関連記事
相場展望7月7日号 米国株: トランプ氏の減税・歳出法の可決により、自ら首を絞める可能性 日本株: トランプ関税など悪材料出尽くしまで、日経平均は軟調?
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)7/3、NYダウ+344ドル高、44,828ドル
2)7/4、祝日「独立記念日」で休場
【前回は】相場展望7月3日号 米国株: (1) 明るい情報にフォーカス、(2) 懸念材料は無視の、強気相場 日本株: 日経平均40,000円台乗せは「2日天下」?
●2.米国株:トランプ氏の減税・歳出法の可決により、自ら首を絞める可能性高まる
1)トランプ氏の減税・歳出法の可決により、自ら首を絞める可能性高まる
(1)低所得者と高齢者の切り捨て・富裕層の優遇が目立つ。
・公的医療保険制度の受給者を厳しく制限する。このため、大量の無保険者が生まれる。
(2)学生ローンの返済負担の緩和措置を縮小。
(3)減税が織り込まれているが、中味は2017年にトランプ1期政権の2025年末までの減税措置を恒久とした内容であり、新たに設ける減税ではない。
・したがって、低所得・高齢層にとっては家計支出の軽減に結びつかない。
(4)電気自動車(EV)の購入支援策は本年9月末で打ち切り。
・購入補助金は7,500ドル(約108万円)で、高価格のEV車がガソリン車と同価格程度になっていた。
EV車価格は、57,700ドル - 補助の税額控除7,500ドル=50,200ドル
ガソリン車価格は、48,100ドル。
米国でのEV車の購入拡大に貢献していた。
(5)チップや残業代の非課税化。
(6)国境警備や国防費は積み増し。
(7)連邦政府の債務上限額を現在36.1兆ドルから5兆ドル引上げ。
(8)連邦政府の財政赤字がさらなる膨張。
・トランプ財政拡大に加え、連邦債務がさらに増加。金利高もあり、利子負担が急増し、想定外の財政赤字拡大を招く。
2)トランプ大統領、絶体絶命を迎えるか?
(1)インフレの再加速
・トランプ関税が、価格転嫁により夏場以降から値上がり。
(2)金利上昇
・膨大な連邦債の償還時期を迎え、借換債の順調な消化には金利上昇が避けらない。
・インフレ再点火となれば、インフレ抑制のため金利上昇は必然。
(3)米国連邦財政赤字はさらに膨張
・トランプ減税・歳出法案は、経費削減よりは歳出の方が大きい。
・トランプ氏は、緊縮財政よりバラマキが好きなようだ。
・マスク氏による歳出カットは想定より極めて少額に終わり、その効果を飲み込む勢いで、国防費・国境警備費などに注ぎ込んでいる。
・加えて、借換債の金利が高いため、連邦債の金利負担が膨らんでいる。
(4)米国景気後退懸念が高まる
・トランプ減税法案は、2017年のトランプ1次政権の減税が今年末に期限を迎えるため「恒久化」しようとするもの。
・新たな減税案ではないため、消費支出の増加につながらず、米国景気には関係がない。
・むしろ、医療保険が縮小されるため、低所得・高齢者向けの家計負担が増加することになる。トランプ減税法案は消費抑制となるため、米国景気にはマイナス政策となる。
(5)来年の中間選挙では、トランプ与党・共和党が負ける条件が増える。
3)トランプ氏、来年の中間選挙(下院議会)で敗北の可能性高まる
・トランプ氏肝いりの大型減税・歳出法案は、上院で1票差、下院で4票差の僅少差で可決された。
・トランプ法案で、貧富の格差が拡大する可能性高まる。
・低所得者・高齢者に反発が強まり、野党・民主党に投票する可能性が増す。
・マスク氏の新党が、与党・共和党候補へ刺客を送り、少数与党転落リスク増す。
・トランプ歳出法案に、テスラなど電気自動車(EV)補助金の削減が盛り込まれた。
・マスク氏は大型減税法案に再び批判を強め、トランプ氏の怒りを買う。トランプ大統領、イーロン・マスク氏の国外追放を「検討」(テレ朝)
・マスク氏は、「アメリカ党」を新設し、「上院で2~3議席、下院で10議席程度の確保」を目指している。
●3.米国政権の大規模減税・歳出法案が成立、トランプ氏が署名(ロイター)
1)減税・歳出法は、トランプ氏自身の看板政策であり、内容は
(1)移民取締り強化の財源確保
(2)2017年の減税措置を恒久化する
(3)医療や食料に関する支援プログラムの削減され、数百万人の国民が健康保険を失う
2)議会予算局(CBO)の試算によると、36.2兆ドルの国家債務がさらに3.4兆ドル膨らむ見通し。
3)民主党全国委員会のマーティン委員長は、「今日、トランプ氏は共和党の運命に引導を渡した。共和党はもはや富裕層と特権層のための政党であり、働く人々の味方ではない」と述べた。
●4.米国6月雇用統計で就業者数+14.7万人増、予想11万人・前月13.9万人増を上回る(NHK)
1)失業率は前月から▲0.1%低下して4.1%、予想は4.3%だった。
2)トランプ政権の関税措置で景気減速への懸念が広がったものの、雇用市場は依然として堅調さを失っていないことを示した。
3)FRBの早期利下げが見送られたとの観測が広がり、円相場は145円前後と1円余り円安・ドル高が進んだ。
●5.EU、米国関税期限前に合意はほぼ不可能に、現状維持を目指す=関係者(ロイター)
●6.インド政府、トランプ政権発動の自動車・部品25%関税に対抗、「報復関税」を課す方針(FNN)
1)インドは、英国やベトナムとの関税交渉の合意に近いとされていたが、報復関税の発表で先行きは不透明となった。
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)7/3、上海総合+6高、3,461
2)7/4、上海総合+11高、3,472
●2.米国、GE製ジェットエンジンの輸出規制を解除、中国商用飛行機向け(ロイター)
1)米国は今週、半導体設計ソフトウェア開発業者とエタン生産業者に対する中国への輸出制限も解除している。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)7/3、日経平均+23円高、39,785円
2)7/4、日経平均+24円高、39,810円
●2.日本株:トランプ関税など悪材料出尽くしまで、日経平均は軟調?
1)日経平均は、NYダウと比べて「やや割安」感が出る
・日経平均とNYダウの推移
日経平均 NYダウ
6/30 40,487円 6/30 44,094ドル
7/04 39,810 7/03 44,828
差異 ▲ 677円安 + 734ドル高
・日経平均は6/30比で下落、NYダウは上昇のため日経平均は「やや安値感」。
2)投資主体別では、海外筋・自社株買いの事業会社の買いvs年金・証券の売りの構造
・4月3週から6月3週までの売買高の状況
海外投資家 +4兆1,884億円の買い越し
事業会社(自社株買い) +2兆5,675億円の買い越し
証券会社(自己部門) ▲1兆6,870億円の売り越し
年金基金 ▲1兆1,051億円の売り越し
・4月半ば以降の日経平均の上昇の牽引役は、(1)海外投資家(2)自社株買いであった。
・長期運用の年金基金は、利益出しの売りが続いた。
・気になる点は、証券会社(自己部門)の売り越し高の多さである。
3)懸念材料
(1)海外投資家の買い越しの勢いに陰りがみえること。
・特に、海外勢の「現物株買い」の額に減少がみられる。
・海外短期筋の「株価指数先物買い」も、短期であるだけに何時売り転換してくるかもしれない。
(2)トランプ関税の「上乗せ部分」の一時停止期間の終了が7/9であること。
・日本の場合は、上乗せ部分は14%であるが、不透明である。
・自動車・部品25%関税の交渉についても、米国は譲る気配がない。
・赤沢大臣は交渉のため、既に7回も渡米しているが、肝心のベッセント財務長官とは最近、直接会談ができていないことが判明した。米国に行っても、電話会談がせいぜいの状況のようである。
・石破首相は、参院選挙投票日7/20までは「悪い情報」を隠す方向にあるとみられても仕方がない。
4)関税など悪材料出尽くしまで、日経平均は軟調に推移か?
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・4004 レゾナック 業績悪化織り込み済み
・6473 ジェイテクト 業績好調
・9508 九州電力 業績回復期待
スポンサードリンク

