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『バックルームズ』続編でケイン・パーソンズ続投か 不気味な空間が不安を誘う理由

(A24films.com)[写真拡大]
ホラー映画『バックルームズ』の続編で、ケイン・パーソンズが再び監督を務めると報じられた。9月7日時点でA24から正式発表はなく、製作開始日、公開時期、出演者なども明らかになっていない。
第1作は2026年9月4日に日本でも公開された。黄色い壁紙や蛍光灯に照らされた出口のない空間が、なぜこれほど強い不安を誘うのか。作品の特徴は、見慣れた建築と、その場所にあるはずの目的や人の気配とのずれにある。
■『バックルームズ』続編でパーソンズ続投と報道
Dread Centralは9月6日、情報筋の話として、パーソンズがA24の『バックルームズ』続編を監督する契約を結び、次回作として取り組むと報じた。同媒体によると、公式発表も近く行われる見通しだという。
A24の公式サイトなどでは9月7日時点で続編が発表されていない。このため、現段階で確認できるのは、パーソンズの続投が関係者情報として報じられていることまでとなる。続編の正式名称、製作開始日、公開時期、物語、出演者は明らかになっていない。
第1作『バックルームズ』は米国で2026年5月29日に公開され、日本ではハピネットファントム・スタジオの配給により9月4日に公開された。A24の公式情報では、監督をパーソンズ、脚本をウィル・スーディクが担当し、キウェテル・イジョフォーとレナーテ・レインスヴェが出演している。
物語は、家具店の地下に現れた奇妙な入り口から、店主クラークが黄色い部屋と廊下の続く空間へ迷い込むところから始まる。クラークをイジョフォー、そのセラピストであるメアリーをレインスヴェが演じ、マーク・デュプラス、フィン・ベネット、ルキタ・マクスウェルらが共演した。パーソンズはエド・ファン・ブリーメンとともに音楽も手がけている。
第1作の世界興行収入は約3億9412万ドルに達した。1ドル=154円で単純換算すると約607億円となる。興行収入は製作側の利益そのものではないが、A24作品として最大規模の興行成績を記録した作品となった。
パーソンズは映画公開前から、『バックルームズ』を一つの映画だけで完結する企画とは考えていないと説明していた。Polygonのインタビューでは、第1作を物語の核心へ近づくための複数段階のうちの最初の部分と位置付け、一本の映画だけでは到達できない構想があると語っている。
Varietyに対しても、映画の枠を越えてシリーズを広げることを以前から想定していたと述べた。続編が正式に始動すれば、YouTubeの短編シリーズと第1作で示されてきた「Complex」や研究組織Asyncをめぐる物語が、さらに展開する可能性がある。
■見慣れた場所が不気味になる
『バックルームズ』を特徴付けるのは、日常的な建築要素と、それらが置かれた状況との食い違いだ。カーペット、天井板、蛍光灯、石こうボードの壁は、オフィスや商業施設で見慣れたものだ。一方で、空間を使う人、明確な用途、外部につながる窓や出口、場所を区別する目印が見当たらない。
この組み合わせにより、空間そのものは認識できるのに、そこで何をする場所なのか、どこへ向かえばよいのかが分からなくなる。作品は、見慣れた室内から目的や社会的な文脈だけを取り除き、同じような部屋を反復させることで不安を高めている。
こうした感覚を読み解く手掛かりになるのが、カーディフ大学のアレクサンダー・ディールとマイケル・ルイスが2022年に発表した環境心理学の研究である。両氏は、建築空間にも「不気味の谷」に似た評価の変化が現れるかを、複数の実験で調べた。
研究では、写実性の異なる建築画像や、構造にさまざまな歪みを加えた室内画像を参加者に提示した。その結果、見慣れた構成パターンから外れた建築は、単に珍しいだけの場所とは異なる不気味さを生じさせることが示された。
人の存在も評価に影響した。歪みのある公共空間では、人が描かれていると不気味さが弱まった一方、私的な部屋では反対の傾向も確認された。空間の構造だけでなく、そこに誰がいるはずかという社会的な予想も、不気味さを左右することがうかがえる。
『バックルームズ』の黄色い迷宮は、この研究で使われた画像と同じものではない。それでも、見慣れた室内の構成を保ちながら、用途、人の気配、出口、自然光などの文脈を外すという表現には、研究が扱った「予測可能な構成からの逸脱」と通じる部分がある。
■位置を知るための手掛かりが消える
迷宮の反復は、人が場所を把握する仕組みを考えるうえでも興味深い。脳は視覚、身体の動き、方向、過去に通った場所の記憶など、複数の情報を組み合わせて現在位置を推定する。
海馬には、動物が特定の場所にいるときに活動する「場所細胞」がある。ジョン・オキーフは1971年、ラットの海馬でこの細胞を発見した。その後、メイ=ブリット・モーセルとエドバルド・モーセルは、海馬に隣接する嗅内皮質で、空間の座標系に関わる「グリッド細胞」を発見した。3人は、脳内の位置把握システムを構成する細胞の発見により、2014年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。
場所細胞やグリッド細胞の働きだけで、人がリミナルスペースを怖がる理由を直接説明できるわけではない。しかし、位置を把握するには、区別できる目印、方向の情報、移動に伴う景色の変化などが重要になる。
『バックルームズ』では、似た壁、照明、カーペット、廊下が繰り返される。曲がり角を越えても風景がほとんど変わらず、入口と出口の関係もつかめない。認識できる建築でありながら、現在位置を判断するための手掛かりに乏しいという構造が、登場人物と観客の見当識を揺さぶる。
作品の音響も同じ効果を補強する。人の会話や屋外の音に代わり、蛍光灯や設備の低い駆動音が続く。風景と音の変化が少ないため、時間の経過や移動した距離を感じ取る基準も曖昧になる。
1950年代にマギル大学で行われた知覚的隔離の研究では、視覚や聴覚、触覚の変化を大幅に減らした環境に長時間置かれた参加者に、集中力の低下や知覚上の変化、幻覚的な体験などが報告された。ただし、これは管理された実験室で数時間から数日間にわたり刺激を制限した研究であり、建築画像を見たときの不気味さとは条件が異なる。
両者を結ぶのは、特定の脳領域が「故障する」という単純な因果関係ではなく、環境から得られる変化や手掛かりが少なくなるという共通構造だ。『バックルームズ』は、空間を理解するための情報が不足した状態を、終わりのない建築として可視化している。
パーソンズ自身も、2026年4月のCCXPメキシコで、作品の感覚を感覚入力が乏しい状況と結び付けて説明している。空間の単調さと神経系が刺激を求める感覚を重ねる解釈は、迷宮で人物の知覚が揺らぐ描写を読み解く補助線となる。
■余剰次元や曲がった空間を連想させる設定
パーソンズのYouTubeシリーズでは、バックルームズは架空の研究組織Async Research Instituteが開いた「Threshold」を通じて入る空間として描かれてきた。組織が空間そのものを作ったのではなく、それまで接続されていなかった場所への入り口を開いたという設定である。
この設定は、現代物理学に登場する余剰次元や曲がった空間という発想を連想させる。1920年代にテオドール・カルツァとオスカー・クラインが発展させたカルツァ=クライン理論では、通常観測する時空に加えて、小さく折り畳まれた余剰次元を導入することで、重力と電磁気を幾何学的に記述しようとした。
余剰次元の考え方は後の理論にも取り入れられ、超弦理論では10次元、M理論では11次元の時空が想定される。余剰次元の大きさや形は理論によって異なり、実験で存在が確認されたものではないが、CERNの大型ハドロン衝突型加速器では、余剰次元を仮定するモデルが予測する重い粒子や、運動量とエネルギーの不均衡などが探索対象となっている。
重要なのは、加速器が別世界への入り口を作ろうとしているということではなく、直接見えない時空の構造を、粒子衝突の痕跡から調べている点にある。観測できる現象を通じて隠れた空間構造を探るという情報処理の形は、AsyncがThresholdの向こう側を計測しようとする作品設定にイメージを重ねられる。
永遠のインフレーションを扱う宇宙論にも、「ポケット宇宙」という概念が登場する。アラン・ガスが2007年の論文で論じたモデルでは、インフレーションが続く時空の中で多数のポケット宇宙が生じる可能性が検討される。こうした領域は観測可能な通路で結ばれた部屋ではないが、私たちが見ている宇宙とは異なる領域があり得るという発想は、バックルームズの次元外空間を考える手掛かりになる。
作品に登場する、外から想像できないほど広い内部という表現は、非ユークリッド幾何学も連想させる。とりわけ双曲幾何学では、平面の場合とは異なる距離や角度の関係が成立し、三角形の内角の和は180度より小さくなる。
もっとも、双曲幾何学を採用すれば、小さな扉の内側に自動的に無限の空間を収められるわけではない。作品との共通点は、内部の距離や広がりが日常のユークリッド的な直観に従わない空間を、数学的に考えられることにある。扉をくぐった瞬間に、それまでの位置関係が役に立たなくなる映像表現へ、曲がった空間という科学的なイメージを重ねられる。
■4chanの投稿から映画フランチャイズへ
バックルームズというインターネット上の怪談は、2019年5月に4chanへ投稿された室内写真と短い文章を起点に広がった。文章には、ゲーム内で当たり判定を無効にして壁などを通り抜ける「ノークリップ」という言葉が使われ、現実から外れ落ちると、黄色い部屋が延々と続く場所にたどり着くという設定が示された。
写真の撮影場所は長く不明だったが、2024年、米ウィスコンシン州オシュコシュにある建物の改装中に撮影された画像であることが特定された。もともとはHobbyTownの店舗移転に伴う改装記録として、2003年にウェブサイトへ掲載された写真だった。
パーソンズはこのインターネット怪談を基に、16歳だった2022年1月、YouTubeで短編映像『The Backrooms(Found Footage)』を公開した。その後、架空の研究組織Async、Complexと呼ばれる空間、調査映像や記録文書などを組み合わせ、独自の物語へ発展させた。
その映像シリーズがA24による長編化につながり、パーソンズは10代で映画版の監督に起用された。第1作では約3万平方フィートのセットが用意され、CGだけでなく大規模な実物の空間を使って、反復する部屋と廊下が作られた。
匿名の画像投稿から共同的なインターネット怪談が生まれ、個人クリエイターの映像シリーズを経て映画へ展開した経緯は、ネット時代ならではの知的財産形成を示している。一人の作者が最初から世界観全体を設計したのではなく、匿名の投稿、二次創作、映像制作者による再解釈が重なり、現在の形になった。
■リミナルスペースとしての迷宮
「リミナル」は、ラテン語で「敷居」を意味する言葉に由来する。人類学者アーノルド・ヴァン・ジェネップは1909年の著書『通過儀礼』で、ある社会的な立場を離れてから新しい立場へ入るまでの中間的な段階を論じた。
後にリミナリティと呼ばれるようになったこの概念は、インターネット文化では、本来なら人がいるはずの学校、商業施設、ホテル、空港などが無人になった光景にも使われている。場所としては理解できる一方、通常の用途や時間帯、人間関係から切り離されているため、懐かしさと不安が同時に生まれる。
『バックルームズ』は、この中間状態を建築として描く。登場人物は元の世界を離れたが、新しい場所へ到着したとも言えない。廊下や部屋は移動の途中に見えるのに、その途中がいつまでも終わらない。
環境心理学が示す構成上のずれ、空間認知に必要な目印の不足、刺激の少ない音と風景、そして移行が完了しない物語構造が重なることで、怪物が姿を現す前から不安が成立する。作品の恐怖は、何かが潜んでいることだけでなく、空間を理解するための規則が見つからないことから生まれている。
■続編が向かう先
パーソンズは今後の作品について、単純に同じ恐怖を繰り返すのではなく、構想してきた物語の核心へ段階的に近づきたいと説明している。また、映画だけでなく、YouTubeでの映像制作を続ける可能性にも言及してきた。
続編で第1作の登場人物が再び描かれるのか、AsyncやComplexを中心とした別の物語になるのかは分かっていない。第1作に残された謎が直接引き継がれるとの公式情報も、現時点では発表されていない。
9月7日時点で確認できるのは、パーソンズが続編の監督として契約したとの報道と、正式発表が近いとされていることだ。続編が正式に動き出せば、見慣れた建築から目的と方向感覚を奪うという『バックルームズ』独自の表現が、物語の拡大に合わせてどのように変化するかが焦点となる。
元記事: Backrooms 2 Is Confirmed: Neuroscience Explains Why Liminal Spaces Break Your Brain
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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