オオメジロザメはなぜ淡水で暮らせるのか 東大などの研究

2019年7月28日 06:51

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オオメジロザメ。(画像:東京大学発表資料より)

オオメジロザメ。(画像:東京大学発表資料より)[写真拡大]

 サメのほとんどは海棲である。ただし、唯一オオメジロザメというサメだけは淡水で暮らすことができ、河を遡る性質を持つ。なぜそのようなことが可能であるのかを追求したのが今回の研究である。

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 オオメジロザメは広く熱帯・温帯に生息するサメの一種である。沖縄周辺の河川にも生息していて、シロナカーと呼ばれる。雑食性で気性が荒く、人間を襲った例も知られている厄介な存在なのだが、その上淡水域に進出してくる性質を持つため、サメの中でももっとも危険な一種と言うこともできるかもしれない。

 この種は淡水域で普通に生息することができ、ミシシッピ川、ザンベジ川、アマゾン川などの大河を何千キロも遡った先の淡水湖にも生息している例がある。最大で全長は4メートル、体重は300キロを超える。

 さて、サメはエイやギンザメなどと並んで軟骨魚類に属する。ヒトは硬骨脊椎動物であるが、軟骨魚類と硬骨動物が分岐したのは約4億5,000万年前と言われる。軟骨魚類は、海水の高い塩分や浸透圧に適応するため、体内に尿素を蓄えて脱水を防いでいる。軟骨魚類のほとんどは海棲種で、淡水性の軟骨魚類はわずかにアマゾン流域の淡水エイ(ポタモトリゴン属)が知られるのみである。

 硬骨魚類には海水と淡水で両方暮らせる「広塩性」の魚も多いのだが、軟骨魚類には少ない。そのわずかな広塩性の軟骨魚は、淡水に置いても高濃度の尿素を体内に保持し続けていることが知られている。

 東京大学大気海洋研究所と理化学研究所、沖縄美ら海水族館の研究チームは、沖縄美ら海水族館で飼育されていたオオメジロザメを海水から淡水に移行させる実験を行った。すると、腎臓でさまざまな遺伝子が活性化し、塩化ナトリウムと尿素を腎臓で再吸収し、薄い尿を排出するようになることが分かったという。

 今後の展望としては、他の広塩性軟骨魚類のエイなどの研究も行っていきたいという。研究の詳細は、Journal of Experimental Biologyに掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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