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【分析】米SEC、AIヘッジファンド急落巡り大手銀4行に召喚状 取引とレバレッジを調査

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米証券取引委員会(SEC)は、AI関連株に投資するヘッジファンド「Situational Awareness LP」の急落と資産売却を巡り、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェース、シティグループ、バンク・オブ・アメリカの4行に召喚状を送付した。SECは、ファンドの取引時期やレバレッジの利用、銀行とファンド経営陣の間の通信について情報を求めている。
調査は初期段階にあり、銀行やファンドによる法令違反が認定されたわけではない。規制当局からの情報提供要請を受けたことだけで、各行が調査対象として違法行為を疑われていることを意味するものでもない。
■米SECが取引とレバレッジの記録を調査
SECによる情報収集は、ニューヨーク・タイムズが2026年8月24日に最初に報じ、ロイターも関係者の話として伝えた。調査では、ファンドのポジションが悪化する過程で行われた取引の時期や、マージンコールに至る経緯、銀行とファンド側がレバレッジについて交わした通信などが確認されている。
Situational Awarenessは、注目度が高いファンドや大きなリターン、急激なドローダウンを経験したファンドが規制当局の精査を受けることは予想されるとしたうえで、あらゆる要請に全面的に協力するとの声明を出した。SECと銀行4行は報道機関へのコメントを控えている。
現時点で、SECは調査対象となる具体的な法令違反を公表していない。今回の召喚状は、取引や資金調達の実態を把握するための情報収集手続きと位置付けられる。
■AI関連株の下落で運用資産が急減
Situational Awarenessは、元OpenAI研究者のレオポルド・アッシェンブレナー氏が2024年に設立したヘッジファンドである。半導体やAIインフラ関連企業への集中的な投資で注目を集め、2026年6月末までの年初来リターンは439%に達したと報じられていた。
一方、7月にはAIインフラ関連株が大きく下落した。ファンドが保有していたSKハイニックスやCoreWeaveなどの株価が下がる一方、ソフトウェア企業に対する空売りポジションも逆方向に動き、ロングとショートの双方で損失が膨らんだとされる。
ファンドが投資家に送った書簡によると、7月のポートフォリオ価値は約67%減少した。ピーク時に最大450億ドル(約7兆1,550億円、1ドル=159円換算)に達していたとされる運用資産は、急速に縮小した。
■レバレッジが損失と資金需要を拡大
損失を増幅した要因が、借入金を利用して投資規模を拡大するレバレッジである。報道では、Situational Awarenessのレバレッジは最大400%に達していたとされる。ただし、比率の算定方法や時点によって意味が異なるため、借入額と自己資本の正確な関係は公開情報だけでは確定できない。
ヘッジファンドに融資や証券貸借、取引執行などを提供する金融機関は、プライムブローカーと呼ばれる。担保価値が必要な水準を下回ると、プライムブローカーは追加の現金や証券を求めるマージンコールを行い、不足が解消されなければポジションの縮小や売却を求めることがある。
米金融取引業規制機構(FINRA)の規則4210は、証券会社が顧客に信用を供与する際の証拠金要件を定めている。米連邦準備制度理事会のレギュレーションTでは、一般に信用取引による株式の新規購入について、購入価格の50%以上を顧客が負担することを求めている。一方、機関投資家の実際の資金調達条件は、ポートフォリオの構成やリスク、金融機関との契約などによって異なる。
■公開株式の大部分をシタデルへ売却
Situational Awarenessは資金確保やポジション縮小を迫られ、公開株式ポートフォリオの大部分を、ケン・グリフィン氏が率いるシタデルに売却した。売却対象となった公開株式ポートフォリオは約160億ドル(約2兆5,440億円、1ドル=159円換算)規模だったと報じられている。
ゴールドマン・サックス、JPモルガン、バンク・オブ・アメリカ、シティグループを含むプライムブローカーは、この売却の実行を支援したとされる。ただし、各行が融資、マージンコール、売却手続きで担った具体的な役割や関与の程度は、公開情報では明らかになっていない。
このため、銀行3行が貸し手、マージンコールの発行者、シタデルへの売却仲介者という三つの役割をすべて同時に担い、SECがその利益相反を中心に追及していると断定することはできない。SECが確認していると報じられているのは、取引の時期とレバレッジを巡る銀行・ファンド間の通信である。
■マージンコールが市場に与える影響
追加証拠金の請求は、融資を行った金融機関が信用リスクを管理するための仕組みである。一方、市場全体が下落する局面で複数の金融機関が同時期に担保の追加やポジション縮小を求めると、投資家による資産売却が集中し、市場の流動性需要がさらに高まることがある。
金融安定理事会(FSB)は、2021年のアルケゴス・キャピタル・マネジメント破綻などを踏まえ、予想外の大規模なマージンコールや担保請求が、市場参加者の流動性管理を圧迫する可能性を指摘している。FSBは、ノンバンク金融機関に対し、ストレステストや担保管理、流動性の確保、資金調達先の分散を強化するよう勧告している。
アルケゴスを巡っては、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、ウェルズ・ファーゴが、バイアコムCBS株の募集資料で利益相反などを十分に開示しなかったとする投資家訴訟について、2025年に計1億2,000万ドル(約191億円、1ドル=159円換算)で和解した。3行は不正を認めておらず、この民事訴訟はSituational Awarenessに対するSECの調査とは別の事案である。
■アンソロピック株など非公開資産は保有を継続
Situational Awarenessは公開株式の大部分を売却した後も、AI企業アンソロピックの未公開株などを保有している。アンソロピック株の持ち分は約50億ドル(約7,950億円、1ドル=159円換算)相当と報じられている。
アンソロピックは2026年5月、シリーズHで650億ドルを調達し、資金調達後の企業評価額は9,650億ドルとなったと発表した。Situational Awarenessも同ラウンドの投資家として公式発表に記載されている。
未公開株には取引所で形成される日々の市場価格がなく、上場株とは流動性や評価方法が異なる。ただし、未公開株だから一律に融資の担保にならないわけではなく、今回のアンソロピック株がどの契約でどのように扱われていたかは公表されていない。したがって、日々の価格情報がないことだけを理由に強制売却を免れたと断定することは避ける必要がある。
また、アンソロピックの上場時期や上場時の評価額について複数の観測報道があるものの、確定した条件としては扱えない。Situational Awarenessが保有する株式の将来価値も、今後の資金調達、上場条件、市場環境などによって変動する。
■調査は初期段階、焦点はリスク管理の実態
SECの召喚状は、行政上の調査に必要な文書や記録を収集する手段であり、それ自体は告発や処分ではない。情報収集の結果、法令違反が確認されなければ、法執行措置に至らず終了する可能性もある。
今回の事案が示しているのは、特定分野に集中した投資と高いレバレッジが組み合わさると、市場の反転時に損失だけでなく、追加担保を用意するための流動性需要も急速に膨らむという点である。投資家にとっては、運用成績だけでなく、借入規模、担保条件、資金調達先の集中度、急落時の資産売却手順を確認する重要性が改めて浮かび上がった。
■注目ポイントQ&A
●SECは具体的に何を調査しているのですか?
ファンドのポジションが悪化した際の取引時期やマージンコールに至る経緯、レバレッジの利用について銀行とファンド経営陣が交わした通信などを調べています。現時点で具体的な法令違反は公表されていません。
●Situational Awareness LPは閉鎖されたのですか?
閉鎖されたとは報じられていません。公開株式ポートフォリオの大部分をシタデルに売却しましたが、アンソロピック株などの非公開資産を保有し、その後も新たな非公開企業への投資を行っています。
●銀行4行は不正を疑われているのですか?
召喚状を受け取ったことだけで、不正を疑われる調査対象になったとはいえません。SECは情報収集を進めている段階であり、各行への違反の申し立てや法執行措置は発表されていません。
●アンソロピック株が売却されなかったのはなぜですか?
公開株式と未公開株では、流動性や評価方法、融資契約上の扱いが異なります。ただし、アンソロピック株がどのような担保契約の対象だったかは公表されていないため、売却されなかった理由を一つに断定することはできません。
元記事: SEC Probes Goldman, JPMorgan Over Conflicting Roles in AI Fund Near-Collapse
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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