Anthropic、Claudeによる自律タンパク質設計を実験検証―1,320設計の26.8%で結合を確認

2026年8月21日 12:42

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記事提供元:Tech Times

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Anthropicは、AIモデル「Claude」が専門的な計算ツールを自律的に操作して設計したタンパク質について、外部の受託研究機関による実験結果を公開した。信頼できる測定結果が得られた15標的に対する1,320件の設計のうち、354件で標的タンパク質への結合が確認され、全体のヒット率は26.8%だった。

設計条件別のヒット率は22.6%から35.1%で、評価可能だった15標的のうち14標的で少なくとも1件のバインダーが得られた。Anthropicは、現在のde novoタンパク質バインダー設計で一般的だとする10~15%の水準を上回ったとしている。

一方、この研究は現時点で査読を受けておらず、同じツール、計算資源、対象を使った人間の専門家による並行試験も行われていない。今回の結果は、Claudeを組み込んだ設計パイプラインの実験データとして評価する必要がある。

■1,320件の設計を外部ラボで物理的に検証

研究では、PD-L1、TREM2、TNFα、EGFR、VEGF-Aなどを含む16標的について、Claude Mythos PreviewとClaude Opus 4.8がde novoミニタンパク質バインダーの設計キャンペーンを実行した。このうち15標的で解釈可能な測定結果が得られ、14標的で結合する設計が確認された。

設計されたのは、標的タンパク質の特定部位に結合することを意図した50~120アミノ酸残基のミニタンパク質である。全16標的に対して1,440件が設計され、そのうち信頼できる測定結果が得られた1,320件がヒット率の集計対象となった。

設計データはAdaptyv BioとTwist Bioscienceの2つの受託研究機関へ送られ、設計された配列のまま合成、発現、結合測定が行われた。Adaptyv Bioの集計では、1,320件中354件が標的に結合し、平均ヒット率は26.8%となった。

実行形式によって成績には差があった。複数標的を一度に扱う48時間のキャンペーンでは、Mythos Previewが26.7%、Opus 4.8が22.6%のヒット率を記録した。Mythos Previewが標的を一つずつ24時間で処理した形式では35.1%だった。したがって、22.6~35.1%という数値は全設計をまとめた単一の平均値ではなく、モデルと実行形式ごとの結果を示している。

■Claudeは設計モデルではなく、専門ツールを統括

Claude自体がタンパク質の立体構造やアミノ酸配列を単独で生成したわけではない。今回の役割は、既存のオープンソース設計モデルや構造予測モデルを選び、組み合わせ、実行結果を評価するオーケストレーション層だった。

Claudeは約3万トークンのプロトコルを起点に、標的に関する情報を調査し、結合を狙う部位であるエピトープを選択した。続いて、PXDesign、RFdiffusion3、Genie 3、FreeBindCraft、BoltzGen、RFdiffusion、Proteina-Complexaなどから設計手法を選び、SolubleMPNNによる配列設計や複数段階のインシリコ最適化を進めた。

さらに、ESMFold2やProtenix v2などの構造予測ツールを使って候補を評価し、各標的について最終的に30件を順位付けして提出した。セッション開始後は、個々の設計判断に対する人間からの追加指示はなかったという。

この構成で重要なのは、一つのAIモデルがすべての科学計算を担うのではなく、汎用的な推論モデルが目的に応じて専門ツールを選択し、設計、評価、候補選定までを連続した作業として動かした点にある。研究で使用されたプロンプト、計算モデル、設計履歴、実験結果は公開データセットに収録されている。

The Decoderの報道によると、計算予算は48時間の複数標的キャンペーンが約5万ドル、24時間の単一標的セッションが約1万ドルだった。1ドル159円で換算すると、それぞれ約795万円、約159万円となる。これらは計算処理の予算であり、タンパク質の合成や実験費用を含む総開発費とは区別する必要がある。

■RBX1では公開コンペの設計と同一条件で比較

人間の設計との比較が行われた例の一つが、E3ユビキチンリガーゼを構成するタンパク質RBX1である。Mythos Previewが単一標的形式で設計した90件のうち、28件で結合が確認された。

RBX1はAdaptyv Bioが実施した公開設計コンペティションの対象でもあり、同コンペでは245件の設計中9件が結合し、ヒット率は3.7%だった。Anthropicはコンペの優勝設計を再合成し、Claudeの上位設計と同じ測定プレートで比較した。

この試験では、コンペ優勝設計の解離定数が約45nMだったのに対し、Claudeの最上位設計は約3.9nMだった。解離定数は一般に値が小さいほど強い結合を示すため、この測定条件ではClaudeの設計が約10倍強く結合したことになる。ただし、これはRBX1という単一標的における上位候補同士の比較であり、研究全体を人間とAIの一対一の性能比較として扱うことはできない。

TREM2では90件中72件が結合し、ヒット率は80%だった。VEGF-Aでは90件中54件の結合が確認された。標的によって結果に大きな差があることから、全体平均だけでなく対象ごとの成績を見ることが重要になる。

■TNFαで12件のバインダー、βシート構造でも成果

TNFαに対しては、Mythos Previewの設計では結合が確認されなかった一方、Opus 4.8が12件のバインダーを生成した。Anthropicによると、過去に複数の専門家グループが同じ標的に対する設計でヒットなしと報告していたという。

確認された設計の一部は、ヒトTNFαに加えて、カニクイザルやマウスの対応タンパク質にも結合した。こうした交差種反応性は、動物を使った研究段階まで同一候補を評価できる可能性に関係する性質である。

なぜこの標的でOpus 4.8がMythos Previewを上回ったのかは解明されていない。各標的、モデル、実行形式の組み合わせは基本的に1回ずつしか実行されていないため、モデル固有の性能と実行ごとのばらつきを分離できない点にも注意が必要だ。

研究では、構造の20%以上をβシートが占めるバインダーも、6標的に対して計15件確認された。βシートは、伸びたペプチド鎖が隣り合って配置される構造であり、設計時にαヘリックス中心の構造とは異なる制約が生じる。今回の結果は、自律パイプラインが複数の構造形式を扱ったことを示している。

■MBPとBBF-14が示した予測フィルターの課題

一方、マルトース結合タンパク質では90件すべてがバインダーとして確認されなかった。1件で弱く再現性のあるシグナルが観測されたものの、最終的な結合判定には至らなかった。

コンピューター上で設計されたβバレルタンパク質BBF-14では、異なる設計手法と骨格から得られた3件が弱い結合を示した。ただし、強いバインダーは得られていない。

MBPとBBF-14で問題となったのは、失敗した候補のフォールディング予測信頼度が、成功した標的の候補より明確に低くなっていなかったことである。現在の選別指標だけでは、実験前に失敗しやすい標的や設計を十分に見分けられない可能性がある。

Anthropicは、ヒット率と結合親和性を確認するため、今後さらに広範な特性評価を行うとしている。今回の設計に対して、細胞内での機能、安全性、特異性、安定性、薬物動態などが一括して確認されたわけではない。

■Opus 5がNMRとLC-MSの生データを解析

Anthropicはタンパク質設計とは別に、Claude Opus 5を使った分析化学データ処理の実験も公開した。品質管理用サンプルについて、受託ラボから得たNMRとLC-MSの生データを、それぞれ独立したセッションでClaude Scienceに与えた。

NMRでは、Claudeが23分で処理済みスペクトルとピーク表を作成した。各ピークの水素数は受託ラボの結果との差が最大0.08水素核に収まり、純度はClaudeが96.4%、ラボが96.33%と算出した。純度の値はベースライン処理などの計算方法に依存するため、同じ生データでも解析条件によって変わり得る。

Claudeは初回のNMRデータを処理した後、重水素交換実験を提案した。これは受託ラボが初回測定の3日後に実施していた追加実験と同じ種類のものだった。Anthropicは、この提案を単純なファイル変換を超えた科学的判断の例として紹介している。

LC-MSでは、通常は機器メーカーのソフトウェアで扱う独自バイナリ形式を解析し、19分で結果を返した。Claudeは解析前に、全2,664スキャンについてファイルに記録された集計値を再現し、読み取り方法を検証したという。

その後、クロマトグラム、マススペクトル、純度表、分子量と、同形式のファイルを再処理するためのコードを生成した。受託ラボの完成報告は最初のスペクトル取得から4日後に届いたが、Claudeの2つの解析セッションはそれぞれ30分未満で終了した。作業条件や成果物の範囲が同一とは限らないため、この時間差は同じデータに対する個別事例として見る必要がある。

■一般利用できる機能とアクセス制限

分析化学の実験で使われたClaude Opus 5は一般提供されている。一方、タンパク質設計で使われたMythos Previewは、高度な生物学・サイバーセキュリティー能力を持つモデルとして、限られた利用者を対象に提供されている。

Anthropicは、タンパク質設計を含む生物学分野の一部の要求について、正当な科学研究と悪用につながる要求を安定して識別することが難しいとして、一般利用を制限している。検証済みの科学研究者を対象とするアクセス制度を拡張する方針を示しているが、今回と同じモデル、計算予算、実行環境を一般の研究者がそのまま利用できる状況ではない。

公開されたプロンプトとデータには、設計に使われた外部資料、実行条件、設計の来歴、構造予測、ウェットラボ測定などが含まれる。ただし、研究を再現するには、Claude Scienceのエージェント環境に相当する仕組み、外部計算資源、受託ラボでの合成と測定を別途用意する必要がある。

■初期設計工程を短縮する可能性

今回の研究で得られたのは標的に結合するミニタンパク質であり、そのまま医薬品候補としての要件を満たすものではない。創薬へ進めるには、結合の特異性や強さの最適化、安定性、毒性、薬物動態、製剤化、動物試験、複数段階の臨床試験などの評価が必要になる。

それでも、標的の調査、ツールの選択、計算の実行、候補の絞り込みを24~48時間の自律キャンペーンとしてまとめた点は、計算設計工程の進め方に新たな選択肢を示している。今後は、異なる条件での反復試験、人間の専門家との統制された比較、実験結果を次の設計へ反映する反復型の運用によって、再現性と実用性を検証することが課題になる。

●de novoタンパク質設計とは何ですか?

天然タンパク質を直接改変するのではなく、目的の立体構造や機能を持つアミノ酸配列を計算機上で新たに設計する方法です。今回の研究では、標的タンパク質へ結合するミニタンパク質の設計に使われました。

●26.8%と22.6~35.1%は何が違うのですか?

26.8%は、信頼できる測定結果が得られた1,320件のうち354件が結合した全体の割合です。22.6~35.1%は、使用モデルや、複数標的をまとめて扱うか一つずつ扱うかといった実行条件別のヒット率です。

●人間の専門家より優れていると証明されたのですか?

RBX1では、公開コンペの優勝設計より強く結合する候補が同一プレート上の試験で得られました。一方、全標的について同じツール、予算、時間を与えた人間の専門家との並行比較は行われていません。このため、研究全体から人間とClaudeの一般的な優劣を結論付けることはできません。

●今回設計されたタンパク質は医薬品ですか?

医薬品開発の初期段階で使われ得るバインダーです。医薬品候補とするには、特異性、安全性、安定性、薬物動態、製剤化、動物試験、臨床試験など多くの評価が必要です。

●一般の研究者も同じタンパク質設計を実行できますか?

プロンプト、設計ファイル、実験データは公開されていますが、高いヒット率を記録したMythos Previewと同等の実行環境は一般提供されていません。再現には外部の計算資源やウェットラボも必要です。

●どのような限界が確認されましたか?

MBPでは90件すべてが結合判定に至らず、BBF-14でも弱い結合を示す3件にとどまりました。また、失敗した標的でも構造予測の信頼度が明確に低下しなかったため、現在の計算上の選別指標だけでは失敗を十分に予測できない課題があります。

元記事: Claude Runs Autonomous Protein Design Campaign: Wet Lab Confirms Twice Industry Hit Rate

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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