財政政策諮問会議新メンバー選出で見えた、高市内閣積極財政への本気度

2025年11月11日 13:40

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●積極財政派で固めた財政政策諮問会議の新メンバー

 株式市場は高市早苗首相誕生以来、「高市トレード」と呼ばれる大相場で日経平均が5万円の大台を突破した。いうまでもなく、高市内閣が掲げる積極財政への期待が上げている要因だ。

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 これまで、自民党税制調査会(税調)や財政政策諮問会議は、緊縮財政を標榜するメンバーが中心を占め、財源を理由に減税になる政策を次々に阻止してきた。

 それが日本経済の失われた30年をもたらす結果となったわけだが、政府は首相のリーダーシップで2つの組織のメンバーを大幅に入れ替える大英断を下した。

 11月7日に発表された財政政策諮問会議の民間議員には、積極財政派といわれる3人の新メンバーが選出されている。

●財政政策諮問会議の新メンバーになった3人とは

 今回、財政政策諮問会議の新メンバーに選出されたのは次の3人である。

・若田部昌澄氏
 若田部氏は元日本銀行副総裁で、リフレ派(デフレ脱却を目指す有識者のグループ)を代表する学者として知られる。アベノミクス下の2018年3月~2023年3月まで日銀副総裁を務め、大規模な金融緩和が経済成長に効果があったと評価する積極財政派だ。

・南場智子氏
 南場氏は大手IT企業DeNA会長で、高市氏が掲げる「責任ある積極財政」と考え方が近いとされている。元経団連副会長という経歴もあり、高市氏のブレーンの一人として今後力になる可能性があるだろう。

・永浜利広氏
 永浜氏は第一生命経済研究所主席エコノミストで、ワイドショーなどのテレビ番組のゲストコメンテーターとしてもお馴染みだ。番組では積極財政を支持するようなコメントが目立つ。テレビ出演が多いだけに、永浜氏が加わったことはパブリシティの面で大きな効果が期待できる。

 このほか、経団連会長の筒井義信氏が再任された。

●高市氏がプラマリーバランス単年度黒字化目標取り下げを表明

 高市内閣の積極財政への本気度を示す財政政策諮問会議の人事だが、高市氏はプライマリーバランス(PB)についても大きな方針転換を示した。

 高市氏は11月7日の衆議院予算員会で、立憲民主党・本庄智史政調会長の「PB黒字化目標を取り下げるのか」との質問に対し、「単年度ごとのPB黒字化目標の達成状況を見ていく方針を、数年単位でバランスを確認する方向に見直すことを検討している」と述べ、「取り下げると理解していただいて結構かと思う」と断言した。

●株式市場は期待先行から実体経済を評価する相場に移行か

 高市氏は既に税調会長を宮沢洋一氏から小野寺五典氏、財務大臣を加藤勝信氏から片山さつき氏に代えるなど、自ら命名した経済政策「サナエノミクス」の達成に向けて、人事面で外堀を埋めた感がある。

 これらの動きも株高の要因になったが、期待だけでさすがに上げ過ぎという見方もできる。今後は期待先行から景気回復を伴う実体経済を評価する相場に移行する可能性があるだろう。

 サナエノミクスが経済成長においてアベノミクスを超えることができるのか、今後の行方に注目したい。(記事:丸山優太郎・記事一覧を見る

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