相場展望11月17日号 米国株: 高値圏のAI関連株に気迷い、エヌビディア決算発表11/19注目 日本株: 11月は日経平均は弱い状況が続く、AI関連株に一服感

2025年11月17日 13:49

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)11/13、NYダウ▲797ドル安、47,457ドル
 2)11/14、 NYダウ▲309ドル安、47,147ドル

【前回は】相場展望11月13日号 米国株: AI株の売りが続くか・買い戻しされるか?注目 日本株: 今週が日本国内企業の決算発表のピーク

●2.米国株:高値圏のAI関連株に気迷い、エヌビディアの決算発表11/19に注目

 1)史上最長となった米国政府封鎖は43日間で終了
  ・この閉鎖のダメージは、大きい。経済指標で発表が遅れたが、完全には「時期遅れ」で公表とはならないようだ。経済指標の中では、失業率などのデータが永久に公表されないとの指摘がある。
  ・株式市場が注視する経済データ遅れ&失効&精度の粗さによる、不透明感が相場にどのような懸念をもたらすか、注視したい。
  ・とりわけ、12月のFRBによる「金利低下期待が市場にある」が、金融政策への判断に及ぼす影響に注目したい。

 2)米国によるベネズエラ軍事侵攻を警戒
  ・米国は麻薬取締りのため、米国軍をベネズエラ周辺海域に派遣している。さらに、空母を派遣するなど軍事攻勢を高めている。隣国のトリニダード・トバゴの基地の整備も図っているようだ。状況からみれば、米国によるベネズエラへの軍事侵攻のリスクが高まっている。
  ・米国軍は昔、隣国のグレナダにも軍事侵攻した実績があるだけに、注目したい。

 3)米国11月の株価指数の状況
  ・主要株価指数の推移  10/31   11/14  下落幅  下落率
     NYダウ     47,562   47,147  ▲415  ▲0.87%安
     ナスダック総合  23,724   22,900  ▲824  ▲3.47
     半導体株(SOX) 7,228    6,811  ▲417  ▲5.76
     日経平均     52,411   50,376  ▲2,035  ▲3.98

  ・米国株は、人工知能(AI)・半導体関連株を軸に売り圧力が高い。

 4)エヌビディア決算11/19発表に注目、人工知能(AI)関連銘柄の指標
  ・エヌビディアの株価推移
     2024年11/11  141.98ドル
     2025年04/07  110.93
        10/22  180.28
        10/29  207.04
        11/14  190.17

  ・1株当たり利益の株価倍率(PER)は11/14で、「64.03倍」と極めて高水準まで買われている。因みに、パランティアのPERは、11/12 877倍 ⇒ 11/14 828倍である。それに対して、日経平均のPERは、11/14  19.11倍。

  ・エヌビディア株価時価総額は、S&P500種で8%、ナスダック100種で10%のウエートを占めている。

  ・エヌビディアはAI関連株だけでなく、ハイテク株など全般に米国株の上昇を牽引してきた。それだけに、エヌビディアの株価の動向は注目されている。

  ・AI株は今月、割高な水準にあるとの警戒感から急落した。

  ・恐怖指数(VIX)も11/13に「20」と高水準となり、投資家はハイテク株に対する脆弱性に着目し、慎重なスタンスになってきているようだ。
     ・VIXの推移
             11/11  11/13  11/14
             17.28   20.00   19.83
  ・それだけに、今週発表11/19発表のエヌビディア決算への注目度は高い。

  ・米国の人工知能(AI)株を代表するパランティアのPER(1株当たり純利益)が877倍まで買われたことは、やはり高値警戒感が意識される水準にある。この反落が人工知能(AI)人気の一時的な調整に当たるのか、本格な反落なのかを見極める時期にあると思われる。

  ・著名投資家バフェット氏傘下のバ―クシャの株売買の動向にも注目したい。バークシャーは最近、アップル株を▲4,180万株を追加売却した。これで、かつて保有していた約9億株の約4分の3を売却したことになる。米国株高を牽引したハイテク株だが、いったんは天井を付け、調整に入る可能性に注目したい。

 5)米国株への懸念要因
  ・米国政府機関一部閉鎖が終了したものの、閉鎖の影響を受け経済指標の発表遅れや精度の復活に対する懸念がある。

  ・人工知能(AI)関連銘柄を中心に売りが広がった。
     ・エヌビディアの決算発表11/19に注目。

  ・米国連邦準備理事会(FRB)高官による12月利下げへの慎重発言が相次いでいる。

  ・7~9月期の国内総生産(GDP)発表。

  ・10月消費者物価指数(CPI)発表。

●3.ボストン連銀コリンズ総裁、当面の金利据え置きを支持、インフレを警戒 (ブルームバーグ)

 1)堅調な景気がインフレ鈍化の進展を遅らせる恐れ。

●4.ミランFRB理事、▲0.50%の利下げを改めて主張、現行の政策は「過度に引き締め」(ロイター)

●5.トランプ氏が相互関税を「軌道修正」、コーヒー豆や牛肉・バナナ・トマトを対象外に(読売新聞)

 1)物価高の不満を背景に、民主党が相次いで選挙で勝利したため。

●6.9月の米国雇用統計、1カ月半遅れて公表へ、政府閉鎖影響で10月失業率は「永久に分からない」との指摘も(ロイター)

 1)ホワイトハウスは10月の消費者物価指数(CPI)が公表されない可能性を示唆。

●7.米国バークシャー、アルファベット株を6,600億円取得、アップルは15%売却(時事通信)

 1)人工知能(AI)の成長拡大見通しが第3四半期まで株高を牽引。
 2)AI関連銘柄は割高との評価を受けることが多い。割安な株を取得する傾向もあるバフェット氏はこれまでAIに絡んだ株式投資に距離をおいてきただけに、市場では今回の判断に驚きが広がりそうだ。

●8.米国トランプ政権、スイスへの関税39⇒15%に引下げ、30兆円規模の対米投資でも合意(TBS)

●9.IEA予測、世界の石油市場は2026年に大幅な供給過剰に(ロイター)

 1)日量で最大409万バレルの大幅な供給過剰に直面する見通し。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/13、上海総合+29高、4,029
 2)11/14、上海総合▲39安、3,990

●2.中国の新規銀行融資、10月は2,200億元と前月の1兆2,900億元から急減(ロイター)

 1)予想の5,000億元を下回る。
 2)要因
  (1)経済の不透明感。
  (2)不動産セクターの長期的な低迷。
  (3)米国・中国貿易摩擦に対する不確実性により、中国の企業や家計は、借入に慎重になっている。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/13、日経平均+218円高、51,281円
 2)11/14、日経平均▲905円安、50,376円

●2.日本株:11月に入って日経平均は弱い状況が続く、AI関連株に一服感

 1)7~9月期GDPはトランプ関税の影響で年率▲1.8%のマイナス、6期ぶり
  ・トランプ関税による悪影響が顕在化してきた。
  ・企業収益にも悪影響が及ぶと思われる。
  ・これは、株式相場にとって、良いとは思えない。

 2)日経平均、11月に入って11/14までの状況は、「売り優勢」
  ・日経平均・NYダウの推移
           10/31    11/14   差異   下落率
    日経平均  52,411円    50,376  ▲2,035円安  ▲3.88%下落
    NYダウ   47,562ドル   47,147  ▲ 415ドル安  ▲0.87

  ・日本株は、日経平均への寄与度の高い少数の銘柄で高値を形成してきた。
   ・特に、AI関連株のアドバンテスト、ソフトバンクG、東京エレクトロンの貢献が大きかった。
   ・だが、米国株の中でAI・半導体関連株で急騰した銘柄に、売り圧力が増し、日本株に波及している。
   ・米国ハイテク株銘柄に弱気の雰囲気がでているだけに、慎重に備えたい。

 3)日経平均寄与度上位の相場が続く
  (1)11/13、日経平均+218円高に占める寄与上位5銘柄で+335円高・+153.6%高
   ・日経平均寄与上位5銘柄     寄与度    株価上昇幅
      アドバンテスト      +225円高   +840円高
      エムスリー        +40     +500
      東京エレクトロン     +25     +250
      中外薬          +24     +243
      フジクラ         +21     +630
       合計          +335
   ・日経平均は、寄与上位1銘柄・アドバンテストだけで+225円押し上げた。
   ・寄与上位5銘柄にはアドバンストの高騰と突出していることに注目。

  (2)11/13、日経平均905円安に占める寄与上位5銘柄は▲877円安で占有▲96.9%
   ・日経平均寄与上位5銘柄     寄与度    株価上昇幅
      アドバンテスト      ▲305円安   ▲1,140円安
      ソフトバンクG       ▲279     ▲1,390
      東京エレクトロン     ▲207     ▲2,060
      フジクラ         ▲44     ▲1,325
      ファーストリテイ     ▲42     ▲520
       合計          ▲877

 4)外国人投資家は2週連続の売り越し
  ・外国人投資家の売買の状況
           現物株      先物     合計
     10月4週  +6,436億円買  ▲  96億円売 +6,340億円買
     10月5週  +3,459億円買  ▲5,347億円売 ▲1,888億円売 
     11月1週  ▲3,559億円売  ▲2,320億円売 ▲5,879億円売

  ・ここにきて、外国人投資家の「売り越し」が目立つ展開に変わってきた。

  ・日経平均の急騰を主導してきた外国人投資家、特に海外短期投機家の動きが際立っていただけに、彼らの売り転換に注目したい。

●3.日本政府、5万円規模の家計支援で調整、電気・ガス補助は3カ月で計6,000円程度(読売新聞)

 1)物価高対策として、1~3月使用分の電気・ガス代に対し、一般的な家庭で月1,000~2,500円程度の補助を実施する方向。今年7~9月に実施した月1,000円程度の補助を倍増する。

 2)食料購入支援として重点支援地方交付金を拡充し、世帯当たり約1万円の負担軽減効果を見込む。「おこめ券」などへの充当を想定しる。

 3)ガソリン税と軽油引取税の暫定税率廃止や、2025年度税制改正により実現する所得税の減税を含め、合計で5万円程度の家計支援策となる。

 4)医療・介護への支援では、物価高騰の打撃を受ける民間病院の経営改善に向け、新たな融資制度を創設する。

 5)戦略分野への投資では、造船業の再生に向けたロードマップ(工程表)を策定し、総額1兆円の官民投資を実施する。世界的な需要が見込まれる先端半導体の量産化に向け、設備投資を重点支援するほか、データセンターの立地に必要な電力などの周辺インフラを整備する。

●4.日銀11/13発表、10月企業物価指数は前年同月比+2.7%上昇、56カ月連続でプラス

 1)コメ価格の高騰、人件費や輸送費の上昇を価格転嫁する動きから高い伸び率が続いている。(読売新聞)

●5.RIZAP、4年ぶりに第2四半期黒字、下期から再成長フェーズへ(財経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・9432 NTT       業績向上期待
 ・9433 KDDI       業績向上期待

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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