Waymoがロボタクシー向け5nm ASICを公開 1,000TOPS超の演算性能でセンサー融合を高速化

2026年8月22日 14:43

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記事提供元:Tech Times

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Alphabet傘下の自動運転車開発企業Waymoは8月20日、第6世代の自動運転システム「Waymo Driver」を支える車載コンピューティング基盤と、独自設計の5ナノメートル(nm)ASICを公開した。ASIC群の公称演算性能は合計1,000TOPS、すなわち毎秒1,000兆回の演算を超え、カメラ、LiDAR、レーダーから届くデータの前処理や融合、機械学習モデルの実行を担う。

今回明らかになったのは、自動運転に必要な処理を単一の高性能SoCへ集約する構成ではない。センサーに近い段階へ専用ASICを配置し、CPU、GPU、各種アクセラレーターと役割を分担させるヘテロジニアスな構成である。Waymoは、ハードウェア、センサー、アルゴリズムを一体的に設計することで、入力から車両制御までの遅延短縮を図ったとしている。

■1,000TOPS超でセンサーデータをリアルタイム処理

第6世代Waymo Driverは、高解像度カメラ13台、LiDAR 4基、レーダー6基を組み合わせて周囲を認識する。カメラからは高解像度の画像、LiDARからは3次元の点群、レーダーからは物体の位置や速度に関するデータが継続的に入力される。

カスタムASICは、こうした異なるセンサーのデータをリアルタイムで処理し、機械学習モデルを使って融合する。Waymoが示した1,000TOPS超という数値は、複数のASICによる合計の公称演算性能であり、単一チップの性能を示すものではない。演算精度、消費電力、ダイサイズ、メモリー構成など、性能を詳細に比較するための仕様は公表されていない。

TOPSは一定時間内に実行できる演算回数を表す指標だが、使用する数値形式や対象処理によって意味が変わる。今回の数値だけから、他社の自動運転用プロセッサとの優劣や実際の応答時間を判断することはできない。

■低照度での認識を支える時間方向のノイズ低減

ASICには、低照度時のセンサーデータを扱うためのテンポラルデノイジング専用アクセラレーターも組み込まれている。これは、異なる時刻に取得した情報を参照し、時間方向の変化を利用してノイズを抑える処理である。

単一フレームだけを見るのではなく、前後の情報も使って画像やセンサーデータを整えることで、後段の機械学習モデルへより安定した入力を渡せる。Waymoは、この処理をセンサー、アルゴリズム、ASICの共同設計によって実装し、特に低照度環境での処理に活用している。

ASICは、スパース畳み込みを用いるモデルから高密度のTransformerまで、性質の異なる機械学習モデルを実行できるよう設計されている。専用回路ですべての走行判断を完結させるのではなく、前処理やセンサー融合など適性の高い処理を受け持ち、残りをCPUやGPUなどへ引き渡す構成だ。

■センサー入力から車両制御までの遅延を短縮

Waymoは、センサーが情報を取得してから車両が物理的に反応するまでの時間を「pixels-to-actuation」遅延と呼び、車載計算基盤の重要な設計指標に位置付けている。走行判断は車内で処理され、機械学習モデルが周囲の状況を把握し、進路を評価して制御命令につなげる。

同社によると、Waymo Driverの生の演算能力は過去8年間で20倍に拡大した。今回の計算基盤は、2億マイル、約3億2,000万キロを超える完全自動運転の経験を基に設計されているという。

一方、Waymoは遅延の絶対値や改善前後の数値を明らかにしていない。1,000TOPS超という演算性能は、低遅延化を支える要素の一つだが、実際の応答時間はデータ転送、ソフトウェア、モデル構成、各プロセッサ間の連携などを含むシステム全体で決まる。

■二つの独立した計算系統で障害に備える

Waymoの車載計算基盤は、二つの独立したエンジンのように動作する冗長構成を採用している。通常時は双方が全処理を並行して実行し、一方で障害が発生した場合には、もう一方が処理を引き継ぐ設計だ。

この説明は車載計算システム全体の冗長性を示すものであり、公開情報だけではASICの搭載個数や各系統への具体的な割り当てまでは確定できない。重要なのは、運転を人間へ引き継ぐことを前提としないシステムとして、計算処理を継続するための冗長性が設計段階から組み込まれている点である。

車載コンピューターは、振動、衝撃、温度変化のある環境で継続的に動作する必要がある。Waymoは計算基盤を車両の液冷システムと統合し、寒冷地からフェニックスの高温環境まで、幅広い条件で安定した性能を維持できるよう設計したとしている。

■独自ASICとCPU、GPUを組み合わせる構成

WaymoのカスタムASICは、Waymo Driverのすべての処理を担う単一の頭脳ではない。センサーデータの前処理、融合、機械学習モデルの実行に適した専用回路として、CPU、GPU、その他のアクセラレーターと組み合わせて使われる。

CPUやGPUなどは、計算資源の調整、データ移動、ログ記録をはじめ、機械学習以外の処理も分担する。Waymoは協業先としてAMD、Micron、NVIDIA、Samsung、SanDisk、ソシオネクスト、TSMCを挙げており、独自シリコンへ全面的に切り替えるのではなく、外部企業の技術と組み合わせて車載システムを構築している。

Waymoは、今回のASICを開発中の複数のカスタム部品の一つと説明している。ただし、ほかの独自チップの用途や投入時期は明らかにしていない。

■製造プロセスの詳細は未公表

Waymoが公式に明らかにしたのは、ASICが5nmプロセスで製造されていることまでである。製造委託先や、TSMCの車載向けプロセス「N5A」を採用しているかどうかは公表されていない。

TSMCのN5Aは、同社の5nm技術を車載用途向けに拡張したプロセスで、2022年に車載用途向けの認定を受けた。従来のN7Aと比べ、TSMCの公称値では速度が約20%向上するか、消費電力が約40%低下し、ロジック密度は約80%向上する。しかし、これらはN5A自体の一般的な仕様であり、WaymoのASICに適用できる性能値ではない。

製造委託先やプロセスの派生仕様が正式に示されるまでは、WaymoのASICをN5A製品として扱うことはできない。

■Hot Chipsで車載計算技術を説明へ

Waymoのコンピュート責任者であるダニエル・ローゼンバンド氏は、8月24日にスタンフォード大学で開催されるHot Chips 2026で、「Compute in Motion: Challenges of Autonomous Driving」と題した基調講演を行う予定だ。同日の自動車向けセッションには、Waymoのセンサー融合プロセッサに関する講演も組まれている。

現時点では、ASICの消費電力、演算精度、実効性能、メモリー構成、各処理の遅延などは明らかになっていない。Hot Chipsでどこまで詳細な仕様が示されるかが次の注目点となる。

■注目ポイントQ&A

●Waymoが公開した5nm ASICは何を処理するのですか?

カメラ、LiDAR、レーダーから入力されるデータの前処理や融合、機械学習モデルの実行を担当します。経路計画やシステム管理を含む車載処理のすべてを、このASICだけで実行する構成ではありません。

●1,000TOPS超は単一チップの性能ですか?

公開情報では、複数のASICによる合計の公称演算性能です。演算精度や消費電力などが明らかになっていないため、他社製品のTOPS値と単純には比較できません。

●WaymoのASICはTSMCのN5Aプロセスで製造されているのですか?

Waymoは5nmプロセスのASICであることと、TSMCとの協業を明らかにしていますが、製造委託先やN5Aの採用は公表していません。

●二つのASICが常に並列動作する構成ですか?

Waymoは車載計算基盤を二つの独立したエンジンとして構成し、障害時に一方が処理を引き継ぐと説明しています。ただし、公開情報だけではASICの正確な個数や各計算系統への割り当てまでは確認できません。

●TeslaやNVIDIAの車載プロセッサより高速なのですか?

担当する処理の範囲や演算精度、システム構成が異なるうえ、Waymoは比較に必要な詳細仕様を公表していません。TOPSの数値だけから速度や自動運転性能の優劣を判断することはできません。

元記事: Waymo Discloses First Custom Chip: 5nm TSMC Automotive Silicon in Every Robotaxi

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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