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アルバニージー豪首相の映像に偽音声、ディープフェイク投資詐欺で8億円超の被害

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オーストラリア証券投資委員会(ASIC)は、著名人になりすます投資詐欺への警戒を呼びかけている。2026会計年度に、詐欺で最も多く悪用された著名人10人に関係するScamwatchへの報告では、被害額が計740万豪ドル(約530万米ドル、約8億4,270万円)に達した。
最も多く悪用された人物はアンソニー・アルバニージー首相だった。ASICは同年度、詐欺サイト、フィッシングリンク、オンライン広告など1万9,400件以上を削除したが、生成AIを利用して偽広告、偽ニュース、偽レビュー、偽投資サイトを組み合わせる手口が広がっている。
■本物の映像にAI生成音声を重ねた偽広告
確認された偽動画の一つでは、アルバニージー首相の実際の映像に、AIで生成した偽の音声が重ねられていた。偽音声は、4,000豪ドル(約2,848米ドル、約45万3,000円)を投資すれば、月に4万豪ドル(約2万8,480米ドル、約452万8,000円)を得られると説明し、投資先を政府が保証する「公式プラットフォーム」であるかのように宣伝していた。首相はこのような発言をしておらず、紹介された投資話も正規のものではない。
この手口では、映像全体を一から生成するのではなく、実在する人物の映像を利用して音声や発言内容を偽装する。そのため、不自然な顔の形やまばたきだけに注目しても判別できない場合がある。口の動きと音声のずれ、声の抑揚、発言内容などが手掛かりになることはあるが、見た目や声だけで真偽を確定するのは難しい。
ASICのサラ・コート委員長はSBSニュースに対し、こうした詐欺は誰もが標的になり得るうえ、発見が難しくなっていると説明した。金融に詳しいと考えている人でも、巧妙な誘導によって資金を支払ってしまう事例があるという。
■年間1万9,400件超を削除、偽投資サイトが急増
ASICが2026会計年度に削除したオンライン詐欺は、前年度比182%増の1万9,400件超だった。このうち、フィッシング詐欺のリンクは5,476件で同279%増、偽の投資プラットフォームは7,051件で同151%増となった。暗号資産を利用した投資詐欺も3,106件に上り、約30%増加した。
ASICは2023年に詐欺サイトの妨害・削除活動を開始し、これまでに3万3,400件を超える悪質なウェブサイトやオンライン詐欺を削除している。対策範囲はウェブサイトだけでなく、被害者との最初の接点になりやすいSNS広告にも広げられた。
詐欺グループは、一つの偽サイトを設置するだけではない。著名人の偽動画を使ったSNS広告から偽ニュースへ誘導し、さらに好意的なレビューや関連サイトを検索結果に並べることで、複数の独立した情報源が投資先を評価しているように見せかける。
審査担当者や規制当局には無害な内容を表示し、端末や地域などの条件に合う利用者にだけ詐欺広告を表示する「クローキング」も使われる。広告を審査する相手によって表示内容を切り替えるため、個別の広告審査だけでは把握しにくい。
■偽の利益を見せ、追加送金を求める
典型的な手口は、SNS上の広告や偽ニュースから偽の投資プラットフォームへ利用者を誘導するものだ。広告には政治家、経済評論家、ジャーナリスト、実業家などの映像や画像が無断で使われ、簡単に高い利益を得られるかのような説明が添えられる。
利用者が連絡先を入力すると、詐欺グループが投資担当者を装って電話をかけ、少額の入金を促す。偽の取引画面には利益が増えているように表示され、場合によっては信用させるために少額が支払われることもある。その後、さらに大きな金額を投じるよう求められる。
出金しようとすると、税金や手数料などの名目で追加の支払いを要求される。しかし、画面に表示された利益は実際の運用成果ではなく、追加料金を支払っても資金は戻らない。
ASICが挙げた著名人には、アルバニージー首相のほか、金融市場コメンテーターのトム・ピオトロフスキ氏、ABCの金融ジャーナリストであるアラン・コーラー氏、経済学者のスティーブン・コウコウラス氏、政治家のジャッキー・ランビー氏とアンガス・テイラー氏、実業家のディック・スミス氏、ジーナ・ラインハート氏らが含まれる。
ニュース番組を模倣した偽映像や、WhatsAppの投資コミュニティへ誘導する偽動画も確認されている。悪用される人物はニュースや社会的な関心に応じて入れ替わるため、過去に名前が挙がっていない人物の広告であっても安全とは限らない。
■生活基盤を失うほどの被害も
56歳のクリスティ・ホールデン氏は、トム・ピオトロフスキ氏の名を悪用した詐欺で15万豪ドル(約10万7,000米ドル、約1,701万円)を失った。現在は孫の寝室で暮らしているという。
名字を公表していない74歳の退職者トニ氏は、2025年9月にFacebook広告をきっかけとして詐欺に誘導され、32万豪ドル(約22万8,000米ドル、約3,625万円)を失った。働くことができず、年金での生活にも苦しむ状況になったと話している。
著名人の顔や声は、未知の投資先に信頼感を与える材料として悪用される。さらに、ニュース番組に似せた画面、企業ロゴ、利用者の体験談、検索結果に並ぶ偽レビューが組み合わされることで、同じ詐欺グループが作った情報であっても、複数の情報が投資先の信頼性を裏付けているように見える。
マカフィーが2025年に公表した調査では、米国の回答者の72%が有名人やインフルエンサーによる偽の推薦を見たことがあり、39%がクリックしたと回答した。また、10人に1人が金銭または個人データを失い、金銭被害の平均額は525米ドルだった。
ブロックチェーン分析企業チェイナリシスは、2025年の暗号資産詐欺について、なりすまし手口に関係する資金流入が前年比1,400%以上増えたと分析している。同社の調査対象では、AIを利用した詐欺は従来型の詐欺より収益性が4.5倍高かったという。これらは暗号資産のオンチェーン分析に基づく同社の推計であり、投資詐欺全体の被害額を示すものではない。
■ニュージーランドや日本でも著名人を悪用
同様の投資詐欺はオーストラリアに限られない。ニュージーランド金融市場庁(FMA)は2026年4月、Metaのサービス上で、同じ詐欺に関係する広告110件が24時間以内に掲載されたことを確認した。2026年3月以降には、190件を超える偽取引サイトを特定し、削除対象として報告している。
ニュージーランドで確認された手口でも、政治家や企業経営者らのディープフェイク画像・動画を使った広告から、実在する報道機関のロゴを盗用した偽記事へ誘導していた。利用者が連絡先を登録すると、偽の投資担当者が接触し、少額の投資から始めるよう促す。
日本でも、警察庁が公表した2025年の確定値によると、SNS型投資詐欺の認知件数は9,523件、被害額は1,288億円だった。著名人の画像や動画を無断で使い、「必ずもうかる」「元本保証」などとうたう広告も確認されている。
■広告や検索結果ではなく、公的登録を確認
ASICは、広告に登場する人物の知名度、映像の精巧さ、ブランド名、利用者の体験談だけで投資先を判断しないよう求めている。検索結果に複数の肯定的な情報が表示されても、それらが同じ詐欺グループによって作られた可能性があるため、単純なウェブ検索だけでは十分な確認にならない。
投資を検討する場合は、事業者がオーストラリア金融サービス(AFS)ライセンスを保有しているか、ASICの公開登録簿を自分で開いて照合する必要がある。広告やメッセージに記載されたリンクからではなく、公的機関のサイトへ直接アクセスすることが重要だ。
ライセンス番号が提示されていても、実在する別の事業者から盗用された番号である可能性がある。番号の有無だけでなく、登録された事業者名、ウェブサイト、連絡先、提供を認められた金融サービスが、勧誘している相手の情報と一致するかを確認する必要がある。
正規サイトと1文字だけ異なるドメイン、「今すぐ投資」「今回限り」「残りわずか」といった緊急性を強調する表現にも注意が必要だ。SNSに掲載されているという理由だけで、広告や広告主の正当性がプラットフォームによって確認済みだと考えてはならない。
不審な投資広告や詐欺は、オーストラリアのScamwatchに報告できる。すでに送金した場合は、詐欺グループとの連絡を止め、利用した銀行や送金サービスへ直ちに相談することが重要となる。
■注目ポイントQ&A
●アルバニージー首相を使った偽動画は、どのように作られていましたか?
首相の実際の映像にAIで生成した偽音声を重ね、首相が高収益の投資先を政府保証の公式サービスとして紹介しているように見せていました。顔や背景が本物でも、音声や発言内容が改変されている場合があります。
●映像や声を見聞きすれば、ディープフェイクを判別できますか?
不自然な口の動き、声の抑揚、映像とのずれが手掛かりになる場合はありますが、それだけでは確実に判断できません。投資先の登録情報や連絡先を、公的な登録簿から独立して確認してください。
●投資広告にAFSライセンス番号が書かれていれば安全ですか?
番号だけでは安全とは判断できません。詐欺グループが実在する事業者のライセンス番号を盗用する場合があるため、登録された名称、所在地、連絡先、ウェブサイトなどが勧誘元と一致するか確認してください。
●著名人がSNSで紹介する投資広告を見た場合はどうすればよいですか?
広告内のリンクや連絡先をそのまま使わず、ASICやMoneysmartの公的な情報から事業者を調べてください。確認できない場合や、登録情報が一致しない場合は、送金や個人情報の提供を行わないでください。
●こうした詐欺はオーストラリア特有のものですか?
いいえ。ニュージーランドでは、政治家や企業経営者を使った偽広告から偽ニュースや偽取引サイトへ誘導する手口が確認されています。日本でも、著名人の画像や動画を無断使用したSNS型投資詐欺が発生しています。
元記事: Deepfake Albanese Pitching $40,000 Returns Led $7.4M in Australian Scam Losses
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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