相場展望7月21日号 米国株: トランプ氏の財政と金融政策が、米国経済に致命傷リスク 日本株: 日本人の持つ美意識を、石破首相に望みたい

2025年7月21日 14:25

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)7/17、NYダウ+229ドル高、44,484ドル
 2)7/18、NYダウ▲142ドル安、44,342ドル

【前回は】相場展望7月17日号 米国株: 金利が上昇し株価に割高感、主力株の株価がまちまち 日本株: 日本の参院選挙と、米国のFRB議長の去就がポイントと予想

●2.米国株:トランプ政権の財政政策と金融政策が、米国経済に悪循環をもたらす可能性

 1)パウエルFRB議長の解任騒動⇒解任なら(1)ドル安(2)インフレ(3)金利高を招く
  ・財政赤字が後押し、急速に転落する可能性がある。

 2)S&P500種は7/17、ナスダック総合は7/18、最高値を更新
  ・ただ、米国株式市場を代表するNYダウは、4/21に付けた38,170ドルを起点に上昇したが、その上昇支持線を下に抜ける様相を示している。機関投資家が運用指標とするS&P500種株価指数も、NYダウと同じような動きとなっている。
  ・このため、注意したい。

 3)トランプ政権の財政政策と金融政策が、米国経済に悪循環をもたらす可能性
  ・トランプ氏の財政政策と金融政策の先行きの構図
   ・巨額の財政赤字 ⇒ 長期金利の上昇を招き ⇒ 負債の利払いが増加
    ⇒ さらなる財政赤字を拡大

  ・加えて、トランプ氏は歳出増加
   ・さらに、トランプ氏は、FRBに「金利1%低下」を要求。
   ・トランプ歳出増加と金利引下げで、一時的に米国景気は成長する
   ・しかし、その後、「大きなインフレ上昇」が待ち受けている

   ・大きなインフレ加速に対して、インフレ退治のため「金利の大幅な引上げ」にFRBは追い込まれることになる。

   ・しかも、加えて、トランプ関税によるインフレ圧力と重なる。

   ・米国債の利払いは、国防費をすでに上回る1兆ドルを超えようとしている。

   ・利払いの負担増加を阻止しようと、トランプ氏はパウエルFRB議長に幾度となく「利下げ要求」している。
   ・しかし、トランプ氏の利下げ要求は、米国債の利回りをむしろ押し上げる可能性がある。
   ・また、FRB議長の解任を実行すれば、国際基軸通貨「ドル」の信認を失う。そうなれば、ドルが基軸通貨としての地位を損なう。それを債券市場がインフレリスクがあると見ると、結果として金利上昇を招く方向に作用するだろう。

   ・結果、トランプにとって予期せぬ「超インフレ」が到来する。トランプ氏は、(1)自分勝手な論理でしか考えられなく、視野が狭く浅い。

   ・やがて、米国売りのトリプル安
     (1)米国債利回りの上昇
     (2)ドル安
     (3)米国株売り
    に加えて、(4)「超インフレ」
    という4重苦を、トランプ氏はもたらす。
   ・世界の基軸通貨「ドル」が信認を損なうと「急激なドル安」に見舞われる。米国の国内総生産(GDP)の70%が消費部門である。このため、ドル安を起因とした輸入物価の急伸が予想される。ドミノ倒しのように、米国のインフレ加速が進展することになる。
   ・金融市場はトランプ氏に「不信感」を表した結果、「国債利回りの上昇」という回答をもたらすだろう。FRBもインフレ退治のため、金利を引上げざるを得なくなる。そして、米国経済は悪化する確率が高くなる。

   ・トランプ氏が米国大統領就任後、6カ月経過した。この期間に、家計はインフレ進行のため、外食支出を切り詰めており、レストランの売上も落ちてきている。個人消費は米国の国内総生産の7割を占めるサービス業に集中している。トランプ発の心配事が現実にならないように希望する。

●3.トランプ氏苦戦へ、505兆円規模の減税・歳出法は有権者の61%が反対(TBS)

 1)この法案は、税制優遇が各種あるが限定的で、むしろ医療・貧困対策の削減の陰に隠れてしまっている。

●4.FRBは当面利下げ見送るべき、関税で年内のインフレ上昇予想=クグラー理事(ロイター)

●5.米国新規失業保険申請、22.1万件と▲0.7万件減少、予想外に減少(ロイター)

 1)雇用市場の底堅さ示す。

●6.米国輸入物価、6月は+0.1%上昇、エネルギー価格下落も消費財に関税が響く(ロイター)

●7.米国小売売上高、6月は前月比+0.6%上昇で予想以上に回復、利下げ延期を示唆

 1)消費減速懸念が和らぐ可能性も。(ロイター)

●8.台湾TSMC、第2四半期は過去最高益、AI需要寄与し予想上回る(ロイター)

 1)第2四半期の純利益は135.3億ドルだった。
 2)第2四半期の売上高は318~330億ドルと予測、前年同期の235億ドル・前四半期の300億ドルを上回る見通しを示した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)7/17、上海総合+13高、3,516
 2)7/18、上海総合+17高、3,534

●2.中国で記録的な猛暑、電力需要が過去最高に(ロイター)

 1)中国、南西部の重慶市・成都市から南部の広州までで史上最高気温を記録した。

●3.中国の若年失業率、6月は14.5%に低下、1年ぶりの低水準(ロイター)

 1)14~24歳(学生除く)、14.5%に低下。25~29歳(学生除く)の失業率も前月の7.0%から6.7%に低下した。30~59歳の失業率は3.9%から4.0%に上昇した。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)7/17、日経平均+237円高、39,901円
 2)7/18、日経平均▲82円安、39,819円

●2.日本株:日本人の持つ美意識を、石破首相に望みたい

 1)薄商い、一時40,000円台に乗せたものの3連休・参院選を前に7/18は小反落した
  (1)半導体株を牽引に一本調子で上昇してきたが、一服の兆しが出てきた。

  (2)薄商いが続き、夏枯れ状態。
    ・直近の売買額
       7/17  4兆0,981億円
       7/18  4兆0,045
    ・通常は5兆円超えの売買高であるが、最近は低調に陥っている。

  (3)懸念材料があり、取り組みにくい状況に置かれている。  
    ・懸念材料
      ・参院選挙で自民・公明の与党敗北と衆院に続き参院でも少数与党に転落した。
      ・野党の立憲含む旧来の政党も国民からの支持が低く、新鋭の野党が伸長し、与野党の動向が不透明感増す。
        ・自民党、公明党、共産党の大幅議席減。立憲民主党、維新の議席横ばい。国民民主党、参政党の躍進。
     
      ・石破茂・首相が「首相の椅子」にしがみ付き、市場にスッキリ観が出ない。
        ・日本人の美意識とは、正反対の石破・森山氏への呆れ・失望。確か、石橋氏は当時の麻生首相に「退陣」を迫ったことがある。自民党内野党のときの歯切れのよいセリフは「ウソ」だったか。自分の過去の発言を忘れたのか、「潔さ」がない。
        ・敗戦の指揮官としては、「失格者」。このような人物を総裁・幹事長にした自民党に対する国民から不満が増しそうだ。

 2)株利益が増えないなか、日経平均株価指数が上昇しており、過熱感膨らむ
  ・PERの過去平均は14.4倍だが、最近は15.5倍と買われ過ぎが続いている。上値の重さを意識するレベルにあることを忘れないようにしたい。

 3)日経平均は依然として底堅い展開が続く
  ・新高値銘柄数は依然として多く、新安値銘柄数は少ない状況が続く。
   ・日経平均は、強気筋が買い優勢で、売りは少なく、依然として底堅い。
  ・海外投資家は、4月3週から7月2週までで+5兆7,906億円の買い越し。

 4)といっても、高値圏にあるだけに、慎重な対処が求められる
  ・日経平均は40,000円が壁となり、その壁に突撃しては跳ね返されている。
  ・米国株のNYダウのチャートを見ると、「崩れ始め」のサインを出しているとも読み取れる。そのため、予防的に持ち高調整もありと見る。

 5)石賀首相のポストに「しがみ付き」リスクに注意
  ・株式市場は「すっきり感」を待ち望んでいる。
  ・「しがみ付き」が及ぼす悪材料は、これから噴出してくるだろう。

●3.ラピダス、2ナノ相当の半導体の基幹部品の試作成功「国内初」(NHK)

●4.消費者物価指数(コアCPI)、6月は前年比+3.3%上昇で7カ月連続で3%台(ロイター)

 1)日銀の目標+2%を上回るのは39カ月連続。
 2)ガソリン価格がマイナスに転換し、前月の+3.7%から低下した。

●と5.格付け大手S&P、日本製鉄をBBBに格下げ、アウトルックはネガティブ(ロイター)

 1)格下げの理由は、USスチール買収でキャッシュフローが大きく悪化するため。

●6.対米国自動車輸出額3カ月連続減少、トランプ関税の影響か、輸出自動車単価▲30%減

 1)6月米国への自動車輸出額は4,194億円と前年同月比▲27%減少し、今年4月以来3カ月連続で減少した。輸出自動車の単価も▲30%近く減り、「トランプ関税」による輸出控えなどの影響が生じている可能性がある。(TBS)

●7.米国向け輸出額が停滞、6月は▲11%減、のしかかる関税(moneyworld)

 1)輸出数量は▲1.6%減。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4578 大塚        業績順調
 ・6869 シスメックス    業績好調
 ・7912 大日本印刷     業績回復期待

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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