慶應大、巨大ブラックホールの周りを回転するガスリングの化学組成を明らかに

2014年9月20日 20:08

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銀河系中心核「いて座A*」周辺の想像図。中心核巨大ブラックホールは、電離ガスから成る渦巻き構造「ミニスパイラル」のほぼ中心にあり、その周りに「核周円盤」、さらに外側に二つの「巨大分子雲」がある。今回の研究によって、「核周円盤」が比較的単純な分子で構成されること(右下)と「巨大分子雲」が複雑な分子を多く含むこと(左下)が明らかにされた(慶應義塾大学の発表資料より)

銀河系中心核「いて座A*」周辺の想像図。中心核巨大ブラックホールは、電離ガスから成る渦巻き構造「ミニスパイラル」のほぼ中心にあり、その周りに「核周円盤」、さらに外側に二つの「巨大分子雲」がある。今回の研究によって、「核周円盤」が比較的単純な分子で構成されること(右下)と「巨大分子雲」が複雑な分子を多く含むこと(左下)が明らかにされた(慶應義塾大学の発表資料より)[写真拡大]

 慶應大学の竹川俊也氏・岡朋治准教授らによる研究グループは、天の川銀河の中心にある巨大ブラックホールの周りを回転するガスリングの化学組成を初めて明らかにした。

 天の川銀河の中心核には太陽の四百万倍もの質量をもつ巨大ブラックホールがあり、周囲は高温・高密度かつ回転するガスリング「核周円盤」に取り囲まれていると考えられている。この核周円盤の性質を調べることは中心にある巨大ブラックホールを理解するためにも重要であるが、周辺には大量の星間物質が集中してるため核周円盤のみのデータを抽出することは困難であった。

 今回の研究では、国立天文台野辺山45m電波望遠鏡を用いて核周円盤の観測を行い、核周円盤に多く含まれる分子種と隣接する巨大分子雲に多く含まれる分子種を分類した。

 その結果、核周円盤に隣接する巨大分子雲には複雑な分子が多く存在するのに対して、核周円盤には比較的簡単な構造の分子しか存在しない事が分かった。これは、核周円盤内部が紫外線またはX線の放射が強く、大きな分子の存在できない過酷な環境であることを示唆している。

 今回の研究によって、核周円盤とこれに隣接する巨大分子雲の実体をより正確に描くことができ、これによって巨大ブラックホールを取り巻く銀河系中心環境について新たな知見をもたらすことが期待される。

 なお、この内容は8月12日発行の「The Astrophysical Journal Supplement Series」オンライン版に掲載された。

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