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相場展望6月19日号 米国株: FRBの金利据え置きは妥当な判断、イラン情勢でインフレ懸念増 日本株: 海外短期投機筋の暗躍で、少数銘柄が日経平均を押し上げ
■I.米国株式市場
●1.NYダウの推移
1)6/16、NYダウ+317ドル高、42,515ドル
2)6/17、NYダウ▲299ドル安、42,215ドル
3)6/18、NYダウ▲44ドル安、42,171ドル
【前回は】相場展望6月16日号 米国株: (1) 中国は反転攻勢 (2) 中東の地政学リスクで、株式相場は重荷 日本株: (1) 海外勢の売り転換、(2) 中東情勢の長期化が、相場に暗雲
●2.米国株:FRBの金利据え置きは妥当な判断、イラン情勢でインフレ懸念増す
1)米国FRB、4会合連続で金利据え置き
・金利引下げの見送りの要因
(1)トランプ政権の大幅関税引上げ。
(2)中東情勢の地政学リスクの高まりで、原油価格上昇。物価上昇(インフレ)リスクがあるため。
・FRBの目標インフレ率は2.0%であるが、FRBのインフレ指標であるコア個人消費支出(PCE)価格指数の2025年末見通しは3月時点+2.8%⇒+3.1%に引上げた。FRB目標インフレ率には、まだまだ乖離幅が大きいため、利下げは遠い。
・トランプ関税により、米国の関税率は1930年以来の高水準に達する。関税の引上げは、価格転嫁による物価上昇を招く。
・原油価格の急伸で、エネルギー価格の上昇が見込まれる。これもインフレ率を押し上げる要因となる。
・上記の事項を鑑みると、FRBは利下げには積極的に動けない。
2)WTI原油先物安でインフレ懸念が和らぐも、中東情勢の緊迫再燃で原油価格上昇
・WTI原油先物価格の推移
6/13 72.98ドル
6/16 71.77
6/18 73.33
・エネルギーコスト上昇による物価上昇要因となる。
3)中東情勢を巡る懸念が再認識され、リスク回避の動き
4)米国・小売売上高が前月比▲0.9%減と予想▲0.6%減を上回った
・トランプ関税引上げの値上がり前の駆け込み的な消費が一巡し、反動減。
5)トランプ関税と原油高⇒物価上昇⇒消費支出減⇒雇用の喪失⇒経済悪化
・悪いスパイラルが懸念されるため、注意深いスタンスが有効かと思われる。
●3.FRB、6/18に金利据え置きを決定、年内の利下げの余地を残す(WSJ)
1)FRBが昨年開始した利下げを開始するには、(1)労働市場の軟化(2)関税による物価上昇が比較的穏やかであることを示す確固たる証拠が必要となりそうだ。
2)トランプ大統領は1~1.25%の大幅利下げを求めてFRBへの批判を展開していた。
●4.イランは降伏しない、ハメネイ師がトランプ氏呼び掛けに反発(ブルームバーグ)
●5.米国5月住宅着工、前月比▲9.8%減、年率換算125.6万戸(共同通信)
●6.ドル資産からの分散が鮮明、外国勢の米国債券需要に「亀裂」=BofA(ブルームバーグ)
1)外国政府・機関の保有米国債は、3月下旬から▲480億ドル減少。
2)ドル軟調時に買われていた米国債が、中央銀行が購入を増やさないのは「異例」。
3)金融市場では数カ月前から、外国勢から見た米国債の需要が注目されていた。トランプ大統領が打ち出す貿易と財政政策で、金融市場が動揺するなか、外国勢が米国資産を敬遠し、いわゆる「米国売り」が進むとの観測が広がった。関税が米国経済の見通しを暗くするとの懸念から、ブルームバーグ・ドル指数は年初から約▲8%下げ、3年ぶり安値付近にある。
●7.トランプ氏、民主党主導都市で移民送還強化を指示(AFP)
■II.中国株式市場
●1.上海総合指数の推移
1)6/16、上海総合指数+11高、3,388
2)6/17、上海総合▲2安、3,386
3)6/18、上海総合+1高、3,388
●2.中国5月小売売上高、前年同月比+6.4%増の4兆1,326億元(新華社通信)
●3.中国、5月の住宅価格指数が悪化、8割弱の都市で下落、米国との貿易摩擦が影響か(産経新聞)
1)中国国家統計局が6/16発表した5月の新築住宅価格指数によると、主要70都市のうち53都市で前月と比べて下落した。下落した都市数は8都市増加し、全体の76%を占める。
2)中国当局が不動産市場の支援策を強化しているが、不況の出口は見えていない。4月を中心に貿易を巡る米国との対立が激化したことで、輸出関連の中小・零細企業を中心に業況悪化が伝えられており、業界関係者が不動産購入に慎重姿勢を示している可能性もある。
3)市場の需給状況を反映しやすい中古住宅の価格指数は全70都市のうち67都市で下落した。
■III.日本株式市場
●1.日経平均の推移
1)6/16、日経平均+477円高、38,311円
2)6/17、日経平均+225円高、38,536円
3)6/18、日経平均+348円高、38,885円
●2.日本株:日経平均は少数銘柄での買いで上昇、海外短期投機筋の暗躍もあり注意
1)最近の日経平均の昇は、数銘柄だけで上昇
・今週の特徴は、少数の銘柄で日経平均を押し上げている
・6/16、日経平均+477円上昇したがアドテストの1銘柄で+217円押し上げ。
・6/17、日経平均+225円高も、寄与上位5社だけで+197円押し上げ。
・6/18、日経平均+348円高も、寄与上位5社で+157円押し上げ。
・こういう内容での上昇は、いつ変調するかわからないため、追従買いは慎重さが求められる。
2)日経平均はNYダウと比べて「割高感」
・日経平均とNYダウの推移
日経平均 NYダウ
6/13 37,834円 42,197ドル
6/18 38,885 42,171
差引 +1,051 ▲26
・イスラエルとイランを巡る軍事衝突による中東情勢の緊迫化を受け、NYダウはリスク回避姿勢が強まった。一方、日経平均は米国株のリスク回避先として、買われた。
・そのため、日経平均はNYダウと比べて「割高感」の状況にある。
3)円相場は、円安・ドル高で輸出関連株が買われ、日経平均の押し上げに寄与した
・円相場の推移
6/13 143.64円
6/18 144.88
6/18米国 145.12
・海外短期筋のなかでもより機動的に動くCTA(商品投資顧問)の「円売り・株価先物買い」の動きが見られた。
・CTAの動きはすばやいため、CTAの逆張りが有効となる可能性がある。
●3.日本製鉄、USスチールの買収手続き完了、粗鋼生産で世界3位に迫る(読売新聞)
1)日本製鉄はUSスチールの普通株100%を取得し、完全子会社化した。
2)買収総額は141億ドル(約2兆円)、2028年までに110億ドル(約1.6兆円)投じ設備を改修し、世界最高峰の製造技術を移転して競争力を高める。米国政府は「黄金株」を永続的に保有し、本社の移転や工場閉鎖に拒否権を持つ。
●4.5月貿易収支▲6,376億円の赤字、貿易赤字は2ヵ月連続(NHK)
1)米国向け輸出額は▲11.1%減り、このうち自動車の輸出額は▲24.7%減った。
●5.ホンダ、小型ロケットの離着陸実験に6/17成功、北海道大樹町、国内民間企業で初(テレ朝)
●6.三菱商事、米国エネルギー企業エーソン・エナジーを買収で協議、過去最大1.2兆円規模=ブルームバーグ通信(時事通信)
■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)
・6869 シスメックス 業績堅調
・7701 島津製作所 業績回復期待
・9843 ニトリ 業績堅調
著者プロフィール
中島義之(なかしま よしゆき)
1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou
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