約130億年彼方に83個の巨大ブラックホールを発見 愛媛大など

2019年3月21日 09:16

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すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHSCによる探査観測で撮影された巨大ブラックホール。(c) 国立天文台

すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラHSCによる探査観測で撮影された巨大ブラックホール。(c) 国立天文台[写真拡大]

 愛媛大学の研究者を中心とする国際研究チームが、地球から約130億光年離れた超遠方宇宙で、83個もの大量の巨大ブラックホールを発見した。130億光年は光の速さで130億年かかる距離。つまり130億年前のブラックホールが見えたということだ。宇宙の年齢は138億年とされているので、これは宇宙誕生から10億年弱という早い時期からブラックホールが存在していたことを示している。

■ブラックホールとは

 ブラックホールとは、光ですら脱出できない様な強い重力を持つ天体のこと。太陽の数十倍の質量を持つ恒星が核燃料を使い果たすと、自らの重力で潰れてブラックホールになるとされている。光も出てこれない「黒い穴」であることから、ジョン・アーチボールド・ホイーラーによって「ブラックホール」と名付けられた。

 このような奇妙な天体の存在は当初、多くの天文学者から否定されたが、ブラックホールと考えられる多くのX線天体が観測され、今では、大質量星は最終的にはブラックホールになるということが定説となっている。

■巨大ブラックホール

 我々の天の川銀河を含む銀河の中心には、超大質量ブラックホールがあると考えられている。このような超大質量ブラックホールは、大質量星が寿命を終えることによって発生する恒星質量ブラックホールが衝突・合体してできたもの。

 銀河の中心では星が密集し大質量の天体も多く存在するため、ブラックホールの合体融合が頻繁に起こっていると思われる。

■宇宙再電離

 生まれたての宇宙は、今よりずっと密度が高くて高温だった。そのため、陽子と電子がバラバラに飛び交うプラズマ状態(電離状態)になっていた。宇宙が膨張してくると次第に温度は下がり、陽子と電子が結合して電気的に中性の水素原子が生まれた。

 しかしそのあとにまた、水素原子から電子が引き離されたことが分かっている。なぜなら現在、銀河間にある水素ガスは中性ではなくほぼ完全に電離しているからだ。水素原子から電子を引きはがすには外部から電磁波の形でエネルギーを与える必要がある。現状ではそのエネルギー源がどこから出たものであるかは分かっていない。

 その候補として、巨大ブラックホールにガスが落ち込むときの放射が考えられていたが、今回の探査によって、宇宙全体の水素原子を電離できる程多数の巨大ブラックホールは存在しないことが明らかとなった。

 研究チームでは、巨大ブラックホールの形成のプロセスを明らかにするために、より遠方の探査を行いたいとしている。より遠方を観測することはさらに過去について調べることになるからだ。(記事:創造情報研究所・記事一覧を見る

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