生命が火星で誕生し地球に飛来したとする仮説 米ジョージア工科大学の研究

2022年4月26日 16:40

印刷

 地球でなぜ生命が誕生したかは、まだ解明できていない。生命が誕生するためには初期の地球環境は問題が多いからだ。地球誕生初期は、水に富む環境で、アミノ酸、核酸、脂質が生成されにくい。生命誕生に必要なこれらの原料が生成されるためには、初期の地球環境に加えて、紫外線照射、乾燥と湿潤の繰り返しサイクル、火山活動などの要因が複合的に絡み合う必要がある。

【こちらも】生命誕生の鍵を握る恒星の風 アルマ望遠鏡がアンタレスの大気詳細を明かす

 ジョージア工科大学の研究者らが25日、アストロバイオロジー誌で公開した論文によると、地球生命の起源が火星にあるのではないかという大胆な仮説が唱えられた。生命は地球ではなく火星で誕生し、微惑星の衝突などにより火星に存在していた生命を含んだ岩石が宇宙空間に飛散。それが偶然地球に降り注ぎ、やがて地球上で生命が劇的な進化を遂げ、現在の姿になったのではないかというのが、その仮説である。

 現存する地球上の生命はすべて同一の祖先を起源としている。だが、生命の大元の祖先である単一種がいったいどこでどのようなプロセスで誕生したのかについては、謎のままだ。

 この最初の生命体は、水素と二酸化炭素が豊富な環境で生息していたことが判明している。だがそのような環境は、地球では海底の通気口と浅瀬の熱水生息地に限られ、非常に狭い範囲に限定されてしまう。いっぽう火星であれば、そのような場所は地球よりも広範囲にわたっていた可能性が高い。しかも、生命進化に必須の反応である酸化還元反応は、地球誕生から10億年後以降に起こったが、火星では誕生初期の比較的早い時期に起こっていた可能性があると言う。

 この仮説は現時点では奇抜で信じがたいものだが、かつて恐竜絶滅の原因が小惑星であったことが信じられなかったことと同様、今後世界の常識を覆す可能性がないとは言えないだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事