相場展望1月3日号 岸田首相で『日経平均は上がるか?』 主要中央銀行緩和縮小、世界株式上昇は踊り場

2022年1月3日 09:28

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)12/30、NYダウ▲90ドル安、36,398ドル(日経新聞より抜粋
  ・新型コロナ変異種「オミクロン型」の感染拡大が米労働市場に悪影響を及ぼすとの懸念がやや薄れ、消費関連株を中心に買いが先行し一時+190ドル高となる。
  ・年末前に休暇を取る市場関係者が多く、薄商いで値動きが大きくなりやすかった。
  ・その後、上昇が目立った景気敏感株などに利益確定売りが優勢となり▲90ドル安。
  ・建機のキャタピラーや化学のダウが売られ、ディズニー、ウォルマートが上昇。

【前回は】相場展望12月30日 変異種「オミクロン型」を軽視してはいけない 日本株、いったんは売りが賢明か?

 2)12/31、NYダウ▲59ドル安、36,338ドル(日経新聞より抜粋
  ・強い消費を背景に米経済の回復は続くとの楽観が相場を支え、景気敏感株が高く、NYダウは上昇する場面があった。
  ・買い一巡後12/29に過去最高値を更新したとあって、利益確定売りが優勢となる。年末で取引参加者は少なく、売買の材料にも欠け、相場は方向感に乏しかった。
  ・アップル、J&J、アムジェン、テスラは売られ、ホームデポが上げた。
  ・NYダウは年間で+5,731ドル・+18.7%上昇し、上昇額は過去最高の大きさだった。

●2.米国株は「利上げ」開始の年になり、タントラム(癇癪)に警戒

 1)2021年の年間推移
  ・NYダウ     +18.7%高

 2)2021年の株価上昇の要因分析
  ・FRB(米連邦準備制度理事会)による毎月13兆円もの資金供給。
  ・世界からの資金流入が拡大。
  ・企業業績の好調。

 3)2022年の材料
  ・FRBからの資金供給:3月までは増加幅縮小しながら、3月で完了
             4月からは新規資金供給額はゼロ(株価押し上げ効果なくなる)。
  ・FRBの利上げ   :4月以降に実施の可能性(資金の流れ変化、株価への影響)。
  ・中間選挙(11月) :バイデン政権のコロナ・経済対策への審判が下る。中間選挙は過去、政権与党が負けるという経験則がある。民主党が少数派転落すると、バイデン政権のレームダック化が始まり、政策遂行力が削がれる。
  ・支持率の低さ   :(1)物価上昇(2)アフガン撤退(3)コロナ対策の不手際で、米国民から見放され43%と不支持率と乖離幅が拡大。
  ・重要経済法案の成立難航:個人への追加給付金支払いは望めず、消費支出は抑制へ。
               1.75兆円規模の財政出動・増税案の成立は難航。
  ・新型コロナ変異型感染拡大:工場操業度低下で経済活動低迷と物価上昇を招く。
  ・インフレ    :原油価格高止まり、家賃上昇による物価上昇は続く。(バイデン政権に対する不満増大で、サウジ等が原油増産に非協力に転じる)
  ・企業利益伸長率低下:2021年の利益率高伸長の反動、賃金上昇、購入コスト上昇。
  ・海外からの資金流入:特に新興国からの資金還流増は株式市場を支える効果がある。

 4)米国株式市場の2022年展望
  ・FRBは戦略転換し、経済成長⇒インフレ対策のため、市場にとっては逆風の要因に。
  ・市場のタントラム(癇癪)が起こる可能性が否めない。FRBの利上げは2022年で3回予測されており、年内に起こるタントラムとしては
   (1)利上げ1回目前の春先(2~3月)、
   (2)利上げ3回目前の秋ごろ(10月)の2回のタントラムを予想する。
  ・タントラム後の反動高はあり得ると想定。
  ・企業による自己株式の旺盛な買入が株価を下支えする。

●3.米疾病管理予防センター(CDC)は12/30、クルーズ船のコロナリスクを最高レベルに引き上げた (フィスコ)

 1)CDCは、ワクチン接種済みでも、クルーズ船の利用を避けるよう勧告した。

 2)この報道を受け、強い回復期待が後退し、NYダウは下落に転じた。
   米国債券相場は上昇し、10年債利回りは1.54⇒1.518%まで低下した。

●4.米新規失業保険申請件数19.8万件と前週20.0万人から改善(ロイターより抜粋

 1)オミクロン株が感染拡大するものの雇用への影響見られず。

 2)2020年3/7以来の低水準で、コロナ禍前の水準に戻ったことになる。

 3)失業率は4.2%と、21カ月ぶりの低水準にあり、労働市場は引き締まった状況にある。

 4)ただ、米国でのオミクロン株感染急拡大のなか疑問が台頭、一部エコノミストの間で2022年の経済成長率を下方修正する動きも出ている。

●5.テスラ、米国で47.5万台、中国20万台を衝突事故リスク問題でリコール(ロイター)

●6.米国債の2022年運用は、初の2年連続マイナスリターンか(ブルームバーグより抜粋

 1)ブルームバーグ米国債指数は2021年に▲2.5%のリターンを示し、2013年以来初のマイナスとなる。

 2)インフレと闘う米連邦公開市場委員会(FOMC)は政策金利を引き上げる構えだ。米国債運用は、2022年も更に損失を覚悟しなくてはならないと身構える投資家もいる。1974年まで記録を遡っても、2年連続マイナスの例はない。

 3)ブラックロックは、「2022年も世界株高・債券安」を予想する。

 4)バンガードは、現在1.5%前後の10年債利回りは、2%に向けて上昇すると見ている。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)12/30、上海総合+20高、3,619(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済対策の期待感が相場を支えた。中国人民銀行(中央銀行)の資金供給が12/30に900億元され改めて好感された。人民銀行はこのところ、連日で厚めの資金供給を実施している。  
  ・また、国営メディアは12/29、中国政府が一部の個人所得税の減税を2年間延長する、と報じたことも材料視された。
  ・業種別では、ハイテク関連の上げが目立ったが、反面、エネルギー関連が下落。

 2)12/31、上海総合+20高、3,639(亜州リサーチ)
  ・中国景気の持ち直しが期待される流れとなり、株価は年間で+4.8%上昇した。
  ・中国12月製造業PMIは50.3となり、市場予想50.0・11月50.1から上昇した。
  ・中国人民銀行は連日、厚めの資金供給を実施し、引き続き好感されている。
  ・業種別では、不動産の上げが目立ち、薬品も急伸、反面、酒造が安い。

●2.中国12月製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.3、市場予想50割れより改善(ロイターより抜粋

 1)11月の50.1からは上昇。なお、景況改善・悪化の分岐点は50。

 2)中国経済はコロナ禍による昨年の落ち込みから回復した後、初夏以降は、
  (1)製造業の減速
  (2)不動産部門の債務問題
  (3)小規模なコロナ感染拡大
  などを受けて失速している。

 3)12月製造業PMIのなかの、新規受注指数は49.7と、11月の49.4からやや改善したものの、依然として50を下回った。生産指数は51.4と、50を上回る水準を維持したが、11月の52.0からは低下した。

 4)経済への逆風強まる。
  ・中国の国内総生産(GDP)は、7~9月期が前年比+4.9%増となり、4~6月期の+7.9%から減速した。
  ・市場予想の+5.2%から鈍化しており、10~12月期の成長率が一段と低下すると見ている。

 5)商務省次官は12/30、中国の輸出見通しは競争激化している現状から、来年の貿易を安定させるには「かつてない」困難が伴うとの認識を示した。

●3.中国、不動産債務問題が鉄鋼などに波及し、中国経済成長鈍化リスクに(ロイターより抜粋

 1)鉄鋼業は、建設や製造業の拡大・縮小と強い連動性がある。特に、鉄鋼消費の半分強を建設業が占めており、不動産向け融資規制が強化されて以降の2021年4~6月期からは鉄鋼業の痛手となった。

 2)鉄鋼業の株価も、同時に低迷している。

 3)住宅在庫は、11月に5年ぶりの高水準に達し、買い手の心理が冷え込んでいる。2022年の住宅需要は更に弱まる見込みで、関連製造業に広く逆風が吹きつつある。
 
 4)鉄鋼と並ぶ建設資材のセメントの生産も、9~11月期に前年比▲16%減少した。ショベルカーなど掘削機械、家電の冷蔵庫の需要も前年比マイナスと減退している。

 5)これらの業界は非常に多くの労働者を雇用している。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)12/31、日経平均▲115円安、28,791円(日経新聞より抜粋
  ・東京市場が年末年始に休場するのを前に買い持ち高の縮小が先行し、一時▲300円を超えた下落があったが、売り一巡後は買戻しなども入って、下げ渋った。
  ・日経平均は5年連続で大納会の日に下落していた経験則や、新型コロナの感染者数が12/29に2カ月ぶりに500人を上回るなど警戒感も重荷になった。
  ・売り一巡後は、短期筋が連休前にシュートカバー(売り方の買戻し)を進めたこと為替が115円と円安で推移したため輸出関連株などが買い支えとなった。
  ・日経平均は年間で+1,347円・+4.9%上昇した。
  ・小田急・京成・ANAが売られ、スクリンやソフトバンクGが上昇した。

●2.日経平均は、三角保ち合いから、上・下に放たれる転換点が迫る

 1)日経平均は、三角保ち合いが続き、28,150円辺りが交差点⇒上放つか・下放つか?
  ・上値は右下がり 9/04 30,670円 11/16 29,808 12/13 29,069 ⇒28,150?⤴
   下値は右上がり 8/20 27,013   10/06 27,528 12/02 27,753     ⤵
   差異縮小     3,657       2,280     1,310
  ・上値は▲5.2%下方へ切り下がり、下値は+2.7%切り上がり、差異は縮小傾向。上値の切下げ率の方が大きく、日経平均は『下放つ』可能性が高いと示唆か?

 2)世界主要中央銀行のバランスシートと株価時価総額の推移を見ると関連性が高い
                2016年   2021年
  米欧日の中央銀行の資産合計 13兆ドル  110
  世界株式時価総額      11     120

 3)世界主要中央銀行の金融緩和縮小の流れ⇒株価下落の可能性を示唆?  
  ・米FRB :テーパリング(緩和策の縮小)決定。
  ・欧ECB :同上。
  ・日銀  :ETF購入枠の定義変更 年6兆円「購入」⇒年6兆円「枠」への変更。
        購入意思決定基準変更 TOPIXが前場終値で前日比▲0.5%超下落の場合、後場に700億円購入⇒ ▲2.0%超に変更した。

 4)日本株の2022年課題
  (1)海外投資家の岸田政権を見る眼は「厳しい」
   ・2021年自民党総裁選と日経平均の推移の振り返り。
    8/21からの日経平均上昇は、河野総裁・首相への期待効果。
    8/20安値27,013円⇒9/14高値30,670円 +3,657円高 外人+2兆2,893億円買
  岸田氏の総裁・首相への流れが強まり、期待外れのマイナス効果。
    9/14高値30,670⇒10/6安値27,292円 ▲3,503円安 外人▲2兆400億円売

    ・河野氏には(1)規制改革(2)構造改革が期待され、(3)日本経済にダイナミックな変化をもたらし、(4)政治の世代交代をもたらす政治刷新できると、将来性で『買い』。

   ・一方、岸田氏は(1)従来延長型で変わらない政策(2)「分配」を重点に置いた社会民主党的発想と、米民主党左派と似通った政策で(3)経済・企業成長は望めず、(4)政治は永田町論理の進行で、相も変らぬ老人支配継続のため、『売り』。

   ・いまだに見えない岸田首相の「新資本主義」は、お題目だけか?安倍元首相の「新自由主義」との違いを、訴えるための単なる「造語」なのか?

   ・米政権からの信認は得られるのか? 日本の安全保障は有効に機能するのか?岸田首相は、総理就任後3カ月を越えても、日米首脳会談の日程が決まらない。これは過去の例を見ない「異常」なこと。菅元総理は、バイデン大統領就任直後に各国に先駆けて1番目に首脳会談、退任を決めた9月終盤もバイデン大統領から招請され、1年で2回も実施。宏池会は親中派であり、その流れを汲む岸田派、加えて自民党きっての親中派の林外務大臣抜擢の意味するところを、米バイデン政権が評価した結果なのか?米政権と外務・防衛大臣による「2+2」の会合もいまだに未決定である。中国ウイグル人権問題など米政権の施策への煮え切らない岸田総理への不満の表明なのか?日本の安全保障に関し、岸田総理はバイデン大統領と直接は『確認できていない』。安倍・菅時代は、首脳会談や電話会談において常に『確認』してきた。日本株の売買取引の3分の2は、海外証券が占めており、外人の売買意向が株価に影響しやすいという構図になっている。この政治状況下では、海外投資家は安心して『日本株を買えない』のではないか。

  (2)今年7月の参議院選挙結果が政局を波乱含みへと動かす
   ・自民党と立憲民主党は議席数を減らし、維新が伸ばすと予想する。9月末の自民党総裁選の盛り上がりで、離れかけていた保守層が戻ってきたため、昨年の衆院選挙は自民党が勝てた。
   ・その保守層の票が、期待が剥離した首相に愛想をつかして、離れるため惨敗する。
   ・立憲民主党も、トヨタ労組の離脱と連合とのきしみ解消できず、維新が漁夫の利。
   ・参院選の結果が、過去、政局を動かし、首相交代させてきたという経験則がある。

  (3)日銀は市場への新規資金供給2020/3末に停止し継続
   ・日本銀行は、米国に1年先駆けて、テーパリング(緩和の段階的縮小)を実施済み。
   ・結果、海外短期筋は日本株売りに転換し、日経平均は約▲4,000円強下落。
  
  (4)米国の中間選挙と参議院選挙の経験則
   ・特に、米国では政権与党が負ける確率が高い。
   ・日本でも与党の参院選敗退は、政局となりやすい。
  
  (5)外人投資家は、政治の安定を望み、不安定要素が強いと「売り逃げ」スタンスであり、政治が安定化し経済成長が期待できるとなると「買い戻ってくる」傾向がある。

●3.企業動向

 1)ソニー   TSMC進出を契機に長崎を軸に3年間で7,000億円投資。 (西日本新聞)
        世界シェア首位の画像センサー事業を成長戦略の軸に据え巨額投資を実施。
        TSMCの日本子会社(熊本・菊陽町)に570億円出資し、画像センサーの演算処理用半導体の供給を受ける。 画像センサーはスマホの複眼化、自動車に需要急増。
 2)ENEOS    横浜・根岸製油所を水素供給拠点にした整備が有力に(神奈川新聞)
 3)三菱重工  米企業の高速炉開発で、三菱重工と日本原子力機構が技術協力(共同通信)
        米企業はマイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が設立したテレパワー社。
        冷却材にナトリウムを使った高速炉(出力34.5万キロワット)を建設する。
        「もんじゅ」(廃炉中)や常陽(停止中)の運用実績とデータ、設計を提供。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任で願いします)

 ・1332 日本水産  業績堅調。
 ・2201 森永製菓  業績堅調。
 ・2726 パル    業績好調。

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