『スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド』S4第4話、モノクロ映像で描く占領下の「光と影」

2026年8月15日 22:46

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記事提供元:Tech Times

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『スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド』シーズン4の第4話「A Case of Chiaroscuro」がParamount+で配信された。約50分にわたりモノクロで表現された本作は、ルネサンス絵画からドイツ表現主義、フィルム・ノワールへと受け継がれてきた光と影の技法「キアロスクーロ」を用い、クリンゴン占領下でウーナ・チン=ライリーが直面する道徳的葛藤を描いている。

■「キアロスクーロ」の語源と絵画史における倫理的役割

「キアロスクーロ(chiaroscuro)」という言葉は、イタリア語の「chiaro(明るい、明瞭)」と「scuro(暗い、不明瞭)」に由来する。美術技法としては、明部と暗部の対比によって、2次元の画面上に立体感や劇的な緊張感、心理的な深みを生み出す手法を指す。

明暗によって形態を表現する試みは、古代ギリシャの画家アポロドロス・スキアグラフォスにまで遡るとされる。ルネサンス期には、レオナルド・ダ・ヴィンチが『岩窟の聖母』などで繊細な階調を用いて人物や空間を表現し、輪郭や明暗の境界を煙のようにぼかす「スフマート」を発展させた。

カラヴァッジョことミケランジェロ・メリージは、暗い画面の中に強い光を差し込ませる劇的な表現を推し進めた。『聖マタイの召命』や『ホロフェルネスの首を斬るユディト』では、暗闇に置かれた人物が限られた光源によって浮かび上がる。こうした極端な明暗表現は「テネブリズム」と呼ばれ、宗教画では啓示や裁き、人物の内面的な葛藤を示すためにも用いられた。

本作のモノクロ映像も、単に古い映画の外観を再現するためのものではない。誰が光の側に立ち、誰が影に隠れているのかという構図を通じて、登場人物の選択や権力関係を視覚化している。

■ドイツ表現主義からハリウッドのフィルム・ノワールへ

映画における強い明暗表現の重要な源流の一つが、第一次世界大戦後のドイツで発展した表現主義映画である。政治的不安や経済危機、戦争の記憶を背景に生まれた作品では、歪んだ美術や誇張された影、不安定な構図を用いて、登場人物の心理や社会の圧迫感を外在化した。

その代表作であるロベルト・ヴィーネ監督の『カリガリ博士』(1920年)は、歪んだ背景画や鋭い影、現実感を意図的に崩した建築によって、権威や狂気をめぐる物語を描いた。同作をナチズムの到来と直接結び付ける解釈は後世の映画研究で広まったものだが、少なくとも権力への服従や不安定な現実認識をめぐる作品として、長く議論されてきた。

ナチスの台頭後、ユダヤ系を含む多数の映画人がドイツやオーストリアなどを離れ、ヨーロッパ各地やハリウッドへ移った。ビリー・ワイルダー、オットー・プレミンジャー、エドガー・G・ウルマーらの亡命映画人に加え、フリッツ・ラングをはじめとするドイツ語圏出身の監督や撮影関係者は、心理的な暗さを光と影で表現する手法をアメリカ映画へ持ち込んだ。

彼らだけがフィルム・ノワールを「発明した」と単純化することはできないが、ドイツ表現主義と、ナチスの迫害から逃れた亡命映画人がその形成に大きな影響を与えたことは確かである。こうした歴史を踏まえると、反ファシズムと占領への抵抗を扱う本作が同じ視覚言語を用いることには、単なるジャンル模倣を超えた意味が生まれる。

■影の世界における道徳の文法と『カサブランカ』の継承

「フィルム・ノワール」という呼称は、フランスの批評家ニノ・フランクが1946年に、1940年代のアメリカ犯罪映画に共通する傾向を説明するために用いた。現在では、明確に区切られた一つのジャンルというより、犯罪劇などに見られる視覚様式や物語上の特徴を表す言葉として扱われることも多い。

代表的な作品には『マルタの鷹』(1941年)、『深夜の告白』(1944年)、『ローラ殺人事件』(1944年)、『サンセット大通り』(1950年)などがある。強い明暗差や低照度の撮影、孤立した主人公、腐敗した制度、どの選択にも代償が伴う物語を通じ、善悪だけでは整理できない世界を描いた。

第4話がとりわけ強く参照しているのが、マイケル・カーティス監督の『カサブランカ』(1942年)である。同作の舞台は、ヴィシー政権の統治下にあったフランス保護領モロッコのカサブランカだ。ナチス占領地域から逃れてきた人々が通過査証を求めて集まり、アメリカ人の酒場経営者リック・ブレインは、中立を装いながらもレジスタンスをめぐる選択に巻き込まれていく。

『カサブランカ』は一般に戦時下の恋愛ドラマとして位置付けられ、厳密にフィルム・ノワールへ分類するかどうかは見解が分かれる。ただし、陰影を強調した画面、亡命者が集う酒場、腐敗した当局、抵抗運動、中立を維持できなくなる主人公といった要素は、ノワールと共通する視覚的・道徳的な緊張を備えている。

本作の惑星マタールXIIにも、クリンゴンの検問所、占領軍に協力する住民、地下で活動するレジスタンス、さまざまな立場の人物が集まる酒場が登場する。さらに、占領側の歌に対して住民が演奏で抵抗を示す場面は、『カサブランカ』の酒場で「ラ・マルセイエーズ」が歌われる場面を明確に想起させる。

■モノクロ化を説明するSF設定:赤外線を中心とする恒星スペクトル

劇中では、マタール星系の恒星が発する「赤外線黒体スペクトル」によって、乗組員が色を認識できなくなるとムベンガ医師が説明する。

恒星の放射を黒体放射で近似し、温度が低いほど放射強度のピークが長波長側へ移るという基本的な考え方は、ヴィーンの変位則で説明できる。表面温度約5,778Kの太陽のピーク波長は約502nmで、可視光の範囲にある。一方、温度が約2,000Kならピークは約1,449nmとなり、近赤外線領域へ移る。

ただし、これはピークが赤外線にあるという意味であり、その恒星が可視光をまったく出さないということではない。また、人間の桿体細胞が通常の赤外線に反応して飽和するわけでもない。現実の視覚では、色を識別する錐体細胞が十分に働けないほど可視光が弱くなると、桿体細胞が中心となる暗所視へ移行し、色彩を感じにくくなる。

したがって、赤外線を中心とする特殊な恒星放射によって明暗は見えても色を認識できなくなるという仕組みは、黒体放射と暗所視を組み合わせた劇中独自のSF設定として受け止めるのが適切である。現実の恒星光だけで、画面のような完全なモノクロ視覚が生じると確認されているわけではない。

マタールXIIの住民は、その光環境を前提として都市や衣服、装飾文化を築いている。エンタープライズの乗組員にとっては一時的な知覚上の制約だが、現地の人々にとっては日常そのものであり、この逆転が世界観に厚みを加えている。

■検問スキャナーを逆用する電磁パルス起爆装置の仕組み

物語の鍵を握るのが、クリンゴンの検問スキャナーが使用する34.6MHzの信号に反応する装置である。

34.6MHzは、国際電気通信連合の一般的な区分では30~300MHzのVHF帯に入る。この周波数の自由空間波長は約8.66メートルで、4分の1波長は約2.17メートルとなる。訳文にあった4.33メートルは2分の1波長に相当する。

特定の周波数に合わせた共振回路がスキャナーの電波を検出し、それを作動信号として利用するという発想自体は、パッシブRFIDに似ている。パッシブRFIDは、リーダーから受け取った電波を整流して、ごく低消費電力の回路を動作させる。

一方、通常の検問スキャナーから受け取る電波だけで、電子機器網を破壊する規模のEMPをその場で発生させることは、現実のパッシブRFIDの能力を大きく超える。劇中の装置は、スキャナーの信号を起動のきっかけとして利用し、別途蓄えられたエネルギーまたは架空の技術によってEMPを発生させる装置と考えるのが自然である。

ウーナ中佐はこの装置を協力者のローマンに持たせ、彼が情報を伝えるため検問所へ向かう行動を利用する。占領側が支配のために設置した監視システムを、逆にそのシステムを崩す引き金へ変える作戦である。これは、抑圧の仕組みを理解することが抵抗の手段にもなるという、本作の主題を象徴している。

■ジーン・ロッデンベリーの寓話精神と色彩の帰還

ジーン・ロッデンベリーが構想した『スター・トレック』では、異星や異星人を通じて、現実社会の政治、戦争、宗教、差別といった問題を寓話的に描く手法が繰り返し用いられてきた。現実の社会問題を別の惑星へ置き換えることで、視聴者に一定の距離を与えながら、本質的な問いを突き付ける方法である。

マタールXIIもこの伝統を受け継ぐ舞台だ。クリンゴンは占領勢力となり、連邦とクリンゴンの間の政治的制約が宇宙艦隊による公然たる介入を難しくしている。ウーナ中佐は、当初は任務の範囲を守ろうとするものの、現地の人々が置かれた状況を知るにつれて、不介入の姿勢を維持できなくなる。

終盤、ウーナたちのシャトルがマタールの影響圏を離れると、画面に色彩が戻る。しかし、色の回復は、彼女が占領下で下した判断をなかったことにはしない。別人の身分を引き受け、レジスタンスを導き、協力者の行動を利用し、その過程で犠牲を生んだ経験は、宇宙艦隊の明確な規則だけでは整理できない。

本作におけるキアロスクーロは、善と悪を単純に光と闇へ分けるための技法ではない。光と影が交差する場所にこそ、善意と欺瞞、抵抗と犠牲、規則と責任が同時に存在することを示している。

『スター・トレック:ストレンジ・ニュー・ワールド』シーズン4は、Paramount+で毎週木曜日に新エピソードが配信される。公式案内によると全10話で、シーズン最終話は2026年9月24日に配信予定である。

■注目ポイントQ&A

●なぜシーズン4第4話は全編モノクロで表現されているのですか?

劇中では、マタール星系の恒星が赤外線を中心とする特殊な放射スペクトルを持ち、人間の色覚が機能しにくくなるためと説明されています。現実の視覚科学をそのまま再現したものではなく、黒体放射と暗所視を基にしたSF設定です。演出面では、キアロスクーロやドイツ表現主義、フィルム・ノワールの視覚表現を用いて、占領下における道徳的な曖昧さを描いています。

●キアロスクーロとはどのような技法ですか?

光と影の強い対比によって、立体感や劇的な緊張、心理的な深みを表現する美術技法です。ルネサンス期のレオナルド・ダ・ヴィンチやカラヴァッジョの作品で発展し、後にドイツ表現主義映画やフィルム・ノワールの映像表現にも影響を与えました。

●劇中でレジスタンスが使用した装置はどのような仕組みですか?

クリンゴンの検問スキャナーが発する34.6MHzの電波を検出し、それを作動のきっかけとして利用する装置です。特定周波数の電波を受けて起動する発想はパッシブRFIDに似ていますが、受信した電波だけで大規模なEMPを発生させる部分は現実のRFID技術ではなく、劇中独自のSF設定です。

●映画『カサブランカ』との関連性は何ですか?

占領下の都市、亡命者や協力者が集まる酒場、地下の抵抗運動、中立を維持できなくなる主人公など、共通する構図が数多くあります。特に、占領側の歌を住民の演奏が圧倒する場面は、『カサブランカ』で「ラ・マルセイエーズ」が歌われる場面を直接的に想起させます。ただし、『カサブランカ』自体を厳密にフィルム・ノワールへ分類するかどうかについては見解が分かれています。

元記事: Strange New Worlds Episode 4: Jewish Refugees Built Film Noir; Klingon Occupation Uses It

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

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