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相場展望7月21日号 米国株: トランプ氏の財政と金融政策が、米国経済に致命傷リスク 日本株: 日本人の持つ美意識を、石破首相に望みたい
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)7/17、NYダウ+229ドル高、44,484ドル
2)7/18、NYダウ▲142ドル安、44,342ドル
【前回は】相場展望7月17日号 米国株: 金利が上昇し株価に割高感、主力株の株価がまちまち 日本株: 日本の参院選挙と、米国のFRB議長の去就がポイントと予想
●2.米国株:トランプ政権の財政政策と金融政策が、米国経済に悪循環をもたらす可能性
1)パウエルFRB議長の解任騒動⇒解任なら(1)ドル安(2)インフレ(3)金利高を招く
・財政赤字が後押し、急速に転落する可能性がある。
2)S&P500種は7/17、ナスダック総合は7/18、最高値を更新
・ただ、米国株式市場を代表するNYダウは、4/21に付けた38,170ドルを起点に上昇したが、その上昇支持線を下に抜ける様相を示している。機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数も、NYダウと同じような動きとなっている。
・このため、注意したい。
3)トランプ政権の財政政策と金融政策が、米国経済に悪循環をもたらす可能性
・トランプ氏の財政政策と金融政策の先行きの構図
・巨額の財政赤字 ⇒ 長期金利の上昇を招き ⇒ 負債の利払いが増加
⇒ さらなる財政赤字を拡大
・加えて、トランプ氏は歳出増加
・さらに、トランプ氏は、FRBに「金利1%低下」を要求。
・トランプ歳出増加と金利引下げで、一時的に米国景気は成長する
・しかし、その後、「大きなインフレ上昇」が待ち受けている
・大きなインフレ加速に対して、インフレ退治のため「金利の大幅な引上げ」にFRBは追い込まれることになる。
・しかも、加えて、トランプ関税によるインフレ圧力と重なる。
・米国債の利払いは、国防費をすでに上回る1兆ドルを超えようとしている。
・利払いの負担増加を阻止しようと、トランプ氏はパウエルFRB議長に幾度となく「利下げ要求」している。
・しかし、トランプ氏の利下げ要求は、米国債の利回りをむしろ押し上げる可能性がある。
・また、FRB議長の解任を実行すれば、国際基軸通貨「ドル」の信認を失う。そうなれば、ドルが基軸通貨としての地位を損なう。それを債券市場がインフレリスクがあると見ると、結果として金利上昇を招く方向に作用するだろう。
・結果、トランプにとって予期せぬ「超インフレ」が到来する。トランプ氏は、(1)自分勝手な論理でしか考えられなく、視野が狭く浅い。
・やがて、米国売りのトリプル安
(1)米国債利回りの上昇
(2)ドル安
(3)米国株売り
に加えて、(4)「超インフレ」
という4重苦を、トランプ氏はもたらす。
・世界の基軸通貨「ドル」が信認を損なうと「急激なドル安」に見舞われる。米国の国内総生産(GDP)の70%が消費部門である。このため、ドル安を起因とした輸入物価の急伸が予想される。ドミノ倒しのように、米国のインフレ加速が進展することになる。
・金融市場はトランプ氏に「不信感」を表した結果、「国債利回りの上昇」という回答をもたらすだろう。FRBもインフレ退治のため、金利を引上げざるを得なくなる。そして、米国経済は悪化する確率が高くなる。
・トランプ氏が米国大統領就任後、6カ月経過した。この期間に、家計はインフレ進行のため、外食支出を切り詰めており、レストランの売上も落ちてきている。個人消費は米国の国内総生産の7割を占めるサービス業に集中している。トランプ発の心配事が現実にならないように希望する。
●3.トランプ氏苦戦へ、505兆円規模の減税・歳出法は有権者の61%が反対(TBS)
1)この法案は、税制優遇が各種あるが限定的で、むしろ医療・貧困対策の削減の陰に隠れてしまっている。
●4.FRBは当面利下げ見送るべき、関税で年内のインフレ上昇予想=クグラー理事(ロイター)
●5.米国新規失業保険申請、22.1万件と▲0.7万件減少、予想外に減少(ロイター)
1)雇用市場の底堅さ示す。
●6.米国輸入物価、6月は+0.1%上昇、エネルギー価格下落も消費財に関税が響く(ロイター)
●7.米国小売売上高、6月は前月比+0.6%上昇で予想以上に回復、利下げ延期を示唆
1)消費減速懸念が和らぐ可能性も。(ロイター)
●8.台湾TSMC、第2四半期は過去最高益、AI需要寄与し予想上回る(ロイター)
1)第2四半期の純利益は135.3億ドルだった。
2)第2四半期の売上高は318~330億ドルと予測、前年同期の235億ドル・前四半期の300億ドルを上回る見通しを示した。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)7/17、上海総合+13高、3,516
2)7/18、上海総合+17高、3,534
●2.中国で記録的な猛暑、電力需要が過去最高に(ロイター)
1)中国、南西部の重慶市・成都市から南部の広州までで史上最高気温を記録した。
●3.中国の若年失業率、6月は14.5%に低下、1年ぶりの低水準(ロイター)
1)14~24歳(学生除く)、14.5%に低下。25~29歳(学生除く)の失業率も前月の7.0%から6.7%に低下した。30~59歳の失業率は3.9%から4.0%に上昇した。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)7/17、日経平均+237円高、39,901円
2)7/18、日経平均▲82円安、39,819円
●2.日本株:日本人の持つ美意識を、石破首相に望みたい
1)薄商い、一時40,000円台に乗せたものの3連休・参院選を前に7/18は小反落した
(1)半導体株を牽引に一本調子で上昇してきたが、一服の兆しが出てきた。
(2)薄商いが続き、夏枯れ状態。
・直近の売買額
7/17 4兆0,981億円
7/18 4兆0,045
・通常は5兆円超えの売買高であるが、最近は低調に陥っている。
(3)懸念材料があり、取り組みにくい状況に置かれている。
・懸念材料
・参院選挙で自民・公明の与党敗北と衆院に続き参院でも少数与党に転落した。
・野党の立憲含む旧来の政党も国民からの支持が低く、新鋭の野党が伸長し、与野党の動向が不透明感増す。
・自民党、公明党、共産党の大幅議席減。立憲民主党、維新の議席横ばい。国民民主党、参政党の躍進。
・石破茂・首相が「首相の椅子」にしがみ付き、市場にスッキリ観が出ない。
・日本人の美意識とは、正反対の石破・森山氏への呆れ・失望。確か、石橋氏は当時の麻生首相に「退陣」を迫ったことがある。自民党内野党のときの歯切れのよいセリフは「ウソ」だったか。自分の過去の発言を忘れたのか、「潔さ」がない。
・敗戦の指揮官としては、「失格者」。このような人物を総裁・幹事長にした自民党に対する国民から不満が増しそうだ。
2)株利益が増えないなか、日経平均株価指数が上昇しており、過熱感膨らむ
・PERの過去平均は14.4倍だが、最近は15.5倍と買われ過ぎが続いている。上値の重さを意識するレベルにあることを忘れないようにしたい。
3)日経平均は依然として底堅い展開が続く
・新高値銘柄数は依然として多く、新安値銘柄数は少ない状況が続く。
・日経平均は、強気筋が買い優勢で、売りは少なく、依然として底堅い。
・海外投資家は、4月3週から7月2週までで+5兆7,906億円の買い越し。
4)といっても、高値圏にあるだけに、慎重な対処が求められる
・日経平均は40,000円が壁となり、その壁に突撃しては跳ね返されている。
・米国株のNYダウのチャートを見ると、「崩れ始め」のサインを出しているとも読み取れる。そのため、予防的に持ち高調整もありと見る。
5)石賀首相のポストに「しがみ付き」リスクに注意
・株式市場は「すっきり感」を待ち望んでいる。
・「しがみ付き」が及ぼす悪材料は、これから噴出してくるだろう。
●3.ラピダス、2ナノ相当の半導体の基幹部品の試作成功「国内初」(NHK)
●4.消費者物価指数(コアCPI)、6月は前年比+3.3%上昇で7カ月連続で3%台(ロイター)
1)日銀の目標+2%を上回るのは39カ月連続。
2)ガソリン価格がマイナスに転換し、前月の+3.7%から低下した。
●と5.格付け大手S&P、日本製鉄をBBBに格下げ、アウトルックはネガティブ(ロイター)
1)格下げの理由は、USスチール買収でキャッシュフローが大きく悪化するため。
●6.対米国自動車輸出額3カ月連続減少、トランプ関税の影響か、輸出自動車単価▲30%減
1)6月米国への自動車輸出額は4,194億円と前年同月比▲27%減少し、今年4月以来3カ月連続で減少した。輸出自動車の単価も▲30%近く減り、「トランプ関税」による輸出控えなどの影響が生じている可能性がある。(TBS)
●7.米国向け輸出額が停滞、6月は▲11%減、のしかかる関税(moneyworld)
1)輸出数量は▲1.6%減。
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4578 大塚 業績順調
・6869 シスメックス 業績好調
・7912 大日本印刷 業績回復期待
著者プロフィール
中島義之(なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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