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10個の原子から光子を並列配送、大阪大学らが量子コンピュータ接続の基盤技術

(Steve A Johnson/unsplash.com)[写真拡大]
大阪大学、情報通信研究機構(NICT)、浜松ホトニクスなどの研究グループは、中性原子量子コンピュータのネットワーク化に向け、10個の原子から放出された光子を並列に配送・検出する多重量子光インターフェースを実証した。集積光導波路アレイを使い、従来の並列光ファイバーでは難しかった高密度化を図った成果である。
実験では、数マイクロメートル間隔に並べた10個の原子からの光子を、32チャンネルの集積光導波路アレイのうち隣接する10チャンネルに結合した。チャンネル間のクロストークを抑えながら光子を並列に検出し、原子の量子状態と光子の偏光状態との相関も確認した。研究成果は2026年8月31日付で学術誌「Optica」に掲載された。
■10個の原子から光子を並列配送
研究グループを率いたのは、大阪大学量子情報・量子生命研究センターおよび大学院基礎工学研究科の山本俊副センター長・教授らである。NICT未来ICT研究所と浜松ホトニクス電子管事業部も研究に参加した。
中性原子量子コンピュータは、光ピンセットと呼ばれる集光レーザーを使って原子を捕捉し、それぞれを量子ビットとして扱う。多数の原子を格子状に並べられることが特徴だが、単一の装置だけで利用できる原子数には実装上の制約がある。
複数の量子プロセッサを接続して計算規模を拡大するには、原子の量子状態と相関を持つ光子を生成し、その光子を別のプロセッサへ送る光インターフェースが必要になる。多数の量子ビットを並列に接続するには、原子ごとに光子を取り出して別々の経路へ送り、個別に検出できる多重化技術が求められる。
今回の実験では、10個の原子から放出された光子をそれぞれ異なる導波路へ結合し、光ファイバーを通じて超伝導ナノストリップ光子検出器へ送った。大阪大学などの共同発表では、10サイトでの空間多重は、この種の多重量子光インターフェースにおける世界記録とされている。
■光ファイバーの間隔を集積光導波路で縮小
従来の多重化手法では、複数の光ファイバーを並べ、各原子からの光子を個別のファイバーへ導く方式が主に検討されてきた。しかし、一般的なファイバーアレイではファイバー同士の間隔が広く、数マイクロメートル間隔で配置される中性原子アレイとの高密度な接続が難しかった。
研究グループは、この間隔の違いを吸収するため、ガラス基板内に複数の光の通り道を形成した集積光導波路アレイを使用した。光導波路は、光を内部に閉じ込めながら所定の経路に沿って伝える構造である。多数の導波路を微細な間隔で並べることで、光ファイバーだけを並列化する方式よりも高い集積度を得られる。
実験に使った素子には、25マイクロメートル間隔で32本の単一モード導波路が配置されている。原子アレイでは原子を7.5マイクロメートル間隔に並べ、光学系によって像を拡大し、導波路の25マイクロメートル間隔に対応させた。
原子から放出される光子の波長は約780ナノメートルである。ガラス製の光集積回路はこの波長帯の光を伝送でき、微細な導波路を高密度に構成できることから、今回のインターフェースに採用された。
■原子状態と光子の偏光状態の相関を確認
実験では、空間光変調器を使って光ピンセットの配置を制御し、10個のルビジウム原子を所定の位置に並べた。それぞれの原子から発生した光子を対物レンズで集め、集積光導波路アレイの別々のチャンネルへ結合した。
導波路を通った光子は光ファイバーへ送られ、NICTの超伝導ナノストリップ光子検出技術を基盤に浜松ホトニクスが開発した多チャンネル検出システムで並列に検出された。超伝導ナノストリップ光子検出器は、光子が入射した際に生じる超伝導細線の電気的な変化を利用して光子を検出する装置である。
研究グループは、隣り合う導波路への光の漏れに当たるチャンネル間クロストークが十分に小さいことを確認した。また、原子の量子状態と、そこから放出された光子の偏光状態との相関を10チャンネルで測定し、全体として0.87のビジビリティを得た。
この測定は、原子と光子の量子状態の関係を多チャンネルで読み出すための基盤となる。一方、今回の研究対象は原子から検出器までの多重光インターフェースであり、離れた2台の量子プロセッサを実際に接続して量子もつれを共有するところまでは実施していない。
■32チャンネルの検出システムを活用
光子の検出には、NICTと浜松ホトニクスが開発した32チャンネルの超伝導ナノストリップ光子検出器システムが使われた。今回の実験では、このうち10チャンネルを用いて光子を並列に検出した。
多重化された光インターフェースでは、導波路の数を増やすだけでなく、それぞれの経路から到着する光子を同時に識別できる検出システムも必要になる。原子アレイ、集積光導波路、光ファイバー、多チャンネル光子検出器を一連の系として構成したことが、今回の成果の要点である。
山本教授は、多重光接続の最初の実証ができたと説明し、今後は多重度をさらに増やすとともに、中性原子量子コンピュータ同士の接続実証へ研究を進めるとしている。
■約100多重への拡張を見込む
研究グループは、今回の方式を約100チャンネルまで拡張できる可能性があるとしている。多数の量子ビットから光子を並列に取り出せれば、複数の量子プロセッサ間で量子もつれを生成する試行を同時に進められるようになり、接続容量の拡大につながる。
一方、実際の量子プロセッサ接続に向けては、原子から放出された光子を導波路へ取り込む効率の向上や、より多くのチャンネルを安定して動作させる技術が重要になる。光子を使った量子もつれの生成には、光子の発生、収集、伝送、検出の各段階が関係するためである。
今回の成果は、高密度な原子アレイから複数の光子を取り出し、独立した光路で並列に配送・検出するという接続部分の基盤を示したものだ。今後、チャンネル数と光子の利用効率を高め、量子プロセッサ間で量子もつれを共有する実証へ発展させることが課題となる。
■ネットワーク型量子コンピュータの基盤技術
誤りを訂正しながら大規模な計算を行う誤り耐性型量子コンピュータでは、非常に多くの物理量子ビットが必要になると考えられている。大阪大学などの共同発表では、100万を超える量子ビットが必要になる可能性が示されている一方、中性原子量子コンピュータの単一アレイは1万量子ビット程度が一つの想定規模とされている。
そこで、複数の量子プロセッサを量子ネットワークで接続し、全体を一つの大規模な計算システムとして利用する構成が検討されている。これは、複数の計算機を接続して処理能力を拡大するデータセンター型の構成を量子コンピュータへ応用する発想である。
多重量子光インターフェースは、原子の量子状態を光子へ対応付け、多数の光路で並列に扱う接続点を担う。今回の10多重実証は、量子プロセッサを実際にネットワーク化する前段階として、高密度な中性原子アレイと多チャンネル光伝送・検出系を結ぶ技術を示した成果と位置付けられる。
論文「Waveguide-array-based multiplexed photonic interface for atom array」は、学術誌「Optica」に掲載された。研究グループは今後、多重化の規模拡大と中性原子量子コンピュータ間の接続実証を進め、誤り耐性ネットワーク型量子コンピュータの実現を目指す。
元記事: Neutral-Atom Quantum Processors Get Chip-Scale Photonic Link: Osaka Hits 10 Channels
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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