世界経済、AI投資とエネルギー高の綱引き IMF総裁「慎重なタカ派姿勢」提唱

APK, CC BY 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by/4.0>, via Wikimedia Commons[写真拡大]
国際通貨基金(IMF)のクリスタリナ・ゲオルギエワ専務理事は7日、人工知能(AI)への大規模投資が世界経済を下支えする一方、中東の戦争に伴うエネルギー供給制約や高水準の公的債務がインフレと金融市場のリスクを高めていると警告した。
ゲオルギエワ専務理事はシンガポールで、12日にバンコクで始まるIMF・世界銀行年次総会を前に講演した。世界経済について、中東の紛争に伴う「負のエネルギー供給ショック」と、AI投資の急増による「正の需要ショック」という逆方向の力が働いていると指摘した。
「好むと好まざると、あるいは恐れようと、AIはここにある」と述べ、AIが各国の経済的な優位性を左右する重要な要因になりつつあるとの見方を示した。
IMFの研究では、AIを適切に導入できれば、世界の年間成長率を最大0.5ポイント押し上げる可能性がある。ゲオルギエワ専務理事は、世界成長率が約3%から3.5%へ高まり、その効果が10年間続けば、「世界経済に東南アジア諸国連合(ASEAN)規模の経済が1つ加わるのに相当する」と説明した。
AI投資はすでに急拡大している。世界の国内総生産(GDP)に対するAI投資の比率は、過去の鉄道、電力網、通信網の建設時にみられた投資規模に達するか、それを上回る可能性があるという。AI向けハードウエアなど関連技術製品は、すでに世界の商品貿易の1割超を占めている。
ただ、恩恵には地域差がある。AI関連の技術サプライチェーンに深く組み込まれた国・地域では投資や貿易の拡大が成長を押し上げる一方、関与の薄い国では恩恵が限られる。
IMFが7月に公表した世界経済見通し(WEO)改定版は、世界の実質成長率を2026年に3.0%、2027年に3.4%と予測した。中東の戦争がエネルギー輸入国や脆弱な経済に打撃を与える一方、AI関連需要が世界の技術サプライチェーンに組み込まれた国々を支えるとみている。
AI投資の急増にはインフレを押し上げる側面もある。ゲオルギエワ専務理事は「AI建設ブームはインフレ的だ」と指摘した。データセンターなどへの巨額投資に加え、AIの普及による電力需要の増加がエネルギー価格への圧力を強めるためだ。エネルギーや食料価格のショック、関税、防衛支出、高い債務返済費用も物価上昇要因として挙げた。
金融市場への波及にも警戒を示した。AI関連企業の好調な利益が株価を支えている一方、期待された収益を達成できなければ影響が広がる可能性がある。
ゲオルギエワ専務理事は、業績が期待を下回った場合、「ハイパースケーラーのレバレッジと、世界で大きく膨らんだ米国株の保有が、失望を広範囲なショックへ転化させる可能性がある」と述べた。
IMFの4月の「財政モニター」によると、世界の公的債務は2025年にGDP比94%弱まで上昇した。現在の軌道では2029年に100%へ達する見通しで、この水準はこれまで第2次世界大戦直後にしか記録していない。
金利上昇も債務管理を難しくしている。ゲオルギエワ専務理事は、従来は経済成長率が金利を上回る状態が各国の債務負担を抑える助けになっていたが、借り入れコストの上昇で環境が変化したと指摘した。高債務国は経済成長だけに頼って債務比率を引き下げることはできないとして、信頼できる中期的な財政再建計画を求めた。
エネルギー面の圧力も続く。IMFは9月、中東の戦争による供給ショックを世界経済が予想以上に吸収してきた一方、石油・ガス備蓄はいずれ補充する必要があり、AIの普及もエネルギー需要を押し上げていると指摘した。
ゲオルギエワ専務理事は、中央銀行は物価安定を最優先すべきだと強調し、「多くの国で今は慎重なタカ派姿勢が適切かもしれない」と述べた。
IMF・世界銀行の2026年年次総会は、タイ・バンコクで10月12〜18日に開かれる。IMFは会期中に最新の世界経済見通しを公表する予定である。
※この記事はInternational Business Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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