は「カイゼン」の「組織運用をないがしろにした結果」であると言える。「カイゼン」の意識の高い組織では「検査結果」を「軽く見る意識にはなれないはずだ」からだ。「品質保証」の概念の浸透した組織では、検査結果を改ざんして、納品するとどのようなことが起こるのかに意識が向かうはずなのだ。

 一般論では「経営陣が売上ノルマ」など「金銭管理」にのみ意識が集中していると、自社のビジネスモデルを見失い「短期的数字」のみを追いかけることになってしまう。決算結果の数字と、ビジネスモデルにおける現場までの展開手法にたけた組織では、起こりえない「不正」と言えるのだ。ここに「経営者は現場に立て」の意味合いがある。取締役が投資の判断をして、執行役員が展開する分断した組織で起こりがちな過ちだ。人間が行う組織であることは、この分断は大変危険で、現場と経営陣との意思疎通の乗り越えがたい組織編成に見えるが、世界の標準と見られている。

■組織は人間性を持っている

 前記の日本経済新聞の記事では、「生産技術と人の心」の在り方に認識が達していない。どんな組織も「人が行う」のであり、どんな自動化も「人が行う事実」を認識できていない。どんな革命も「人の認識」が付いてこなければできないことなのだ。日産自動車の新車検査が「形骸化」していたことは「品質の良さ」の裏返しで陥る誤りでもある。これを防止する組織運用も認識できなければならない。つまり「正確な問題意識」を持ち続ける組織だ。

 日野自動車・古河工場の「カイゼン」は、製造業としては当然の方向で、遅すぎる動きではある。トラックは乗用車などとは違い、モノコックボディーではなく、梯子型フレームにキャビンと荷台が乗る構造だ。そのため多種少量生産化するにはやりやすいはずだが、共通プラットフォーム化などの点で遅れていたのであろう。ラインを3本設置していた。

■IoTに対応するカイゼン

 建設車両のコマツ製作所が、ラインの集約に先行しており、IoTについても世界のトップを走っている。この技術を取り入れると、自動車業界では、車検制度、定期整備の制度がなくなり、整備業界、ディーラーなどの存続が危ぶまれる。しかし、これはEV化とは必ずしも関連はない。エンジンのままでも起きる流れだ。日野自動車などトラック業界では、業務に使われる車が多いので、これは深刻で広範囲な国の制度を変える革命を必要とする。しかし、これに対応できる組織は「カイゼン」の出来る組織である。

 最後に「2割の効率化が出来る」と日野自動車は見ているようだが、平準化の進んだ生産方式であると、仕掛在庫の低減だけでなく、市場の動きに素早く反応できることから、資金量ではそれ以上の効果と、販売の自由度では大変有利となることが考えられる。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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